映画「おとうと」を観ました。
ハッキリ言いまして嗚咽を抑えるのが大変でした。
映画を観る前から「これはきっと泣くだろうな」と想像はしておりましたが
案の定大泣きです。(TT)
これは個人差の出る内容だと思いますので
必ず「泣ける」という映画ではないとは思いますが
もしツボにはまれば周りの方にご迷惑となりますので
ハンカチの用意は必須です。ご注意ください。
あっ、当然私は用意していきました。
以下多少の
ネタバレを含んでおりますのでご注意ください!
さて、この映画は市川崑監督の「おとうと」に捧げられた
山田監督の十年ぶりの現代劇である。
映画の冒頭では昭和を振り返る場面がいくつも出てくる。
その中に映画「男はつらいよ」や「家族」も登場する。
映画のワンシーンが映る。
その場面を見て直ぐにどの作品かスッとわかれば最上級の寅キチであろう。
残念ながら直ぐには分からず。あえなく撃沈・・・
後半でもホスピスに出てくるテレビで見ているビデオは映画「男はつらいよ」。
こちらも撃沈・・・(TT)
以前より山田監督は映画の中で自分の作品をチョロっと出したりしていたが
ここまではっきりとみせるのは珍しいようなきがする。
映画の紹介で寅さんを引き合いに出したりしているので
監督自身もかなり「男はつらいよ」の何かにこだわったのかもしれない。
映画を観終わって思い出したのが
第16作「〜葛飾立志篇」で最後さくらに言った寅の言葉であった。
「こっちに学問があったらなぁ〜。
上手い答えをしてあげたんだけど・・・
学問がないってことは悔しいよ!
何かしてやろうと思ったって、どうしようもねぇもんな〜。」
そして
第40作「〜サラダ記念日」では満男に対してこんな事を言っている。
「つまりあれだよ。ほら、人間長い間生きてりゃ、いろんなことにぶつかるだろ?な?
そんな時に、俺みてえに勉強してない奴は、この振ったサイコロの出た目で決めるとか、その時の気分で決めるにしょうがない・・・な。
ところが勉強をした奴は、自分の頭できちんと筋道を立てて、
『はて、こういうときはどうしたらいいのかな』と考えることができるんだ。
だからみんな大学に行くんじゃないか」
完璧なネタバレになるのでこれ以上ハッキリとは書けないが
この一連の言葉が寅目線での当時の山田監督の考えであったとすれば
今回の吉永小百合さんが言った吟子目線での言葉は
体裁など全て捨て去った本当の山田監督の裸の考えなのだと感じた。
この言葉の意味を自分なりに噛み締めると
本当に涙が止まらない。
やっと分かり合えたというような気持ちが込み上げてくる。
人は優しくなれるんだと思った。
そして平等なのだと。
世の中の
「無駄を省く」
「勝組」
「エリート」
・・・等々
そういった「正しい」と思われている言葉が何とも虚しく思えてならない。
個人的に吉永小百合は吟子役に対して如何なものかと思っていたが
感動したこの台詞を言えるのはこの方しかいないと思った。
そして鶴瓶。お見事!加藤治子、最高である。
辛口で言えば他キャストはそのまんま。
これまで山田監督が役者に求めていた「演じることなく自然に」が
この映画では山田監督自身が「自然に」に語っていたような気がする。
極力映画の内容には触れないよう気を遣いましたので
非常に抽象的な表現になり分かり辛いと思います。お許しください。
また、もし不愉快に思われるような表現がありましたらどうぞご勘弁ください。
おしまい。

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