祝日明けの週末で大変混み合った今日。まさぼーは、欠員が出た8階・西病棟の助っ人を突然頼まれて、行って来ました。
外来の患者さんが多く、1階のリハビリテーション科と8階の病棟を行ったり来たり。患者さんのご案内、ベッドのシーツ交換にお茶の用意、カルテの整理と本当に忙しい一日でした。
僕が8階・西病棟に入るのは、今日が2回目。この前入ったのも、やはり欠員が出て助っ人を頼まれた時でした。
ちょうどその頃、看護士見習いの実習生の女の子達が大勢入ってきました。そして今日、彼女達の約二週間の病棟での研修が終わる日でした。
お昼の休憩明け、僕がちょうど病室前の車椅子を洗浄していた時のことです。
ある一人の入院中のおばあちゃんが、お別れの挨拶をしに行った女の子にこう言いました。
「そうかい…今日でお別れかい…。二週間やったけど、ホンマに世話になったなぁ〜。おばあちゃん、ずっと応援してるさかい、あんた…立派な看護師さんになるんやで…。離れとっても、ず〜っと応援してるさかいな…!頑張ってな…!」
そしておばあちゃんは、白衣の女の子の手をしっかりと握りました。おばあちゃんのしわくちゃの目に、いっぱいの涙が溢れました。
その手を両手で握り締めて女の子は、大声で泣き始めました。おばあちゃんのしわくちゃの手をしっかり握り締めたままその場にしゃがみこみ、肩を震わせて…いつまでもいつまでも泣いていました。
やがてその泣き声が部屋の外まで響き渡ると、看護師長さんと看護士見習いの他の女の子達も、病室までやって来ました。
看護師長さんは、泣きやまぬ白衣の女の子に、厳しくも温かい口調でこう言いました。
「あんた!今日はいいこと教えてもらえたな…。今日のこと…あんたが看護士になっても、絶対忘れたらあかんで!ずーっとずーっと覚えてるねんで!なっ!わかったな…!」
看護師長さんも涙ぐんでいました。最後のほうは、声が微かに震えていました。
『白衣の天使』。そんな言葉は…こんな時代にはもう、死語なのかもしれません。
連日世間を騒がせる非人間的な事件の数々。今日もまた、河原で女の子が男に殴り殺されるという陰惨極まりない事件のニュースがありました。
病んだ日本。何かが壊れてしまった日本。
だけど…
人間ひとりひとりの心の中に、天使はいるのではないか…?僕は、今もそう思います。そう、信じています!
心の中の天使に気づくも気づかないも、自分次第。人との触れ合いを拒絶して殻にこもり、「自分は独りぼっちだ」と思い込むから、他人を憎むのです。
「他人と理解しあうことなど無理だ!誰も自分のことをわかってくれない!人間はしょせん独りぼっちだ!」
しかし、はなから他人のことをわかろうとする努力もしないような人間に、「自分をわかって!」などと言う権利はあるのでしょうか?その台詞は…わかりあおうとひたすら努力に努力を積み重ねて、その果てに口にした台詞なのでしょうか?
看護師長さんの前述の言葉。それを聞いた白衣の女の子は、おばあちゃんの手をまるで大切なもののようにしっかり握り締めたままで、こう言いました。
「はい!頑張ります!あたし…あたしは!…必ず!立派な看護士に!…」
その後はもう、涙で言葉になりませんでした。
一緒に看護師長さんの話を聞いていた他の女の子達もみんな泣いていました。僕も、目頭が熱くなりました…。
白衣の天使は、確かに僕の目の前にいました。
白衣の彼女達ひとりひとりの心の中に…
優しく正しい天使が真っ白な羽根をそっと広げるその姿が、僕にははっきりと見えたのです。
それはまだ…弱くて移ろいやすい天使なのかもしれない。だけど…
神様から正しい心を受け継いだ、真っ白な…真っ白な…
本物の天使でした!


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