うーむ……。
今日は何もしていない。というか、いつも何もしていない。
今日、オレはベッドの上から開け放たれた窓の外をぼんやりと眺めていた。
引越ししてから随分経つが、寝室から空が広く見えるこの家を中々気に入ってる。
あいにくと今日は圧迫感がある重い灰色の空だったんだが、そういう空を眺めるのも好きだ。
カラスが左から右へ、アホかー、と言いながら視界の中を通り過ぎて行った。
オレはふと、思う。
……タイムマシンっていつできるのかな……。
……アカン。
オレの心が時空を超えて現実逃避を望んでいるではないか。
…もしかしたら、死期が近いのかしら?オレって。
いかんぞー、いかん!こんなくだらない事に思いを馳せるくらいならランニングでもして散歩中の犬のシッポでも踏むくらいアグレッシブにならなくては。
もしかしたら、曲がり角から飛び出してきた食パン咥えた女子高生とぶつかってお知り合いになれるかもしれないしな。ってもう昼の12時だけど。笑っていいともの時間だけど。さすがにもう高校生とかオレの甥の年齢だから無理だけど。
という事で、窓から見える、向かいのマンションに住む若奥様達のうららかな昼下がりの生態を双眼鏡でウキウキウォッチングしても良かったのだが、通報されるとツアーが吹っ飛ぶし、そもそも双眼鏡など持っていないので、仕方なくやおら重い身体を起し、オレの一日がスタートした。
…だりぃ。
誰と話す事もなく、声を発する事もなく、キッチンに立ち、鍋に水を入れ火にかける。起きぬけのまだもやがかかってハッキリしない思考に渇を入れる為に、濃いめのコーヒーを入れる、というようなエリートリーマンみたいな事をオレがするわけがないだろう。オレの一日は一杯のうまかっちゃんから始まる。ラーメンは飲み物だからな。
ふつふつと鍋底から湧き出る気泡を見つめながら、ぼぉーーーとしていた。
……タイムマシン……。
ってまだ思ってんのかよ!ヽ(`Д´)ノ
どうしても亜空間内に現実逃避をしたいらしいオレ。
タイムマシンは本当にできるのだろうか?
皆さんはどう思うのだろう。
思うに、実はオレ達はもう既に毎日小さなタイムトラベルを経験しているのではないか?そうして朝を迎えているのでは。オレの場合は昼だけどね。
あー、今日は6時間寝たー、とか、8時間寝たからスッキリー、だとかいうのは、起きてから時計の針を見て得る認識であって、時計を見るまでは経過した時間の程度なんて分からないはずだ。少なくともオレはそうだ。
これは時間のワープと言えないだろうか?
厳密には細胞が破壊と再生を繰り返し、毛が抜け落ち、体の水分が失われるので、物質的には時間の経過の束縛からは逃れる事はできない。諸行無常の響きありなのだが、6時間後に目覚めて一日がスタートしたとしても、記憶は6時間前の時点から積み重ねられていくので、これはおよそタイムトラベルから得られる効果に近いと言えるだろう。
物理相対性理論だとか、宇宙時計が云々…などという小難しい話などはいらない。
いたってシンプルな未来へのタイムトラベルの方法、それは、記憶を止めて時間を経過させる事である。いわんや、これは睡眠の事であると言えよう。
さて、未来へのタイムトラベルの原理は、大まかな所、理解していただけたと思うが、ではその逆、過去へのタイムトラベルはどうしたらいいのか?
実験してみよう。
まず、ネットのアーカイブの中から、8年前の2ちゃんのドラえもんスレを開いてみよう。2004年の声優陣が一斉交代するという噂が出て、世の中が震撼したあの時のものだ。
>事実上の首切りか?
>しずかちゃんというスタンダードシンボルを一時のアイドル声優に任せてもいいのだろうか?
等という当時の困惑ぶりが伺えるコメントの数々がみられる。
そして、いつものように昼間なのにカーテンを閉めきり、部屋を薄暗くする。オレのベッドは残念ながら10年近く使っていて、マットもヘタって寝てると腰が痛い。その上にごろり、と身体を横たえる。そして、これまた10年以上使っているペラペラの羽毛布団を身体にファサー…、とかける。枕を重ねて半身を起こし、いつものようにノートパソコンをお腹の上に載せて駄目な大人の最終変形態であるラッコのポーズを取る。
するとどうでしょう。8年前と何も変わっていません…!ではなくて!まるで8年前にタイムスリップしたかのようではないですか!
いたってシンプルな過去へのタイムトラベルの方法、それは記憶の完全な再現である。いわんや、これは過去のトピックスをネットサーフィンする事であると言えよう。
その情報量が多ければ多いほど、過去へのタイムトラベルはリアリティが増す。今回は部屋の様相も殆ど8年前と変わっていない事でより当時とシンクロする事に成功したといえる……。
なんという事だろうか、以上の事を鑑みても、
オレは……
オレは既に時空を超越した存在であったなんて!
ズズズー…。ハフハフ。
ふう……。
うまかっちゃんを食べ終えたオレは、寝室のふすまを力強く開け放つ。
亜空間への入り口となるその部屋の奥に、俺の愛機、タイムマシンが見える。通称:ベッド。
オレは颯爽とマシンに飛び乗り、マントをかぶる。通称:ふとん。そして、操縦席(枕)に座り、すべての計器(PC)を確認、異常なし!(ラッコ)
時の旅人の冒険は今日も終わらないのであった……。通称:現実逃避。
ではオヤスミナサイ!
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