はじめてのふゆ

大人なら、さらりと読めてしまう絵本。だからこそほんの少し感受性を研ぎ澄まして読まなければ読み取れない奥深さがある。
社会で生き抜いていくために大なり小なり、感受性を鈍くして生きる術を大人は持たざるを得ないが、本を読む時ぐらい、素直な感受性を戻しつつ読みたいと私は思っている。
ヘンリエッタは小さなじねずみです。お母さんはヘンリエッタが生まれた春に死んでしまいました。これから一匹で初めての冬を迎えねばなりません。森の仲間たちが冬支度の方法を色々教えてくれ、たくさんの食べ物を蓄えましたが、ある日...。(ここまでにしておきましょう...展開は是非、読んで。)
この絵本もきっと一度読んだだけでは、「あらっ、かわいそうに...」とか「助けてもらえて良かったね。」で閉じられてしまいそうな絵本ですが、感受性をプラスして読むと違った味わいで読める絵本でもあります。
ヘンリエッタは、自分にできることを、あきらめずにやり続けました。どんなに不幸に見舞われようと、へとへとになりながらも、愚痴も泣きごとも言わず、ただひたすらに目のまえの事を、一生懸命やりました。全力でぶつかってあとは待つ。...人が生きるうえでとても大切なことが描かれているように思います。
この春、社会人になる方に、親元を離れ新生活をスタートする方に特にお薦めしたい。背伸びする必要なんてないのです。自分にできる精一杯のことをあきらめずにやり続ける。そこに仲間が集まり、互いに支え合いつつ、それぞれの真の春を待つ。必ずそれぞれにふさわしい春が訪れることを信じてます。

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