「ゴー!ゴー!ナイアガラ 30周年記念盤/大滝詠一」
ナイアガラ 関連

今年(2006年)9月21日に発売された大滝詠一さんのソロ・アルバム「GO!GO!NIAGARA 30th Anniversary Edition」です。
オリジナル盤「ゴー!ゴー!ナイアガラ」が発売されてから30年という事で、新しいリマスターで登場です。
このCDを買ってビックリしたのは、実は1996年版の「ゴー!ゴー!ナイアガラ」のCDは「リミックス」だったという事です。リマスターではなく「リミックス」です。ここで言うリミックスとは、マルチトラックで録音されたテープを、バランスを取り直してミキシングし直すという意味です。
例えば、1986年にも「ゴー!ゴー!ナイアガラ」がリミックスされましたが、これはとても判りやすいミックス違いで、エコーの量や楽器のバランス等が1976年のミックスとは大きく違っていましたし、「こいの滝渡り」という曲の中間では、オリジナルには入っていなかった「ナイアガラ・ムーン」のストリングスのメロディーがダビングされていたりして非常に面白く聴けました。
しかし1996年版の「ゴー!ゴー!ナイアガラ」は1976年版のオリジナル・ミックスとそっくりのバランスと音質でしたので、ライナーなどによるとリミックスだと気が付いた人はいなかったらしいです。
そこで今回は1976年のオリジナル・ミックス版に加え、1996年のリミックス版を全曲ボーナス・トラックに入れてリリースされました(このアルバムはミックス違いが3種類ある事になります)。
そういうわけで、この30周年記念盤が発売されてから、76年のミックスと96年のミックスを聴き比べる日々が始まったわけです。いや…でもこれは誰にも気付かれなくても当然ですね。定位も音量のバランスも、違いはほとんどありません。
でも、良く聴いていくと、例えば「こんな時、あの娘がいてくれたらナァ」のスネアの音質が明らかに違っていたりする事に気が付きます(性能の良いヘッドフォンなどでないと聴き分けられないかもしれませんが)。
他にもほんの少しだけ、微妙に音量バランスの違いなどがありました。ちなみに大滝御大によると、このリミックスがオリジナル・ミックスと「何も違っては聞こえない!」と言われるのは「想定内」だそうです。
このアルバムはかなり変わったミキシングのバランスで、ヴォーカルの音量が異常に小さい事でも知られており、曲によっては、歌詞がほとんど聴き取れません。
1976年のリリース当時、このアルバムには歌詞カードが付いておらず、何と「歌詞聞き取りコンテスト」が行われたほどです。
これを、わざわざ1996年版でもほぼ同じバランス、つまりヴォーカルの音量を異常に小さくリミックスしているのです。いやはや、さすがというか、何というか。もちろん楽器の定位もそっくり同じです。
大滝御大はこのアルバムで歌っているように、我が道をドンドン行っております。ほぼ同じバランスのミックス違いが繰り返し収録されているという、こういう形式でのリリースには、もしかすると否定的な意見もあるかもしれません。
でも僕は、日本のポップス界の変人としてこのまま行って欲しいと思います。
30年前の作品を自宅で延々リマスターしている大滝御大です。「時間によって電気の質が違うので音が微妙に変わるんだよね」という"日本一の自己満足男"の道を究めて欲しいと思います。
そのうち「○月○日、○時リマスター・ヴァージョン。ベースの音はこもりがちだがハイハットの音は天下一品のリマスター」「○月○日、○時リマスター・ヴァージョン。歌はザラ付くがサックスの音がピカイチのリマスター」などと、常人には聴き分けられないようなリマスターボックスセットが発売されるかもしれません(されないでしょうけど)。
ライナーによると2007年には「CMスペシャル」のリマスターを発売予定だそうです。今度はどんな内容なのか、今からとても楽しみです。
※ ちなみに、この「KENNYの趣味趣味ブログ」という名前は、このアルバムの収録曲「趣味趣味音楽」を元に名付けました。