
その昔、芸人は皆、大きなギターを愛用していました。灘康次とモダンカンカンや玉川カルテットなどは今でもギブソンのフル・アコースティックやセミ・アコースティックの大きなエレクトリック・ギターを弾いていますし、女性の芸人でもかしまし娘の照江姉さんや花江姉さん、ちゃっきり娘の夏美姉さんも大きなアコースティック・ギターを弾いていました。
それが、いつ頃からか、一部の芸人のギターが小さくなっている事に僕は気が付き始めたのです。
まずコミックバンドのビジーフォーを見て変化に気が付きました。昔は4人編成でグッチ裕三、スリム冬木(後にモト冬木に改名)、ウガンダ・トラ、島田与作(イタッケ島田)がメンバーで、その頃冬木さんはフェンダー・ムスタングというショートスケールのギターを愛用していました(アイドル時代のCharさんが愛用して有名になったギターです)。
ビジーフォーが解散し、冬木さんは桜金造さんと共に「アジャパ」というコンビを組み、コントを始めます。ここで冬木さんはフェンダーのスリムなアコースティック・ギターを愛用しました。このコンビは全く売れず、ひっそりと解散しています(検索しても関連記事が全く見つからない幻のコンビです)。
後にメンバーチェンジをしてビジーフォー・スペシャルとして再結成された時、冬木さんはムスタングから
スタインバーガーというボディもヘッドもないコンパクトなギターをメインにしたのを見て、僕は「どうしてムスタングをやめたんだろう?」と思いました。
次に変化に気が付いたのは、ギター漫談「なんでかフラメンコ」や物真似で有名な
堺すすむさんのギターです。それまでマーティンのギターを弾いていたのが、いつの間にかボディが非常にスリムなギターを愛用するようになりました(堺すすむ師匠のサイトのBBSで読みましたが、特注品のギターだそうです)。
それから東京ボーイズでギターを弾いていた八郎さんが、ギターを辞めてウクレレにパートを変えました(しかも8弦ウクレレ!)。
こう言っては何ですが、東京ボーイズは真ん中でアコーディオンを弾いている六郎師匠の演奏力に頼っているグループです。八郎師匠のウクレレはたまにチューニングがズレていますし、五郎師匠は東京ボーイズの特番で三味線のソロの時、他の人の上手な演奏を流して弾くふりをし、それをギャグにするという荒技を見せました。八郎師匠がパートを変えても、サウンドはほとんど変化しなかったという珍しい現象が起きました。
そして横山ホットブラザーズにも変化が訪れました。「お〜ま〜え〜は〜ア〜ホ〜か〜」のノコギリ演奏で有名な長男のアキラさんが、標準的な大きさのギターをやめ、ミニ・ギターに持ち替えたのです。アキラさんは実は様々な楽器を演奏するマルチ・プレイヤーで、ギターの他にクラリネットやノコギリも演奏する多才なミュージシャンです。
しかし、ネタを見ればわかるように、アキラ師匠は以前からギターをほとんど弾きません。ほとんど弾かないのにケースの大きいギターは移動に邪魔だ、との判断で楽なミニ・ギターに変えたのではないかと僕は想像しています。そういえば弟のセツオ師匠もいつからかボディもヘッドもないコンパクトなスタインバーガーのギターを弾くようになりました。そうです、モト冬木と同じギターです。
番外編になりますが、最初からミニ楽器で芸をしているのが
ぴろきさんです。ヤマハの
ギタレレというミニ楽器を弾いて漫談をしていて自ら「ギタレレ漫談」と名乗っています。
僕もギタレレを愛用していますし、ぴろきさんは僕と同い年の芸人さんですので、とても親近感を持っています。もちろん自虐的な芸も大好きです。そういうわけで、今日の画像は僕が愛用しているギタレレです。
楽器を持って出演する演芸場をまわるというのは、実は労力が必要です。ギターを持っていると複数でタクシーに乗る時も場所を取ります(例えお弟子さんが持ったとしてもです)。そこで芸人さんたちはコンパクトなサイズのギターに持ち替えていったのではないでしょうか。それなら移動も楽になるし、ステージでも動き回れます。
僕も18歳の頃、スタインバーガー・タイプのベースを買いました。電車での移動など、本体もケースも非常に小さくて楽でとても助かりました。演芸では1本のマイクを数人が囲みますので楽器がコンパクトならマイクにも近づけますしね。以上は僕の想像ですが、結構当たっているんじゃないかなと思います。
でも玉川カルテットの「♪金もいらなきゃ女もいらぬ〜」で有名な背の小さな二葉しげる師匠が、ギブソンの大きなセミアコを抱えて弾きまくる姿など最高にカッコイイので、そういうスタイルも残って欲しいですね。
というわけで、今日は芸人さんのギターについて考えてみました。