
ヒカシューの巻上公一さんの「超歌謡」ソロ・アルバム。ジョン・ゾーンがプロデュースで、アメリカ録音のセカンド・アルバムです。様々な超歌謡カヴァーが収録されています。
ファーストの「民族の祭典」が出たのが確か1982年ですから10年ぶりのソロという事になりますね。「民族の祭典」はそれこそレコードが擦り切れるほど聴きました。最高のアルバムでした。
このセカンドも選曲が絶妙です。1曲目がトニー谷の「さいざんすマンボ」ですからね!イントロの喋りは少々アレンジしてあって巻上流になっていて、ちょっとニヤッとさせられます。
「すきやきエトフエー」は「上を向いて歩こう」のカヴァーですが、この出来もスゴイ!狂気と哀愁のオープニングからアコーディオン部分に入ると「えええ?!」という驚きの展開が続きます。ここまで展開する「上を向いて歩こう」は他にないんじゃないかなあ。
「東京の屋根の下」もスゴイです。3コーラスしかない曲なのに、演奏時間が10分01秒もあります。2番までの歌が終わると、バックを演奏しているオーケストラ(ジャズ・バンド)が暴走します。この演奏が壮絶です。サックスはブロウして「ブリビリビー!!」とほとんどノイズの音を出し、バックの演奏も突っ走ります。途中で静かになりサックスの妙なフレーズが延々と続き、ほとんどコードがない演奏になります。不協和音が鳴り響き、狂気じみたギターソロになり、グチャグチャになったところでまた突然歌に戻ります。初めて聴いた時にはあまりの壮絶さに絶句しました。
「帰ってきたヨッパライ(ニューヨーク・ヴァージョン)」も素晴らしいです。軽快なボサノヴァで始まりますが、途中でアフリカっぽいラテンのリズムに変わります。ここがもう最高!そしてやっぱり途中で不協和音になりますが、ここも最高!最後は再びボサノヴァに戻ります。
意外なところではジャックスの「マリアンヌ」をカヴァーしています。これがまた壮絶!イントロの不協和音の激しいこと!歌の部分もまるで地獄のサウンドのようです。途中ではもうリズムさえキープされなくなり楽器がかき鳴らされます。まるで悲鳴のようなアルト・サックス、高速でかき鳴らされるギターとベース。この壮絶なヴァージョンを聴いて早川義夫さんはどんな感想を持ったのか、興味があります。
本当にここまでブッ飛んだアルバムというのもそうあるものではありません。現在廃盤のようですが、実に残念です。ちなみに僕は巻上公一さんと誕生日が同じでありまして、勝手に親近感を持っております。