病院の小児科を受診した拒食症(神経性無食欲症)の患者が昨年は944人おり、過去に衰弱や自殺などで26人が死亡しているとする全国294施設の調査結果を、日本小児心身医学会が19日までにまとめた。
同学会によると、子供の拒食症に関する全国規模の実態調査は初めて。調査を担当した宮本信也筑波大教授(発達行動小児科学)は「かなり多く驚いた。受診者数も多いと言える。予防のための健康教育が必要だ」としている。
拒食症は、重度の体重減少に、体重が増えることへの恐怖などの精神症状が伴い、小学生の患者など低年齢化が進んでいるという。
調査は、総合病院など小児科医を育成するための小児科研修病院569施設を対象に実施、294施設が回答した。昨年受診した拒食症患者は、初診が358人、再診が586人の計944人だった。
「これまでに拒食症の死亡例の経験がある」と答えたのは24施設で、計26人。死因は衰弱や致命的な不整脈、心不全、自殺などだった。また、低身長や脳の委縮などの後遺症の恐れもある初潮前の女児患者は、過去に386人が確認された。
病院側が苦慮している点は、鼻に入れた管や点滴による強制栄養療法を実施するかどうかの判断や、患者が隠れて嘔吐するなどの問題行動であることも分かった。
今回の調査では、受診者、死亡者の年齢や性別は調べておらず、学会は発症のきっかけや治療経過、死亡の詳細について2次調査を近く始める。
宮本信也筑波大教授の話では子供の拒食症の根本には、存在感のなさや、達成感を得たいという思いなどが原因としてあるだろうが、何げなく始めたダイエットがきっかけになることもある。子供向け雑誌にダイエットの広告があるなど、過剰にやせたいと子供に思わせるような社会風潮があるのも問題。予防教育のほか、学校の健康診断で体格に気を付けるなどの対策が重要だ。
▽拒食症
拒食症 女性に多い摂食障害の1つ。最低限の正常体重を維持することを拒否するほか、体重増加や肥満に強い恐怖を持ったり、体重や体形の感じ方に障害があったりする。暴食の後の嘔吐や下剤による食べ物の排出、節食などが見られる。低カロリー食をまず食べられるようにするなどの栄養療法や、薬物などを用いた精神療法が行われる。
記事:共同通信社

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