成人学生の国民年金加入が任意だった時期に加入しなかったため、障害基礎年金を受け取れない統合失調症の男性(43)=岩手県在住=が、社会保険庁の不支給処分取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は26日、社保庁や損害賠償を求めた男性の控訴を棄却、支給を認めた1審盛岡地裁判決を支持した。
全国9地裁で提訴された同種訴訟で、2審判決は7件目で、年金支給を認めたのは昨年11月の東京高裁判決に続いて2件目。
井上稔裁判長は、年金支給要件である「成人前の初診」について「一定程度緩和して解釈しても法の趣旨に反しない」と判断。その条件として(1)初診日が20歳に近接して発症が成人前と判断できる(2)家庭環境などから、成人前に受診できない無理からぬ事情がある-などを挙げ、これを満たす場合は「成人前受診と同様に扱うのが相当」とした。
その上で原告について、医師の鑑定などから発症が成人前と判断され、青森大に進学後は1人暮らしで変調に気付くのが遅れ、初診の機会を逃したと認定、受給要件を満たすとした。
国民年金法は、未加入者でも病気などの初診日が20歳未満なら障害基礎年金を受給できると規定。男性の初診日は成人後だったが、統合失調症は発病から受診までが長期化しがちで、初診日の解釈などが争われた。
男性は1983年、20歳になって約1カ月後の初診で統合失調症の疑いがあると診断された。当時任意だった国民年金に入っておらず年金受給は認められなかった。
1審盛岡地裁は昨年3月、「成人前に発症したことが医学的に明らか」と不支給処分を取り消し、国への2000万円の損害賠償請求は退けた。控訴審で社保庁側は「初診日を拡張解釈すると公平、迅速な支給決定が困難になる」と主張した。
記事:共同通信社

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