全国の公安委員会が認知症を理由に運転免許を取り消した件数は、06年末までの4年半で257件にとどまることが警察庁の調べで分かった。認知症の免許保有者は65歳以上だけで推計30万人とされる。家族が取り消しを求めても警察が消極的なケースも多く、専門家や家族は、危険な運転を防ぐ新たな対策を求めている。
道路交通法の改正で02年6月以降、認知症患者の免許を取り消せることになった。しかし、同庁によると、実際の取り消しは4年半で257件。停止は4件。
免許取り消しと停止を合わせた行政処分計261件について、きっかけを調べたところ、約3分の2にあたる170件が「家族からの相談」だった。事故処理の過程で当事者が認知症と分かった例が42件。高齢者講習や免許更新時に判明したのは、わずか16件だった。
一方、国立長寿医療センター長寿政策科学研究部の荒井由美子部長らが04年、3県警本部(県名は非公表)に行った調査によると、運転をやめさせたい家族が警察に相談しても、行政処分を避け、自主返納などを進める方針が採られていた。荒井氏は「法律で認知症は免許取り消しの対象と定めているのに進まないのは、警察の現場レベルで具体的な指針がないことも一因だ」と指摘する。
警察庁によると、65歳以上の免許保有者は05年末で約977万人。認知症の免許保有者の推計人数は、厚生労働省の年代別患者の割合を基に推定している。同庁運転免許課は「免許は本人の権利なので、本人の協力が得られなければ処分は難しい。ただ、家族の相談は危険な運転を把握する機会でもあり、適切に対応するよう指導したい」としている。
記事:毎日新聞社

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