2007/1/12
95年クリスマス直前
テリーは日本ツアーから戻ってきた。
私は嬉しくて、
大きなお腹を抱えてアパートの外まで走った。
「そんなに嬉しそうに出迎えてくれたら、こっちまで嬉しくなるよ」
彼は嬉しそうにそう言った。
「本当に寂しかったんだもん。」
お腹を潰さないようにハグしあった。
「日本はどうだった?」
「楽しかったよ。
あんなにファンにキャーキャー言われたら
病み付きになるね(笑)。」
彼はファンの女子達と一緒に写した写真を見せてくれた。
彼が女の子の後ろからウエスト辺りに手を回している写真もある。
「こういうのって、普通彼女にしかしなくない?」
「そう?」
彼は荷物を片付けながら、その事には触れようとしなかった。
「ファンの1人が泣きながら追いかけてきたりしたんだ。
クレイジーだろ。」
「嬉しそうね。」
わざと冷たく言ってみる。
気付いてよ。
ファンの女の子の話ばっかりしてないで。
私に会えなくて寂しかったとか、
お腹の子が心配だったとか、
戻ってから一言も言ってないじゃない。
「気にしてんの?」
「。。。。」
彼がため息をつく。
「君は日本人だからわからないかもしれないけど、
僕にはこんな風に写真を撮るのは普通だよ。」
「後ろから抱きしめて、顔もべったり寄せ合うのが普通?」
「ただの写真だろ」
“こういう時に人種の違いを持ち出さないで。
誠実な人なら黒人だって白人だって
こんな事しないはずよ。”
と言いたい気持ちを抑えていた。
「年が明けたらまたツアーがあるみたいなんだ。
今度は多分ヨーロッパだよ。」
「。。。。。」
良かったね、って言ってあげるべき?
言えないのは駄目な女?
彼が私を抱きしめて言った。
「I will miss you」
それだけで、涙が出そうになった。

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