来週から中央内視鏡部に配属が決まり、今日はその研修。朝から高価なカメラを何台も、特殊な眼鏡とエプロンを着けた姿で、せっせと洗浄させていただきました。
お昼近くになり、同僚の方とそろそろ休憩の順番を相談していた頃、僕は突然、派遣会社の偉い人に呼び出されました。
何事かと緊張しながら廊下に出てみると、意外な話が突然飛び出しました。
「先日、病棟のほうで患者さんのお名前を2回間違われましたね?…体調を崩して休んだあと、しっかり休まず出てくださってるのは有り難いのですが…私たち派遣会社の立場としては、二度あることは必ず三度あると判断して、もうかばいきれなくなってしまいました。病院の仕事に対して、適性がないと言わざるを得ません…。」
…予期せぬ展開に、固まってしまったまさぼー。
「体調を整えながら、これからは一日も休まずに勤めあげよう。そして近いうちに5日間のフルシフトで出れるようにしようと思う。心配だろうし、僕も不安だよ。だけど、体調を言い訳にはしたくないんだ。」
そう昨夜ざわりんに胸の内を話した矢先の、あまりにも唐突な、終戦宣言でした。。
「あとは、今月いっぱい頑張っていただくか、今日や明日にも退社されるか…それはご本人の判断でお願いします。」
しばらく時間をいただいて考えさせていただいた僕の決断は、「今日で辞めさせていただきます。」でした。。
荷物をまとめ、着替えを済ませると、ロッカールームの入り口で、直接の上司にあたるOさんが声をかけてくださりました。
「本当に申し訳ないんやけど…会社の判断としては覆らないみたい…。でも、師長さんや患者さんは…優しくて、とてもとても良い人だと誉めてくれてた…。だけど…病院の仕事は、こういう仕事やから、優しくて良い人だけでは勤まらないの…。ごめんなさいね。わかってね…。ごめんね…。」
「いえ…こちらこそ、お力になれず申し訳ありませんでした。ありがとうございます…。僕は…病院の仕事が大好きでした…。好きだから…辞めなければいけないことがわかっていて、今月いっぱい何食わぬ顔で頑張るということは、僕にはできません…。残念です。とにかく、残念で仕方ありません…。今は本当に、申し訳ない気持ちでいっぱいです…。」
危うく涙がこぼれそうになりながら、そう絞り出した僕の目を真っ直ぐ見つめるOさんの目にも、うっすらと涙が浮かび上がりました。
「お家のことも、いろいろ大変なんやろ?」「はい…。正直言って、大変です…。」
「頑張って。」「はい…。」
「頑張ってね…本当に!」「はい…頑張ります!!」
最後は、両手でしっかり握手。そんな僕の「終戦記念日」。。
思えば、いろいろなことがありました。けっきょく僕は、やはり「アスぺルガー症候群」(高機能自閉症)なのでしょう。精一杯、必死で頑張ってきたけれど…たぶん、どこかがズレていた。努力が、カラカラと音を立てて、空回ります。。
だけど、それでも容赦なく、明日はやって来ます。空回る脳と重い体を抱えて、それでも生きなきゃいけない。自分のため、妻ざわりんのため、そして家族のために…生き抜かなくちゃいけないのです!
体や心の病気を言い訳には、できません。そんな余裕や暇はないのです。病院の仕事が「できない」ことがわかれば、「できる」ことを探すのみ。できることをできる範囲で、精一杯頑張る!そうやってまた、不器用に歩いていくしか、道はありません。
普段はけっして電車に乗らない、まだ外が明るい時間に、荷物を両手に抱えて駅へとたどり着いた僕は、病院のほうを振り返ると、静かに一礼しました。
「ありがとう。たくさん勉強させていただきました。本当に本当に、ありがとう。。」
電車に乗り、帰宅する途中、公園に立ち寄りました。見上げれば、抜けるような青空。
そう…僕のスタートは、いつだって、公園の緑の中、しみるような青空を見上げながら、でした。。
岩手のナゴちゃんから、優しい激励のメールをいただきました。
「胸が痛いよ…。だけど、ナゴはいつだって、まさぼーさんを応援してるよ!また充電して頑張ろうね!」
隣町に暮らす僕の妹からも、電話で励ましの言葉をいただきました。
「切ないけど、また頑張ろう、お兄ちゃん!みんなで力を合わせたら、乗り越えていけるよ!今はまず、何も考えずにゆっくり休んでね!お兄ちゃんがどれだけ頑張ったか…あたしには、よくわかっているから!」
捨てる神あれば、拾う神あり。
僕は、我ながら幸せな人間なのだ、こんなに贅沢な人生はないと、心からそう思いました。緑が、目にしみました。。
ふと、隣のベンチに腰掛けた労務者風のオッチャンが、親しげに話しかけてきました。選挙のことや、和歌山の町のことについて、心地よい陽光を浴びながら、30分も話し込みました。
僕は、オッチャンたちにとって、怖くない人物みたいです。いつも行く先々で、何故か、なつかれがちなまさぼー。
人に優しく生きていれば、人に優しくされます。。
師長さんからいただいた、有り難いお言葉。
「優しくて、とてもとても良い人。」
…今は、それだけで充分です。。
終戦記念日は、開戦記念日。また今日から、新しい闘いが始まります。
陰に日向に、応援してくださった皆さん。力が及ばず、申し訳ありませんでした。。
僕は、元気です!!


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