巨額の負債を抱えた英会話学校NOVAが倒産して、ほぼ2ヶ月。約30万人にも及ぶ受講生らに対して授業料が返還されるめどはいまだ立たず、失業した4千人前後の外国人講師たちの一部は、住む場所さえも奪われてしまった。
あまりの生活苦から失意のまま帰国した人もいたが、日本にとどまって新たな職探しに懸命に走り回っている人もいる。朝日新聞12/25夕刊によると「彼らに日本を嫌いになって欲しくない」と講師たちの生活を支えようとする健気な生徒たちもいるという。
ずさんな企業経営による倒産騒ぎに巻き込まれた外国人たち。彼らとその教え子らは、人種や肌の色の違いを超えて互いに心を通わせながら、厳しい年の瀬を共に乗り切ろうと頑張っている。
僕は高校三年生の時に、2〜3ヶ月間アメリカに留学した経験がある。
ニューヨーク州のアデルファイ大学に1ヶ月。そして残りの期間は、ワシントン郊外の小さな町でホームステイ。迎えてくれたのは、ギリシャ系のとても仲の良いご夫婦だった。
アメリカで出会った全ての人々、全ての体験は、その後の僕の価値観を形作る上で大きな影響を与えてくれた。
そこで学んだこと。それは「人は人なのだ」という当たり前のことだった…。
人種も、肌や瞳の色も国籍も、一切関係ない。人間同士は、きちんとお互いの立場を理解して話し合えば、心を通わせ分かり合えるのだということだった。
王室一家の血をひくというハンサムなベルギー人学生と同室に寝泊まりし、ブラジル人にインド人、トルコ人…様々な国からやって来た同世代の学生たちと一緒に楽しく大学で学ぶ中、僕は、はにかみ屋なアイスランド人の女の子と恋をした。
イギリス人アーティストの音楽が響く、真夏の僕の部屋。日本人の僕とアイスランド人の彼女は、互いに訛りのある英語で“I love you.”を伝えあった。白人特有の甘い香りが、僕の鼻をくすぐった…。
今、日本から大事なものがどんどん失われている。そう感じているのは僕だけではないと思う。
人間にとって大事なこと。それは「人は人であるということ」。一人一人が個性の異なる、かけがえのない命だということ。人は道具や駒でもなければ、憎んだり妬んだり蔑んだりする対象でもない。ただ愛すべき存在なのだということ…。
私腹ばかりを肥やそうとする強欲な経営者たち。その心なきずさんさのツケは、いつだって力なき末端へと向かう。
真面目に汗水たらして働く者たちに、幸多かれ!
人が皆、異なる個性を持つのは、足らない部分を互いに補い合うため。罪や苦労を誰かのせいにしたりされたりするために、人は生きているわけではない。
僕たちの店では今日、長年生地の縫い子さんをつとめてくださった方が、良いお客様を連れてきてくださった。
生地の縫製を生業とするその方にとって、僕たちの店が潰れてしまうことは自分も失業することを意味する。だから彼女も必死だし、何よりも長年のつきあいがある親しみある店だ。母が入院し僕が店を継ぐことになった今、店が再び元気を取り戻すために、彼女もまた精一杯の心配りをしてくださっている。
お爺ちゃんお婆ちゃんの代から数えれば、実に49年もの長い歴史を持つ我が店。
埃をかぶった古いレジが故障して業者を呼んだところ修理代に3万円以上かかるとのことだったので、渋る父を説得して思い切って新しいレジを購入した。分割にすれば頭金が1万円、後は月々6千円ずつの支払いになるので、後々また故障して頻繁に修理に出すよりは、そのほうが得だからだ。新しいレジの打ち方と管理は、僕がその場で覚えて父に教えてあげた。
長年頑張れば、人間だってレジだって疲れてくる。レジは疲れてしまったら取り替えがきくが、人間は取り替えがきかない。だから、みんなで支えるのだ…。
僕と父が店に出て妻が外へパートに出ている間、15年一緒に住んでいる猫が、誰もいない母のベッドにずっと寝ていた。およそ2歳児の知能があるという猫は、人が一人いないということの意味を、ちゃんと理解しているのだ…。
猫でもわかることが人間にわからなければ、お天道様に笑われるだろう。
原点に立ち返ろう。
人間として生きるために…。
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