◆銀座通り
ソープ街の裏手・大門川に架る雑賀橋を渡り“中ぶらくり丁”に入ってすぐ左にある、味のある通り。
狭い道幅と微妙な寂れ具合。それらと『銀座』という派手なネーミングのコントラストが、何とも郷愁を誘います。
この界隈は、かつて映画館が立ち並び、たいそう賑わったものでした。国際劇場、帝国座、築映ピカデリー…。
おませな映画少年だった小学生まさぼーちゃんは、鞄に前売りチケットと録音用のテレコをつめ込んで、洋画のロードショーに駆けつけたものでした。
家では勉強勉強、学校ではストレスからくる顔面神経痛を理由にイジメられ、逃げ場をなくしていた僕の心が唯一羽ばたける場所。それが映画館でした。
英語の台詞にカッコイイ俳優さん。BGMに流れるお洒落な洋楽。それが、僕が知った最初の自由でした。
日本全国に『銀座通り』と名のつく通りは、いったいいくつあるのでしょうか?…
人々の夢が、まだ真っ直ぐだった時代のロマン。
今は、その残骸だけが、僕に語りかけてきます。
「ボクを、忘れないでね」と…。


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