皆さんはプロレスに
「5カウント以内なら反則が認められる」
というルールがあるのをご存知でしょうか?
新日本プロレス最強の男を決める夏の祭典G1クライマックス。2005年の決勝のリングに、雌雄を決するべく二人の男があがりました。
ひとりは、破竹の7連勝でリーグ戦を圧倒的強さで勝ちあがってきた“リアル・ビースト”藤田和之。
あのボブ・サップを戦意喪失に追い込み、PRIDE世界ヘビー級王者“世界最強の男”エメリヤーエンコ・ヒョードルをKO寸前にまで追い込んだこともある、実力者。まさに日本プロレス界最強の男です。
そして、もうひとりは、“黒いカリスマ”蝶野正洋。
先日40歳の若さで急逝して世間を驚かせた橋本真也選手の親友で、かつて武藤敬司とともに“闘魂三銃士”として90年代のプロレス界を引っ張ってきたスーパースターです。苦しみながらも、一戦一戦をテクニックで勝ちあがってきました。
しかしながら、下馬評では圧倒的に藤田和之有利。この格闘技の怪物を止めることは、いくら蝶野でも荷が重いと思われました。
しかし蝶野はここで、秘策に打って出ました。
なんと自らの入場時に、亡くなった橋本選手のテーマ曲を流したのです。後に、「あれはスタッフが勝手に流しただけだよ!」と嘘ぶいた蝶野選手ですが、策士・蝶野のこと、その言葉を額面通りに受けとるわけにはいきません。
これで超満員の観客のほとんどを味方につけ、会場は既に「蝶野頑張れ!橋本のぶんまで闘え!」というムードで、“出来上がって”しまいました。
対戦相手の藤田選手には気の毒な話ですが、いくら格闘技が強くても、ここはプロレスのリング。プロレスのマット上では、所詮は役者が違ったと言わざるを得ません。
こうして観客をすっかり味方につけた蝶野。ゴングが鳴るや、委細構わず襲いかかり秒殺を狙ってきた藤田の猛攻を耐え抜いた蝶野が、自らの黒いタイツを引き裂くと、その膝には凶器用の特製のニーブレスが!
いわば“鋼鉄の膝”です!
PRIDEやK‐1では考えられない異常な事態!もちろんレッキとした“反則”です。
しかし館内は拍手喝采!!「蝶野」コールの大合唱!!!
そして、その膝でガンガンと藤田に膝蹴りを入れる蝶野!超満員の観客はもう大熱狂です。
試合はけっきょく、闘魂三銃士の盟友橋本選手の必殺技DDT、そして武藤選手の必殺技シャイニング・ウィザードを次々に決めた蝶野が、最後は自らの必殺技シャイニング・ヤクザ・キックで藤田から3カウント!終わってみれば蝶野の完勝でした…。
「5カウント以内なら反則もアリ」…
プロレスのみならず人生には、こんな判断を問われる局面が、たびたび登場します。
人生は、高いハードルと低いハードルの繰り返しで成り立っています。
まさぼーは昨日、大阪の街で、彼女からの相談を受けていました。
まさぼーの彼女いわく「私は、あなたにもあなたの奥さんにも、迷惑をかけている」と言うのです。
僕は言いました。「迷惑をかけられているのではない。パワーをもらっているのだ」と。
立場や肩書きで判断するから辛くなる。まずは星の数ほど存在する人間の中から、こうして「出会えたこと」に感謝し、わかりもしない先のことや世間の目などを気にすることなく、「自分らしく生きる」。
自分らしくのびのびと生き、自分を愛することから、はじめよう。…そんなことを話しました。
たとえ来世というものが存在するとしても、“今いる自分”としての人生は一度きり。
…ならば、自由に制限なく、やりたいように生きなければ、後悔します。
やらないで後悔するくらいなら、やって後悔したい…
人間は精密機械ではないのだから、失敗したっていいんです!失敗したらしたで、失敗からまた、学べばいいのだから。
その意味において、僕たちの人生には「損をするということ」はありません。全ては、学びです。
困った時、追いつめられた時には、5カウント以内で反則もOK!
…そう考えると、きっと気持ちが楽になります。
そして、たまには“鋼鉄の膝”をガンガン入れちゃっても構わないんです!(笑)
蝶野正洋は、親友・橋本真也と、彼の死を悼む観客のために、敢えて反則を犯しました。
いわば大義名分のある反則。皆をハッピーにするための「ポジティブな反則」です。
人生においても同じこと。こんな反則ならば、全然OKなのではないでしょうか?(笑)
立派な綺麗事を言うような人に限って、他人を不幸にします。
人生は綺麗なだけでは、生きてゆけません。
たまには覚悟を決めて、悪党レスラーのように…
昔、映画のキャッチコピーにこんなのがありました。
「男は強くなければ、生きていけない。優しくなければ、生きていく資格がない」
見事にG1クライマックスを制覇した蝶野正洋は、リング上でマイクを握ると、総立ちとなったファンに向けて、こう語りかけました。
「俺は、プロレスラーを21年やってきて、プロレスからたくさんのことを学びました。ライバル、闘うこと、そこからお互いを理解すること…俺は、プロレスに感謝したいです。プロレス、ありがとう!」


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