もぉ…だめかもしんない…。


女性が男性よりも方向音痴の人が多いのは、空間を把握する能力が女性脳より男性脳の方が発達しているからだと言われる。

だがしかし、オレは男性の中からしてみれば方向音痴の部類に入ると思う。

たとえそこに地図があったとしても、目印のコンビ二が無くなっていたりすると途端にパニックに陥るし、名古屋、大阪等、飽きる程仕事で訪れているにも関わらず、未だに高速インターから中心街迄の道のりを全く把握していないし、大阪駅と梅田駅が同じ場所にあるというのを知ったのは、つい半年前の事である。ちなみに長塚京三と蟹江敬三をナゼか同一人物であるとつい半年前まで思い込んでいた。まあ、これは全くの余談であるが。



「お客さんー、終点ですよ、お客さんー、起きてください」

ハッ…！寝過ごした！車掌さんから肩を揺り動かされ目を覚ましたオレは、焦って車外へと飛び出し辺りを見回した。人影もまばらな閑散とした駅のホーム。アチャー…またやっちまった…。駅のベンチに腰掛け深いため息をついた後、事態を把握するべく頭の中でビデオテープをリプレイする。

さっきまで友人と飲んでいた、それは分かっている。オレはよく終電を逃したり寝過ごしたりするので、今日は比較的家から近い渋谷を選んだわけだし、特に気をつけて飲んでいたハズだ。友人と別れ、家路を目指した時はまだまだ時間的にも酒の許容量にも余裕があった。それなのに、それなのに…。


何故オレは家とは全く真逆の終着駅にいるんだ？？


ｳｱｧｧｧｧ(;ﾟ;Д;ﾟ;)ｧｧｱｧｱｱｱ!!!!!!

ボクはドコ？ココはダレ？ありえへん、ありえへんがな！！まだ分かるー！家の方向に向かう電車の中で寝過ごしたならまだ分かるぅ！ケド、反対方向って！上京して14年、渋谷駅何年使ってるの！オレってばヨ！

もぉー、バカ！バカっ！こんなドジでメガネっ子のオレってバカっ！ついでにヤンデレ要素も含めて、絶望の余り「ボク、お星様になっちゃうんだからねっ！」ってホームから身を投げてやるんだからっ、えいっ！ﾋﾟﾖｰﾝ！


…ｼｰﾝ


「お客さんー、そんな事してももう電車来ませんよー…」


ｱ…、ﾊ、ﾊｲ、ｽｲﾏｾﾝ……。


ウエエエーン｡･ﾟ･(ﾉД｀)･ﾟ･｡ﾊﾞｶ！ﾊﾞｶｧ！