オレは思い出を捨てられない男だ。
過去にしがみついて離れられないワケじゃない。
ほんの少しだけ、その時々の自分を懐古するキーワードをひとつまみ、プラスティックやダンボールの箱の中に詰めておいて、アーカイブとして記録しているだけだ。
だから、どちらかと言うと、ごくごくアカデミックな、客観的な作業だといえるだろう。
その思い出ボックスの中には様々なものが雑多に入っていて、己の信じるジャスティスを詩的に書き綴った黒歴史ノートや、バイトで配っていたティッシュ、タバコの吸い殻や好きだった女の子からもらった絆創膏、ライブのチケットなどなど、人は皆、忘れてしまう青春の後ろ姿が所狭しと敷き詰められている。
「裏★思い出ボックス」
そう……、オレの実家には、かつてそう呼ばれたパンドラの箱があった……。
ま、なんのこっちゃない、小学校の頃に習っていた剣道の防具袋の中に、単にエロ本を隠し持っていただけである。つーか、ボックスじゃねえし。袋だし。
一応断っておくけど、ごくごくアカデミックな観点だからねっ!!
全然隠してないから!たまたまそこに剣道の防具袋があったから、そこに入れてただけだから!
この事に関しては多くは語るまい。メッチャ語れるけど。だってドン引きされるから。
しかぁし!今やその全てが廃刊となり、まさに言葉の通り、時の世の風俗が一目瞭然と分かる、貴重な歴史資料であった事に変わりはない。
エロ本業界伝説のハガキ絵師、三峰徹氏の初期活動作品もその中にはあったハズ。なんという惜しい事を……。
ある時、久しぶりに帰郷したオレは、ベッドの縁につま先立ちでふるふると押入れの奥を物色してその異変に気づく。裏★思い出ボックスがない。
バ・レ・て・るー!!キャー!
いや、バレてるとかじゃないから!久しぶりに歴史の勉強しようかなと思っただけだから!オレ、結構、戦国時代とか好きだし!だから剣道してたし!
しかし……、何故、無いんだ……!
振り向くと、そこにはオレが使っていた防具袋を竹刀に引っ掛けて元気に道場に通う甥っ子の姿があった。ちくしょう!
ちなみにこの事が家族の間で話題に登った事は一度もない。
オレの思い出は、母と姉の手によってこの世から抹消させられたのである。
その徹底さには、不気味ささえ感じる。
つか、その時点でオレはもう30歳を超えてたような……。
今日、なんとなく久しぶりに納戸の中から「思い出☆衣装ボックス」なるものの中を物色していると、こういうものが出てきた。
ババーン!
これ、デビューした時に、ファンの子達からもらったの。
自作のI scream Happy のTシャツ。
貰った時に、これはボックス行きだなと思ったので、封も開けずにしまっておいた。
裏にはこれを作ってくれた仲良し5人組?ファンの子達のプリクラが貼ってある。
若っけ〜、というか、この中の子達も何人か結婚したとかいう報告をもらった事があるような。
実はこの封を開けていないビニールの中に、これまた封を開けてない当時のファンレターが入ってる。ごめんね、読んでなくて。
でも、これは、開けないで保存!と思ったのを憶えている。
読もうかな……と思ったけど今回もやめた。
当時のオレ達やファンの方々がまだ、そこにはその当時のままいるような気がする。
開けてしまえば、彼らの世界を壊してしまうような気がする。
今はまだ、封を開けるのはやめておこう。今はまだ、そうする時じゃない。
だから
オレは人の思い出を勝手に捨てたりしねえっちゅーの!返せー!オレの裏★思い出ボックスをー!チクチョー!( ´Д`)
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