さてと。
家を出てすぐの横断歩道を渡ったくらいでふと知らない初老の爺さんに声をかけられた。
といっても50代か60代か、初老といっていいものかよく分からないが、身なりはそれなりにきちんとしていて歩く姿勢も力強くしっかりとしていたのは憶えている。そのオッサンじじいはオレを呼び止めて何やら訴えかけるのだが、その内容が意味不明で3回も「は?」と言って聞き返してしまった。
要約すると、オッサンは何らかの理由で厚木まで帰る方法を無くしてしまい、電車で帰ろうと思うのだが、帰るお金がない。生田まで歩けば小田急が出ていてそこからなら厚木まで330円でいけるので、絶対返すから300円貸してくれないか、というものだった。
困っている所大変申し訳ないのだが、正直な所、オレはその話を理解した瞬間、反射的に煮えたぎる憤りと嫌悪感が腹の底から湧き上がってきた。
別にオッサンがどうこうという事じゃない。
オレだ。
こんな境遇に見舞われるオレに対してだ、このムカつきは。
どうしてオレの周りはこんな事ばっかりなんだ。もうウンザリだ。
オレだって最近参ってるっていうのに、こんなクソみたいなレアイベントに何のフラグが立ってるっていうんだ?オッサンもしかして神様か?新世界ルートか?ノアの箱舟の乗員としてオレが相応しいか否かを試しにきてるのか?
オレはオッサンに300円貸した、とも思ってないし、やった、とも思ってない。代わりにオレはオッサンに願をかける事にした。
どのみち無碍に断れば罪悪感が残る。住所とか電話番号とか聞いた所で返してくれなかったら追い込みでもかけるのか?たったの300円で?バカバカしい。それにあいにく交番はオレが進む方向と逆で連れて行く程暇じゃねえ。オレにとっちゃどっちに転んでも良い方にはならない。
結局、オレはこっちの電話番号だけ教えた。残念な事に向こうから素性を語ってくれる事は無かったし聞いてどうなる事もないので聞かなかった。別に返してもらうつもりなんてないし。ただ、オレの携帯にオッサンから電話があればそれでこの願掛けは勝ちだ。
そうすればここのところの不遇が全てが救われる気がする。それだけで充分だ、否、それ以上だ。オレにとっては。
だからしばらくメロスを待つ事にする。
バカだと思うかね?
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