朝起きるとメガネが死んでいた。
ベッドの端に転がった無残な変死体。
何者かの悪意と策略と強大な暴力によって通常では考えられないあらぬ方向へと折れ曲がったヒンジ部分。朝靄に隠された冷酷な完全犯罪。
この密閉されたたった6畳のベッドルームにまだ微かに漂う、犯人が残した憎悪の残り香をオレは少しも逃さずに嗅ぎ取り、推理する。
この複雑に絡み合うトリックを考え出した狡猾で残忍な犯罪者よ、オレは決してお前を許さない!必ず、必ず捕まえてやる!そう、ジッチャンの名に懸けて!
犯人はお前ダァ!!
ビシィーッ!!と突き出した俺の人差し指の先に居た人物は!
オレやんけ!
ごめんなさい!犯人は私なの!船越栄一郎に追い詰められ岸壁の縁にうずくまり犯罪に至るまでの経緯を吐露する火曜サスペンス劇場ちっくなオレ。よう考えたらノートPCをお腹に乗せてラッコのポーズでネットをカタカタそのまま寝てしまったのよね。
その時掛けていたメガネが寝返りでずれて頭で押しつぶしたり手で払ったりと散々痛めつけた挙句の結果なのよねこれ。
ハァー。まいった。
しかぁしっ!
メガネが無いとオレは非常にコマッてしまうので押入れの中からエフェクターとかシールドとかの簡単な処置用に持ってる半田ごてセットを取り出し、接着!
治ったっ!
ついでに回路の事なんか分かりもしないが壊れたままになっているMP3プレーヤーも分解。適当に半田着け。
治ったっ!!!マジデ-!
何でもやってみるもんである。
と、ここで少年時代に見たテレビ番組を思い出す。
確かびっくり人間大集合!的な番組で中国雑技団の少年少女達が繰り出すスゴ技の数々にスタジオは感嘆の嵐。スゴイ!と出演者達が彼らを褒め称えているところでガッツ石松は意見を求められこう言った。
「人間やれば何でもできる。テレビを見ている皆も彼らのように頑張れば何でも出来るようになれる。そう彼らは証明してくれた!」
語気を荒げるガッツのマイクをはぎ取り、アナウンサーはこう言った。
「よいこの皆は危ないから絶対真似しないように!」
ごもっとも。
さてさて、真実とはいかに。明日はどっちだ!

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