押しては引く、引いては押すのネコ達の気まぐれなさざなみ作戦に心を焦がす俺。
朝っぱらからカメラを片手にネコを捜し歩くその後ろ姿は、彼女から三行半をつきつけられた情けない男のそれのようでとても悲しい気分になったので
「こんなんやってられるかっ!」
と、カメラを投げ捨て、我らが聖地・アキハバラへと液晶モニターを買いに行った。
大通りからちょっと裏に入った路地にあるモニター屋さんで手ごろな値段のモニターを見つけたのでカウンターに向かって、これくださーい、と頼んだところ
「ハイハイ、ダンナ、分かったアルヨー」と奥からまるでクンフー映画でよく見かける毎回必ずジャッキー達の乱闘で破壊される飲食店の店主のような腰のひくーいキャラ立ちまくりの中国人のオヤジが出てきた。
「サスガー!ダンナ、お目が高いアルネ、このモニター安いアルネ・・」
・・・あまりの濃いキャラの為に絶句。一抹の不安を感じてしまう俺。
しかし、そんな俺の顔色など全く気にせずどんどんマシンガントークで他の商品も進めていくオヤジ。いたって低姿勢、デニムのエプロン、黒ぶちメガネ、片手には電卓。なんつーコテコテキャラなのよ・・。
・・・・・しまった!!
片手に電卓である。このキャラにこのいでたちは予定調和である。投げかけられたわかり易いメッセージである。
俺がオヤジの発言の中で「アルヨ」という言葉を使って書いているのと同じである。実際はそんな事は言ってないのだけれど、この中国人のオッサンの濃いキャラを伝えやすくするために使っているお約束なのである。俺は気づくのが遅かった。俺のバカ!バカ!オヤジは待っているんだ!
「ダンナ、モニターにつけるこのスクリーン、イイアルネ、これつけると疲れないネ、アアー、よく見えるネー・・」(ホント、こんな感じ)
奴は待っているぞ、さあ!俺が言うべきことはひとつじゃないか!
「うーん・・じゃあ、ケーブルも買うからこれおまけにつけてよー」
「アイヤー!ダンナ、それひどいネ!後生アル!商売ならないネー!わかった、つけるアル!このケーブルはいいアルネー・・・(さっさと次の商品説明)」
マジか?オッサン。あまりにもあっさりおまけしてくれた。
やっぱりこのオッサンはこのコントがしたかったようだ。根っからのジャッキー映画通である。
なんか絵に描いたようなやり取りでとても楽しかった。
もっと早く気づいてたらモニターもまけてくれただろうになぁー。
しかし、アキバはキャラが立ちまくってる奴が多くて他にも色んな人が居た。楽しかった。

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