ともだちは海のにおい (きみとぼくの本)

「海のはじまり」
ひとはみな
心のなかに
海をひとつ もっている
・・・・・・・・・・・
ひとの心のなかに
いつ 海はうまれたか
・・・・・・・・・・・
ひとはみな
はじめてまるい口をあけて泣いた
あのときの涙の粒が
海の はじまり
・・・・・・・・・・・
という一篇の詩から始まる。寺山修司の一番みじかい叙情詩『海』の
“なみだは にんげんのつくることのできる いちばん小さな海です”
を、ふと思い出させる情緒あふれるスタートだ。
いるか「さびしいくらいしずかだと、コドクがすきなぼくでも、だれかとお茶を飲みたくなる。」
くじら「さびしいくらいしずかだと、コドクがすきなぼくでも、だれかとビールを飲みたくなる。」
「コドク」を愛するくじらと「コドク」を愛するいるかが、「いっしょ」もわるくないなと織りなす友情物語である。
児童書に分類される本ですが、大人の少しささくれ立った心を優しく癒してくれる本だと思います。大人になった今だからこそ、散りばめられたくじらといるかの珠玉の言葉が快く響いてくる。
ビールと読書の好きなくじらと本の話を肴に乾杯し、お茶と体操が好きないるかとスポーツ観戦しながらワイワイと過ごしてみたくなる。そんな一冊です。う〜ん、久々にアイツに会いたくなった...。
終わりの「おわりのない海」という一篇の詩も実に良い。
・・・・・・・・・・・
ひとは ふところの
そんな海を のぞきこむと
なぜか ほっとする
なぜか ほっとして 思う
《また あした》

0