小さな理由

家族をテーマにした森浩美氏の第3弾の本書には「いちばん新しい思い出」「夜の鯉のぼり」「皿を洗う父」「手のひらが覚えてる」「黒たまご」「玄関先の犬」「渡り廊下の向こう」「桜散らず」の8編の短篇が収められています。 どの編も何処かの家族に起こりうる、あるいはすでに自分が近い経験をしたというような日常のひとこま。
作者のあとがきに「四十にして惑わずというけれど、現実には四十過ぎからの人生の方が辛い。悩みは増えるばかりだ。.....やっかいな出来事が次々に降りかかる中で、小さな幸せを見いだせるバランス感覚を持つことが大人ということかもしれない。」とある。人生平坦ではないその歩みの中で、ほんの小さな喜びや幸せを見出すことができるなら救われる。ほんと頭を抱え込む程に色々なことがあるけれど、家族って、子どもって,親ってありがたいよなぁと思わせてくれる作品でした。
皆、ほんの少し不器用で、ほんの少し臆病で、でも、案外しぶとくてちゃんと厳しさに順応しようと頑張る。そんな「大人」たちを愛おしく感じる。

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