調べ事をしていたら、偶然たどり着いたブログがありました。作曲家の方で、アレンジャー(編曲家)の待遇について書いておられます(
こちら)。
僕も現在、アレンジの仕事をメインのような感じでしているのですけど、このように書いていただけると、ちゃんと理解して下さる方もいるのだなあと安心いたします(おそらく音楽に関わるお仕事の方なら皆さん理解して下さっているはずだと信じておりますが)。
僕の場合は、中学生の頃からアレンジに興味を持ちまして、当時から様々な楽器を1人で多重録音して作曲やアレンジを楽しんでいたのですけど、それが結果的にはとても勉強になったのだと思います。
中学の頃は、どんな楽器がどんな音色でどんな奏法でどんな演奏をするのかが知りたくて、月に2〜3回ぐらいはクラシックのコンサートに足を運び、各楽器の名前や音色や奏法を憶えていったのですけど、それは本当に勉強になりました。それから元々楽器が好きですので、ギター類やピアノやドラム以外の、ヴァイオリンや三味線やマンドリンやサックスやバンジョーや民族楽器やパーカッションなども手に入れまして、音が出せる程度には練習したのも身になったのだと思います。
あと、僕の父親が、世界中のあらゆる音楽を聴きまくる人でしたので、家にはおそらく全てのジャンルを網羅した膨大なレコードやCDやカセット類があり、それを拝借し、ラテンやボサノヴァやハードロックやレゲエやクラシックやシャンソンやジャズやブルースやオールディーズや民謡など、ジャンルを問わずに聴いていたのも良かったのだと思います。
少年時代に父から「どんな音楽でも偏見なく聴いた方が面白いぞ」と言われましたが、今でも僕はその教えを忠実に守っております。
アレンジャーのお話に戻りますが、拝見したブログの通り、アレンジの仕事は買取りがほとんどで、基本的には印税が発生いたしませんので、手掛けた曲がどんなに大ヒットしようとも、アレンジャーの報酬は売れた枚数とは無関係です(その事を疑問に思うアレンジャーの方々が待遇を改善しようと、日本の音楽界を代表する方々が運動をしておられます)。
テレビの音楽番組を見ていても、歌のタイトルの下に、作詞や作曲をした人の名前は出ても、編曲者の名前が出る事はほとんどありません。
でも、例えば「イントロクイズ」というのがありますが、たったあれだけの、ほんの一瞬で曲名がわかるように仕事をしている人はアレンジャーなわけです。
一般的にアレンジャーには印税が入りませんので、例えば携帯電話でダウンロードした着メロが、イントロだけだった場合、イントロを作曲したアレンジャーには一銭も入らず、その印税は歌のメロディーを作った作曲家に入ってしまうというおかしな事も起こります。
しかしそのような事を差し引いても、楽曲のアレンジというのはやり甲斐のある仕事でして、メロディーを活かしつつ、音色や楽器の組み合わせやアンサンブルやコード進行やフレーズなどで、時には細かく控えめに、時には大胆に音楽的な試みができる場でもあります。
また、アレンジャーが仕掛けたそういう面白い試みを見つけるのも、音楽の楽しみ方のひとつです。
手掛けた編曲の数が約1万曲という、日本のアレンジャーを代表する1人である宮川泰さんは、著書で「音楽界のレベルを底上げし、リスナーの耳を育てるのも音楽家の仕事である」という事を書いていて、なるほどなあと思いました。
何よりも、曲の歌詞やメロディーと共に、アレンジも人々の心に深く残ります。歌詞とメロディーと編曲が一体化した時に名曲は生まれます。ビートルズの「イエスタデイ」も、クレイジーキャッツの「ハイそれまでョ」も、こうして生まれたのです(もちろん歌手や演奏者も同じように大切です。念のため)。
言ってみれば、縁の下の力持ち、という言葉が似合う職業なのかもしれません。
そういえば、何年か前に、とあるプロのグループのリーダーをしていた知り合いから「新しいバンドを作りたいから、スタッフとして手伝ってほしい」と頼まれまして、僕と、某レコード会社のプロデューサーをしていた人と、プロのアレンジャーの方と3人で参加し、僕は足りないメンバーを集めて紹介したりしたのですけど、アレンジャーの方はスタジオにいる時もずっと譜面を書いておられ、その譜面が完成して音を出してみると、もうブッ飛ぶほど緻密で見事なアレンジで、非常に勉強になりました。
最後に、僕のようにフリーでアレンジャーをしている人は、世界中に星の数ほどいるのですけど、意外に横のつながりが出来にくいなあと思います。演奏家は色々な人とプレイするので横のつながりが出来やすいのですけど、そこが少々寂しいです。
【オマケ】
僕の得意分野である、音頭やコミックソングをもっと作りたいのですけど、仕事ありませんかねえ?作曲も含めて、喜んで引き受けさせていただくのですけどね。