この間、某所で仲本工事さんのライヴがあるというので、見に行ってみました。ライヴと言っても、どこかのお店やホールではなく、町内会のお祭りのゲストとしての出演で、無料で誰でも見られるという事でした。
駅を降りると、すでに始まっているようで「上を向いて歩こう」の歌声とギターの音が聴こえてきました。駅の出口のすぐそばに、手作りのステージが作られており、そこで仲本工事さんが歌っていました。エレクトリック・ギター1本による弾き語りです。ステージの看板も手作りで、すぐ隣りでは町内会らしきテントで焼き鳥なども売っています。ステージ周辺は、もう黒山の人だかりです。
取りあえず、人だかりのしている後ろの方から見る事にしました。観客席は、青いビニールシートで、すでに酔っぱらったオジサンたちがたくさん座っておりました。
人の頭の間からのぞきこむと、仲本さんの持っているギターは、なんとテスコのスペクトラム(TEISCO Spectrum 5。
このギターです。)!
これは日本製のギターで、エドワード・ヴァン・ヘイレンがビデオクリップの中で弾いていたり、電気グルーヴのCDのジャケットにも使われたギターです。仲本さんは歌いながら、最後にウィ〜ンとアームを使ったりしていました。
町内会のお祭りではありますが、PAなどはしっかりしており、ミキサーの人もちゃんと付いておりました。
仲本さんは、観客からリクエストを募ったりしながら、喋って、歌って、笑わせてという、実に見事なエンターテイナーぶりで、観客の皆さんも楽しんでおり、僕も感激いたしました。
観客から、どんなリクエストが来ても応えます。「ミヨちゃん!」というリクエストにも「あれは加トちゃんが歌ってるんだよ!」とツッコミつつ、ワンコーラス歌うのです。
「いい湯だな!」という声には「もうそれは何万回も歌ってるから歌いたくないんだよね」と言って笑いを取り、ギターを弾いて歌います。しかも会場にいた男の子をステージに上げて、振り付けをし、観客にも「ババンババンバンバン」を歌わせ、自分は「アビバノンノン!」と掛け合いを入れます。
8時だョ!全員集合のテーマソングも、観客に「ハァ〜ど〜したどした!」「それからどした!」というかけ声をさせます。自然に手拍子も沸き上がります。
「ダイアナ!」と言われれば、ちゃんと英語のオリジナル歌詞で歌います。僕も「ロング・トール・サリー!」とリクエストしたかったのですけど、後ろの方では聞こえないだろうなあと思いとどまりました(ビートルズの来日公演の時、仲本さんは武道館で「ロング・トール・サリー」をドリフターズのリード・ヴォーカリストとして歌っていたのです)。
しばらくギターの弾き語りとお喋りのステージがあり、その後、新曲が出たというので、デュエットの相手で弟子である女性演歌歌手と2人で歌を披露し、その後は弟子に任せて一旦引っ込みまして、数曲の歌の後、再び登場し、2人でステージを進行しました。
感心したのは、この女性歌手も酔っぱらったお爺さんに失礼な事を言われても、サラリと見事に喋りのネタに昇華して笑いを取りつつ、皆に楽しんでもらおうと熱の入ったステージを努めていた事です。
その後、2人でのステージも、決して歌が上手いとは言えない町内の人たちをステージに上げて「銀座の恋の物語」をデュエットし、観客が若干辛い時間を過ごしていると感じるとそのフォローも忘れず、ものすごい音痴の人がステージに上がっても場の雰囲気を壊さぬようツッコミを入れ、ステージの最中にサインを求めてきた人たちに対しても「こんな時にサインさせるなよ」と笑顔で言いながらサインをし、サラッとかわして進行するという、実に立派で堂々としたステージを見せてくれました。
雰囲気を壊してしまいそうになる人が次々と現れるのに、すぐに機転を利かせてグイッと元に戻してしまう手腕は本当に見事でした。長い芸歴で身につける事ができた優れた感覚なのでしょう。とにかく、人を楽しませようという意識の高さが素晴らしいです。
屋外で、小さな駅前の手作りステージで、後ろではしょっちゅう電車が走り、すぐ隣りの焼き鳥などのテントでは大声で呼び込みをしているという、非常に雑然とした場所で、10分や20分ではなく、これを1時間続けたのですから、やはりプロというのはスゴイのです。
他にも、ステージを降りて二手に分かれ、完璧にハモリながら握手をしてまわったり、「次の曲は僕がアレンジしました」という曲を聴かせてくれたりと、見応えのあるショーでした。贅沢を言えば、もっとギターの弾き語りを聴きたかったとも思いますが。
そういえば、バンド仲間のヨッシー(この前ライヴを見に行ったミッチーのお兄さん)は、仲本工事さんのライヴを見に行ったら、突然ステージの上から名前を呼ばれ、一緒にデュエットしたそうです。ヨッシーがレギュラーでライヴをしているお店というので、店長さんが驚かせようとこっそり画策したようですが、ドリフが大好きなヨッシーは本当に感激しておりました。いい話です。
というわけで、本日はドリフターズのリード・ギタリストである仲本工事さんのコンサートレビューでした。