
前作「ショッピング」から10年ぶりに発売された「井上陽水奥田民生」のセカンド・アルバムです。「井上陽水奥田民生」というのは、井上陽水さんと奥田民生さんのユニット名です(公式サイトは
こちら)。
10年前もアルバムを買って楽しく聴きましたが、今回のこのアルバムでは画期的な事をしているので取り上げました。
このアルバムには、作詞、作曲、編曲のクレジットが全くないのです。どこにも書いてありません。これには驚きました。
この2名はそれぞれ作詞も作曲もしますし、ユニットでは曲によってお互いに曲を作ったり詞を作ったりし合っています。普通、作家というのは、自分が手がけた仕事のクレジットを載せたがるものです。「この詞は俺が作った」「この曲は俺が作った」というのを曲ごとに明確にしたいものですし、聴く方も知りたいと思います。
しかしこのアルバムには、そのクレジットが全くありません。もちろん意識的にそうしたのです。これはお互いに信頼関係や尊敬の念がなければなかなかできる事ではありません。僕はもうこれだけで非常に感激しました。
おそらく、どちらが作ったという先入観なしでリスナーに作品を聴いてほしいという意識が高いのでしょう。この2人のファン層というのは世代的にもあまり重なっているとは思えませんので、偏った聴き方をされないためにも有効な方法です。ジャケットやブックレットにあるパラボラアンテナや虹や飛行船などが同じ大きさで2つずつ並んでいるのも、2人が対等な関係である事を表現しているのでしょう。
4月1日にWOWOWでこのユニットのコンサートの模様が放映されました。実はここで、どちらが作った曲かというのを多少MCにて話しています。
この放送で、また驚きの事実がありました。なんと、奥田さんが故郷の広島の事を歌った「HIROSHIMA」の作詞が井上さんで、井上さんの故郷の博多の近所の事を歌った「海の中道」が奥田さんの作詞なのです。つまり、相手の故郷の詞を作って交換しているのです。「これは俺の故郷の歌だから俺が作詞する」というんじゃないんですね。実にカッコイイ。
このWOWOWで放映されたコンサートは本当に面白く、僕は何度も繰り返して見ています。「お互いに共通項がないと思ったら、ひとつだけありました。2人ともビートルズが好きなんです」という事で、ビートルズの「アイル・ビー・バック」とミラクルズの「ユー・リアリー・ゴッタ・ホールド・オン・ミー」のビートルズ・ヴァージョンも演奏しています。
奥田さんはこの時にリッケンバッカー325(ビートルズの初期にジョン・レノンが愛用していたギターです)を弾いています。ドラムの沼澤尚さんもジョン・レノンの「HOME」と書かれたシャツを着ています。ビートルズ・ナンバーが終わるたびに、メンバーがちゃんと「ビートルズのお辞儀」をしているのがエライです。
このコンサートのMCがとても面白くて、観客も、バックで演奏しているメンバー(アルバムと同じく小原礼さん、沼澤尚さん、斉藤有太さん)も、2人のMCを聴いて大爆笑しています。ツアーのライヴもDVDで発売すればいいのになあと思いますが、残念ながら発売予定はないようです。お互いのソロ曲を交換して歌ったりしていたり、リズムボックスに合わせて数曲をメドレーにしていたりと内容も興味深いです。
10年前にシングル発売されてCMソングにもなった「ありがとう」も演奏しています。僕はこの曲が死ぬほど好きでして、こんな簡単な言葉の羅列で、こんなにも明るい曲なのに、なんでこんなに感動するのだろうかと思います(僕は「ありがとう」を聴くと、ビートルズのアルバム「フォー・セール」や「ラバーソウル」を思い出します)。本当に凄い名曲です。
「
ありがとう PV」
10年ぶりのセカンド・アルバム「ダブルドライブ」もiPodに入れて良く聴いています。サード・アルバムもぜひ作ってほしいものですけれど、いつになるでしょうねえ。また10年後だったりして。
関連文章です:
「
KENNYおじさんのロック講座/『開店休業』ユニコーン」
「
すばらしい日々/ユニコーン」
「
G♭がキーの曲」
「
花になる/奥田民生」