
昨日、ブログの最後に少しだけユニコーンの事を書いたのがきっかけで(
こちら)、ちょっとCDを聴きたくなり、曲を聴きながらAmazonを見ていたら1993年に発売された「すばらしい日々」のシングルCDが先月に再発されていたのを知りました(ウィキペディアによる記事は
こちら)。
驚きましたが、ウィキペディアを読んでみたら、どうやらテレビCMで使われているようです。僕は未見ですので全く知りませんでした。というわけで、今日はこの曲について書いてみます。
ユニコーンについては、僕はそんなに熱心なファンではなかったような気がしますが、興味を持ったきっかけは「ペケペケ」という曲が発表された時に偶然テレビでこの曲のビデオクリップを見て「面白いバンドだな」と思ったからでした(それまではありふれたバンドだと思っていました)。
旅館の温泉の湯船の中での演奏シーンや、大宴会場での演奏シーンで浴衣のオジサンおばさん達が曲に合わせてドンチャン騒ぎをしている「ペケペケ」のビデオがあまりにも面白かったので、普段邦楽を聴かないバンド仲間たちにも「あのバンド面白いよ」と話したところ、偶然に見ていたメンバーがいて「そうそう!あれ面白かった!」と言っていました。
熱心なファンではなかったと書きましたが、好きなバンドではありましたので、アルバムやシングルは1つ残らず全部買って聴きましたし、発売されたビデオやレーザーディスクも5本ぐらい買って見たと思います。女の子のファンが多かったバンドなので、どちらかというとアイドル扱いしている本も出していましたが、そういうのも何冊か買って読みました。WOWOWで生中継した沖縄のライヴも見ました(解散する事を隠して行ったライヴでした。この次の日のライヴが最後のステージになりました)。
ヴォーカルだった奥田民生さんが僕と同じく1965年(昭和40年)生まれだったという事でも親近感を持ちました(僕は早生まれなので学年は1つ上ですが)。同年代のバンドが頑張っているというのはやっぱり嬉しいものでした。
この「すばらしい日々」を聴いた時はとにかくビックリしました。衝撃と言った方がいいかもしれません。こんなとんでもない曲を出すなんて、やっぱりこのバンドは凄い、と思ったのです。
イントロの2本のギターの絡みのコードはEだけで、AメロもEとAmの繰り返しが中心で、その時は「ほうほう」と聴いていたのですが、Bmに行く部分から「お?」と思い、それから後はただただ驚いて、呆然とするのみでした。これが20代の若者が書いた歌詞なのか、何なんだこれは、と思いました。そのままこの曲を何十回も繰り返して聴きました。正直に書くと、聴きながらちょっとだけ泣きました。
僕のようにこの曲に特別な思いを持っている人がどのくらいいるんだろうと思い、検索してみると、まあ出てくる出てくる、とてもとても読み切れないほど大勢の人がこの曲について語っています。
読んでみたら、圧倒的に多かったのが「歌詞の意味がよくわからない」という感想でした。この曲の凄い点の1つがこれです。「歌詞の意味がよくわからないけれど、大好きだ」という人が大勢いるのです。それぞれの人が、それぞれの解釈でこの曲を聴いています。
ラヴ・ソングだと思う人もいれば、バンドの解散を匂わすお別れの曲だと解釈する人もいます。脱退したドラマーを思って書いた曲だという人もいれば、奥田民生自身を歌った曲だと解釈する人もいます。
発売から10数年が経ち、社会人になってからこの曲の意味がわかった、と書いている男性もいました。恋人と別れて意味がわかった、と書いている女性もいました。多くの人に愛されている曲で、こんな曲があったでしょうか。
以前にも少し書きましたが、僕は良く意味がわからないけれど大好きな曲というのがあるから音楽は面白いと考えています。「何だか良くわからないけど好きなんだよなあ、なぜだろう?」というのは、音楽の神髄であると思います。モヤモヤとして説明できない「好きだ」という感情や、意味はわからないけれど曲を聴いて感動したり泣いてしまうというのは、実に素晴らしい事です。パッと理解できる明快な曲もあれば、何だか良くわからないけど惹かれる曲というのもあり、そのどちらも音楽が持っている魅力だと思います。
良くわからない話のついでに書きますと、この曲は解散後に発売された18曲入りの「ザ・ベリー・ベスト・オブ・ユニコーン」の最後にも収録されていますが、グラデーションがかかったり文字の大きさが様々なハデな歌詞カードの中で、この曲だけが本人による手書きです。18曲の中でこの曲だけ。そしてこれも手書きの「ユニコーン 奥田」の文字。黒一色。どんな意味があるのか、それともないのか、僕にはわかりません。
それからこの曲の構成も変わっていて、イントロに続き、Aメロとその少しのバリエーションがあり、あとはずっといわゆるサビです。二度とAメロは出てきません。それから間奏らしき8小節はありますが、ギターソロもキーボードソロもなく、ただ淡々とEのコードが7小節続き、歌が入る時にAmが1小節あるだけです。
イントロとエンディングにもソロはなく、リフだけです。イントロも間奏もコードがEの1つのみで歌に入る時にAmが1小節だけでその間はベースも淡々とルートのみを弾いています。もちろん意図的にこんなアレンジにしたのでしょうけれど、いわゆる曲の盛り上がりを最小限にしているようなアレンジです。こんな変わった構成とアレンジのシングル曲も非常に珍しいです。
1箇所、間奏で耳が惹きつけられる部分があります。間奏の4小節目のギターのバッキングの1本だけがAmのコードを弾いているのです。この曲は間奏部分で右チャンネルのバッキング1本、真ん中と左寄りのリフを弾くギター2本の他に、真ん中のチャンネルに隠し味のギターが1本入っています。ほとんど聴き取れないほど小さい音ですが確かにこの部分でコードを弾いている4本目のギターが鳴っています。
その4本目のギターが構成を間違って、本来入るべき8小節目のAmのコードを4小節目に弾いてしまっているのです(ある程度解像度の高いオーディオやヘッドフォンなら聴き取れると思います。2分16秒〜2分18秒の1小節です)。
全体のコードはEですから、Amのコードがぶつかって不協和音になっていますが、これは絶対に意図的にミストーンのまま残したのだと思います(レコーディングスタジオでこの間違った部分を聴き逃すとは考えられません)。ここを不協和音にしたままOKにしたプロデュース感覚は実にスゴイです。間違ったコードが、結果的にちょっとしたアクセントになっているのです。
「すばらしい日々」はその後、矢野顕子さんがカヴァーしました。もちろん僕はそのシングルもアルバム「エレファント・ホテル(こちらは別ヴァージョン収録)」も買いましたが、一番凄かったのはWOWOWか何かでやったライヴを見た時でした。僕はその矢野さんが歌う「すばらしい日々」を見ながら、感動してワンワン号泣してしまったのです。僕は音楽を聴きながらあまり泣いたりしない方ですが、あれはダメでした。
ユニコーンも解散してから13年ですから、10代の子たちには馴染みのないバンドかもしれません。でもまたこうしてテレビから流れたりすると、関心を持つ子が出てくる事でしょう(検索したらもうすでにチラホラいました)。こうして名曲は残って行くのですね。
関連文章です:
「
KENNYおじさんのロック講座/『開店休業』ユニコーン」
「
ダブルドライブ/井上陽水奥田民生」
「
G♭がキーの曲」
「
花になる/奥田民生」