
僕は1970年代の歌謡曲を好んで聴いていますが、当時はテレビの歌謡番組がたくさんあり、ほとんどの曲はテレビだけで歌を聴いていて、レコードを買うのはフィンガー5とブルース・リーのサントラぐらいでした。
高校ぐらいから70年代を中心とした歌謡曲を集めるようになり、改めて当時の歌謡曲を聴いてみると、テレビで見ていた生演奏とはだいぶ印象の違う曲も多くありました。あの頃のテレビ番組では生バンドがバックの演奏をしていたので、微妙にアレンジされていたり、フレーズを奏でる楽器がレコードとは違っていたりしたのです。
ジャズのビッグ・バンドがバックを務める時には、例えばバンドにいないストリングスのフレーズをサックス等で演奏したりするのは当たり前でした。
アレンジの解釈もそのバンド独自でやっていたので、ベースのフレーズから始まるフィンガーファイブ「個人授業」がギターのカッティングのイントロに代わっていたりしました。そんなわけで各パートもバンドのカラーがにじみ出ていました。
で、1973年に発売された野口五郎「君が美しすぎて」のシングルですが、4〜5年前にスタジオ・ヴァージョンを聴いてビックリ!なんなんだこのドラムは!!もの凄い勢いで叩き狂ってます。これは当時テレビでこの曲を聴いていた時には知らなかった事です。
歌の時はミキシングのバランスも抑えられていますが、歌の合間にはコンソールのフェーダーをググーッと上げて、ドラムが目立つようにしています。ミックスで音量を抑えられている時もかなり叩きまくっていて、全編オカズ(フィル・イン)の嵐です。
全編オカズのドラマーと言えば思い出すのが、THE WHOのキース・ムーンです。この人の狂気のプレイは僕も大好きで、好きなドラマーを1人挙げろと言われたら、キース・ムーンかイアン・ペイス(ディープ・パープル)で悩むんじゃないかと思うぐらい大好きなのです。
まあ「全編オカズ」と言ってもキースはスタジオ盤ではきちんとコントロールできる素晴らしいドラマーなんですけどね。ライヴでもヘッドフォンをしてクリックに合わせて叩く事もありますしね。
でももちろんブッ飛んでいる面も有名で、一時期キース・ムーンはライヴのセッティングでハイハットを取り払ってしまっていました(ハイハットとは「チッチッチッチ」とリズムを刻む音がするアレです)。つまりどの曲でもライド・シンバルをジャンジャン鳴らしながらドラムを叩いていたのです。カッコイイ!!
野口五郎「君が美しすぎて」の熱狂的なプレイもキース・ムーンを連想させます。プレイ・スタイルは少々ジャズ寄りなので違いますが、このドラマーの代わりにキース・ムーンが叩いても、きっと全然違和感がないと思います。特にワンコーラス目が終わって短い間奏の時のドラムはモロにキース・ムーンだ!!
惜しいのは、歌謡曲のミックスなのでゴローの歌が一番大きくて、盛り上がる部分ではホーン・セクションやベースも音量を上げられていて、ドラムのバランスが小さくなっている事です。でも高音がきちんと出るヘッドフォンや解像度の高いオーディオではドラムの細かいプレイも聴き取れますので、ぜひ多くの人にこの凄いドラムを聴いて欲しいです。もちろんデッカイ音で!!
キース・ムーンがドラムを叩いた「君が美しすぎて」を聴いてみたかったなあ〜!きっとそれもメチャクチャカッコ良かったでしょうねえ。マルチのテープがもし残っていたら、ドラムを目立たせたリミックスをぜひ作って発表していただきたいです。