
僕が小学校3年生の時に発売されたフィンガー5(フィンガーファイブ)のファースト・アルバムです。僕が生まれて初めて自分のお小遣いで買ったシングルはデビュー曲「個人授業」でしたが、すぐに大ファンになりLPも買いました。
もうこのアルバムは聴いた聴いた。死ぬほど聴きました。毎日学校から帰ると聴いていました。どうしてこんなに良い曲ばっかりなのかなあと思いながら聴きました。フィンガー5が出る番組は出来る限り見て、僕もファッションを真似してベルボトムのズボンをはき、ネッカチーフを首に巻きました(ホントですよ)。
他に憶えているのは、フィンガー5が左右のポケットに「F」「5」と刺繍がしてあるブレザーみたいな服を着ていた写真があって、それがすごくカッコ良くて、母に「これと同じ服が欲しい」とせがんだ事がありました。母にはごまかされてウヤムヤになったように記憶していますが、歌手のステージ衣装を欲しいなんて思ったのはこの時だけです。手に入れても外へ着て行く勇気などなかったでしょうに。部屋で着る気だったのでしょうか。
ちなみに僕が生まれて初めて書けるようになった英語のスペルが「Finger 5」でした。同じくフィンガー5ファンだったムナカタ君にスペルを教えてもらい、校庭の砂の上に何度も書いて憶えたのです。
でも「g」という文字を「8」と書いていました。これには理由があり「Finger 5」のロゴの「g」のデザインが「8」に近かったのです。
↓誰が何と言おうと「8」に似てます
ムナカタ君は「gの文字は難しいから8って憶えればいいよ。ちょっとごまかしになるけど」と僕に言いました。僕はそれを聞いて「ムナカタ君はスゴイなあ〜!」と感心しました。だから僕とムナカタ君はいつも「Fin8er 5」と書いていたのでした。
当時は仙台に住んでいましたが、親に頼んで東京に行く時のついでにマルベル堂でフィンガー5のブロマイドを買ってきてもらったのを憶えています。僕の親は気を利かせて、そのブロマイドから丸い缶バッジまで作ってもらってきました(オプションで作って貰えたそうです)。そりゃ嬉しかったですよ。
さてこのアルバムを、僕は改めて高校時代に買い直しました。もちろんもう廃盤でしたので、お茶の水の中古レコード店で見つけて購入しました。帯付きで800円でした。改めてライナーを読んでみて、A面6曲のうち最初の5曲目までがジャクソン・ファイヴの曲だと知りました。
これがきっかけで僕はモータウンにのめり込み、それまでピックで弾いていたベースを指で弾くようになったのですから、この時に買い直した事は僕にとってかなり大きな出来事でした(もちろんCDでも買いました)。
ジャクソン・ファイヴのカヴァー曲のアレンジはほぼ原曲に忠実なのですが、キーが変えられている曲が若干あります。「帰ってほしいの」がオリジナルのG#からGへ半音下げられ、「愛はどこへ」は逆にFからGへ1音キーを上げてあります。これにより「帰ってほしいの」「小さな経験」「愛はどこへ」と続く曲のキーが全てGで統一されています。これがLPを作る上での計算だとしたら大したものです。
「インディアナに帰ろう」は当然「オキナワへ帰ろう」にタイトルを変更してあります。しかしオリジナルはマイケル・ジャクソンのヴォーカルなのに、ここでは何故かフィンガー5ではジャーメイン・ジャクソンに当たる正男君が歌っています。このアルバムでは全員がリード・ヴォーカルを取っていますので、そのバランスを取るために正男君が選ばれたのかもしれません。
それから謎がもうひとつ。マイケルのソロで有名な「ベンのテーマ」をアキラ君が歌っているのですが、オリジナルでは2コーラス目にマイナーキーになるのに、フィンガー5のアレンジではメジャーキーのままなのです。僕はこのフィンガー5ヴァージョンを浴びるほど聴いたので、今でもマイケルのオリジナル・ヴァージョンの2コーラス目を聴くと違和感があるという逆転現象が起こってしまいました。
このアルバムで一番好きなのは、妙子ちゃんのために書き下ろされた「バラの少女」です。ハープシコード(チェンバロ)の音色を意識して聴いたのは、この曲が初めてでした。僕が中学3年生の頃にヤマハCP20という電子ピアノを買ったのですが、その中にハープシコードの音色があり「おお!バラの少女だ!」と思ったのを憶えています。アキラ君が「庭のバラ〜」と「バラの少女〜」の部分のコーラスを失敗しているのが微笑ましいです。
シングル「個人授業」には実は原型の曲があり、山本リンダ「狂わせたいの」のB面「もっといいことないの」という曲の出だしのメロディーやコード進行がそっくりです。もちろん作詞作曲は「個人授業」と同じく作詞が阿久悠、作曲が都倉俊一です(詞は全然違いますが)。「個人授業」より1年近く前に出ていますが、上手に一部をリメイクしてみたのでしょうか。
今でもこのアルバムを聴くと何とも言えない気持ちになります。小学校時代に過ごした部屋や、ムナカタ君や、教室の風景や、同級生の顔を思い出します。ムナカタ君とは中学3年生の時に偶然会いましたが、すっかり長髪のロック少年になっていた僕を見て「面影ねえなあ」と言いました。それ以来音信不通ですが、元気でしょうか、ムナカタ君。
※ 後編のサウンド研究へ続きます。
「
個人授業/フィンガー5(後編・サウンド研究)」