
ウイングス「ロンドンタウン」のラフ・ミックス&デモを集めたブート(海賊盤)です。これは良いですよ。正規盤とはミックスも全然違いますし、音質も海賊盤にしてはなかなか良いです。
「セーヌのカフェ・テラス」は正規盤のイントロの声がカットされていて、かなりヴォーカルが大きいラフ・ミックスです。パーカッションの複雑なパターンも良く聴き取れます。左チャンネルのデニーのギターと右チャンネルのジミーのギターの対比も面白く、正規盤ではカットされているギターソロの時のリンダのコーラスも聴けます。
「アイム・キャリング」はポールのアコースティック・ギターだけのヴァージョンで、これが実に良いです。ストリングスが入った正規ヴァージョンも良いですが、僕はこのギターとポールの歌だけのヴァージョンも大好きです。
未発表の「Find A Way」はウイングスの5人(ポール、リンダ、デニー、ジミー、ジョー)の一発録音でデニーがヴォーカルですが、これもリラックスして演奏していてとても良い雰囲気です。「Deliver Your Children(子供に光を)」は左にデニー、右にポールのヴォーカルが配置されており、非常に興味深いミックスです。
「I've Had Enough(別れの時)」は、イントロにかすかにポールのノリの良いカウントが入っています。バックトラックは完全に完成していますが、ヴォーカルは実にいい加減。あまり歌詞が出来ていなかったのかもしれません(実際、正規盤とは歌詞が違います)。ギターソロの前にポールの「ドラムソロ!」という声が、最後は「エンディング!」という声が聴こえます。正規盤より曲が長いのですが、編集してカットしてしまったようです。
「With A Little Luck」はリズムボックス(いわゆるテンポのガイド、ドンカマと呼ばれます)がそのまま残されていますが、まだ制作途中のヴァージョンで、リズムボックス、ベース、ローズピアノ(フェンダーのエレクトリック・ピアノ)にポールのドラム、それにガイド・ヴォーカルだけです。バックは正規盤に使われたテイクとほぼ同じなのですが、間奏の部分のわずかなベースラインだけが全然違うので、ここだけ後で差し替えたのでしょう。
「Famous Groupies(伝説のグルーピー)」はバスドラムとギター1本にポールのガイド・ヴォーカルだけで始まり、途中でバンド形式の演奏になります。「MORSE MOOSE AND THE GREY GOOSE(モース・ムースとグレイ・グース)」はヴォーカルが入っていない、いわゆるカラオケですが、かなりの聴き応えがあります。「Don't Let It Bring You Down(ピンチをぶっとばせ)」はドラムとアコースティック・ギターにポールのガイド・ヴォーカルだけです。「Backwards Traveller(なつかしの昔よ)」は完全なデモで、かなりラフで未完成です。
「After You've Gone」はカヴァーですが他の海賊盤にも入っていますね。ポールの未発表曲「Boil Crisis」も他の海賊盤でおなじみです(ヴァージョンは違いますが)。
僕は「ロンドンタウン」というアルバムが大好きですので、これらのデモ&ラフミックスをとても楽しんで聴いています。「ロンドンタウン」を聴き込んだ人には面白いアルバムだと思います。