やっぱりコメディ映画は、劇場が混んでいる時期に観に行った方が良いとつくづく感じた。舞台/演劇色が強い三谷監督のような作品なら、なおさらのこと。笑う気満々の観客で埋め尽くされた劇場で鑑賞したら、さぞかし楽しめる映画だと思うし、そういう雰囲気の中で見るべき映画でしょう。
今回は”ザ・佐藤浩市アワー”と言っても過言ではないかも。
彼が真面目に演じれば演じるほど可笑しい。この映画の最大の見どころであり、言い方を変えれば、そこしか見るべきものはない。
演技派=佐藤浩市のコメディぶりは大したもので、それを上手く引き出した三谷監督の力量にもある意味拍手を送りたい所です。
ただし、一本の映画として見た印象は、とてつもなく駄作。
過去の三谷監督映画の全てに共通して言えると思いますが、シチュエーション・コメディにしては、あまりにも無駄に登場人物が多すぎる、笑いの狙いがその場その場しのぎで、あまりにもストーリー展開の動機がユルすぎる、上映時間が無駄に長い。。
例えば、”でっちあげ”のデラ富樫を演じさせる為に名の売れぬ俳優を探し出す・・・ここまでは良いです。では、その”でっちあげ”を気付かれないように村田(佐藤浩市)に仕事を依頼するにはどうすれば良いか?又、脚本も無ければクルーも決まってない現場で仕事を引き受ける事に同意した彼、映画を一本も撮った事がないと語るインチキ野郎と手を組もうと決意したキッカケはどこにあったのか??
・・・説明が長い割に、それらの動機が一々弱すぎる、というか”無い”のです。冒頭からこんな調子だから、後々掛かってくるべき”笑い”の部分にちっとも説得力がなく、まるで笑えない(笑えなかった)です。
オープニングであれだけ長い時間を使いながら、ストーリーの初期設定、基盤がしっかり描けないのでは、シチュエーション・コメディを作る意味がない。これでは村田(佐藤浩市)が、ただの馬鹿者にしか見えず、後半の展開でホロっとさせる場面も、今ひとつ説得力が欠けてしまうのが勿体無いところ。
前述のように、佐藤浩市の演技、場面場面の可笑しさは見て損はないかもしれませんが、映画トータルで見た場合、コメディとしてのワビサビや物語の方向性、その起伏が乏しく、三谷幸喜の作家としての成長の無さにひたすら愕然とさせられるばかりでした。
ウディ・アレンのような完成度の高いシチュエーション・コメディを書け(撮れ)、とまでは言いませんが、いい加減4本も映画を監督してる訳だから、もう少し成長を見せて欲しい・・・と願うのは、TVドラマ脚本家=三谷幸喜ファンの無いもの強請りなんでしょうか。
この映画を満員の劇場で爆笑しながら見れた方々が、本当に羨ましい。。

0