テラスの前はすぐ海だ。東の方角に大きな岩が立ちはだかっているので、朝日が海から見られるかどうか判断できなかったが、期待は大きかった。
そして朝、果たして日の出はこの部屋から見えると判明した。が、今朝は雲にさえぎられている。とりあえず起きて太陽崇拝をしてプールで泳いだ。
朝食時、フルーツサラダを持って来てくれたのはケルで、彼は「reeeeikooooo!」と親しげに挨拶してくれた。注文した朝食はあっという間に来た。さすが他のお客さんがたくさんいるからか厨房も気合が入っている。お客さんはチェコの人が多いらしい。みな楽しげだ。子どももいた。
食事の後はひたすら休んで、ときどき日記をつけた。
さあ、これからどうするべ。時がたてば何とかなるさと、何もしたくないまま臥せっていると、ますます弱っていきそうで…。
4時過ぎに外へ食事に出ることにする。
レストランでは、明るいマデ2人が変わらず迎えてくれた。おしゃべりしたりビデオを撮ったりして大笑いする。笑うと気持ちも軽くなるのだ。どうやらマデは日本に女友達がいるらしい。しきりにSMSの仕方を訊いてくる。
「送るのは簡単なんだけど、送れるかどうかはこっちで使うカードにもよるみたいよ」
私の答えではどうしようもないので、彼はビーチにいた別の日本人にも訊きに行った。その人はケータイに詳しくて、日本にはdocomo,au,soft bankがあって…、とていねいに教えてくれたようだ。
「どうすれば(日本人の)女の子と仲良くなれるかな」
「そうね、…まず笑顔! それから簡単な会話。飲み物は何が好き?とか、これおいしいねとか」
帰り際「(バイクでホテルまで)送ろうか?」と言ってくれたけど、「いいわ」と断る。来るときもホテルのスタッフが途中から送ってくれたので、ちっとも歩いていないのだ。歩きたかった。
ゆっくり歩いて帰り、リンカルナシのレストランに佇んだ。昔、といってもたかが2年前、チュプリスたちと過ごした楽しい毎日。リンカルナシはその象徴だった。それが、今はもうガタガタになっている。
本当に、幸せなときというのはこんなにも簡単に崩れてしまうものなのか? 崩れてしまうものなのだ。そういうことを実感するために、崩れた屋根や枯れた草木を眺めていた。ふと厨房を見ると中に明かりが…。
(誰もいないはずなのに?)
近寄って覗くと、なんと厨房にテレビがあり、誰かが見ていたのだろう、人の姿は見えなかったがテレビがついていた。
(人が住んでいるのか…)
そそくさと立ち去り、ホテルに戻った。

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