この外泊が終わったら、貴を待っているのは手術だった・・・。
貴は骨を切断するという事をしらなかったけど・・・でもすごく怖がっていた。
あたしは、貴が手術をする前に旅行に行きたいと思っていた。
場所はどこでもよかった。
ただ・・・みんなで旅行したかった。
歩く事ができなくても・・・車椅子でも・・・手術をする前に・・・貴の骨が切断されてしまう前に・・・自分の体のまま・・・みんなで旅行に行きたかった。
何日か前から・・・仁にもその事を伝えていた。
「こんな大事な時にやばいんじゃないか?」
最初仁はあまり乗り気じゃなかったけれど・・・あたしがあまりにもしつこく言うので、
「じゃぁ・・・行くか・・・?」と少しずつ気持ちが変わってきた。
貴の胸の動脈には、CVが埋め込んであるし、衛生的に温泉はやばいかも・・・とか、1泊だったら、1日くらいお風呂に入らなければいいか・・・とか、バンガローを借りて、家族だけで過ごす?とか・・・いろいろな事を考えた。
あたしは、どこに行きたいとか・・・具体的な事は本当に何でもよかった。
みんなで同じ思い出がほしかった。
貴の骨がなくなってしまう前に・・・その思いだけだった・・・。
でも、両親に反対された。
喧嘩になった。
「ここまで・・・骨折もなく、せっかく順調にきたのに・・・貴が骨折でもしたら・・・手術もできなくなるから、それじゃぁ今まで治療してきた事はなんだったの・・・という事になる。貴が退院したら、いつでも旅行なんて行けるんだから・・・。」という理由だった。
両親のいう事はもっともだった。
それでも・・・あたしは引けなかった・・・。
「何でわかってくれないの?貴は骨を切断されてしまうんだよ!」
あたしは、両親の言う事の意味はわかっていても・・・いてもたってもいられなかった・・・。
でも、仁に話すと・・・
「ゆうこ、じいちゃんとばあちゃんの言う通りだよ。俺も最初ゆうこに言われた時、せっかくここまで来てって気持ちがあったから、大事な時にやばいんじゃないかって言ったよな?何かあって・・・手術ができなくなったら、退院なんてどんどん延びてしまうから、旅行はやめよう!旅行になんか行かなくても、みんなで一緒に居ることが・・・いつか思い出になるよ。あいつと一緒に居ること・・・それが1番大事な事だよ。遠くに行かなくても、あいつがしたい事をしよう・・・。あいつが食べたい物を食べよう!旅行は、貴が退院したら、必ず行こう!」
あたしは・・・もう納得するしかなかった・・・。
納得なんかしたくなかったけど・・・納得するしかなかった・・・。
手術を受けなければ・・・いつか必ず貴は死んでしまう・・・。
貴は骨肉腫・・・。
原発を残す事はできない・・・。
元気になる為に、その為に、辛い治療を受けてきた・・・。
いっぱいがんばってきた・・・。
これからも、がんばらなければいけない・・・。
わかってる・・・わかっているけど・・・骨がなくなる・・・膝の骨が切断されてしまう・・・。
大好きな大好きな貴の骨が・・・。
あたしは、必死に納得しようと思えば思うほど・・・悲しくて仕方なかった・・・。
みんな間違ってなんかいない・・・。
でも、素直になれなかった・・・。

0