「あなたは洋さんのお弟子さんですか?」と、聞かれたことがあります。
TVで観た、洋さんアレンジの「CLOSE TO YOU」、桂さんのアルバムに入っている「BEYOND THE SEA」、ラジオで聴いた「BLUE MOON」を夜な夜な真似て、エレクトーンで弾いてた私。ちょっと、うれしかったのを憶えています。でも、弟子にしてもらってません。自分を知っているので、どこをどう注意されて、どうなるかは、大体の予想がつきます。きっと、辛すぎるだろうな、と想像します。
実際の私の経験から、想像してみました。
4月6日、私は、書家である父の弟子になり、新しい名前を戴きました。3日位、みんなに自慢しました。父は、仕事の都合で「次の練習日はお休みだよ」と言いました。それでも、もしや1分でも見てもらえるかも?と思い、4時間待っていました。少し、泣きました。
次の練習日、「姿勢が悪い、強弱をつけろ、正しい書き順で」、と言われ、すぐに直しました。以前注意されたときは、それを直すのに違う2人の先生の下で3年くらい勉強しました。できるようになると、父の大学の時の師匠の字を「書いてみろ」と言われ、2時間ほど書きまくりました。
30分位、父は同じ字を書いてくれました。背中合わせでしたけれど、2人は大学生の頃に戻って、同じ字に向き合っていました。一瞬、無音で景色さえ目に映らなくなりました。半紙に文字が浮かんできます。そのとおりに書く技術が、まだありません。
昨日、父の現在の師匠のところに連れて行ってもらいました。事務仕事の手伝いと、お茶やコーヒーを入れたり、洗い物や掃除をしました。お弟子さんが6人いました。それぞれの歴史、好みや上下関係を全く知りません。師匠は最初、お茶を一口も飲まず、私を見もしないので、少し泣きそうになりましたが、笑顔でいました。コーヒーは、3回、「お湯で薄めてくれ」と言われました。芸術家は、1ミリのズレも許さないのです。すぐに言うとおりにしましたが、満足して頂けるわけありません。
結果的には、お手伝いを通じて、段取りをすべてメモでき、大きな作品のお手本を頂きました。私には、お手本代も月謝も展覧会への出品料も材料費も高すぎるので、父からもらったり、父に縁のある人から、技術を盗むしかないのです。
帰るとき、師匠は、私にだけ聴こえるかすかな声で、
「ありがとう・・・」と頭を下げて下さいました。
この場合の父や師匠が洋さんだったら、もっと辛いのだろうな、と、思うのです。
私は今、洋さんのお弟子さんに、道は違うけれど「一緒に頑張ろう!」と、心から言いたいです。