おしながき  おしながき

会社員×2

 @社員 on the Beach 1    会社員のふたり。夏休みに海に行こうとします。
 A社員 on the Beach 2 
 B社員 on the Beach 3  
 Cオレ、天使           大事すぎて手が出せないとか・・・
 D今度は温泉に行こう!    今度こそ!行き先は温泉だ!


プロジューサー×コックでDJ
 
 ミュージック・アワー     コックをDJにスカウト!


国王×相談役

 ロロノア11世         国を勝利に導いた国王の次にするべきことは・・・


赤鼻のトナカイ×キューピット(?)

 さんじ・くろ〜す        ゾロが赤鼻のトナカイです。ごめんなさい。


高校生×2

 @A New Day 1          入学式です。
 AA New Day 2
 Bリンク               GW、7連休。
 CBLUE SKY            梅雨〜。
 DFree and Freedom 1      夏休み!
 EFree and Freedom 2
 FFree and Freedom 3
 GFree and Freedom 4
 Hネオメロドラマティック     文化祭で劇やります♪
 IDON'T CALL ME CRAZY   体育祭の練習。
 JGIFT               ゾロの誕生日。
 K瞳の奥をのぞかせて 1     クリスマスイヴ。
 L瞳の奥をのぞかせて 2
 M瞳の奥をのぞかせて 3
 N瞳の奥をのぞかせて 4
 OHeart Beat           クリスマスの朝。

**サイドメニューの「おしながき」からどーぞ♬**
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社員 on the Beach 1  会社員×2

「おはようございます!夏はもうそこまで来ています!!
夏と言えば海っっ!!!ですよねvv
そこでこの夏注目のリゾート、白砂島をご紹介しますぅ〜〜vv」

「そーだよなあ、夏と言えば海!!いいなあ〜白砂島vv
お綺麗なレディとぜひ二人で!!
・・・・・・・・・なんて・・・・普通そうだよなあ〜〜
なんでここでゾロと行きたいなんて思っちまうんだか・・・・
俺って終わってるかもなあ・・・・・・」



朝、会社に行く準備をしながら見ていたTVの南の島の情報に盛大な独り言を言う俺は
しがない会社員、名はサンジという。
ちなみに、ゾロって言うのは同い年の同僚の・・・・男だ。




同僚だが日中あうことはあまりない。
やっている仕事がまるで違うからだ。
全員が集まる朝の朝礼のときに事務所で会うくらいだ。

今日、海に行こうと誘ってみようか。
あいつはどんな反応をするんだろう。
誘うならその朝礼の前だな。
あいつは割りといつも早く来ているらしい。
俺が早く行けば話しが出来るはずだ。

いつもはもう4、50分のんびりしてから家を出るのだが、
居てもたってもいられず、そそくさと部屋を出た。

会社はちゃりんこで10分くらいのところにある。
今日はなんだか5分くらいで着いちまったみたいだけど。

玄関には鍵がかかっていた。
さすがにちょっと早すぎたのかと思いながら合鍵で事務所に入ると、
応接セットのソファから見慣れた足がにょっきり出ていた。
事務所中にいびきが響き渡る。
「早く来て、寝てんのかよ・・・・」
覗き込んでつぶやいたらゾロが目を覚ました。

「ん?お前が一番か、珍しいな。」
「寝ぼけてんのかよ。お前が居るんだから、一番はおまえだろうが。
居るんなら何で玄関の鍵掛けとくんだよ?」
「俺がいたって夜中は鍵掛けたほうがいいだろ、やっぱ。」
「夜中って・・・・泊まったのか?ここに?」
「ああ、俺、平日はここに泊まってんだ。部屋には週末にしか帰らねえ。」
「こんな何にも無いとこにか?」
「俺の部屋も大差ないし。コンビニとか近いしここのほうが便利なくらいだ。
・・・今日はウソップどうかしたのか?」
「あ?いつもはウソップが一番なのか?
・・・たぶんウソップはいつもどおりだと思う。
俺が早く来ただけだ。」

「まさか、仕事でか?」

「いや、その、違えよ・・・・ちょっと、話があってな・・・・その・・・おまえに。」
うう・・・ドキドキしてきた・・・・!

「おまえが俺に?・・・な、何だよ?」


お、落ち着けオレ!!
「おまえ、夏休みはなんか予定とかあんのか?」

「いいや、別に・・・」
「ホントか?!・・・じゃ、さ、俺と海、行かねえ?」
言っちまった!
「海?・・・ああ、いいぜ。」
いいって言ったのか!?マジか?!

「ーーいいのか!?」
「・・・で、ほかに誰が行くんだ?」

あー、そうか。そうだよな。二人だけで行くとは思わねえよな、フツウ・・・
「・・・・・・・あ、あー・・・俺とふたり、じゃ・・・、だめか?」

「・・・・・俺とふたりで・・・・行きたいのか?」

「・・・・一緒にナンパしようぜ!おまえぱっと見、いけてるからさ、
お綺麗なレディとお近づきになれるかもしんねえぜ!」






「ふん・・・おれはそんな面倒くせえこと御免だ。
おまえがやんのは勝手だ。俺は寝てる。」

「せっかくのビーチで、やっぱり寝てんのかよ・・・。」

「で、いつだよ。宿とか取れんのか?」
「オレに任しといてくれよ、ホテルとエアチケットと休みが取れたらいつでもかまわねえだろ?」

「ああ、かまわねえ。任す。」

ホントに行けるんだな、ゾロと。
何が何でもGETしてやる、ホテルとエアチケット!

「二泊三日でいいか?平日なら取れると思うんだ!
ホテルはさ、やっぱオーシャンビューのロマンチックなとこがいいよな〜!!」

「俺と二人でそんなとこ泊まってどうすんだよ?俺は別に寝れりゃあどこだっていい。」

俺、馬鹿なこと口走っちまったか?うう、顔が火照ってきちまった!!



「あれ〜、サンジ!どうしたんだ?今日はやけに早いじゃねえか?」
うおっっ!ウソップだ!もう来たのか!?
「お、おお!!早えな、ウソップ!!じゃあな、ゾロ!任しといてくれ!!」

「何の話だ〜?なんか楽しそうじゃねえか〜?」
ウソップてめえ、意外に鋭いじゃねえか!

「な、何言ってやがる、仕事の話に決まってんだろ、楽しいわけあるかよ!!」

『・・・・俺と二人で海に行くってのは、ウソップに秘密なのか?』

真っ赤な顔をしてそそくさと自分のデスクに付くサンジを見て、
何がか分からないが、何だか変な感じがするなと漠然とゾロは思った。



***********************************


俺たちの会社はかなり小さい。
社員は全部で7人だ。

モンキー・D・ルフィと言う男が一応社長だ。
大学在学中に「俺と会社を作ろう!」
なんて言われて集まった今のメンバーだが、よほど大勢に声かけた中の6人かと思いきや
後からルフィに聞いてみたら、声かけたのは6人だと言う。
誰かれなく誘ったりしないが、一度誘ったら断らせない。
そこはかとなくカリスマ性を秘めているようなただ強引なような、ルフィと言うのはそんな男だ。
ルフィの誘いを一度承諾してしまうと、やつの為になら努力を惜しまなくなってしまう、なぜかそうなってしまう。
そんな7人の会社は、まあ割りとうまくいっている。

俺は、一応営業兼給食のおばさんだ。
ゾロは主に製造の機械を管理している。
ウソップはデザイン担当。
それから、経理を取り仕切っているナミさんというキュートなレディ。
わが社のブレイン、社長秘書のロビンちゃんという神秘的な美女。
在庫管理や配送、そのうえ専属医師のチョッパー。
あと、社長のルフィの7人で全部だ。
なんとなく分担しているが、7人しかいないのだ。
みんなが何でもやってまわしていると言うわけだ。

まあ、そんなだから、休みを貰うのも割りと融通が利く。
先にエアチケットとホテルを確保しようとネットで探す。
エアチケットは何とか取れたが、ホテルの方は満室らしい。
このあいだTVでやってたから、どっと来たのかも知れねえな。
「キャンセル待ちをしますか?」にチェックをいれておこう。

最悪、レンタカーでも借りて車ん中でも寝れるよな。
レディとじゃそうはいかないけど、なにしろ男2人だ。
あいつも「寝れりゃ、どこでも。」みたいなこと言ってたしな。
もちろん、海の見えるホテルが良いにきまってっけど。
せっかくゾロに約束取り付けたんだ。
何があっても、旅行自体は決行だ。

旅行の目的はナンパだ、とゾロには言ったが、ありゃ嘘だ。
ホントの目的は、ゾロと2人の時間を過ごすことだ。
俺はどうやらゾロに惚れてるらしい。
だから、二人で過ごせるんだというだけで浮かれてる。
ゾロが何で承諾してくれたのか分からないが、あいつにそんな気がないのは承知だ。
まあ、フツウないよな、俺もあいつも同じ男なんだから。
俺も別に男が好きってわけじゃない。
むしろ、レディが大好きだ。
なのに気になるのはゾロだ。
ゾロと同じ会社に居れるのが嬉しい。
毎日その姿を垣間見れるのが嬉しい。
たまに話が出来りゃもっと嬉しい。
二泊三日の間、俺はゾロを独り占め、そりゃあ嬉しいに違いない。

ただ、ゾロと2人きりなんて・・・ちょっと緊張しちまうかも・・・

だって俺は、ゾロが承諾してくれたってだけで浮かれながらも
どこかどうしていいのか分からないのかもしれないような気がしてる・・・んだもんなあ。

そだ、ゾロにメールしよvv
とりあえず、エアチケットは取れたんだって報告だ!
一応付き合いは長いが、メールしたことなんてない。
メールする用なんて俺とゾロの間に存在しなかったからだ。
こんなことまで嬉しいなんて、俺は恋する乙女かよ、クソ、アホか俺?!

「ゾロへのメール第一便、・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・---送信っとv」

ちょっとはあいつも楽しみにしてくれてんのかな・・・・
だといいよな・・・・・
あ・・・朝からこれにかかりきりだった。
そろそろ仕事にもどらねえと。
営業もやってるが、みんなの昼飯を作るのも俺の大事な仕事なんだ。
厨房に入って支度を始めると、
ドカドカとちょっと焦り気味な足音が。
こっちに向かってきているような・・・

「サンジ、俺にメールしたか?!」

「う、うわ・・・ゾロ!!お、おう、したぞ、メール・・・」

「これ、どうやって見るんだ!?」

「はあ?お前って機械に強いんじゃねえの?」

「工作機械ならな。このケイタイってやつはさっぱりだ。
何とか電話機能は使えるが、後は使ったことねえし。」

「メール貰ったことねえの?」

「おう!」

「俺が初めて?」

「そうだ。」

「うははははは・・・」

「何かおかしいか?」

「いや・・・教えるよ。」
嬉しいんだよなんていったら気持ち悪りいって!

「・・・・・・・・・よし分かった。簡単だな。」

「当然、返信の仕方も知らねえよな?」
メール送るたびに、こうやって本人が飛んできてくれるのも嬉しいけど、そういうわけにもいかねえだろ。

「おう、教えろ。」

「何で偉そうなんだよ?」
かわいいじゃねえか、おまえ・・・


こんなことが異常に嬉しい俺って、やっぱ、終わってる?




俺とゾロはとりあえず、メル友になった。なんかサブいけど。
俺が報告のメールを送ると、 返事のメールが来る。
まあ、「わかった。」とか、そんなほとんど、YES・NO、みたいな超簡単なメールだ。

お、ケイタイが鳴った。メールだ。
朝っぱらから誰だろう・・・
ゾロから?!
返事じゃないメールは初めてだ。・・・・なんだろう?
ドキドキ・・・ああ、もう、俺・・・メールくらいでドキドキしてんじゃねえよ。
えーと、『頼みがある。』・・・
「あー?!何だよ、頼みの内容も一緒に送ってこいってんだよ!!」
叫んだのとほぼ同じ文面を送ったら、内容が送られてきた。

『海パンが無い。任せるからお前買ってきてくれ。』

?????????

何で俺、ゾロに海パンのお使い頼まれなきゃなんねえんだろ?

別に嫌じゃねえけど、素直な疑問を送ってみた。
『んなもん、なんで自分で買いに行かねえ?』

ゾロの最長記録メールが来た。
『一緒に行くおまえが恥ずかしいようなの選んじまうかもしれんからだ。』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ええっ?!なんだって?一緒に行く俺が??
それってどんな海パンだよっ?!ってか、俺のため??
なんか、嬉しいような恥ずかしいようなくすぐったいような・・・・あ、それなら、
『じゃ、一緒に買いに行くか?』
――――――送信してからふと思った。
それってもしかして、デートみたいになったりすんのかな?

そこに返事が来た。
『頼む。』
ぐああああ、短けえ!!

そして俺はにまにましながら、今日もちゃりんこで会社に向かうのだった。



週末はゾロとデート(と思ってるのは俺だけだろうけど)だ!
ああ、俺絶対顔ゆるんでる・・・
おっと、仕事もちゃんとやっとかねえと、
仕事で行けねえなんてことになったら目も当てられねえ。

まずは、メールチェックして・・と
(お、オーシャンビューホテルからだ!キャンセル出たのか?)
『----ツインをご希望でしたが、そちらのキャンセルは出ておりません。
ダブルでもよろしければご用意できますが、いかがでしょう。』

「ダ、ダブル???---ダブルだって!?そりゃまずいだろう!!」

「なにがまずいんですって?サンジくん?」

しまったここは事務所だった!!
「な、なんでもありませ〜んvナミすわ〜ん」

「もうすぐそれぞれ夏休みに入るから、くれぐれもトラブルは起こさないでよね!」

「は〜い!!もちろんです、ナミすわ〜ん」

「今度の休みは何があっても、あたしとルフィは帰ってこれないからね!!」

「・・・・・どうしたんですか?気合入ってますね、ナミさん。」

「やっと、超忙しいルフィのご両親にアポイントがとれたのvv」

「ええっ、『彼の両親に紹介してもらう』ってやつですか?」

「ホントになかなかつかまらなくて、エースにも協力してもらってやっとこじつけたんだから!!」

「さっきの『まずい』は全く関係ないですから。」

「それならいいけど。」



・・・冷静になってみたら、レディと行くのなら、ツインの約束がいきなりダブルになったらまずいけど、
男同士ならちょっとキモい、ですむんじゃねえか?
相手はゾロだ。メールしたらきっとすぐに「わかった。」とか言ってくるよな。
俺みたいにダブルだってことに慌てるのがおかしいんだよな。
俺の想いはなんてったって独りよがりなんだから。

『ダブルの部屋しか取れねえんだけど』と、送ってみた。
いつもやけに即行で返事が来てたのに、
今回はなかなか返事が来ない。
営業に回ってても気が気じゃない・・・・
・・・・あまりにもキモかったのか?
なんてちょっと悲しくなってたら、やっと返事が来た。


『全く問題ない。』

「なんだよ。そうかよ。
・・・そうだよな、仕事中なんだから、手の離せないこともあるよな!はははは!」

全く問題ない・・・か。
まあ、ゾロらしいっていうか・・・・どーでもいいってことだよな。

ま、分かってたことじゃねえか。

考えたってしょうがない。
さあ、社に帰って昼飯の準備だ!!




午後から俺の一番の得意先に行く予定だ。
ルフィが会社を立ち上げる時に、すげえ世話になったって言うシャンクスって人がやってる会社だ。
シャンクスはルフィにとって憧れで目標で恩人で最高の理解者だ。
俺たちがルフィの為なら、なぜか全身全霊を傾けて頑張ってしまうのに
シャンクスとルフィの間柄はどこか似ているかもしれない。
それに、シャンクスはうちの社の社員すべてをルフィ同様に可愛がってくれている。
だからかなり無理してでも彼の要求には応えたいとうちの社員全員が思っている。

結構大口の仕事が殆ど決まってて、きっちりつめていよいよ製造部にまわす事になる。
いつもちょっと納期がきついんだが、頑張っちまうのがうちの社風になりつつある。


「お、サンちゃ〜ん!!!待ってたぜえ!!」

「うわっっ!!社長!!遅かったですか?俺!」
げ、社長自ら玄関で出迎えないでくれよ!!

「今日はサンちゃんが来るって言うんで、暇だったからちょっとここで待ってみただけだ。」
そんなこといいながら、駆け寄った俺の頭をかいぐりかいぐり撫で回してくれる。

「さーさー、中に入って!」
と、肩を抱かれて社屋に連れ込まれる様子はちょっと変な誤解を生みそうなんだが、
先方の社員の皆様、慣れてるご様子で誰も気にしちゃあいない。
一応言っとこう。
「今度は納期、やさしくお願いしますよ、社長。」

「今回は大丈夫だ!!」

まあ、毎回そう言ってるからあまり安心は出来ないが、一応ほっとした。
この人の頼みは聞かないわけにはいかないんだから。



2に続く
1

 

社員 on the Beach 2  会社員×2


待ちに待った週末。
ゾロと待ち合わせ中だ。
もうかれこれ一時間ここでボーっと煙草をふかしてる。
確かに嬉しくてちょっとばっかり早く来ちまったけど
そんなには早くなかったはずだ。

ちくしょう、俺がこんなに嬉しいと思ってるってのに
ゾロのヤツ、寝坊か、くそ・・・

「はああ〜、何時だ・・・十時半、すでに三十分の遅刻か。
一回電話してみっか・・・・」


「・・・・・・おう、ゾロか、俺だ。寝坊でもしたのかよ?もう十時半だぜ。」

『もうそんな時間か?わりい、待たせちまって。
ちゃんと八時には家を出たんだが、ちょっと迷っちまって・・・』

「おまえんちって、ここからそんな遠かったのか?!」

『いや、二駅だ。』

「???ここは西口出たとこなんだぞ?」

『西口の出口が分からなくてな、とりあえず東口から出て、
西に向かってるはずだ。』

(迷子か?!あいつ迷子なのか?!!ほんとに西に向かってんのかよ?!)
「・・・・とりあえず、今どこにいるか教えろ。」

『・・・俺の後ろにレストランバラティエってのがあるけど、分かるか?』

「東口から西に向かってそこに居るってのは理解に苦しむが、
そこならよ〜く知ってっから、俺が十分で行くからお前はそこにじっとしてろ!」


十分後、俺がついたらゾロは腕組みしてじっと待ってた。



とりあえず今日の目的のゾロの水着を買いに行く。
まあ、野郎の水着なんてどれだって大差ない。(超ビキニとかだとアレだが・・・)
ホントは俺が選んでやる必要なんか、まあ、ないんだけど
今日のデートの口実ってやつだ。

しかし、これが終わっちまうとゾロのやつとっとと帰っちまうかも知れねえ。
よし、水着選びに付き合ったんだから俺の買い物にも付き合えって言って引っ張りまわしてやろう。
んで、どうせ帰っても一人で食うんだろって一緒に昼飯食おう。
で、うまくいきゃあ、晩飯は俺の料理を俺の部屋で食わせてえなv


頭の中でこれからのことをあれこれ考えてたらゾロが声を掛けてきた。

「悪いな、せっかくの休みに付き合わせちまって・・・・」

「ん?ああっ?何言ってんだ。俺から言い出したことだし、何も悪くなんかねえ!!」

「でも、おまえ、『じゃ、水着買いにいくか。』って言った後、黙ってなんか考え込んでるし、
なんか用事とかあったんじゃねえのか?」

「い、いや!何にも用事なんかねえ!!
この後お前をどうやって引っ張りまわそうかなって、じゃなくて・・・・ああ、何言ってんだ、俺〜!!」

「え・・・・・・・・?」

「ん、あ、いや、お前の方こそ用事とかあったんじゃねえのか?」

「い、いや、全くねえ!!」

「んじゃあ、今日一日俺に付き合ってもらうぞ。かまわねえか?」

「おう、望むところだ!!」

なんか変じゃねえかその受け答え、まあいいか。
とりあえず、俺の思い通りに事が運んで、ゾロを今日は独り占めだ。
独り占めの予行演習だ。

一日連れ回して、買出しをして、最後に俺の部屋に連れてきた。
俺の部屋は3LDKのマンションだ。

「ここに一人で住んでんのか?」
ゾロが聞いてきた。

「おう、ちょっとひとりにゃ広いんだけどな、ここはジジイの持ってる賃貸マンションなんだ。
管理人をやるってことで住ませてもらってるんだ。
家族向けでひろいから一部屋は全く使ってねえな。」

「すげえ贅沢だな。」

「でもよ、会社にちゃりで十分のとこにこれがあるのに、
他で借りて家賃払うほうがもったいねえだろ?」

「一部屋全く使ってねえんだな?」

「あ、ああ、そうだけど?」

「だったらルームシェアしろよ、俺が借りる。」

「え、ええ?!おまえが?」

「この距離なら毎日帰れそうだ。俺だって一応ソファよりベッドで寝たいんだ。」

「あそこから二駅なら毎日帰れないほど遠くねえだろ!?」

「俺とルームメイトになるのはいやか?」

「嫌なわけねえ!!・・・い、いや、その、ヨロシクオネガイシマス・・・」

「こちらこそ・・・当然ちゃんと家賃払うからな。」

「家賃か?別にいらねえぜ。俺も払ってねえし。」

「そういうわけにはいかねえだろ。おまえは爺さんの孫だが、俺は他人だ。」

「んじゃ、朝飯と晩飯作ってやっから、食費としてそうだな、3万もらおうか、どうだ?」

「そんなんでいいのか?めしつきで?!」

「おう、願ってもないって感じだぜ。」

「願ってもないってなんだよ?」

「え、ああ、いや、お前顔怖いから用心棒にぴったりだな〜って!」

「悪かったな怖い顔で!」




なんと俺とゾロの関係はメル友からルームメイトへと
着実に親密になっていってる。
なぜだかとんとん拍子って感じだ。
引越し自体はちょっと先になるが、一緒に住むんだvv
同棲・・・じゃない同居か。
恋人同士ならな・・・でもありえねえし、
まあ気持ちを伝える気なんてもともとねえしな。

でもな、白砂島から帰ったら独り占めできることなんてなくなるだろうと思ってたのに、
家に帰ったらゾロが居るんだ。
朝も昼も晩も(昼は今もだけど)俺の飯を食ってくれるんだ。
俺の隣の部屋で眠るんだ。


その夜は俺の料理と買ってきてた酒で2人で同居前祝宴会となった。
あんまり酒に強くない俺はいつの間にか寝ちまってた。
『ジジイ、良くここに家族向けマンションを建ててくれた。
しかも良くぞそれを俺に貸してくれた!感謝するぜvvvv』なんて思いながら。



そのころレストランバラティエの厨房で明日の仕込をしていたゼフは、
いきなり10連発くしゃみに見舞われ首を傾げていた。

*************************************************


いよいよ白砂島に行く日が迫ってきた。
今週の金曜に潟Vャンクスの納品をして土日を休んで、月曜から水曜まで行く予定だ。
休暇が余ってるんで後二日休んで、週末を入れると9連休になる。
二日休んでから行くのは変に思うかもしれないが
潟Vャンクスの納品が曲者なんだ。
なんだかんだで遅れるのが常で、まあ、土曜は休日出勤覚悟なわけだ。
念には念を入れて、日曜を余裕見て開けときゃあ、間違いなく月曜にリゾートに2人で旅立てるってわけだ。


今週の半ばあたりからほかの社員も休みに入る。

ルフィとナミさんは前に聞いた通りだし、ロビンちゃんは歴史を尋ねて一人旅に出るらしい。
チョッパーは故郷に帰って恩師に会うんだとか。
ウソップはああ見えて遠距離恋愛中の恋人が居て、半年振りに会うんだとメロメロだった。
木曜にはみんな旅立って俺たちが最後だ。


最近の俺はどうやらついてる。
何だか思い通りにうまくいく。
ゾロとのことばかりじゃない。

納品も、どうやら今日予定通りできそうなのだ。
俺って心配症だよな、二日も余裕見ちまった。
今日は出社するのは俺とゾロの2人だけだから2人で納品に行くかなvv

「よし、できあがり!二人分だとすぐ出来ちまうな。」
いつも7人分作ってるからそのつもりで昼飯の用意をしてたらもう出来ちまった。
ちょっと時間が早いが二人だけだしいいだろうと
ゾロを呼ぶため廊下に出たら、やけに静かだ。
工場の機械音が聞こえない。
まさかここに来てトラブって止まっちまったのか?
ちょっと不安になりながらゾロを呼んだ。
「おう、すぐいく〜。」とのんきな声が返ってきた。

言葉通りすぐに来たゾロに
「機械止まっちまったのか?!」と聞いたら、
「ああ、出来たから止めたんだ。」と言う。

「で、できたのか?!」
「おう、できた!後は検品して箱詰めして納品だ。」
「そ、そうか!!じゃあ、間違いなく月曜から白砂島だな?!」
「おう!」
ゾロがニカッと笑ったから、ゾロも嬉しいんだと思うと俺は何だかとっても幸せな気持ちになった。
2人で向かい合って、ニヤニヤ笑いながら、出来立ての昼飯を食い始めた。



しばらくすると、ウチの社の玄関あたりにバイクのエンジン音が近づいてきて止まった。

俺とゾロの顔から一瞬にしてニヤニヤ笑いが消えた。
思いっきり嫌な予感がした。
ゾロも同じのようだ。
どうも上手く行き過ぎると思ってたんだ。
世の中そんなに甘かあない。

ピンポ〜ンと玄関のチャイムが軽やかに鳴った。



「俺が行く。」
ゾロをおいて玄関に向かった。





玄関にはシャンクス社長がいた。

「ああ、サンちゃん。」

「どうしたんですか?社長。」

「ちょっと、頼みがあるんだ。」



あああ・・・・やっぱりな。
思ったとおりだ。
そうは問屋が卸さねえってか。


ハラでそう思いながら完璧な営業スマイルで、
「何なりとお申し付けください。社長のためでしたら
出来る限りのことをさせていただきます!」
なんて言っちゃう俺ってば、営業マンの鑑だね!


「サンちゃん、そう言って貰えると助かるよ。」
シャンクス社長はそういいながら俺を抱きしめて
また、頭をかいぐりかいぐり撫でた。



「今、ルフィから電話があった。」
振り返るとゾロが立っていた。

「シャンクス社長、ご来訪の用件はルフィから伺いました。2百の追加ですね?
今現在、ほかの社員は夏季休暇中で、俺とそのサンジしかおりませんが、
ご希望に沿うよう尽力させていただきます。」

「無理言って悪いね。火曜までに何とかなると嬉しいんだが。」


火曜?!火曜までかかってたんじゃ白砂島に行けなくなっちまう!!
今日の午後と、土日で二百ならなんとかなるかもしれないな。

「社長、あの、もし差しさわりがなければ、日曜に出来上がったら日曜に納品したいんですが、
御社にはどなたかいらっしゃいますか?」

「日曜は誰も居ないが、そのほうが都合がいいなら俺に連絡くれれば荷受くらい俺がさせてもらうよ。
サンちゃんにはケイタイの番号教えてたよな。」

「はい。存じております。ではその様に宜しくお願いします。」

「じゃ、悪いが頼んだよ!」と、シャンクスはまたバイクで走り去っていった。




「おまえ、いつも、シャンクスにあんなことされてんのか?」

「あ、何のことだ?」

「『サンちゃん』なんて呼ばれて両腕に抱かれて頭撫でられて、嬉しそうにしやがって・・・」

「だ、誰が嬉しそうにしたってんだよ。
でも、そう嫌そうにも出来ねえだろ、上得意の社長様なんだぜ!
それに、弟みたいだって可愛がってくれてるだけだしよ。」

「いい大人が弟にだってあんな可愛がり方、しねえだろ、フツウ!!」



「何絡んでんだよ、何が気にいらねえんだよ!!
お前こそ、ルフィに電話で頼まれりゃあ、俺に何の相談もなしに勝手に『尽力します』なんて言いやがって。」

「お前だってルフィに何か頼まれて断ったことなんかねえじゃねえか!」

「だけど今回ルフィが頼んだのは、シャンクスの営業担当の俺じゃなくてお前だったな。
社の電話は鳴らなかったから、お前のケイタイに直だったんだろ?
お前のケイタイってもしかしてルフィとのホットラインだったのかあ?
悪いことしちまったなあ、メールで割り込んじまってよ!!」

「てめえ、何言ってやがる!絡んでんじゃねえ!!
てめえこそ、番号交換してんだろ!!シャンクスと!」

「教えられたら教えねえわけにいかねえだろ!
知ってたって個人的に電話したことなんてあるわけねえだろ!!
大体てめえのほうが先に絡んできたんじゃねえか!!」

なんだってんだ。時間がねえってのにこんな不毛なことで言い争ってどうする。
さっさと仕事に取り掛からねえと日曜に出来上がらねえ。



「ゾロ、もうやめようぜ。仕事にかからねえと日曜に終わらねえ。
俺もお前もこの仕事をやることに異存はねえだろ。
俺は白砂島にもぜってー行きてえしな!」

「おう、俺も行きたいぞ!」

「そ、そうか!!昼飯は食い終わったか?」

「おう、いつも美味いが今日のは特別美味かった。ごっそさん。」

「そ、そうか!!美味かったか!?」


現金なモンでゾロに飯を褒められて俺の機嫌は一気に急上昇した。
鼻歌でも歌っちまいそうだ。

ゾロの機嫌も直ったみたいだ。

しかし、もともと何がそんなにゾロの気に障ったんだろう?
よくわからねえ。




3に続く
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社員 on the Beach 3  会社員×2


まあ、いつも真面目に仕事してる俺だがこんなに真剣に仕事に取り組んだのは初めてかもしれない。

金曜の夜と土曜の夜、俺とゾロは会社に泊まりこんで作業に勤しんだ。
金曜の夜は徹夜になったが、200のうち160まで仕上がったので土曜の夜は仮眠をとることにした。
後40なら日曜でなんとかなるだろうと踏んでだ。
あくまで白砂島に行くつもりだから二日続けて徹夜するのは避けたかった。

俺は近いからうちに帰ってきた。
ゾロもうちに来いといったんだが、ちゃんと引っ越すまでうちには泊まらないと言う。
変なことにこだわるやつだ。

金曜の言い争いも結局何に引っかかってたんだか分からずじまいだ。
俺はちょっとゾロって奴が分からなくなってきた。


だいたい、俺はゾロのどこがそんなに好きなんだろう?
いつから惚れてるんだろう?

ゾロと初めてあったのは大学に入学したときだ。
ゾロの存在はそれ以前から知っていたけれど。

剣道日本一の有名人だったのだ。
大学中のほとんどがゾロを知っていた。
俺の「知ってる」も、その他大勢と同じ程度だったんだが、
そのうちルフィをはじめ、今の会社のメンバーと知り合い、ゾロともなんとなく仲間になった。
ゾロに対して「凄いやつだ。」と言うイメージは
剣道のことを知っていたから最初から少なからずあったが、その外側だけだったイメージに
ゾロと言う人間を知っていくうちに内側をゾロの人間性で埋めていったら
どうしようもなく気になるやつが出来ちまった。
結局、どこだか、いつからだかは解らねえけど。

ああ、そうだ。
俺があいつに惚れてるんだと気づいてから最初に「ゾロが解らねえ。」と思ったのは
ゾロがルフィに誘われてルフィが作ると言う会社に入るということ、つまり、今の状況を選んだということだ。
俺はゾロは剣道の道をひたすら突き進むんだと思っていたからだ。
その腕を活かせる未来を選ぶんだと思っていたからだ。

まあそれを言ったら、俺も「絶対一流コックになる!」なんて
言ってたくせにルフィに誘われて営業なんかやってるわけだけど。
ゾロの未来に俺との接点はないんだろうなと思っていたところに接点が降って沸いたとでも言おうか・・・
ルフィが言ったのだ。
「ゾロは一緒にやるといってくれた。だから、サンジもいっしょにやれ!」
今思うと何が「だから」なんだ?
まあそれで結局いっしょにやってるわけなんだが・・・


なんかぐるぐる考えながら作った2人分のサンドイッチとポットにつめたコーヒーを持って会社に向かう。

たぶんゾロはまだ寝てるだろうと、そ〜っと事務所のドアを開ける。


案の定、いつかとおんなじ感じでソファから足がにょっきり出ていた。
そっと顔を覗き込んだが、あの時のように目を覚ます気配はない。
さすがのゾロもちょっとお疲れなのかもしれない。
強面なゾロの顔も寝てると結構かわいいv
そんなこと思うのはひょっとすると俺だけかも知れねえけど。
唇なんて柔らかそうだと思ったらどうしようもなく触れたくなった。
息を詰めてそっと俺のと重ねてみる。
『うわ〜、俺、ゾロとキスしてるよ〜』とか
『ああ、ゾロ、白雪姫状態〜』とか腐ったこと考えた後に、
『寝てる間に男にキスされたら、俺なら激怒して暴れるな。』
そんなことをふと思って、急いでゾロから離れて
何事もなかったように応接セットのテーブルにサンドイッチとコーヒーを並べて
「ゾロ〜!!朝飯持ってきたぞ〜!!起きろ〜!」と声をかける。

ゾロが「おお、もう朝かあ・・・・」と、でっかい欠伸をした。
寝ぼけ眼で俺をみて「お前、顔、赤いぞ。」と言った。
「とっとと俺様の作ったクソうめえサンドイッチ食って、あと40、仕留めちまおうぜ!」
と、とりあえず、ゾロの台詞は思いっきりスルーしとくことにする。
ふとゾロの顔を見たら俺より赤いんじゃねえのかってくらい真っ赤な顔をしてた。
ゾロの台詞を無視した手前、そのことには突っ込まないでおくことにした。
すげえ気になったけど。


俺たちは工場に入って早速作業を開始した。
今までの調子で行くと、検品と梱包をしたって夕方には余裕で納品できる。
そしたら、そしたら、明日からいよいよ白砂島だ!!
ちょっと俺は浮かれてたかもしれない。

「オーシャンビュウホテルはよ、その名のとおり全室ビーチが見えるんだぜv」

「たまたまダブルの部屋になっちまったんだけどよ、ダブルの部屋ってのは
上の階にしかないらしいから、ますます部屋からの眺めには期待できるんだぜ!」

「この間本屋で白砂島のガイドブック見つけちまってよ、
どうせなら昼飯も美味い店で食いたいしよ、買込んで研究しちゃってんだぜ。
俺、今、結構、白砂島通かもしんねえ!」

作業しながら俺はべらべらしゃべり続けた。
「へえ」とか「そうか」とか「お前に任せる」とか適当な相槌を返してくる。
ゾロの表情も心なしかいつもより柔らかい気がして何だか嬉しい。




あと20ってとこかと思ったとき、機械の警告ランプが点滅して
「ブーブーブーブー」と、やかましくブザーが鳴り響いた。

「うそ・・・トラブル・・か?」
俺の舞い上がっていた気分は一気に急降下した。

「ちょっと待ってろ、見てみる・・・」と
ゾロが機械の点滅しているランプ付近に行こうとして振り返って俺の落胆した顔を見るとまた俺のそばに戻ってきた。

どうしたんだろうと思うまもなく、あごをひょいと持ち上げられたかと思うとゾロの顔が近づいてきて
今朝初めて知ったやわらかい感触を再び唇で感じた。
ちゅっ、と言う音とともに感触が離れると、いきなりぎゅっと体が締め付けられた。
「調べてくる。」と言うとゾロは今度こそ機械の方に行ってしまった。



しばらく呆然としていた俺は
今何が起きたのか理解できていなかった。
「オレハ、今朝ぞろニきすヲシタ」
今ゾロに同じ感触を与えられたのだ。
俺の体を締め付けたのはゾロの両腕だった。
俺の体はゾロの胸にすっぽり収まってて。

それは、つまり、客観的にみて・・・・
「ゾロにキスされて抱きしめられた・・・・?」
何とか理解した・・・が、やっぱり呆然としたままだった。





いったいどれくらい呆然としていたんだか・・・・

・・・・あ、ゾロが戻ってきた・・・・
軽い気持ちでその顔を見たら、さっきの近づいてくる顔を思い出しちまった。
一気に頭に血が上って湯気でも出そうだ。

「機械を見てきたんだが、部品がひとつ破損してて、交換が必要だ。
社内に在庫がないんで仕入先に電話して問い合わせてみようと思う。
俺、事務所に行って電話し・・・て・・・く・・・・る・・・・・・・・・・」
平然と状況説明しだしたゾロが俺の様子を見て口篭った。

たぶん俺ほどではないけど、見る見る頬を染めたゾロが、
「さっきはいきなり、悪かった!」と言った。

「あ・・謝るくらいならすんじゃねえよ、あんなこと!!」
ゾロでも頬染めることなんて・・・あるんだなぁなんてボーッと思ったりして。

「いきなりで驚かせたことは謝る。でもな、キスして抱きしめたことを謝ってるんじゃねえ。」

「う、うわ〜、恥ずかしいこと言ってんじゃねえ!!!」

「とりあえず、俺、電話してくっから・・・・・」



なんかもう混乱することを言い捨ててどっかいってんじゃねえ、あ、事務所か、事務所だ・・・・

のろのろと俺も事務所に行ってみる。



ドアを開けたら、ゾロが受話器を置くところだった。
俺に気づいてゾロが言った。
「何軒かかけたが、出やがらねえ。」

「どこも夏休みなのか?」

「まあ、それに、今日は日曜だからなあ・・・」

「だめなのか・・・・・」

「いや、まあ、俺はもうちょっと粘ってみっからよ、おまえは昼飯でも用意してくれよ。」

「メシ・・・?」

「おう!メシは大事なんだろ?こういう時こそ美味い飯くわせてくれよ。」

「お、おう、任せとけ!!!」



料理をしている間は気がまぎれたが、2人分の昼飯なんてすぐできちまった。
まあとりあえずゾロを呼んで昼飯にしよう。

やってきたゾロの顔は「収穫なし」だと言っていた。

ふたりで手を合わせて「いただきます」をして食い始めるが、どちらも心ここにあらずだ。
それでも時々ゾロが思い出したように「うまい」と言う。
気ぃ使ってんじゃねえ、と思いながらも、その度にちょっと顔が緩んじまうほどに嬉しかった。


食い終わるとゾロが「駄目だった」報告をして、
「一軒くらい日曜でも仕事しろってんだ!!」と悪態をついた。
「まあ、もうちょっと、電話しまくってみる。お前は出来るとこまで検品と梱包やっといてくれ。」

「おう、まあ、それしかねえな。」


のろのろとスローペースで進めていた作業だが
それでも三時ごろには全てやり尽くしちまった。
後は機械が動かなけりゃどうしようもない。
あと、たった20だっていうのに。
ゾロはあいかわらず電話しまくってくれてるようだが
正直、今日休みの会社にいまさら出勤する人がいるなんて考え難い。



ゾロが工場に降りてきた。
「やっぱり無理だな。今日はどこもやってねえ。
飛行機は八時だったか?どう考えても無理だな。」


飛行機の時間は明日の朝八時だ。
どう頑張っても無理だ。
さすがに俺にもそれはわかった、が
ゾロに少しも残念がらずに口にされたことが
悔しくて悔しくて仕方なかった。

「ク、クソ・・・・残念がってんのは俺だけかよ!
すっげえ楽しみにしてたのは俺だけだったのかよ!!
平然と無理だなんて言いやがって、この馬鹿野郎!!」

「なんだと・・・・?」

「俺がどれだけ楽しみにしてたかなんて、お前に分かるわけないよなあ!!」

「何言ってやがる!俺はまだ諦めてねえぞ。
お前とダブルベットで寝れるチャンスなんてもうないかも知れねえんだぞ!!!」

「え、ええっ?!チ、チャンスってお前・・・・・・」

「お前ははもう諦めちまったのか?」

「だ、だってお前が無理だって言ったんじゃねえか!?」

「確かに朝八時の便に乗るのは無理だ。
だがな、その日のうちに島に着ける便がありゃあなんとかなんじゃねえのか?」

「そ、そうか!そうだな!!諦めんのはまだ早いな!!」

「おう!仕入先さえやってりゃそれほど特殊は部品じゃねえからすぐ手に入ると思う。
後20なら午前中でなんとかなんだろ?エアチケットさえ手にはいりゃあまだ行けるぜ!」

「よし!!!早速ネットでエアチケットGETするぜ!!!!」



と、意気込んでみたものの、夕方の白砂島行きは一便だけしかなく満席だった。
他に島に行く方法がないかと調べてもみたが
船便は廃止されたらしい。

・・・ん?なんかさっき肝心なことを凄くすっと流してしまったような気もするが・・・?
あ、まあ、なんにせよ、島に行けなくちゃな。

最悪月曜に着けなくても、ホテルは二泊とってあるんだから
火曜についても一泊はできると火曜の便も調べてみたが朝の便も夕方の便も満席だ。

「クソ・・・駄目か・・・・ああ、もう最後の最後でなんでこんなについてねえんだよ!!!」

「チケット取れねえのか?」

「だ、駄目だ!!もう白砂島に行く手はねえよ。」
俺はがっくりと項垂れて肩を落とした。

「そうか・・・残念だが今回は運に見放されちまったみたいだなあ。
まあ、もう、二度と行けねえってわけじゃねえんだし。
はあ、そう上手くはいかねえよなあ・・・」




「・・・ところで、ゾロ、さっきのチャンスってのは、その、どういう意味だ?」

「ああ?何の話だ?」

「と、とぼけんじゃねえよ!さっき言ったじゃねえか!」

「ああ、ダブルベットのことか?そのまんまの意味だ。まあその、期待してたってことだ。」

「な、な、な、な、な、なにをっ?!」

「全く鈍いやつだなあ・・・お前を抱けるかも知れねえと思ってたんだよ」

「!!!!」

「部屋がダブルになるってメール貰ったときによ、俺、鼻血出しちまってよ。
そばにチョッパーが居たモンで大騒ぎになっちまって・・・・」

「そ、そういやあん時だけ返事がちょっと遅かったっけ・・・って、鼻血?!」

「そんで、その気持ちを込めてだな、『全く問題ない』って返事したんだよ。
この『全く』の二文字に込めた俺の気持ちに気づけよ、てめえ・・・・」

「う〜、ぅ分かるか!!!込めるならもっと分かりやすく込めろ!!
んなモン殆ど暗号だろ!!」

「じゃあ、鈍いお前にでも分かるように単刀直入に言うぞ。
俺はお前に惚れてんだ。もう随分前からな。」



「は?嘘だろ?」

「まだそんなこと言うのかよ。まあ所謂、一目惚れってやつだ。
大学の入学式で見てからずっと気になってた。」

「それって4年以上前じゃねえか?そんなに何で黙ってたんだよ?」

「言えるわけ無いだろ?お前大学ん時、おもいっきり女好きだったじゃねえか。
ナミやロビンにメロリンだったし、俺がそんなこと言おうモンなら蹴り飛ばす勢いだったじゃねえか。
だからお前が手に入るなんて思ってなかったし、気持ちを伝える気もなかったんだ。」

「俺も・・・俺もお前が好きだ。でも気持ちを伝えちゃいけないと思ってた。」

「お前が白砂島に誘ってくれて、もしかすると少しは好いていてくれるんじゃねえかなって思えたんだ。
だからやっと伝えられた。
実はこの会社に入ったのもお前との関わりを何とか残したいからだったなんていったら笑うか?
ルフィがお前も誘うつもりだって言うから『サンジを口説き落としたら俺も入ってやる』って言ったんだぜ。」

「ええっ?!ルフィは俺には『ゾロは一緒にやるって言った。だから、お前もやれ』って!」

「「・・・・・・・・」」

「「あいつって何も分かってないんだか、すべてお見通しなのか・・・・」」

「じゃあ、ゾロ、明日納品が済んだらお前の引越ししよ!!
会社の軽トラ借りて!」

「そうだな、そしたら晴れてお前と同棲だ!」



旅行はポシャっちまったけど、俺の目的は
ゾロの独り占めだからな。思いっきり目的達成だ!
結局、引越し前の日曜の夜から同棲はスタートしちまったんだけど。






月曜の昼ごろ、200耳を揃えて納品に行った。

「おお、サンちゃん!昨日連絡待ってたんだが、え、トラブルで180で止まっちまったって?!
なんだ、あと20なら、それだけ週末くらいでも良かったのに。」

「「な〜ん〜だ〜とぉ〜」」

「え、どうしたんだ?2人とも。え、2人で行くはずの旅行がこのセイで駄目になったって?!
サンちゃん、ロロノアと2人で行くつもりだったのかい?!」

「大きなお世話です、社長!!」



しばらくしてシャンクスから2人分の温泉旅行のチケットが送られてきた。


「おしっ!!今度は温泉だぜ、ゾロ!!」





やっとこさ THE END


0

 

オレ、天使  会社員×2



俺たちは同棲している。
相思相愛の恋人同士が同じ家に住むことを同棲と言うなら、間違いではないと思うんだが
どうも雰囲気的には同居と呼んだほうがいいような気がする。
もう一歩進んで(進んだのか?!)合宿といってもいいかもしれない。


あいつの事を最初に見てからもうすぐ5年になる。
それは大学の入学式だった。
あんなに綺麗な人間を見たのは初めてだった。
だから俺は人間でなく天使かと思ったくらいだ。

日ごろの言動を見聞きして、会話することもあり
あいつが結構柄が悪く、喧嘩っ早いやつだと知り
最初の印象とはかなり違ったものの
それでも俺の中であいつは天使であり続けた。


あいつが彼女でも作って1対1の付き合いを始めたりしたら
俺の中のあいつも少しは人間になったんだろうが、
不特定多数の女に分け隔てなく、賛辞を惜しげもなく振りまき
そのくせ個人的に申し込んだりはせず、申し込まれもせず
女好きなのに恋人は作らなかった。

噂によると男からのお誘いはあったらしいが、
たぶんそいつだろうと思われる男は
2.3週間姿を見せないと思ったら痛々しい包帯姿で登校してきたりした。
喧嘩っ早いだけあって、あいつはなかなか強いのだ。

男に好意を持たれるなんて我慢ならねえんだろうなと
俺が思っても、当然だろう?

そう、俺は人間だと認識しないままに
あいつに惚れていた。

しかし俺が認識できなくとも
実際にはあいつは人間で、しかも男なのだ。
そこのところは一応理解しているのだ、俺も。

だから気持ちを伝えず、ずっと見ていた。
伝えれば、嫌われ、避けられるだろうと思ったからだ。

そして不毛な大学生活を経て
社会人になってから急に俺たちの関係は進展した。
冒頭に言ったような間柄になれたのだ。
信じられないことにあいつも俺に惚れてくれたのだ。
しかし、進展はそこでぱったりと止まった。

あいつが手を出したくても出せない
俺にとっての天使であることに変わりはないのだ、未だに。
一緒に住み始めても、気持ちを伝え合っても、
俺が「抱きたい」と思っていると聞いても
あいつが拒否する態度を示しもしないと言うのに、
実際には抱けない。
大事すぎて手が出せないと言うのはこういうことなんだと初めて知った。

あいつの名はサンジ、
今俺の前で無防備に居眠りしている。



その俺の前で拒否どころかこの無防備な状態はなんだ?
こんなに綺麗で、こんなに無防備で
よく今まで無事に過ごしてこれたもんだと思う。

誰の前でもこうなのか?
まあこいつはこれでも歴とした男だから大丈夫だよな。
いやでも、あのシャンクスの社長はどうみても
こいつに好意をもってるみたいだった。
そんなやつの前でこんなだったら「どうぞ」と言ってる様なもんだ・・・
俺らしくないといわれるかもしれないが、それでもやっぱり
心配で、心配で、心配で、心配だ!!

実は一番心配なのは俺だ。
こんなサンジと一緒に暮らしていて
いつまで手を出さずに居られるだろう。
いまは無理に手を出さないで置こうと思っているわけではない。
俺の気持ちが「大事なんだ」と言っているから。
だが、いつかタガがはずれてしまうかもしれない。
その時きっと俺の天使は心身ともに傷ついてしまうだろう。
俺に惚れてると言ってはくれたが、
さすがに男の俺に抱かれたいわけはないだろう。

気がつくと俺はサンジの綺麗な蜂蜜色の髪を弄んでいた。
思わずやってるところが怖いところだ。


「はあ・・・・」

ため息をひとつついて、目の毒だからベットに連れて行こうと思い、
お姫様抱っこをしてサンジの寝室へのいつも開けっ放しのドアを抜けて
やたらとでかいサンジのベットにその体を横たえて、おやすみのキスをして立ち去ろうとした。
いきなり俺の首に長い腕がぐるんと巻きついてきた。

「どこいくんだ?」

「どこ行くって・・・お前、起きて?」

「なんだ・・・・・・やっとその気になったのかと思っちまったじゃねえか、ちくしょう・・・」

「ああ?なんのことだ?」

「な、何でもねえよ、クソマリモ!!」

「何怒ってんだ?お前。」

「一緒に住んでみたら、気が変わっちまったんだろ!」

「言ってる意味が全然わかんねえんだが?」

「俺を好きじゃなくなっちまったんだろって言ってんだよ!」



「?!?!?!なんでそうなる?」

「だ、だ、だ、だって・・・・ダブルベッドで俺と寝たかったんじゃなかったのかよ?!」

「ああ、それは今でも変わっちゃいねえ・・・けど、俺、その、やべぇし・・」

「何がだよ?」

「寝るだけで済む自信がねえ。」

「済ませやがったら、てめえ、追い出してやる!!」

「は?」

「ダブルベッド代も請求してやる!俺の純情を傷つけた慰謝料もふんだくってやる!!」

「こ、このベッド、もともとお前が使ってたんじゃないのか?」

「か、買い換えたんだよ!おまえが引っ越してきた次の日曜に、
おまえが道場に行ってる時間を指定して搬入してもらったんだよ。
前のはそん時持って帰ってもらった。」

ゾロはぼんやりと思い出していた。
そういや、今はいつも開いてるサンジの寝室のドアは
引っ越してきたときには閉まってたっけか?
ある日開いていたドアから見えたベッドが
部屋をやけに占領していて、
思わず「でかいベッドだな。」と言ったら、
サンジは満面の笑みで「ダブルベッドだ!」と嬉しそうに応えたっけ。

「俺がダブルベッドでおまえと寝たかったと言ったからか?!」

「うるせえ、もういいってんだよ!」

「ちくしょう、本人が俺のタガをはずしてどうすんだよ!
俺は俺の天使のおまえを大事にしたいんだよ、煽るんじゃねえよ!!」

「は?オレ?オレ、天使?!」

「大事なんだ。辛い思いさせたくはねえんだ。」

「ぶわはははははっっ!!!」

「・・・・・・」

「オレはニンゲンでオトコで・・・抱いてみたら、悪魔かもしんねえぜ?」

「んなわけあるか!!」

「んじゃあさ、大事に抱いてくれよ、ダーリンvハジメテなんだ・・・」







END
                      ’06.1.5

0

 

今度は温泉に行こう!  会社員×2


またまた、朝の出勤の準備をしながらぼんやりTVを見ていたら、碧光温泉の特集をやってた。

「なあなあ、ゾロ。シャンクスからもらった温泉のチケットってこの碧光温泉じゃなかったっけ。」

「ああ?そういやもらったっけそんなの。」

「すげえ良さそうだぜ、この温泉。
 折角もらったんだしよ、いこうぜ!今度こそ!!」

「そりゃいいけど、休みもらって行くわけにもいかねえし、週末なんて空いてんのか?」

「宿が空いてたら行けるのか?
 週末用事とかねえ?」

「ああ、俺の週末は全部てめえのモンだからな。」


こんな赤面ものの台詞を平気でさらっといいやがるゾロと俺は恋人同士だ。
まあ、いろいろあったが名実ともにできちまって、只今絶賛同棲中だ。
とはいえ、あいかわらずゾロは俺を大事にしすぎる傾向がある。
同棲してて一度出来ちまったら後は堰を切ったように・・・かと思いきや、
俺のからだの負担を考えると、とか言って週に一度だけ週末にそれは大事に・・・なんだ。
もしかしてゾロって淡白なんだろうかとも思ったんだが、
どうやらそういうわけではなくかなり我慢しているみたいなんだ。
ゾロの気持ちは嬉しいが、我慢すること無いのにと思ってる。

で、まあ、それならせめていい雰囲気の温泉旅館で週末過ごしてみるのもいいかなってところなわけだ。
確かに思いっきり最盛期に思いつきでだから宿を取るのは難しいかもしれない。
クリスマスイヴなんて取れたら最高だけど、まず無理だろうなあ。
『クリスマスプレゼントに我慢しないで好きなだけ俺を召し上がれv』なんて言ったら
ゾロはどうするだろう。

「おい!遅刻すっぞ!!なに真っ赤になって、『ぐふふっっっ』って笑ってんだよ。不気味だぞ!」

「覚悟しとけよ、ゾロ!!」

「何がだ?」

「内緒だvv」

ちくしょう!俺はちょっと欲求不満なんだよ!!馬鹿野郎!!!



*********************************************



昼休みに宿を探してみたら、やっぱり駄目だった。
夏にやったから分かってる。
キャンセル待ちをするにチェックを入れとくんだ。

「やっぱり駄目だったけど、俺は諦めねえぞ〜!!」と気合を入れて
またしても社長に呼ばれてるんで潟Vャンクスへ向かう。


いつものように社長に頭撫でられたり、肩を抱かれたり、抱きしめられたりと
セクハラを受けながら仕事の話は一段落した。

「ところでサンちゃん、温泉には行ったのかい?」

「あ、チケットありがとうございます!ふと思い立ったのが今朝でして、流石に宿が取れませんでした。
 ホントは年内に行きたかったんですが、年明けになっちまうと思います。」

「やっぱりロロノアと行くのかい?」

「もちろんです。」

「俺とにしない?」

「しません。」

「はあ〜・・・ぞっこんだね、サンちゃん。しかたないなあ。
 可愛いサンちゃんにクリスマスプレゼントをあげよう。
 俺たち毎年あの温泉の料理旅館でクリスマス迎えることにしてるんだが
 今年はサンちゃんに譲るよ。
 毎年行ってるから今年くらいは家で迎えることにするよ。それもいいだろう。」

「え、ええっっ!?ホ、ホントですか?
 で、でもその相手の方、社長の恋人なんでしょう?
 ちゃんと了解取らないとまずいんじゃないですか?」

「いつも行くの面倒だとか言ってるから問題ないと思うけど。」

「いや、でも、そのつもりされてるでしょうし・・・」

「じゃ、今了解取るよ。」
と言うと社長は内線で誰かを呼び出した。
社長の恋人って社内の女性なのか?

「ああ、ちょっと会議室まで顔出してくれるか?何の用かって?クリスマスの温泉の事なんだけど・・・行かねえって?
 実はサンちゃんに譲ろうかと思って・・・是非貰ってもらえって・・・そんな、お前ってホント誘い甲斐のない奴・・・」
はあ〜っっとため息をつきながら電話を切ったシャンクスに思わず訊いてみた。

「社長の彼女って社内の人なんですか?」

「ああ。まあ正確には彼氏だけどね。」

「――ええっ!!そ、そうなんですか!?」

社長、マジでホモだったのか!!(他人の事言えた義理じゃないけど!)
しかも相当年季がはいってるっぽい!!
俺ってホントに狙われてたのか?!
もしかしてヤバかったのか?!冗談だと思ってた!!

ちょっとシャンクスへの認識を改めながら、
クリスマスイヴイヴの12月23日の温泉宿を確保することが出来たのだった。



***************************************************************



今度こそゾロと二人で旅行に行けるんだv
宿を確保できたことが嬉しくて社に帰ると
取るものも取り合えずゾロの所に行って報告した。

「シャンクスの取ってた宿を譲ってもらっただと?」

「ああ、そうだけど・・・なんか気にいらねえのかよ。」

「そのために無理難題吹っかけられたりしてねえだろうなあ?」

「そんなのねえよ。おまえなんか凄くシャンクスの事悪く思ってねえ?」

「だってなあ・・・あいつマジでお前の事好きみたいだし・・・また頭とか尻とか撫でられたんじゃねえのか?」

「撫でられるくれえいいじゃねえか。別に減るもんじゃなし。」

「減らなきゃいいってもんじゃねえだろ!俺は嫌だ!俺以外の奴がお前にあんなふうに触んのは!!」

「いや、あの、頭だけだし撫でられたのは。お前が思うような深い意味はねえし。
 それにシャンクスにはちゃんと恋人がいるんだぜ!」

「ああ、副社長だろ?」

「な、何で知ってんだよ!!」(俺は誰だかはっきり知らなかったぞ!)

「ああ、なんとなく見てりゃ分かる。」

「さすがホモ同士だな〜。」

「!!俺はホモじゃねえ!お前は好きだが他の男なんか冗談じゃねえし!!」

「ああ、悪かったよ。そんなおこることねえじゃん。
 で、宿が確保できたんだから行くよな?
 言っとくがシャンクスはお前と行くことを知ってて譲ってくれてんだからな。
 あ、それと、せっかくクリスマスだから俺からのプレゼントつきだ。」

「プレゼント?」

「お前なんか俺の事気遣っていっつも我慢してるみたいだからさ、たまには目一杯俺を召し上がれvv」

「―――ぐふっっ!!」

「う、うわっっっ!!―――た、大変だ!チョッパー!!ゾロが鼻血噴いて白目むいて倒れちまった〜!!」


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++



まあ、いろいろあったが今回は無事当日を向かえ会社から借りた軽トラで碧光温泉に向かう。
何だか妙にゾロの目が怖い気がする。
気のせいだよな・・・

途中俺も運転代わるぞとゾロに言ったら、

「帰りのために道覚えとかねえとな。帰りはお前の道案内は期待できねえから。」と言う。



何だか深い意味がありそうでどういう意味なのか聞きそびれちまった。
帰りは俺はどうなってるって言いたいんだ・・・・


            END

                          2006.12.22  かのまま


0

 

ミュージック・アワー  プロデューサー×コックでDJ



おれの名はサンジ。コックだ。
コックなんだが、まあ成り行きで週に一回、ラジオ番組のDJをやってたりする。
DJやってるときは、サンディってことになってる。
コックだってことも内緒だ。
ただの料理好きな男ってことにしてある。

『サンディのメロリンミュージック・アワー』
いつもの軽快なテーマソングに載せてタイトルコールが流れて2時間の番組が始まる。

「今夜も始まっちまったぜ、『サンディのメロリンミュージック・アワー』。
この番組は麗しいレディからのリクエストのお葉書がなきゃ始まんねえ。
素敵な恋のエピソードを添えての電話でのリクエストも待ってるぜ!
お美しいレディからのリクエストが嬉しいんだけどよ、まあ野郎のも気が向きゃあ読むかもしんねえ。
ためしに送って見やがれ。んじゃあ、早速今日の一曲目・・・・」




もう半年くらい前になるかな。
プロデューサーやってるロロノアって奴が、この番組を作ってる他の数名と一緒にうちの店に飯を食いに来た。

おれはその時ちょうど久しぶりに来てくれた常連のナミさんをおもてなしするのに大忙しで、
そんな野郎共が来てるのなんてこれっぽっちも知らなかった。

おれはいつものようにナミさんの美しさ、可愛らしさを思いつくままに口からあふれさせていた。
おれにレディを褒めさせたらもう立て板に水どころじゃねえ、ナイアガラの滝もまっつぁお!てなもんだ。

で、それを脇で聞いてたロロノア・・・おれはゾロって呼んでる。
そいつがおれにラジオ番組をやらせてみようと思ったとかで、直接おれにじゃなく、ジジイにその話をしやがった。

ジジイってのは、まあおれの実の祖父にあたる男だ。
見た目は似ても似つかねえが、料理の腕はそっくり受け継いだと思う。
だからジジイが創ったこのレストラン・バラティエも、おれがそっくり受け継ぐのは当然だと物心ついた時から思ってた。
おれは19の今まで、わき目もふらずただひたすらにそのための努力を惜しまず、出来る限りの事をしてきた。
溢れんばかりの才能と真摯な努力が実を結びおれは一流コックとなった。
まあ、ジジイは「何言ってやがる!一億年早ぇ!!」とか言ってるが、それでもおれをここの副料理長にした。
おれの人生順風満帆だった。
他の仕事をするなんて思ったこともなかった。

ゾロの話を聞いたジジイは即OKした。
「使いモンになるかどうかわからねえが、やらせてくれ。駄目だったらすぐお払い箱にしてかまわねえ。
深夜放送になるんなら、前日の午後と、当日の午前中は休みにしてやる。全面的に協力してやる。
あれがやるかだと?やらせるから大丈夫だ。」

後でその話を聞いて俺は絶句した。
なんだよ、そりゃあ、だ。
何でおれがそんなことしなきゃあなんねえんだと食って掛かった。

「てめえはずっとこの店を継ぐことしか考えてきてねえだろ。
他の事にはこれっぽっちも興味をもたねえで、何にも知らねえまんまコックになろうとしてやがる。
他人に使われて、やったことのねえ仕事をして少しはてめえの世間を広げてからだ。
ちっとは人間的におおきくなってからならこの店をやることを考えてみてやる。
やらねえってんならてめえにこの店は任せられねえ。バラティエはおれ一代で仕舞いだ。」

今更、バラティエを継がない人生なんぞ考えられねえ。
ジジイもなんだかんだ言ったって、孫のおれが継ぐことを喜んでくれてるんだと思ってた。
ジジイは言い出したら曲げねえ男だ。今までの経験で嫌って程分かってる。
どうやらそのラジオ番組ってのをやんねえとおれの未来はねえみたいだ。
なんでそんなことをやんなきゃなんねえんだか、そもそもおれに出来るんだかわからねえ。
それでもとりあえずやってみなきゃしょうがねえみたいだ。

で、数日後。
わけわかんねえだろうってことで、ゾロがおれに話をしに来ることになった。
前回、おれはまったく知らなかったからゾロと会うのはこのときが初めてだった。

「突然でワリィな。驚いただろ。
おれがてめえの声に惚れこんじまってどうしておれの番組をやって欲しくてな。無理言ってすまねえ。
てめえはこの間みたいに思ったことべらべらしゃべってくれてりゃいい。
全ておれが責任を持つ。何の心配もいらねえ。」

おれはどうやらこいつが結構気に入っちまったみたいだ。
おれの声に惚れこんだと言われてなんだかやけに嬉しかった。
こんな説明にも何にもなってねえ様な話を聞いて出来るだけ頑張ってやって見ようなんてどういうわけだか思い始めてた。




時間だ。そろそろ来るはずだ。聞こえてきた!
ゾロのバイクの音。

「お迎えが来たぞ。」
「おお、わかってる。じゃ、行って来る。」
「おう、頑張って来い。」

実際、おれは頑張ってると思う。
言ってみりゃ、やりたくてやってることじゃないが、出来るだけの事はしてるし、番組がうまく行くに越したことは無いと思う。
スタッフは結構いい奴ばっかりで気に入ってる。番組の人気が上がればスタッフも喜んでくれる。
たぶんそのためにおれは頑張ってるんだ。

送り迎えはゾロが言い出したことだ。
レディじゃねえんだしと一応辞退したんだが、「無理言ってやってもらうんだから」とひかねえんで頼むことにした。
今となっては実は結構楽しみだったりしている。バイクに乗っけられて走るのは意外に気持ちいい。


局に着いて、早速番組の下準備をする。
おおよそのハガキ選びなんかはスタッフがしてくれてるが、読む前に一度目は通しておく。

「このはがき・・・」と、ゾロが一枚のハガキを差し出す。「お前の事知ってるやつだろうな、こいつ・・・」

「ああ、声聞いてりゃあバラティエの常連さんとかなら分かるだろうな。」

「こういうのは全部没だ。それと、お前の見てくれの事は言うな。
金髪碧眼だなんていったらリスナーが変に興味持っちまうかもしんねえし。
その他のお前がお前と分かるようなことは全部言わねえほうがいい。追っかけとかが付いたら面倒だ。」

「レディに追っかけられるってのもちょっと経験してみたいかもしんねえよなあv」

「駄目だ。洒落になんねえ様なのもいるかもしんねえ。
てめえをこんなことに引き込んじまった責任があるからな、俺の言うとおりにしてくれ。頼む。」

「責任ねえ・・・わかったよ。きっとその方が良いんだろうよ。」

「お前が思ってる以上にこの番組は人気があるんだ。正直予想外なくらいに。ちょっとお前も自覚しろ。」

「へえぇ、そうなんだ。物好きな奴が結構いるんだなあ。なあ、ゾロはそれ、嬉しいか?」

「あ?」

「人気有るっての・・・」

「あー・・・番組はな・・・・だが、てめえの人気が上がるのは・・・・困る・・・」

「困る?困るって事無いだろ、別に。」

「困るってえか、その、嫌なんだよ。」

「ふう〜ん、まあいいか。ゾロがいやだってんならそうなんねえようにする。」

「お前って素直な奴だったんだな。」

「へ?初めて言われた気がするが・・・」

「もしかして、おれのこと信頼してたりするのか?」

「ん〜、結構そうかも。」

「むやみに信頼なんかすんな、そんな簡単に。」

「変なこと言うやつだな、ゾロって。」

「・・・そ、そうだった!言っとかなきゃなんねえ事があったんだ。
すまねえが、上からのお達しで番組の真ん中あたりで10分ほどアイドル歌手と対談っぽいことしなきゃなんねえんだ。」

「ええっ?!そんな事できっかなあ、おれ・・・・」

「大丈夫だ。いつもの女に対するあれでいい。褒めまくってりゃいいんだ。
そうすりゃ向こうが気持ちよくしゃべってくれるだろ。もし詰まるようならこっちからカンペ出すからよ。」

「可愛い娘ならできそうだ。」

「可愛いんじゃねえか、アイドル歌手なんだからよ。」

「知らねえの、その娘の事?」

「あんまり興味ねえんだ。」

「こんな業界にいてまずいんじゃねえの、それって。」

「別に困ったことねえぞ。」

ゾロって、結構変わった奴かもしんねえ。でも何だかおれはこいつに妙に気を許してる気がする。






時間が来て、いつものように番組が始まる。
たわいの無い事をくっちゃべっては音楽をかける。
はがきを読んでは音楽をかける。
リスナーと電話でしゃべってリクエストを聞いて音楽をかける。

だが今日はいつもと違うことがあったんだった。
アイドルと対談、ホントに何とかなるんだろうか。

『ゲストを招きいれろ』とカンペが出た。

「今日はゲストが来てくれてます。ど〜ぞ〜!!」

スタジオのドアを開けてかなり可愛い娘が入ってきた。
そういや名前も聞いてなかった。
あんまりTVとか見ねえんで知らない娘だった。
しょうがねえ、自己紹介してもらお!

「おお〜、噂どおりすっげえ可愛いなあ!折角なんで自己紹介してもらえますかぁ?」

聞き出した名前を連呼しながら、もう、あそこが可愛い、ここが綺麗だといいまくってみた。
彼女の機嫌もすこぶるよさそうだ、よかった〜。
そろそろ10分くらい経ったかと言うところで可愛い、綺麗だを連呼してたおれに彼女が言った。

「サンディさんも男の方なのにお綺麗ですね。とっても綺麗な金髪と碧い瞳で!
それにそのクルンって巻いた眉毛がとってもキュートだわvv」

ゾロにおれの外見については何も言うなと言われてたけど、おれが言ったんじゃねえし。
目の前にいる娘が言った見てくれの事を否定するのはそりゃ不自然だよなあ・・・

「う、嬉しいなあ君みたいに可愛い娘にそんな風に言われるなんて〜vv」と言いながらブースのほうを見る。
『新曲のタイトルを聞け。かけて終わる。』とゾロがカンペを顔の前に掲げている。
表情は見えないがなんとなく怒ってるような気がする。
しょうがねえじゃねえか、この場合。


後半何をくっちゃべったのかよく覚えてねえけどなんか適当なこといって曲かけて、
はがき読んで曲かけて、リスナーと電話で話してリクエスト聞いて曲かけて、
なんとなく終わった。

スタジオから出たらゾロが凶悪な顔で立っていた。
確かに怒っちゃいるが、おれに対してじゃなくどうやら自分に怒ってるみたいだ。

「すまねえ、あの女に言っとくべきだったんだ。てめえの見てくれに触れるなと。
誰だっててめえを見たら言いたくなる。金髪と碧い瞳が綺麗で眉毛が可愛く巻いてると!」

「え・・・?」

「今日は出待ちがあるかもしんねえから非常口から帰るぞ。」

「出待ち?なんだよそれ?」

「今までなんかおもしれえDJだと思ってた奴が金髪碧眼の綺麗な男だったんだぞ。
しかも可愛く眉毛が巻いてるって聞いたら一目見てみたいと思うだろ、普通。
近くの奴なら局に来て出口で待ってかもしんねえってことだ。」

「んな奴いるのかあ?」

「おれならとりあえず行ってみるぞ!!」

「案外物好きなんだなあ、ゾロ。」

「そういうわけだから、おれはバイクを非常口に回してくるから非常口の近くでまってろ。」



バイクを取りに行ったゾロを見送って言われたとおり非常口に行くことにする。
だけどなんだよ、「眉毛が可愛く巻いてる」ってのは。
なんか彼女が言ったのとニュアンス違わねえか?
それに、確かに俺は金髪で瞳は碧いけど、別に綺麗なんてもんじゃねえと思うけど。


****************************************************




番組スタッフのなかに面白い奴がいる。
ルフィとウソップといって、ゾロの補佐をしている。ゾロより幾らか年下で、俺と同じくらいだと思う。
ウソップはうそつきだ。それに対してルフィは絶対ウソは言わねえ。
対極に位置する2人だが、凄く仲がいいのだ。
ウソップは嘘をつかないルフィを信頼しているし、ルフィは人を幸せにする嘘を全力でつくウソップが大好きだ。

俺もこの2人が好きだ。三人で番組の打ち合わせがてらだべることもよくある。

「ゾロがこの番組は意外に人気があるって言ってたけどホントなのか?」

「ああ、ホントだぞ!最初の頃は人気あるように見せようってウソップがハガキ書いたりしてたなあ!」

「バ、バカ!そんなこと言っちまってどうすんだよ!!ホントに馬鹿正直なんだから、ルフィおめえは!!」

「そんなことしてくれてたのか?!・・んじゃおれが読んでんのウソップが書いたヤツ?」

「今はやってねえよ。そんな必要ねえからな!整理が大変なくらいほっといてもくるんだからなあ、ハガキ。
そうそう、人気があるっていえば、先週、非常口から帰っただろ、サンジ。」

「ああ、ゾロが出待ちがいるかもしんねえとか言うからよ。」

「ホントに居たんだぜ。まあ5人くらいだけどな。なあ、ルフィ!」

「おう、俺も見た。5人くらいの男が玄関でサンジを待ってたぞ。ゾロの読みはあたりだったな!」

「お、男だって?麗しいレディじゃねえの?!」

「あんな時間に女はこねえだろ。」

「レディになら追っかけて欲しいけど、男なんて冗談じゃねえや。」

「まあ、ゾロが守ってくれるから心配ないって。なにしろサンジに惚れこんでるからなあ。」

「ああ、俺の声にだろ?」

「え?だけじゃねえと思うけど?」

「サンジ、気付いてなかったのかあ?そうでなきゃあ自らバイクで送り迎えなんかしねえよ。
家と局との短い距離でさえ、深夜の可愛いサンジに何かあったらともう、心配なんだろ、ゾロ。」

「サンジも嫌いじゃねえんだろ、ゾロの事。嫌いな奴の背中にくっついてバイク乗ったりしねえよなあ?」

「えええっっ・・・・・」

回りからそんな風に思われてるなんて思っても見なかった。ひでえ勘違いだ。
ゾロは無理に頼んだ責任感からやってるだけなんだ。
おれだってバイクの爽快感が気に入っちまっただけだ。
ずるずるやってもらってた送り迎えだが、そんなこと聞いちゃあもう続けてもらうわけにはいかねえ。
ゾロがそんな風に思われんのはなんか嫌だ。

そう思った時、いきなりドアが開いた。
入ってきたのはよりによってゾロだった。

「ん?どうした?サンジ。顔が真っ赤だぞ。」

「ななな・・なんでもねえ!!あ、ゾロ!き、今日からもう送ってくれなくていいからな!」

「ああ?何言ってんだ。先週やっぱり出待ちの男がいたって話しだ。あぶねえから送っていく!!」

「いいって言ってんだろ!!」

「何で急にそんな事言うんだ?今日来るときは普通に乗って来たじゃねえか。
・・・・・てめえら、サンジになんか吹き込んだんじゃねえだろうなあ・・・」

強面で眼光鋭く、その上先輩にあたるゾロに睨まれてウソップとルフィは三歩ほど後ずさった。

「前から言ってるだろ!おれはレディじゃねえんだ!!自分の身くらい自分で守れる!!!」

「ああ、そうかよ!おれも好きで送り迎えしてるわけじゃねえんだ。てめえがそうまで言うんなら勝手にしろ!」


ほらな・・・・
やっぱりこいつらの勘違いだったんだ。ゾロがおれに惚れてるなんて。

だけど、どうやらおれがゾロを好きだってのは勘違いなんかじゃなかったらしい。
だっておれは結構こたえちまってる。
ゾロに「好きで送り迎えしてるわけじゃねえ」って言われた事に。

おれは何とか変な笑いを張り付かせた顔で「ああ、勝手にするぜ!」と言って部屋を出て行くことに成功した。

********************************************


なんでこんなことになっちまったんだ。

勘違いじゃねえとおもうんだが
最初は確かにちょっと無理やりに送り迎えをやりはじめたが
最近じゃあいつも結構おれのバイクに乗るのを楽しんでると
気に入ってるんだとおもってたんだが・・・

売り言葉に買い言葉で「好きでやってんじゃねえ」なんて言っちまったが、
誰があんな面倒なことイヤイヤ出来るっていうんだよ。
どんなに無理やり口説き落としたパーソナリティーでも
送り迎えなんかしたことねえってんだ。

それにしてもやっぱりあいつに興味持っちまう奴は少なからずいるんだな。
そんな奴らが出てきたって言うのに送っていけねえなんて
あいつがどれだけ強かろうとそんなことは関係ねえ。
取り合えずおれが直接見届けねえと心配で、心配で、心配でしようがねえ。
おれはいつからこんな心配性になっちまったんだろう。
だいたいおれが心配する必要なんてありゃしねえっていうのによ。
とりあえず、何で急にこう言う事になったのかはルフィとウソップを問い詰めるしかなさそうだな・・・


「ウソップ、ルフィ・・・・・」

「な、なんすか。ロロノアさん。」

「てめえらなんか知ってんだろ・・・」

「え?なんのことっすか?」

「とぼけてんじゃねえぞ!サンジのことだ!何で急にあんなこと言い出したんだ?!」

「あんなことって?」

「てめえら、とことんとぼける気か?!」

「いや、とんでもねえ!もしかしてあのことですか?」

ここでそれまで黙っていたルフィがサラッと言った。

「サンジはな、ゾロがサンジに惚れ込んでるって、
サンジもゾロを好きなんだろって言ったら
送り迎えは断るって言い出したんだ。」

「何でそんなこと言ったんだ、てめえら!」

「そうだと思ったからだ。違うのか、ゾロ?」

「サンジがそう言ったのか?」

「サンジはゾロが惚れてるのは自分の声だけだと思ってるみたいだったぞ。」

「そうそう、そう言ってましたよ。案外鈍感なんだな、サンジ。」

「で、あいつもおれに惚れてんだろみたいなことまで言ったのか、てめえら!?」

「え・・・いや・・・」

「言ったぞ!」

「そうか・・・だから・・・冗談じゃねえってわけか・・・」

「それはどうだか。おれはサンジじゃねえからわかんねえ。」

「とにかくこのまま番組が始まっちまうのはよくねえかも・・・。」

「ああ・・・あいつは素人だからな。気持ちが乱れてちゃ番組なんて無理だろう。
なんとかなるかどうかわかんねえけど、とりあえず話してみる。」


いつもその辺をうろうろしてるのに今日はそこらへんに見あたらねえ。
居た事など殆ど無かった控え室のドアを開けたらそこに居たので少し驚いた。

「うお!こんなとこに居やがったのか?」

「なんだよ、おれの控え室におれが居て悪いかよ。」

「んなこと言ってねえだろが!話があるんだ。邪魔するぜ。」

「お、おれには話すことなんかねえ!」

「うるせえ!つまらねえ事言われて取り乱しやがって
そんなで番組できんのかよ?!」

「つ、つまらねえことで悪かったな!!番組くらい楽勝だってんだ!」

「おれはお前がおれに惚れてるなんて思ってねえからよ、安心しろ。」

「・・・そこじゃねえだろ、問題は!お前、おれに惚れてると思われてんだぞ!あいつらから!!」

「ああ、そんな事も言ってたな。別に問題ねえけど。」

「問題ねえって・・・そんなわけに行くかよ。」

「ああ、お前に迷惑かけちまうか・・・」

「おれがじゃねえ、お前が変に思われんのが嫌なんだよ!」

「まあ、しょうがねえだろ。事実だからな。」

「・・・・へ?」

「あー・・・、送り迎えも好きでやってんじゃねえってのはだな
売り言葉に買い言葉で言っちまったが、ありゃ嘘だ。
べつにやんなきゃなんねえ義理なんかねえけど単におれが好きでやってんだ。」

「え、でも・・・」

「好きでやってんだから、続けさせろ!」

「・・・惚れてるってのとは違うだろ?」

「・・・よくわからねえが、てめえがおれの中で特別な存在なのは間違いねえ。
どうやら他の奴の目にはなるべく触れさせたくねえと思ってるみたいだ。」

「な、なんで?」

「たぶん惚れてるからなんじゃねえのか?駄目か?」

「・・・実はどうやら駄目じゃねえんだ。」

「・・・・・・・マジか?」

「・・・おう。実はおれもさっき気付いたとこなんだけどな。」

「つまり、両思いってことで・・・いいのか?」

「ゾロがおれに惚れてくれてるんなら、そういうこった。」

「それならキスしてもいいよな!」

「ええっっ!?ちょっと待っ・・・・」

何か言わせる隙も与えず思いっきりあいつの唇に食らい付いてやった。
もう随分前からあいつの顔を見るたびにこうしたくて仕方なかった。
あいつも同じ気持ちだと知ってこれ以上我慢なんか出来るわけがなかった。


*********************************************************




呆れるくらいの素早さでゾロがキスしてきた。
今までキスはおれがするモンで、されるモンじゃなかった。
ましてや男にされるなんて今までのおれなら吐くほど気持ち悪いことだったはずなのに
ゾロのキスは気持ちがいい。
ああ、おれはほんとにこいつに惚れてんだなあと改めて納得しちまった。


それから三ヵ月後
『サンディのメロリンミュージック・アワー』は
最終回を迎えた。

あの後の番組の中で「おれはゾロが好きだ!」とうっかり言ったら大騒ぎになった。
「ゾロって誰だ?!」とか
「サンディはホモだったんだ!」とか。
で、人気が無くなって終わる事になった・・・ってんじゃねえんだ。
意外なことにそれでさらに人気が出たりしたんだな、これが。
世の中わからねえモンだ。

で、何で終わる事になったかって言うと、ゾロが後釜を探してきたからだ。
局としてはもう少しおれで行くつもりだったようだが
ゾロが何とか言うお笑い芸人のスケジュールを押えた上で
おれに一身上の都合で辞めたいと言えというので
まあ、おれもそろそろ潮時かなとも思ってたんで言うとおりにしたわけだ。
週に一回とは言えやっぱりコックの仕事が
多少疎かになっちまってた感は否めない。
まあ、DJはなかなか面白かったが
やっぱりおれはコック以外の仕事につく気はねえんだ。

ゾロが何でおれを辞めさせたかは
まあお分かりいただけるだろうと思うのであえて言わねえが。





そしておれはサンディじゃなくただのサンジに戻った。

それでも時々ゾロのバイクの後ろに乗って風と愛を感じている。





                       おしまい




2006.8.25        2010.6.16 改訂

1

 

ロロノア11世 前編  国王×相談役




ここはロロノア王国。
10年の長きにわたり隣国と戦争状態にあった。
だが、若き国王ロロノア11世の類稀な戦闘能力とカリスマ性で国は一致団結し、とうとう隣国を破り勝利を手にした。
これは、そんなやっと平和を手にしたロロノア王国の国王、ロロノア11世ゾロ王の物語。


ゾロの父、ロロノア10世は4年前戦場で敵の凶弾に倒れて若くして命を落としていた。
父が若かったのだから当然、王位を継いだゾロは更に若かった。若干15歳であった。
母はゾロがまだ幼い頃に病死していたし、兄弟姉妹もなく一人っ子だった。
王と言う地位にあるものの天涯孤独だったのだ。

長かった戦争状態で国民も疲れ気味である。
ここはひとつぱぁ〜っと明るいニュースとかで国の雰囲気をよくしてみたいと大臣のウソップは考えていた。
それには『国王のご成婚』なんてもってこいなんじゃないかと、家族のいない国王に妻と言う家族を迎えるのは絶対いい!とひとり悦に入っていた。



「・・・・と言うわけで、結婚しろ、ゾロ!」

「ああ?結婚ってなんだ?」

「嫁さん貰うんだよ。戦に勝利した国王の嫁さんになりたいって女は五万といるだろうな。
その上ゾロは男前ときてる!選ぶのが大変かもな〜〜vv」


国王と大臣でタメ口か?とお思いでしょうがゾロが気にしないのでこうなっています。あしからず。


「嫁さんって女か?」

「普通そうだろ。」

「俺、女は苦手なんだよ。知ってるだろ?
 あの高い声と、ボールがくっついたようなぶよぶよした胸がきもちわりぃんだよ。」

「知ってるけど、やっぱり何でそう思うのか俺は理解できねえぞ。」

「結婚したらその女とどうするんだよ。」

「まあ、一緒に飯食って一緒に寝て・・・・」

「・・・寝る?同じベッドでか?!」

「まあ、そうだな。」

「俺、考えただけで気分が悪くなってきた。」




そこへタイミング悪くメイド(♂)が昼食を運んできた。

「あ〜、悪りぃ・・・・ちょっと気分悪いから下げてくれ。」と、ゾロが言うと、

「そうですか・・・わかりました。」と、困った顔をしながらメイドは昼食を下げて戻っていった。



しばらくして、廊下をドカドカと歩いてくる音が聞こえたかと思うとゾロの部屋のドアが蹴破られた。

「くぉら!てめえ、王様だからっていい気になってんじゃねえぞ!!
 精魂こめててめえのために作った昼飯をいらねえたあどう言う了見だ!?」



驚いたゾロがそこにみたものはきらきら輝く金髪に澄んだ碧い目のコックコートの綺麗な人物だった。
その声は粗雑な言葉遣いながらも低く落ち着いていて、胸も気持ち悪く膨らんではいなかった。



つまりゾロはそこに理想の人物を見ていた。


*********************************************************************************


「おい、ウソップ。こいつは誰だ?」

「ああ、サンジだ。二年ほど前になるかな、厨房をまかされて国王付きの料理長になったんだ。」

「二年位前から?・・・ああ、そういやその頃から急に飯が美味くなったよなあ。
 戦場にいてもやけに飯は美味かったっけ。戦場にも指示とか出してたのか?」

「俺が王の食事を任されたからにはそんな無責任なことはしねえ。
 王が戦場に赴く時は俺もお供して食事の用意をさせてもらってたんだ。」

「そうか、じゃあその間、城の厨房は他の誰かが取り仕切ってたんだな?」

「まあ、その間は仕方ねえから城の方は副料理長に任せて俺は同行させてもらってたって訳だが?」

「そうか、じゃあ問題ねえな。おい!ウソップ!!」

「ん?何だよゾロ?」

「決めたぞ!俺はこのコックを嫁にする!!」

「「はあ〜?!」」

「な、何言ってやがる!!俺は男だぞ!
 てめえは王様だかなんだか知らねえが、なんで俺様が嫁になんぞならなきゃなんねえんだよ!!」

「だめなのか?」

「だからゾロ、さっきも言ったじゃねえか。嫁は女だって!」

「でも俺、女苦手だからな・・・こいつなら声低いし、胸ないし、料理上手いし、綺麗だし、良いと思ったんだがなあ。」

「男なんだから声が低くて胸が無いのはあたりまえだろうが!!」

「嫁はだめか?」

「駄目だっっっ!!!」

「じゃあ、俺専属の身の回りの世話係になれ。」

「俺はコックなんだよ!!」

「もちろん食事も作ってもらう。
 城の厨房の方はその副料理長に任せて、この部屋の隣にある俺の母上が使ってたキッチンで俺の分だけ作ってくれ。」

「さすが王様、我儘だな。」

「かまわないだろ?ウソップ。」

「まあ、王がそう言うのなら俺に止める権利はねえから・・・」

「俺にも断る権利はねえんだろうな。でも、身の回りの世話係って・・・・」

「身の回りの世話係が嫌なら相談役でもいいぞ。とりあえずそばに居るならそれでいい。
 長い戦争で疲れた国を立て直す相談に乗ってくれ。」

「まあ、それなら・・・」



そんな訳で、サンジは相談役と言う役職でゾロ王のそばに居ることになった。

サンジもかねてから、国を勝利に導いたゾロ王に少なからず尊敬の念をいだいていた。
そして「長い戦争で疲れた国を立て直す相談に乗る」と言う大義名分が結構気に入っていた。
だから相談役を引き受けたのだし、断固拒否したから「嫁にする」のは諦めただろうと思っていた。

だが、ゾロ王はそんなに諦めのいい男ではなかった。


***********************************************************************

その日のうちに俺は厨房係の宿舎からゾロ王の私室のとなりにある王妃の使っていた部屋に引越しさせられた。
なんだかんだと言っても、王の権限は絶対なのだと思い知らされる。
あっという間に宿舎にあった荷物は王妃の部屋に運び込まれていた。
とりあえず、今日の夕食からここのキッチンでゾロの分だけ俺が作ることになった。
王妃は意外に料理好きだったのか思ったより本格的な使い勝手の良いキッチンだった。
そんなキッチンに出会うと思わず料理するのもいつも以上に楽しくなってしまう。
上機嫌で出来た夕食を、ゾロ王の私室の食卓に並べる。
そんな俺を、これまた上機嫌で見つめるのはその部屋の主、ゾロ王だ。
ほぼセッティングを終えようと言う時にゾロ王が言った。

「お前の分はどうしたんだ?」

「は?・・・俺の夕食のことか?」

「おう、そうだ。」

「後で食うが?」

「一緒に食わねえのか?」

「滅相も無い!王とコックが同席するなんて・・・」

「命令だ。俺の向かいに座って一緒に食え。」

「そんなことは・・・・」と言ったところで、王が言うのだからそうするしかない。
仕方なく王の前の席に自分の分を持ってくると、嬉しそうにゾロが席に着いた。


「ん?同じ物じゃないのか?」

「一緒に食べるなんて思いもしなかったんで、俺のは当然所謂まかない料理だ。」

「明日の朝からは俺と同じにしろ。」

「は、はあ。わかったよ。ところでお毒見係りは?」

「お前が俺のために作ったものにそんな物必要ないだろう?」

「もちろんそれはそうだが・・・側近の人たちも居ねえけど?」

「ああ、全部各々の私室に下がらせた。それに今はお前が一番の側近だからな。」

「・・・・そんなに簡単に俺を信用していいのかよ?今日の昼まで俺の事全く知らなかったってのに。」

「大丈夫だ。俺は人を見る目は確かだ。」 


何が大丈夫なんだか。何処から来る自信なんだか。
俺がもし暗殺とか企ててたりとかしたら即行あの世行きだなこの馬鹿王・・・と思わずため息をもらした。

そういえば、こいつは俺を嫁にしたいとか言ってたが、一体何を思って言ってたんだろう?
大臣が「嫁は女だ。」とかあえて言ってた所をみると、嫁ってのが何なのか理解してなかったんだろうか?
ちょっと常識のない奴なのかな、このゾロ王ってやつ。

俺の何処をそんなに気に入ったんだか・・・
胸が無くて声が低いのがいいとか言ってたが、男ならだいたいみんなそうだ。
後、なんだっけ・・・料理が上手い・・・そりゃあ、コックなんだからあたりまえだろ。
それから・・・・・「綺麗」とか、言ったか?・・・・俺がか?何処が見る目が確かなんだ・・・・

いろいろ考えながらも俺が席に着くと、パンッと手をあわせ「いただきます!」と言うが早いか、豪快にゾロが食事を始めた。



王の豪快な食べっぷりにうっかり見入ってしまっていたら、また、パンっと手を合わせ
「ごちそうさま!!」と言って王は食事を終えてしまった。
うっかり自分の食事を進めるのを忘れていたことに気がついた俺はあわてて夕飯を食べ始めた。
そんな俺をゾロ王がじっと見ているのに気がついた。

「俺の事なんか待ってなくていいから・・・てか、じっと見てられると食いずらいんだよ。」

「ああ、気にすんな。」

「いや、気になるから言ってんだよ!!」

「おまえだって俺が食ってる間、ずっと見てたじゃねえか。」

「あ、ありゃあ、あんまり豪快な食いっぷりに思わず・・・って、気付いてたのかよ・・・」

「俺が見てたって普通に食えばいいじゃねえか。」

「俺は繊細なんだよ!そんな事できねえ!!どうしても見るってんならてめえと二人で飯食うなんて金輪際ごめんだ!!」

「・・・嫌なのか?俺と飯食うのが。」

「え?いや、その、二人だけってのが・・・飯はもっと大勢で食ったほうが楽しいじゃねえか。」

「そうなのか?俺はいつも一人で食ってたから、お前がいるだけでも十分楽しいぞ。
 だが、お前がそう言うんなら、明日からウソップを同席させよう。それでいいか?」

「あ、ああ、大臣が同席してくれるんならありがたい。
 で、ホントに待ってなくていいからよ、風呂の用意も出来てるから、風呂入るなり寝るなりしちゃってくれよ。」

「一緒に食事を始めた相手が食い終わる前に席を立つのは礼儀に反するだろう。」

「た、確かにそうだが、俺は見てられると食えねえ!んじゃあ、急いで食うからしばらく横向いといてくれ、頼む!」

「はは・・・かわいい事を言うんだな。そんな所もなかなかいい。わかった、お前の頼みなら聞いてやる。」

『か、かわいいってなんだ〜!!そんな所もいいってなんだ〜っっ!!!』と思いながらも
横を向かせた王を待たせるわけにはいかないと急いで飯を食い終わると王に声を掛けた。

「わりい!待たせた!!食い終わった!!!」と言いながらゾロ王を見ると、王は横を向いたまま熟睡していた。

「食事の席で寝ちまうのは礼儀的に言ってどうなんだよ・・・」


この部屋には王と俺の二人きりだ。
王がテーブルで寝ちまったと言う事はどう見ても俺より重そうなこの男を俺が1人でベットに連れて行かなきゃなんねえということだ!
一応声を掛けてみたが本当に熟睡しているようで全く起きる気配も無い。

仮にも王の部屋だ。結構広い。とうぜんテーブルからベットまでも結構ある。

運んでる途中で、ゾロ王の腕が俺の背中に回って抱きついてきた。
寝ぼけてどこかのレディとまちがってやがるのか・・・
まあ、むこうから抱きついてくれると幾分運びやすいからいいが。
そう思ってそのままにしておいたら、ベットに寝かせても放そうとしない。

「こ、こら!放しやがれ!てめえ、起きてやがんのか?!」

「ああ、ついさっき気がついた。俺寝ちまったんだな。悪かったな、重かっただろう。」

「そんな事はいいが、ベットについたんだから放せよ!」

「一緒に寝ないのか?」

「・・・はあ?な、何言ってやがる!!」

「ウソップが言ってたぞ。嫁は一緒に飯食って一緒のベットで寝るんだと。」

「・・・あのなあ、言ったはずだぞ!嫁にはなんねえ!!俺は相談役じゃなかったのかよ?!」

「ああ、そうだったか・・・まあいいじゃねえかどっちでも。」

「いいわけあるかああ!!おまえにとっちゃ同じなのかよ?嫁も相談役も?!」

「ああ、同じだ。」

「お、俺は同じのつもりでひきうけたんじゃねえ!!」

「今更辞めるなんて言わせねえぞ!!」

「辞めるとは言ってねえ。でも相談役は嫁と同じじゃねえ。
一緒に飯食うまではいいが、一緒に寝るのはごめんだ!!
目が覚めたんなら、風呂に入ってから一人で寝くさりやがれ!!」

「どうしても駄目か?」

「くどいな!!俺はホモじゃねえんだよ!レディが大好きないたって普通の男なんだよ!」

「いや、俺も女は苦手だがホモじゃねえぞ。」

「じゃあなんで俺と寝たがるんだよ。」

「そりゃあ、単におまえが気に入ったからだ。」

「おまえは仮にも王様だろうが。世継ぎの事とか考えねえといけないんじゃねえのか?
 やっぱりお嫁さんはレディでないとまずいだろう?
 声が高いのとか胸がでかいのが苦手だってんなら、声が低めでバストが控えめなレディだっていらっしゃるだろうが。
 好みのレディを探してみたらどうなんだよ。」

「ホモじゃねえが、好みは思いっきりお前だ。」

「うわあああ、キモいこと言ってんじゃねえ!!
人の話を聞けよ!おまえは立場上世継ぎを残さねえとまずいだろうって言ってんだよ!」

「ああ?そんなもん別に実子でなくてもかまわねえだろ?」

「かまわねえのか?」

「優秀な王の子だからと言って、その子が必ずしも優秀な王になりうる人材とは限らねえと思うが。」

「そこまで考えて俺を口説いてんのか?」

「今考えたんだが、間違ってねえ!俺の判断に間違いなんぞねえからな!!」

『・・・だから、何処から来るんだその自信・・・・・』



もう頭痛くなりそうなんで、
「ああ、そうかよ。あ〜、また寝ちまわねえうちに風呂入ってこいゾロ王。」
と風呂を勧めてみる。

「ゾロ王なんて他人行儀な呼び方するな。ゾロでいいぞ。」
と全くかみ合ってない返事がかえってきた。

「何言ってやがる!!てめえと俺とは正真正銘綺麗さっぱり完璧に他人なんだよ!!」
と、 とりあえず風呂にゾロを蹴りこんだ。

「俺に1人で風呂に入れってのか!?」って台詞が追いかけてきたが、

「自分の事くらい自分でしろ!!俺は相談役で身の回りの世話係じゃねえからな!!」とつっぱねたら、

「わ、わかった。やってみる。」と殊勝な返事が来た。

今まで風呂も1人で入ってないとは流石王様。
まあ、赤ん坊じゃねえんだし自分で実際にやってなかったとしても、
やってもらってた工程は見て知ってるだろうから問題ねえだろう。
そう思って俺は夕食の後片付けをすることにした。

キッチンで後片付けの後朝食の仕込みもして、ふと思った。

そういや、着替えを出してやってなかった。
1人で風呂に入ったこともない奴が、着替えを用意して風呂に入ってるわけがねえ。
ロクに拭きもしねえでマッパでベッドにもぐりこんでやがるかもしんねえなとゾロの部屋に戻ってみる。
辺りを見回してもゾロの姿が見あたらねえ。

あれから随分経ってるが、まさかまだ風呂に!?
もしや逆上せて・・・背中を嫌な汗がダラダラと流れ落ちる。
「本当に1人で風呂に入れなかったのかあ?!」と、焦って風呂のドアを開けた。

「おー、いいところに来た。ちっと困ってんだ。」と
緑の頭に泡をてんこ盛りにした間抜けな男が片手を挙げた。

「・・・いいところって、その状態でどんだけ困ってたんだよ・・・」
と言いながら、逆上せて溺れてなくてホントに良かったと心底ホッとする。
そうか、洗髪で泡をのせるところまでは見えてたが、泡を流す段階は当然
目を瞑るからどうやってたかわからなかったって事か。
なんだかでかい図体で、いかつい顔をしてるくせに
ガキみたいなやつだなゾロってやつは。

ゾロ自身が「ゾロでいい」と言ったのもあるが、
もうなんだか王なんて呼ぶ気が全くしなくなっちまった。

***************************************


仕方が無いんで、頭の泡を洗い流してやって、背中も洗えねえと言うから流してやった。
次から出来るようにやり方を教えるのも忘れない。
身の回りの世話もやらざるを得ないが、なるべく自分でできるように成り行き上教育係も兼任だ。

何とか風呂から上がると、ゾロが足を肩幅に開き両手を広げて立っていた。

「なんだよそりゃあ、身体を拭けのポーズか?!
 あいにくだがそれも自分でやるんだよ!!
 それと、股間くらい隠せってんだよ!!」
そう言ってバスタオルを投げつけてやると、しぶしぶ慣れない手つきで身体を拭き始めたが、

「ああ?俺は別に隠さなきゃなんねえ様なモンは持ち合わせてねえぞ!!」
と、あえて身体を隠すと言う事はしないつもりらしい。

「あのなあ、普通の羞恥心を持った人間は、どんな自慢の一品だろうが人前では隠すもんなんだよ。
 相手に対する礼儀ってもんだろうが!」

こんなことも教えなきゃならないなんてまったく・・・

だが、確かにゾロの身体は、均整が取れていて鍛え上げられた筋肉に飾り付けされた一種の芸術品かもしれないと思えるほどに綺麗だ。
深く長い袈裟懸けの傷さえもその美しさを損ねていない。

うわ・・・うっかりゾロの身体をじっくり観察しちまった。
しかも男の身体に対して綺麗って何だよ、俺・・・

自分の思考に驚きながら、俯いた顔が急速に火照るのを感じる。
なんだか凄いスピードでゾロの嫁妄想に毒されてる気がする。
そうだよ、なんで男の裸に赤面してんだ、おかしいだろ!

「き、着替えはここに置いとくからな!!俺ももう風呂入って寝るからよ!!」
そう言って部屋を出て行こうとする俺にゾロがあわてて声を掛ける。

「おい!何処行くんだよ!」

「だから、風呂入って・・・」

「ここの風呂に入りゃあいいじゃねえか。俺一人しか入ってねえし、従業員用の風呂より綺麗だと思うんだが。」

「え?いや、だってここは、その、王族用の風呂じゃねえか。」

「俺が入れって言ってんだ。何の問題もねえだろ?」

確かにさっき見たここの風呂は、比べるまでもなく俺たちが今まで入ってた風呂より綺麗だった。
まあ、当然っちゃあ当然だ。王族用の風呂なんだから。
ゾロが良いと言った事に文句を言う奴もいねえ。
これも当然だ。王国の王なんだから。

「あー、じゃあ有り難く使わせてもらうことにするぜ。風呂。」

それほど強く言われたわけでもないのだが、ゾロの言葉には有無を言わせぬものがある。
これも王族が生まれ持った性質なんだろうか。
一度隣の自分の部屋に戻ろうと思ったが、又なんか言われそうなんでそのまま風呂にはいる。

俺は自分の髪が目立つことを知ってるんで、結構気を使って手入れをしている。
いつも使ってるシャンプーもトリートメントも、そこそこいいものだ。
だが流石に王室用の風呂においてあるシャンプーは極上品のようだ。
一度使っただけで、もともとさらさらの俺の髪が更にさらさらになったような気がする。
ボディソープも全然違う。
洗い流してみると、俺の肌がいつもより気持ち良くつるつるで、しかもしっとり吸い付くようで。
こんなに違うモンなのか!?感動モノだぜ!!

この感動を誰かに伝えたくて、風呂からあがると脱衣所にあったバスタオルで手早く水気を取った。
これもそこにあった、バスローブを引っ掛けて風呂場を出る。
誰かと言ったって、ゾロしかいない。
いつも使ってる奴に言っても伝わらないだろうが言いたくてしかたがない。

部屋に行くと、ゾロもまだバスローブで、ソファに座って酒なんか呑んでいた。

「おい、すっげえよなあ!!王族用のシャンプーもコンディショナーもボディソープもよー!!
 すげえ高級品なんだろうなあ!使い心地が全然違うぜ!!
 ちょっと見てみろよ!!この髪〜vvつるつるのさらさらだぜ〜♪
 ちょっと触ってみろよ!!この肌vvしっとり吸い付くようだろ〜!!!」



そう言ってゾロの顔をみた俺は、急速に血の気が引くのを感じた。
さっきまでのゾロの表情とは明らかに違う。
獲物に今にも飛び掛ろうとする猛獣のような、そんな表情だった。
うっかり見入ってしまった俺は、素早く眼前に来たゾロにがっちりと抱きしめられてしまった。

「おお、ホントだな。髪はさらさらだし、肌はしっとり最高の触り心地だ。」
なんて言いながら、ゾロは片手で後頭部の髪を弄び、もう片手はバスローブに差し込んで胸とかを触りまくる。

「うわあ!てめえ何してくれてんだ!!やめろ!!このクソマリモ!!!」

「ああ?何言ってんだ?お前が触ってみろって言ったんじゃねえか。」

「ば、馬鹿野郎!!そりゃ触ってみろとは言ったが、ちょっと触れと言ったんだ!!
 誰がこんなべたべた触れと言った!!」

「おまえなあ、俺はおまえを嫁にしたいと思ってるくらい気に入ってるんだぞ!
 そいつに触り心地がいいから触ってみろと言われて、ちょっとですむ訳ねえだろ!!」

「え、あ、いや、と、取り消す!!触ってみなくていい!!!」

「もう触っちまったからなあ、却下だ。もう放さねえ!」

そういったゾロはひょいっと俺を抱き上げると自分のベッドに引きずりこんだ。


どうなる俺!!!



後編に続く
2

 

ロロノア11世 後編  国王×相談役



このままじゃ、まずい!やばい!
なんとかしねえと洒落になんねえ!!
俺ってば、事もあろうにバスローブ一枚だ。
あのガタイの良いゾロにかかったら簡単に丸裸だ。

いやでも、ゾロは本気で男の俺をどうにかしようなんて思ってんだろうか?
いやいや、現に俺はベットに引きずり込まれて・・・・
この後一体俺をどうしようってんだ?!

「ゾ、ゾロ!!お前分かってんのか?俺は男なんだぞ!!」

「あ?そんなの見りゃあ分かる。触ってもみたしな。」

「お前男をベッドに引きずり込む趣味が・・・」

「そんな趣味あるか、馬鹿野郎。」

「いや、でも、現にやってんじゃねえか!」

「まだわかんねえのか?俺はお前に惚れちまったんだ。
 だからお前を嫁にしたいし、一緒に飯を食いたいし、一緒に寝たいし、その他にいろんなこともしたい。
 すべてお前だからだ。」

「お前はそうか知らねえが、俺にはそんな気はねえ。
 王としてのお前を尊敬してはいたが、惚れてたわけじゃねえ。
 俺の気持ちはほったらかしなのかよ。」

「大丈夫だ!俺はお前を惚れさせる自信がある!!」

「お前ってホント、天下無敵の自信家だよなあ。
 そんなに自信があるなら惚れさせてみろよ。
 俺がお前に惚れたら一緒に寝てやろうじゃねえか。」

こんなことを言ったのは、俺にだって自信があるからだ。俺が男に惚れるなんてことはナイ。
俺はレディが大好きな心身ともに健康な男で、男相手にどうこうなる気なんて毛頭ない。
半日一緒にいて、ゾロって奴はなかなか面白い奴だとは思う。
だがこいつの嫁になるなんて、最初っから有り得ない話だ。
冗談じゃねえ。


「一緒に寝たら惚れるんじゃねえか?」

「勝手なこと言ってんじゃねえ。気持ちが先だろ普通。少なくとも俺はそうなんだ!」
 そう言ってするっとベッドから出て、バスローブの前を深く掛け合わせる。

「王様だからってな、そうなんでも思い通りに行くと思うなよ。」
そう言い捨ててそそくさと隣の自分の部屋に引き上げる。
ゾロの部屋を出る時も、それ以上何も言ってこなかった。
とりあえず今日の所は貞操の危機を免れたことにホッとする。

本人も言ってることだが、男が好きなわけじゃないらしい。
おれには信じられないことだが、声が高くて胸の大きいレディは苦手らしい。
なんとか早めに声が低めで胸の控えめなレディを探して会わせてみよう。
気に入れば俺を嫁になんて言わなくなるに違いない!!

翌日から俺はゾロが仕事に追われている間にゾロが気に入りそうなレディのデータを集めて回った。


*****************************************

もともとレディ大好きな俺だからデータを集めるのは楽しいんだが、そうそう沢山のデータがおいそれとは集まらない。

レディのデータがあったとしても、声が低めだとかバストのサイズが控えめだなんてそんなデータは皆無だ。
グラマーだってデータならまだ集まりやすかったかも知れねえけど。



まあ、ダメモトで街の掲示板に張り紙をしてみた。


**************************************************                              
   求む!!声が低めでバストが控えめなレディ
   自薦他薦は問いません

   ロロノア11世付き相談役 サンジ まで御連絡下さい
                                      
**************************************************


作った本人が言うのもなんだが、果てしなく怪しい張り紙だ。
絶対応募なんかあるわけない・・・と、思っていたのだが、意外に30人ほどのレディから応募があったのだ。

どうやらゾロが声の高いグラマーなレディが苦手だと言うことは結構国内に知れ渡っていることのようだ。
王付き相談役が募集したら花嫁候補なのだろうと理解されてしまったようだ。

あまり大勢のデータを一度に見せると嫌がるだろうと2、3人づつ
「こんなレディはどうだ?」
と、ゾロの反応を見るが
「女はいらねえ。お前のほうがいい。俺はお前がいいんだ。」
と言う答えが毎度毎度返ってきた。
変な条件の割にはなかなか素敵なレディが応募してくれてると思うんだが、我儘なヤツめ。

「何が気にいらねえんだよ。意外に粒ぞろいの素敵なレディばかりじゃねえか!
 このレディ達と比べて一体何処が俺の方がいいって言ってんだか俺には分かんねえよ。」

「自分じゃ分かんねえのかも知れねえが、こんな女たちよりお前の方がいいところは数え上げたらきりがないほどあるぞ。」

「へー・・・例えば?」

「そうだな、まず料理が上手いだろ。」

「そりゃあ、まあ、そっちが俺の本職じゃねえか。
 それにこのレディたちの中にだって料理上手な方だっていらっしゃるかも知れねえじゃねえか。」

「お前以上なんて有り得ねえだろ。」

「だから、俺はプロのコックだから、逆に言えばコックならみんな料理上手じゃねえか。」

「それだけじゃねえ!」

「ふーん、じゃあ後はどんなとこだよ。」

「さらさらの金髪がいい。綺麗な碧眼もいい。触り心地のいい白い肌で、さらに綺麗に引き締まった筋肉もいい。
 かわいく眉毛も巻いてるのもいい。申し訳程度に生えてるアゴヒゲもいい。それから・・・」

「いや!もういい!!外見の事はどう考えたって普通レディの方がいいだろが!!」

「勝手に決めるな。俺の好みだ!!」

もう笑っちまうくらい俺はお前の好みそのまんまかよ!
いや、けしてそんなことを確認するためにこんなことをしてるわけじゃねえんだ。
俺は本当にゾロにはちゃんとレディのお嫁さんと結ばれて欲しいと思ってる。
アゴヒゲと巻いてる眉毛は無理としても、後の金髪碧眼ならなんとか居そうな気がする。



そしてそれから2.3日後。
他薦ながらもまた1人のレディの写真が届いた。

俺はその推薦人を知っている。
俺の叔母、母の妹だ。
推薦するのはその娘、俺の従兄妹にあたる娘だ。
名をアリシアと言う。
随分と会っていなかったが、小さい頃はよく一緒に遊んだ。
兄妹のように似ているとよく言われたもんだ。
小さい頃あれだけ似てたんだ。
きっと今もそこそこ似てるんじゃないか?
恥ずかしいくらいゾロは俺が気に入ってるみたいだし、俺に似てるならもしかするといけるかもしれない。

アリシアの写真を見ると、俺に似てるなんて言うのが申し訳ないくらい美しいレディになっていた。
それでもどこか昔の面影があるし、なにしろ金髪碧眼だ。

俺は意気揚々とアリシアの写真を持ってゾロのところへ向かった。

************************************************************


ゾロの部屋に入ると、とんでもなく不機嫌なやつがいた。
「遅いじゃねえか!何処行ってやがったんだ!!公務が終わる時間にはここに居ろって言ってるだろが。」

「うるせえなあ。ちょっと遅れただけじゃねえか。男が細けえことグダグダ言ってんじゃねえよ。」

「しかもてめえ、また女の写真持ってきやがったな。いらねえって言ってんだろ!!」

「まあそう言うなって!!こう言っちゃ彼女に申し訳ねえんだけど、今日のレディは俺に似てるんだぜ。」

「お前に似てるだと?!」

「実はな、俺の従兄妹にあたる娘なんだ。昔は瓜二つだって言われたモンだった。」

「お前の従兄妹・・・だとしても、俺はお前が良いと言ってるだろうが。」

「まあ、写真だけでも見てみてくれよ。」

「お前の従兄妹だろうが、お前じゃねえじゃねえか。」

「あたりまえだろ!なんにしてもだ、俺は駄目だ。
 レディじゃなきゃ結婚できねえだろ?法律で決まってんだろ?」

「法律くらいなんだ!俺は国王なんだ。いくらでも変えてやる!!」

「そんな訳にはいかねえだろ。そう言うわがままで法律変えちゃまずいだろう?」

「大丈夫だ!大義名分くらいいくらでも考えてやる。お前を嫁に出来るんならな!!」

「当の本人の俺が嫌だって言ってんだから、法律変えても駄目なモンは駄目だ!!」



コンコンとゾロの部屋をノックする音がした。
「ああ、ウソップか?もう晩飯の時間だもんな。わりい、今から配膳すっから入って待っててくれ。」

そう言ってウソップを招き入れると、サンジは隣のキッチンへと消えた。
サンジの希望も有って、サンジが相談役になった次の日から、食事はウソップを交えて三人で摂っていた。

「なあ、ゾロ。サンジの薦める娘に会って見ないのか?」

「ああ、会わねえ。俺はサンジ以外を嫁にする気はねえ。
 それなのに会ったりしたら変な期待持たせちまうだろ。」

「でもサンジにその気はねえんだろ?」

「うう・・・まあ、今んところは・・・」

「ゾロは知らねえだろうけど、サンジはこの城じゃ女好きで有名な奴なんだぜ。
 どう考えたって男の嫁になんかなる奴じゃねえと思うぜ。
 お前が国王だから無碍にもできねえで迷惑してんじゃねえのかなあ。
 それにあんなに一生懸命にお前の相手探ししてんのに全然手ごたえ無しで気の毒なくらいだぜ。
 さっき、廊下まで聞こえてたんだけどよ、サンジ似のサンジの従兄妹がいるんだろ?
 サンジがお前の好みなら、それにこれほど近い娘はそうそう居ねえんじゃなえのか?
 会ったら結婚しなきゃなんねえ訳じゃねえんだし、会うだけ会ってみたらサンジも喜ぶんじゃねえのか?」

「・・・迷惑か・・・。そうなのか・・・。」

「え?」

「い、いや・・・。会うと言ったらサンジは喜ぶだろうか?」

「そりゃ、こんだけ頑張ってデータ集めしてんだから、少しでも報われたら嬉しいんじゃねえか?」

「そうか。」
そう言うと、ゾロはサンジの従兄妹だという娘の写真を広げて見た。
確かに金髪碧眼で似てると言えば少し似ているのかもしれない。
しかし、眉毛は巻いてないし、アゴヒゲも無いから全然違うとも思う。

キッチンへの扉が開いて三人分の夕食をワゴンに乗せたサンジが入ってきた。
素早くセッティングを済ませると
「待たせたな!夕食にしよう。」と言った。

するといきなりゾロがすっとサンジの目の前まで来て後頭部をわしづかみにしたかと思うと唇を重ねてきた。
あまりに唐突な出来事にサンジが現実について行けずに居ると、そのキスはどんどん深く激しくなって行った。
サンジにとって初めてのキスだったのだが、とても初めてでするような可愛いものではなかった。
うっかり進入を許してしまっていたゾロの舌が、サンジの口内を暴れ回っていた。
それがとんでもなく気持ちいいなんて、初めてなのだから知るはずも無かった。
うっとりとしたサンジはきつく閉じていた目蓋を何の気なしにうっすらと開けた。
ぼんやりとした視界に、バックに「がぼーん」と描き文字が入っているようなウソップの顔が認識できてしまった。

急激に現実に立ち戻ったサンジはゾロを突き飛ばし、“粗砕”を叩き込んだ。

「んな、何しやがるこのクソ国王!!」

『何だって2人きりだったさっきじゃなく、ウソップの居る今、こんなことをするんだ?!
 訳がわからねえ!もしかしていい返事をしねえ俺への嫌がらせか?!
 そんなことで俺のファーストキスは奪われちまったのか?
 しかもうっかり気持ちがいいなんて思っちまったりして、馬鹿か、俺は!!』

感情が昂ぶって思わず涙が零れ落ちた。

壁に激突してそのまま目を見開いてサンジを凝視していたゾロはその涙に気付くと目を閉じてうなだれた。



そして言った。

「サンジ。お前の従兄妹に会って見ることにする。」


俺は耳を疑った。
あれほど、俺が良いと、レディとは会わないといっていたゾロが。
ついさっきまで確かにそう言っていたゾロが・・・
俺の聞き間違いでなければ、・・・アリシアと会って見ると、そう言った。

いきなりキスなんかしてきたと思ったら、さっきまでと全く違うことを言う。
いったいどうしちまったんだろう、ゾロは。
俺は急にゾロと言う奴がわからなくなっちまった。


「写真を見た。確かに少しお前に似てる綺麗な女だな。」



そうか・・・・・そうだったのか。
ゾロは俺の事を何にも知らなかったのに、一目見て嫁にするといったのだ。
ゾロは俺の外見をいたく気に入っただけだったんだ。
俺と言う人間など見てはいなかったんだ。
そう言や、レディたちより俺の方が良い所ってのだって、「料理が上手い」以外は全部外見だったじゃねえか。
ゾロはホモじゃねえといっていたし、だったら、気に入った外見に近いレディが居ればその方が良いに決まってる。

たくさんの素敵なレディたちの写真を見せる度に「お前がいい。」なんて言うゾロの台詞を鵜呑みにしてた。
ゾロが激しく自分に惚れこんでいるんだとすっかり思い込んでいた。
ゾロの好みの外見にたまたま俺がはまり過ぎてたっていうだけのことだったんだ。

うっかり自分の思考にはまり込んで、一体俺はどんな顔をして居たんだか。
いきなりゾロが俺の顔を覗き込んで訊いて来た。


「おい、嬉しくないのか?」

「え、ああ、う、嬉しいに決まってっだろ!
 やっと会う気になってくれたんだな。
 苦労した甲斐があったぜ。
 ・・・・いつ会う?」

「ああ、お前のほうで俺のスケジュールと先方の都合を鑑みて決めてくれてかまわねえ。」

「わかった。決まったら報告する・・・さあ、飯食っちまおうぜ。」



飯の味なんかわからなかった。
それでも残すなんて事は性格上できないから残さず食ったが吐きそうだ。

あのキスの意味はなんだったんだろうと考えた所で分かるわけもない。
でもゾロに訊いてみるなんてことはできそうもない。
その答えが怖いのだ。
あいつの口からとんでもない答えが出てきたら・・・そう思うと訊けない。

一番愕然としていることは、アリシアに会うといったゾロの言葉に有り得ないほどショックを受けているという事実だ。

俺はゾロが俺に惚れ込んでいるからどんなレディにも会うわけが無いとか心の底では思っていたんだろうか。
そうでないことが嫌なのか・・・俺は・・・


この国のため、ゾロのために絶対いいことなんだと思ってゾロの花嫁を探していた。
その事に嘘は無い。
なのに・・・なのに・・・・


今、自分が自分で一番解らなくてどうしていいのかわからねえんだが―――
ゾロが会うと言うんだから、アリシアに会いに行って話を進めていかなきゃなんねえ。
ぐだぐだ考えるのも性に合わねえし、この際俺の事は考えないことにしよう。
そう決めた。


明日、アリシアに会いに行ってみよう。


あー・・・、俺、うっかり相談役なんかになったけど、もしお后さまを迎えることになったら・・・
いままでゾロが誰憚る事無く俺を嫁にするなんて言ってた手前そのままゾロの側にいるってわけにはいかねえよな。
それが仮にアリシアだったとしても、多分気にする娘じゃないけどやっぱりまずいだろう。
かと言って、城の厨房の料理長に戻るわけにもいかない。
すでに元副料理長が料理長になっているんだ。
俺が戻ったからと言って、また彼に副料理長に戻ってもらうなんて、そんな申し訳ないことできるわけがない。
まあ俺はコックができるならどこだって別にかまわねえしなんとかなんだろ・・・


結局やっぱりなんだかんだとグダグダ考えながら俺はアリシアの家に向かっていた。

アシリアは叔母さんと二人で食堂をやってる。
俺がよく遊びに行った、俺がまだ小さいガキの頃は、叔父さんと叔母さんが二人でやっていた。
だが叔父さんは戦争に借り出され帰らぬ人となってしまった。
まだゾロが国王になる前、先代の頃だ。
叔母さんは悲しみに明け暮れ商売どころで無かったそうだ。
そんな叔母さんが食堂を再開できるまでの心の支えとなったのはまだ幼かったアリシアだと聞いている。
小さい頃の記憶だが頭の良い気持ちの優しい娘だった。
割りとさっぱりした性格で、俺でさえも男同士の友達のように付き合えた珍しい女の子だった。
そう言えば女の子にしては声は高くは無かったような気がする。
胸の事は叔母さんが応募しようと思ったんだから客観的に見て今も大きくはないんだろう。

「おや!!サンちゃん!!まあ立派になって!!」
店の前で水撒きをしていた叔母さんが俺に気付いて声を掛けてくれた。

「お久しぶりです、叔母さん。クソご無沙汰してました。」

「あははは、あいかわらずねえ、サンちゃん!
 もう10年くらいになるかねえ。
 お城の厨房で修行させてもらえることになったとかで、お城に住み込んでたんだよねえ?
 で、料理長になったって噂を聞いて凄いなあってアシリアと言ってたんだけどさ、今は王様の相談役なんだって?
 また、なんだかやけに畑違いの役職に就いたんだねえ?」

「ああ、まあ、相談役なんて名ばかりでさ、身の回りの世話役みたいなモンでね。
 王様専属の料理人も兼ねてるんだよ。」

「へえ、そうだったのかい。まあ、立ち話もなんだから中に入っておくれよ。
 ところで、あの応募なんだけど・・・実はアリシアには言わずにしちゃったんだよ。」

「え、ええっ?!今も知らねえのかい、アリシアは!?」

「応募したって、話が進むなんて思ってなかったからさ。
 でも、サンちゃんが来るって言うからさ、流石に昨日話したんだよ。
 呆れられちゃって、アリシアに・・・。」

「じゃあ、アリシアにその気はねえ・・・の?」

「あれってさ、やっぱり王様の花嫁候補の募集だったのかい?」

「いや、とりあえず俺の補佐的なゾロの身の回りの世話を手伝ってもらおうかなとかそんな感じで・・・」

「その条件があれなのかい?」

「まあ、どうせならゾロの好みに近い娘をと思って。
 ゾロが気に入ったらそれもありえなくも無いかもしんねえけど・・・」

「あたし相手にそんな言葉を選ばなくっていいんだよ。
 そうだね、そんなに予定通りに進むことじゃないもんねえ。
 ――あのさ、あたしも昨日初めて聞いたんだけど・・・
 アリシア、好きな男がいるらしいんだよ。」

「え?!そいつって、ゾロよりいい男なのか?」

「いや、王様と比べるなんて畏れ多いけどさ、アリシアは好きらしいのさ。
 王様ってやっぱりサンちゃんから見てもいい男なのかい?」

「え、いや、まあ、なんせこの国を勝利に導いた英雄みたいに言われてるしね・・・
 んー、ツラもまあまあだし、レディから見ればいい男になるんじゃねえの?」
しどろもどろに答えながら、自分で驚いた。
俺、ゾロの事をいい男だと思ってたみたいだ。
しかも、アシリアに好きな男がいると聞いてなんだかちょっとホッとしてるなんてありえねえだろ。
だめだよな男の俺じゃ・・・、ゾロは王様なんだ。
やっぱりちゃんとレディのお嫁さんを貰って世継ぎを残さねえと!

「あ、サンジいらっしゃい。」
と、奥からアリシアが出てきた。

「ごめんね。母さんがそんなのに応募してただなんて知らなくて。
 あたし、王様の奥さんになる気なんてないんだ。」

「いや、こっちこそ急な話で悪い。
 ゾロが今までいろんなレディの写真見ても会うと言わなかったのにアリシアの写真でその気になったみたいだから・・・
 ゾロもまだお嫁さんにしようとかそこまで考えてないとは思うんだけどよ。
 アリシアはその好きな人ってのと、もうお付き合いとかしてるわけなのか?」

「あ、違う!違うんだ!まだあたしの片思いなんだ。」

「そ、か、じゃあさ、会うだけ会ってみてくれよ。
 アリシアの相手の事は知らねえけど、ゾロもすげえいい男だからさ。
 それでも駄目なら駄目だと俺に言ってくれ。
 無理に話、進めたりなんかはゼッテーしねえから!!
 俺の顔を立てると思ってさ。」

アリシアが他の男に片思いしてたって
ゾロに会ったらアリシアだって絶対ゾロを好きになる。
俺は確信をもってそう思っていた。

「まあ、それでもいいって言うんならあたしはかまわないけど・・・」
と、アリシアも言ってくれたから二人を会わせる段取りを進めた。

そうしながら、嫌でも気付いちまった。
ゾロに自分を求める言葉を貰ってるうちに、俺はゾロを好きになっちまってたらしい。
ずっとゾロを拒否する言葉を吐きながら、いつの間にか俺の気持ちは掴まっちまってたようだ。

そして気付いた時にはどうやらゾロは拒否し続けてた俺の事など諦めることにしたみたいだ。
ゾロとアリシアを会わせることで胸が痛まないと言えば、正直ウソになる。
けどうっかりゾロを受け入れちまう前にこうなってよかったと思う。
もしそんなことになってたら、俺は立ち直れねえとこだった。
ゾロが俺に惚れてるなんてことが勘違いだったとわかってよかった。


そしてやっと二人を会わせる日を迎えることになる。


****************************************************************************************



自分で言うのもなんだが、俺は男らしい性格だと思っていた。
所謂、竹を割ったようなってやつだ。


ところがサンジが絡むとなんか俺らしくないことを考えちまう。
今までサンジが薦める女にも、付き合ったり、まして結婚したりなんかする気はさらさら無かった。
だから、変に期待させるわけにはいかねえし、絶対会わなかった。

なのに、あいつが俺の気持ちに迷惑してるんだと思ったら、少しでもあいつの喜ぶことがしたいと思って付き合う気も無い女に会おうとしてる。
それもあいつの従兄妹だと聞いて少し会ってみたいと思ったりしてるなんて、どうしようもなく女々しい気がする。

しかも、迷惑してると聞いたら諦めりゃいいじゃねえかと思うのに俺はサンジを諦められない。
俺の気持ちはずっとサンジに伝えているが全く受け入れる気配は無さそうだ。
そんな相手を諦めきれないなんて今までの俺的には有り得ないことだ。

しかもここ暫くは避けられてる気すらする。
サンジを相談役にしてからずっと一緒に食事をしてきた。(成り行きでウソップも一緒だが)
それもここのところ食事の用意はしてあるが本人はなんだかんだと理由をつけて一緒に食事の席に着こうとしない。
何でウソップと二人で飯食わなきゃなんねえんだ!
シャンプーが良いとか言って気に入ってた風呂にも入りに来ねえ。

最近イライラしていけねえ。
これはもしかするとサンジ欠乏症かもしれねえ。

今も朝食中だがあいつはいねえ。
例の従兄妹を迎えに行くとか言ってたらしい。
そういえばアリシアとか言う女に会う日は今日だったか。
それすら俺に直接言わねえ。
ウソップから聞いたんだが、隣の部屋に居る俺に言う方が早いだろ!


あいつの作る飯は確かに旨いが、あいつが居なきゃ酷く味気ない。


「ゾロ、もうちょっと旨そうな顔して食えよ〜」

「わりいが、生まれつきこんな顔なんだよ!!」

「やっぱ、サンジが居ないセイか?そんなにあいつに惚れてんのかよ。」

「――― ああ、そうだよ!!ベタ惚れなんだよ!!あいつは迷惑らしいがな!!
 最近は側に寄り付きもしねえ。おまえがサンジが喜ぶって言うから会うことにしたあの女との話を進めるのに一生懸命みたいだな。
 早く引っ付けちまって厄介払いしたいんじゃねえか?
 俺はサンジ以外を嫁にする気はねえけどな。」

「あのサンジの従兄妹だって娘と付き合う気は全く無えのかよ?!」

「ああ、無い!」

「そんな気持ちで女の子と会うなんて聞いたらサンジが怒るんじゃねえか?」

「ウソップ・・・おまえが一度くらいサンジの薦める女に会ってやったらあいつが喜ぶって言ったんじゃねえか!!」

「え?・・・それであうことにしたのか?ゾロ。」

「ああ、そうだよ!!!」

「おまえってなんか意外に健気な奴だったんだなあ。」

「うるせえよ!!」



飯もそこそこに部屋を出ると廊下にサンジが居た。

「飯は済んだのか?」

「ああ。」

「アリシアを会見の間に待たせてある。」

「そうか、待たせちゃ悪いな。行こうか・・・」

「ああ。」


黙って前を行くサンジの後頭部を見てるとまたイライラしてきた。
サンジにあえなくてもイライラするが、見たらまたイライラしてきた。
何でちっとも嬉しそうじゃねえんだよ!!
俺と居るからかよ、ちくしょう!


「そんなに迷惑だったかよ・・・」

「――― あ?」

「俺の気持ちはおまえにとってそんなに迷惑だったかって聞いてんだよ!!」

「・・・・・おまえの気持ち・・・ってのは、なんだよ?」

「何をとぼけてやがる!!!散々言ったろうが!俺はおまえに惚れてるってな!!」

「――― ゾロが俺に惚れてる?今からアリシアに会うって言ってるおまえが?」

「あー、それは・・・おまえは怒るかもしんねえが、おまえがひどく熱心に女を捜してるのに、俺がちっとも会うっていわねえし・・・
 一度くらい会ってやったらおまえが喜ぶってウソップが言ったから・・・な。
 俺はどうやらおまえを困らせることしかできねえみたいだし、喜ぶ所が見たかったんだ。」

「――― 俺の喜ぶ顔を・・・見たかったんだろ?
 アリシアのも同じ様なもんだから、これからはよ、そっちを見てくれよ。」

「――― ああ?何言ってんだ?どういうことだ、それは?!」

「会ったら分かるよ。写真以上にソックリだぜ。見てくれほぼ俺のレディだ。
法律変えなくても結婚できるし、子供だって産んでくれるかも知れねえ。
ただ、今好きな男がいるらしいから、頑張って惚れさせてくれよ。
おまえなら大丈夫だと思うんだぜ。
おまえなら誰だってきっとすぐに惚れさせちまえるさ・・・
おまえがその気になりさえすればよ・・・」


サンジの言う事はさっぱりわからねえ。
何言ってやがるんだ、と怒りがこみ上げてきて怒鳴りつけようとした。

睨み付けたサンジの顔がくしゃっと歪んだかと思うと、
その目から涙が一筋零れ落ちた。

「何をお前が泣くことがあるんだ?
 泣きたいのはこっちの方だ。
 なにが俺がその気になりゃあ誰でも惚れさせれるだ!
 おまえは一向に俺に惚れてくれねえじゃねえか!」

「俺の事なんかどうでもいいだろ!!
 アリシアはレディなんだ。その方が断然いいだろが!!」

「何勝手なこと言ってやがる!断然いいって何だ?!
 俺はおまえに惚れてるんだ!
 いくらおまえに似てたってお前じゃない奴なんかいらねえんだよ!!
 前にもそう言っただろうが!!」

「俺に惚れてるなんてもう言うなよ。
 おまえが気に入ったのはどうせ俺の見てくれだけだろ?
 だから、俺に見てくれソックリで、おまけにレディなら万々歳だろが?」

「何で俺が見てくれだけでおまえに惚れたって決め付けるんだ?」

「だ、だって、おまえ、一目見て俺に嫁になれって言ったじゃねえかよ!!」

「一目惚れってやつなんだからしょうがねえだろうが!」

「一目見ただけってことは、外見の見てくれだけってことじゃねえか。」

「俺は写真を見て惚れたんじゃねえんだぞ。
 おまえの話し方、物腰、雰囲気、料理の腕、全てに惚れたんだ。
 その後、おまえにそばに居てもらって、それから感じたすべてのおまえにずっと惚れ直し続けて来たってのに何言ってやがる!!」

涙も乾ききらないまま徐々に顔を真っ赤にしているサンジの後ろから大声でゾロを呼ぶ男の声が聞こえてきた。

その声にゾロもサンジも聞き覚えがあった。
国防軍の隊長をしているルフィだ。
いつもは能天気なやつなのだが、今回はなんだか様子が違うようだ。
珍しく怒っているようにきこえる。


「ゾロ――――!!!!この野郎!!!出て来―――い!!!」



真っ赤になってしまった顔を隠すように俯いたサンジが
下から覗き込むようにゾロを見て言った。

「あの声は―――ルフィじゃねえか?」

「俺に出て来いって・・・言ってるな。」

「そのようだな。」

「ル――フィ――!!俺は――こ―こ―だ―ぞ――!!」


ゾロの声を聞きつけたのか城の廊下の角からルフィが姿を現した。


「見つけたぞ――!!ゾ――ロ――!!」

「なんだ?ルフィ。どうしたんだ?」

「どうしたんだじゃねえ!!!返せ!この野郎!!」

「あ?返す?何をだ?」

「とぼけんじゃねえ!!アリシアに決まってんだろうが!!」

「ああ、サンジの従兄妹の・・・おい!サンジ!!」

「ああ、そうだった。会見の間に待たせたままだった。
 けど、なんでルフィ、てめえに返さなくちゃなんねえんだよ。」

「うるせえ!!アリシアは俺の嫁にするって決めてたんだよ!
 国王のゾロにだって譲れねえんだよ!!!」

「いや、でもアリシアは片思い中の男がいるって言ってたぞ。」

「ああ、そりゃあ、俺だ!!」

「何でそんなことが分かるんだよ!?」

「あたりまえだ!アリシアも俺が好きで、俺もアリシアが好きだ!!」

「片思いだって言ってたぞ。」

「ああ、言われたわけじゃねえからアリシアにしたら片思いだと思ってんだろうが俺にはわかってる。
 で、俺もアリシアが好きだからゾロにはやらない!!!」

「あ―、俺ぁいらねえぞ。」

「なんだよ!その言い方!!アリシアに対して失敬だろ!!」

「ああ、すまねえ。俺ぁ、サンジのほかには誰もいらねえんだ。」

「なんだ、そうなのか?じゃあ、アリシアは返してもらうぞ。会見の間だな!!」




嵐のようにルフィは行ってしまった。
あれだけ自信満々に言ってたんだから
まさか、アリシアの相手が別人なんてことはないんだろう。




「で、分かったのかよ。俺の気持ちってヤツ。」

「あ・・・ああ。」

「それで、おまえの気持ちはどうなんだよ?
 おまえの言う、俺がその気になりさえすれば誰でもすぐに惚れさせちまえるってのにおまえ自身は当てはまるのかよ?
 分かってると思うが、おまえには俺はずっとその気だからな! 」

「―― ノーコメントだ。」

「じゃあ、何でさっき泣いたんだ?」

「あ――・・・あれは、だな・・・その・・・」

「もういい加減認めたらどうなんだよ。」

「何をだよ?」

「てめえも俺に惚れてんだろ?」

「流石は国王様は自信家でいらっしゃる。」

「自信過剰じゃあねえと思うけどな。」




「サンジ―!アリシアは貰っていくぞ――!!」
と、少し向うの会見の間の扉が開いて、アリシアを伴って出てきたルフィが言った。

「あ――、アリシア!振り回しちまって悪かった!!幸せになってくれよ――!!」

「そんな事いいさ!サンジも幸せにね――!!」と言ったアリシアはもう十分幸せそうだった。



アリシアとルフィを見送って振り向いたら、ゾロがじっと俺を見ていた。
俺の幸せはこいつの所にあるんだろうか?
・・・やっぱり、こいつ以外のところには有りそうにないような気がする。

「はあ―――・・・」

「・・・・・・・・・」

「―― ああ、そうだよ!!俺ぁ、てめえにいかれちまったよ!!
 だけどな、俺は男だから嫁にはなんねえ!!
 おまえの相談役としてなら一生、傍に居てやる。
 けど、どうしても結婚式したいとか、法律変えるとか言うんなら俺はコックに戻らせてもらう!」

「形式なんかどうでもいい。
 ずっと俺の傍に居るんならそれでいい。
 俺に惚れたとはっきりと言え、サンジ!」

「こっ恥ずかしい事言ってんじゃねえ!」

「国王命令だ!」

「き、きったねえぞ!そんな時だけ国王だとかいいやがって・・・・


          う〜・・・お、俺はゾロに・・・惚れちゃいました。」

「声が小せえ!!」

「お、俺はゾロに惚れました!!!」

「よし!!!んじゃあ、今日から一緒に寝るぞ!」

「は、はあ〜?!」

「そういう約束だったよな!!」

「・・・・そういうことかよ、なんかこだわると思ったら・・・
 言っとくがな、俺ぁキスもこの間てめえにされたのが初めてだったんだぞ!!
 この上、一緒に、寝、寝るってのはつまり、その・・・そういうことかよ!!」

「な・・・あれが初めてだったのか?・・・そういやあの時もおまえ、泣いてたよな。
 ・・・俺はおまえが俺にキスされたのが泣くほどいやだったのかと思ってたんだが、違うんだよな?なら、何で泣いたんだ?」

「・・・それについては言いたくない。っつか、訊くな!!
 いいじゃねえか!もう!俺はおまえに惚れてるって言ってんだからよ!!」

「それならもう訊かねえから、今夜から一緒に寝ろ!!
 俺も男は初めてだが問題ねえ!俺に任せとけば大丈夫だ!!」





「その根拠のない自信はホントに何処から来るんだよ〜・・・」



多少不安は残っちゃいるが、もうこいつと一緒に生きていくと決めたんだからこの男に任せてみるとしよう。



このロロノア王国11代目国王、ロロノア・ゾロって男に。




              END

1

 

さんじ・くろ〜す  赤鼻のトナカイ×キューピット

今日はクリスマスイヴ・・・

街はあわただしい喧騒に忙しなくワケもなく盛り上がる。
赤と緑に彩られたわくわくした街はおれも嫌いじゃない。

おれは普段、「サンジ」としか名乗ってないが、本名は「サンジ・クロース」という。
目立ちたがりの兄「サンタ」と違って、おれはひっそりとクリスマスにプレゼントを配る。
と言ってもおれが配るプレゼントは物じゃねえ。
兄のサンタは子供相手に物を配る。
しかもあんな目立つ格好で。
あろうことかシャンシャン鈴鳴らしたりなんかして。
夜中にこっそり行くのにそりゃないだろう・・・
まあ、兄の勝手だが。

目立つ兄は有名だがおれはほとんど知られていない。
有名になっても面倒なだけだ。
欲深い奴から「これをくれ。」なんて手紙貰いたくもねえ。
まあ、第一、おれのお相手はガキじゃねえ。
おれのプレゼントは恋するレディ限定だ。
レディの恋をかなえるためサンジ・クロースは今年も行くのだ!

おれも移動距離が半端ねえしソリとトナカイは使うが
服装はいつもの黒スーツに黒のダウンコート、黒いボアの帽子と決めている。
夜に目立たないためと寒さ対策だ。
贈るものが物じゃねえからでかい袋も必要ねえ。
プレゼントは恋の成就v
まあ言ってみたらクリスマス限定恋のキューピットってとこ。
そういう力が血統としてあるらしい。
ソリはトナカイ二頭立て、黒塗りの渋いヤツだ。
トナカイは代々クロース家のペットである赤鼻のトナカイで、実はトナカイとは全く違う生き物だ。
普段は人型だが、赤鼻を装着することでトナカイ型となり飛行能力を使えるようになる。
今全世界的に三頭しか実在していないらしい。
二頭を兄が連れて行ったので、おれんとこには一頭しかいない。
もう一頭は赤鼻ではなく青鼻のトナカイだ。
人語を解する賢い奴で、おれの活動に賛同してくれたので仲間にしたんだ。

日が暮れてきたしそろそろ出発するとするか・・・

「ゾロ〜、そろそろ出発するぞ・・・あれ?チョッパーは?メリー号も見当たらねえが・・・」

「となりのナミが来て連れて行った。どっかで宝が出たとかで・・・
絶対これに宝いっぱいにして来るって意気込んで出て行ったぞ。」

「え〜〜!ナミさんが来たの〜!?
そりゃ、ナミさんの頼みじゃしょうがねえな〜!
でも、今日、イヴだぜ?移動できねえじゃん・・・」

「問題無え。もともとチョッパーは飛べねえし、
いつもおまえとソリとチョッパー全部飛ばしてんのはおれだ。
ソリとチョッパーの分、軽いくれえだ。」

「で、でも・・・ソリが無えんじゃ、おれどうやって・・・」

「おれに直接跨りゃあいいじゃねえか。」

「えええ?!それはクロース家のスタイルとしてよくないんじゃ・・・」

「それはサンタがやってんだろ。どうせお前のことなんか誰も見てねえよ。」

「いいんだがよ・・・なんか凹むこと言うな、おまえ・・・」

「大丈夫だ。おれは見てる。」

「・・・・・・・・・・###」

「なに赤くなって・・・・・」

「うわああああああああああ!!!ゾ、ゾロ!とりあえず、赤鼻装着だ!!」





ゾロは赤鼻を装着した!
飛行能力が50000P上がった!!
力強さが10000P上がった!!!
寒さへの耐性が10000P上がった!!!!
その他もろもろちょっと上がった!!!!!
ゾロはトナカイ型に変化・・・しなかった!!!?



「あ、あれ?おま…なんで人型?」
緑の髪に赤い鼻がクリスマスカラーじゃんとか思いつつあっけにとられる。

「ああ・・・最近なんかだんだん人型寄りになってきてると思ってたが・・・
こりゃあ、完璧に人型だな。
問題無え。飛行能力は変わらねえし。」

「いやしかし・・・だったらなおさら、どうやっておれを運ぶんだよ!?」

「問題無え。抱いていく。」
ひょいとおれをお姫様だっこすると部屋を文字通り飛び出して行った。

「待てええええ!こんな恰好でレディの元へ行けるかあああ!
そ、それに、そっちじゃねええええ!!」


おれの声が夜空にこだました。



END
2009.12.18  KANOMAMA

******************************

なんか、アホな話を書いてすんません〜

サンジは自分の恋をかなえるため
ゾロ完璧人型にしちゃいました。
ただし、無意識でやってしまったことです。
蛇足解説でした。(ペコ)

0

 

A New Day 1  高校生×2



俺は今日から高校生活をスタートさせることになってるロロノア・ゾロ、15歳だ。
取り立ててレベルが高いわけでもなく、かと言って馬鹿と言うわけでも無い程度の公立高校に通うことになってる。
別にコレと言って高校生活に期待することなんかないんだが、中学同様部活にだけは力を入れることになるだろう。
勉強頑張ろうとか、友達たくさんつくろうとか、そんな面倒なことはどうでもいい。
剣道で日本一になると言う目標以外、今の俺には何の興味も無い。

確かにその角を曲がるまではそうだった。

なんだか小競り合いの様な声が聞こえると思いながらその角を曲がると、



そこに煌めくような出会いが待っていた。



金髪の人間を生で見るのは初めてだった。
もちろん金髪って物の存在は知っていたが、それがこれほどまでにきらきらと眩しくて綺麗だとは。
俺は思わずその男に見入って立ち尽くしていた。
するといきなりその男が俺に話しかけてきた。

「おっ!てめえも同じ学校だな!!ちょっと手伝え!
こいつらが違う学校のクセにこちらのレディに手ぇ出そうとしやがってよ!!」

そう言われて初めてそこに他校の制服の男5人と、金髪の背中に隠れるように、俺がこれから行く学校の女生徒の制服を着た女が居ることに気付いた。

「おお、そりゃあよくねえよな。」
思わずそう言ったが、別によくないことなどない。

「何がだ!!他校間の恋愛は禁止とかいう法律でもあるのかよ!!」
5人の中の1人が盛大に異議を唱えた。
他校の男が言う事はもっともな言い分だ。

それでも金髪は更に言う。

「レディにその気があるんならもちろん全然OKだ。
だけどな、彼女には全くその気はない。
てめえが勝手に迷惑顧みず迫ってるだけだ。
そんなモンはこの俺様が許さねえんだよ!!!」

「なにワケわかんねえこといってやがるっっ!!」
と、当然金髪は5人に殴りかかられた。
1人目2人目はかわしたが、流石に3人目のパンチは食らってしまった。

それを見ていて俺は『よくあんな綺麗な顔が殴れるな!!』と、なんか的外れな怒りを感じていた。

「なにをボーっと見てやがる、緑頭!!手伝えって言っただろうが!
その厳つい顔とガタイで喧嘩弱いとかいうんじゃねえだろうなあ!?」

「ああ?んなわけあるか!」
まあ、5人くらい竹刀がなくたってどうってこともない。

結果的に竹刀どころか、素手だって1分もいらなかった。
完璧に伸してしまったら面倒なので逃げられる程度に痛めつけてやった。
女は俺が参加した時点で逃がした。

つまり、1分後そこに残ったのは金髪と俺。

「か、彼女は?!」

「あ?ああ、逃がした。」

「な、何でそんな勝手なことしやがった?!お近づきになれるチャンスだったのに!!」

叫んだ口元に血がにじんでいた。唇、切ったのか?あの一発で。
「血、出てんぞ。ま、舐めときゃ治る。」
顎に手をかけこころもち上を向かせて血を舐め取った。

一瞬あっけにとられていた金髪は、なにをされたか気付くと真っ赤になって怒った。
「なななななな、なにしやがる!!!」

殺気を感じて俺は学校に向けて走り出した。


「じゃあな、入学式で会おうぜ。」

走る俺の後から金髪の声が追いかけてきた。


「てめえ、俺にこんなことしてタダで済むとおもうなよ!!
覚えときやがれ!俺の名はサンジ、サンジだあ〜〜!!」



2に続く
1

 

A New Day 2  高校生×2


あと5分で着くとふんでたんだが、15分もかかっちまった。
急いでクラス分けを確認して教室に入った。
もう大方全員揃っているようだ。
教室を見渡して見覚えのある金色を見つけた。
「サンジ」と言っていた、あいつだ。
俺の出席番号の書かれた机の隣の席に座っていた。
こいつぁ春から縁起がいい、俺ついてるかもしんねえ。

おれは一目見た時からこいつが気に入っていた。
何しろ男のクセに綺麗なやつだ。
そのうえ喧嘩っ早く、結構強い。
ガラが悪くてなんか面白いヤツだ。

「よう。サンジ・・・だったよな。」と、俺が声を掛けると、

「ああ、さっきはありがとな。」と、口では礼を言ってるが真っ赤で不機嫌丸出しの顔だ。

「俺はロロノア・ゾロだ。よろしくな。」と言うと、サンジは目を見開いて俺を凝視した。

「ロロノアって・・・中学の時、一年から剣道の全国大会で個人優勝して、三年間負け無しだったっていう?」

「へえ、剣道の事なんか知ってるんだな。」

「だってよ、一年の時、同学年のヤツが二年や三年に勝って優勝だぜ!すげえと思うだろ、そりゃ!!
そのロロノアなのか?!」

「ああ。」

「うわ、俺って最強のヤツに助っ人頼んだんだな!!」

「・・・おまえ、勝てねえ喧嘩売るんじゃねえよ。」

「俺が売ったときは勝てる喧嘩だったんだよ。
後から三人助っ人が来ちまってよ。
相手が二人なら勝てたんだよ。」

なかなかちゃんと自分の力量を理解してるヤツだ。
確かに二人相手になら勝ててただろう。
案外喧嘩慣れしてるんだな、こんな綺麗な顔をしてるクセに。

絶対本人はそんなことをしてくれなんて思っちゃいないだろうが、
喧嘩なんかで怪我とかしねえように守ってやりたいなんて思う俺はどっかおかしいのかも知れない。


「おまえって何中?」と、サンジが訊いてきた。

「ああ、二中。」と、俺が答えると、

「俺、三中。隣の校区なんだな。方向は多分同じだよな、一緒に帰らねえ?ちと、話してえ事あるし・・・」
と言ってきた。
何度も言うが、俺はこいつがかなり気に入っちまったから異存があるわけがねえ。
早く帰りたくて入学式が何をやってたのかなんて全く記憶にない。



昼前にやっと解放されて、サンジと帰路に着く。
なんか話があるって言ってたのが気になって仕方ない。
校門を出た所で早速訊いてみた。

「話ってなんだよ?」

「あー、もうちょっとしてから話す。あんまり他のやつに聞かれたくねえし・・・」

そういわれると余計に気になって、なんかたわいのない話をしてたんだが全く上の空だった。
で、ふと気がつくと全然見慣れない場所を歩いていた。
多分同じ方向ってのを鵜呑みにして付いてきたが、ホントに同じ方向だったんだろうか?

「ちと、お前の意見を聞きてえんだけど・・・」
と、サンジが切り出してきた。
ココが何処だかわからねえ不安も忘れて、聞き返した。

「お、おお、何だ?何でも訊いてくれ!」

「ファーストキスって言うだろ?
あれって、初めてどうなったのをファーストキスって言うんだとお前は思う?」

「はぁ?いや、だから、キスしたのがだろ?」

「んなことはわかっとるわ!!
だからだな、ほっぺにちゅーとか、おでこにちゅーとかもカウントするかって訊いてんだよ!!」

「ああ、そりゃあやっぱ、唇と唇が・・・」言ってて急に恥ずかしくなってきた。

「だよな――!!!じゃあ、あれは当然ノーカウントだよな!!
てめえはベロだったし、俺も口の端で唇じゃなかったしよ!!」

「あれ?もしかして朝のあれか?ありゃあ、傷を舐めただけじゃねえか。
それにな、キスと呼ぶからにはやっぱ気持ちが入ってねえと。」

機会があれば詳しく話すかも知れねえが、俺のそれは見ず知らずの女に奪われた。
見ず知らずなんだから当然好きでも何でもねえ。正直、顔も覚えてねえ。
俺のもノーカウントにならねえかと余計な事を言ってみた。

俺の言葉を聞いてサンジはなんだか妙な顔をして、言った。
「おまえって、怪我した奴が居たら傷舐めて廻ってんのか?」

「・・・んなわけあるか!『舐めときゃ治る』とはちょいちょい言ってやるが、傷舐めたのはお前が初めてだ。」

「なんで俺の傷は舐めたんだよ?」

「・・・さあ、なんとなく舐めてやりたかったから・・・だな。」


この時は本当に『なんで?』と訊かれても理由なんか分からなかった。
たぶん、朝の時点で俺はサンジに惚れてたんだろう。
一目惚れってヤツだったんだろうが、誰かに惚れるなんてこと今までなかったからそうだと気付けなかった。

「ふうん、そっか・・・あ、俺、こっちだから。おまえはそっちだろ?」

そう言われて、周りを見るといきなり見慣れたコンビニの前だった。
いつの間にここまで来たんだろう。ココはうちのすぐ裏だった。


「俺、7:40にここ通るから。じゃあな〜。」そう言ってサンジは俺んちと反対の方へ歩いていった。

「おお、じゃあまた明日な。」

遠まわし(でもないが)に『朝も一緒に行こうぜ』というお誘いを貰って俺はちょっとにやけてうちへ帰って行った。
あんなにどうでもよかった学校へ早く明日になってまた行きたいと思ってる。
昨日までの俺からは想像も出来ないことになっていた。



大袈裟かもしれないがあそこでサンジと出逢って俺の人生は結構大きく変わったような気がする。



                          
END
1

 

リンク  高校生×2



桜の咲き乱れる中の入学式から早三週間。
俺は予想外に楽しい高校生活を送っていた。
サンジと俺とは共通点はあまり無さそうだったが、
妙に気があって自然と行動を共にすることが多くなっていた。

なんとなく部活以外は殆どサンジと一緒にいた。
選択科目も俺は何だってよかったから全部サンジと同じにした。
「おまえ馬鹿じゃね?」と言いながらサンジも容認したので問題ない。
二人でいるのが楽しかったし、自然に思えた。
何が楽しいのかと訊かれると具体的には言えねえんだけども。
中学では殆ど人付き合いなんかしてこなかったし、
ツレといるのがこんなに楽しいとは思いもしなかった。
たぶん他のヤツじゃダメだろう。
相手がサンジだからだろうと思う。


俺は友達を作るとか言うのは苦手だったが、
あいつは友人知人の多いやつだった。
あいつからそいつらを紹介されるたびなんだか俺は不機嫌になった。
だが、今の俺よりあいつと親しいヤツは案外いなかったし、
結構いいやつばかりだったから結局そいつらと俺も友人になった。

でも基本、常に俺たちは二人で行動していた。
こういうのを親友とか言うのかもしれないが、
「俺たち親友だな!」と確認するなんてそんな寒いことはしていない。
たぶんあいつもそんな風に思ってくれてるだろうと思ってる。
ここまで二人で行動するには、俺が気に入ってるだけじゃ無理だ。
まず、一緒に登校するようになったのはあいつが場所と時間を指定したからだし、
一緒に下校できるのはいつも終わるのが遅い剣道部を、
先に終わるサッカー部のあいつが待っててくれるからだ。

しかもこの三週間で三度、休日も一緒にいた。
当日にサンジの方から電話があって、
映画に行こうだとか、ビデオ借りたから一緒に見ねえかとか
まあ、暇つぶし的な事をして二人で過ごした。
出会ってから三日も会わないなんて事はなかった。
そんなだからきっとあいつも俺を結構気に入ってくれてるはずだ。
そう思って疑わなかった。



今日もサンジが待っててくれて一緒に帰ってきた。
いつものコンビニの前まで来たところでサンジが言った。

「次に会うのは5月6日になるな。じゃあ元気でな。」と。

「あ?5月6日?!まだ4月だぞ?」

「お前何聞いてたんだよ。HRで言ってただろうが。
明日が4月29日、祭日だ。で、30日が創立記念日。
5月1日が土曜、2日が日曜、3日から5日は毎年休みだろ。
なんと7連休だってよ。いわゆるGWなんだよ。」

「ふーん、そうだったのか。」

「じゃあな。」

「ああ。」

前に休日に会ったときもそうだった。
きっとまたサンジの方から連絡してくるだろう。
そう思って軽く別れた。




ところが・・・だ。
電話はかかってこなかった。
俺は3日目の5月1日の昼過ぎにはイライラし始めた。

俺はそれなりに精神修行も積んできたつもりだった。
こんなにイライラしたことは多分今までなかった。
はじめは自分が何をイライラしているのかさえわからなかった。
そしてその理由に思い当たって愕然とした。

サンジ不足だなんて。

こっちから連絡しようにも家も電話番号も知らなかった。
電話はいつもサンジのほうからだったし、
サンジはうちに来たが、俺はあいつのうちに行ったことがなかった。
俺のうちは道場をやっていたからサンジは知っていたらしい。
いつも話していたのはサンジの方で、
色々訊いてくるのもサンジだった。
そういえば俺は一緒に居ることに満足して
サンジの事を何も訊こうとしたりしてなかったかもしれない。


『次に会うのは5月6日になるな。』とあいつは言ってた。
後何日あるんだ?!
七連休だと?くそくらえだ!!

稽古をしてれば、気が紛れるだろうと思ったがちっとも身が入らねえ。
今頃あいつは何してやがるんだ?
適当な女でも見つけたか・・・
俺じゃなくてそいつと映画見に行ったり、ビデオ見たり
もっと楽しく過ごしてるのかも知れねえ。
そりゃあ、俺と居るより女といる方があいつは楽しいだろう。
そういや女好きだったんだもんな。

あいつが女と嬉しそうに肩を並べて歩いてる姿を想像して余計にイライラしだした。
『そこは俺の居場所だ!』と思う自分に吐き気がする。
俺は女好きのあいつが彼女を作らねえのを不思議に思ってたはずじゃねえか。
俺とべったり一緒の生活にあいつが満足してるはずねえんだ。


それからの4日間を道場で身の入らない練習をしては
嫌気がさして自分のベッドに潜り込んで不貞寝をして過ごした。
『女が出来たらあんなに一緒に居た俺の事を7日間一度も思い出さねえのか!?』
なんて思ったりしては、いや、そりゃそうだろうと思いもした。

精神的に疲れ果ててやっと5月6日の朝を迎えていた。

あいつが連休中の楽しかったことだとか話し始めたりしたら、俺、平静を保てるだろうか。

コンビニに向かいながら自分がすげえ凶悪面してるのがわかる。
サンジがニコニコしながら立ってたらどうしよう・・・と思ったら
あっちはあっちでそりゃあ不機嫌な態度でそこに居た。

「よう・・・」

「ひさしぶりだな。・・・7日間も何してたんだ?一度も連絡もよこさねえで・・・」
しまった、うっかり言っちまった。

「てめえは何してたんだよ。連絡しなかったのはお互い様だろうが。」

「俺は・・・したくても出来なかったんだよ。お前んちの場所も電話番号も知らなかったんだからよ。」

「え?俺、電話したことあるだろ?おまえんちに。」

「おお、いつもお前から連絡くれてたから、俺は知らなかったんだ。」

「だから、履歴が残ってるだろ?」

「リレキ?何だ?そりゃ?」

「・・・・そうか、知らねえか。そうだな、お前ってそうだよな。いまどき携帯も持ってねえんだもんなあ。」
そう言ってちょっと小馬鹿にしたように笑われた。
それでもあいつの機嫌がちょっとよくなったような気がして少し嬉しかった。

「で、そっちからは何で電話してこなかったんだよ?」

「ああ、俺、連休中、両親が軽井沢でやってるペンションの手伝いに行ってて、
こっちに居なかったから連絡したって遊べなかったし。」

「ああ?軽井沢?じゃあ、俺が電話してたとしても居なかったんじゃねえか。」

「そ・・・そうだけど・・・。だから、一回くらいお前から電話くれるかと思って・・・・ジジイにも
ロロノア・ゾロってヤツから電話があったらペンションの番号教えてやってくれって頼んどいたのに、
帰ってきて訊いたらそんな電話なかったって言われてがっかりしたんだからな!」

「・・・そうか、がっかりしたのか、すまねえな。」と言いながら顔がにやけた。

「何、笑ってんだよ!!」
そう言ってサンジは真っ赤になって怒った。
全く可愛いやつだ、なんて思ってると知ったら尚更怒るだろうなあ。

「おれ、この一週間で気がついたんだけどよ、
俺はお前の事何にも知らねえんだなあ。」

「そうだな、言った覚えねえもん。
履歴の見方知らねえだろうから電話番号は教えてやる。」

「その他にもだ。お前のうちも知らねえし。
それから、そのジジイって誰だ?
今一緒に住んでんのはそのジジイで、両親とは別に住んでんのか?」

俺は学校に着くまでサンジを質問責めにした。
あいつは面倒がりもせず、どっちかってえと、嬉しそうに自分の事を話してくれた。

サンジのうちがこの界隈じゃ(ていうか、県下でも)有名なレストランだと知った。
なにしろ、この俺でも知ってたんだから。
しかもかなり近所だった。
たまたま中学校区の境目が間にあったから学校は違ったが
下手に同じ中学のヤツの家より近かった。
ジジイってのは父方の祖父で、そのレストランのオーナーらしい。
しかもサンジも調理師を目指してるんだそうだ。
料理を作るなんて俺は考えた事もねえ。
あいつにはなんだか似合ってる気がする。
そう言ったら、「だろ。」と言って笑った。


学校が見えてくる頃サンジが言った。

「一つ提案がある。
いつでも連絡つけてえなら、携帯を持て。」


その日の放課後、サンジと親父を連れて俺は携帯電話ってやつを初めて買いに行った。


あんなイライラはもうまっぴらだ。
携帯を持ってるだけで少なくともそれで繋がっていられるなら
安いもんだと心から思った。
分厚い説明書も読破してやると息巻いたが
結局殆どサンジに教えてもらった。


俺の携帯の短縮1番はサンジに繋がっている。

END
1

 

BLUE SKY  高校生×2

高校生活はなかなか楽しいんだが、どうしたって一日6時間席について授業を聞いてなくちゃなんねえ。
サボったってかまわねえと思うんだが意外に真面目なサンジに説教されるから取り合えず座っとく。
サンジを見てりゃ飽きないんだが流石に真横をずっと見とくわけにもいかねえ。

6時間のうちひとコマでも体育だったら身体を動かせてありがたいんだが
何しろ日本は今梅雨って言う鬱陶しい季節の真っ只中で、今日もしっかり雨が降っていやがる。
折角の体育も保健とか言うやっぱり椅子に座ってなきゃなんねえモンにすり替わっちまった。

雨が降ったら部活も半分は休む。
グランドが使えねえから他の運動部が体育館になだれ込んできて
殆ど使えなくなるから俺んちの道場で稽古することにしてる。

それでも半分は出るのはサッカー部が来るからだ。
狭いトコで筋トレくらいしか出来ねえけど、時々あいつを見ながらできるんなら
うちで1人で稽古するよりずっといい。
それに1人で下校するくらい空しい事はナイ。

サッカー部が休みのときは、サンジが空手をやったことがあると聞いてから
うちの道場で二人で空手をやったりしている。
たまに親父が見に来ては「サンジは筋がいい」とすっかり気に入っている。(まあ俺ほどじゃねえけどな。)
それもあいつの気まぐれで「今日はケーキが焼きたい。」とか言って、
下校途中で材料買い込んでうちの台所で作ったりすることもある。

考えてみると雨の部活は普段以上にサンジと一緒に居れてかなり楽しい。
だが流石にこのままじゃあ剣道日本一からは遠のくだろうと少し自分を戒めてみる日もある。
最近の俺は無意識に何よりサンジを優先してしまう。
あいつは自分の好きなことを好きなようにやってるように見えて
それでも自分のやるべきことを蔑ろにしたりしているわけじゃない。
俺ばっかりがあいつに掴まってるみたいで悔しくないと言えばウソになるが
それをサンジに求めたって尚更空しいだけだ。
俺は許されるならいつまでだってあいつと居たい。
でもあいつは家のレストランを手伝う時間には
「時間だからじゃあな。」とそりゃああっさり帰っていく。
あたりまえなんだが、おれとあいつの気持ちの違いを思い知らされる気がする。
あいつと別れた後の俺は殆ど腑抜けだ。
門下生が帰った後で親父に稽古をつけてもらっていても
集中できていないらしく暫く打ち合った後は座禅を言い渡される始末だ。
誰かに対してここまで固執したことがいままでなかったから正直どうしていいかわからないのだ。
親父も座禅をさせるだけで具体的にどうすればいいとか言ってはくれない。
意味ありげににっこり笑って「ちょっと精神統一してごらん。」と言うだけだ。
しかもそれさえできてやしない。
ちょっと気を抜くとあいつは今頃何してるだろうと考えたり、メールしようかとか、電話があるだろうかとか思ってる。
あいつもあいつで毎日学校で会ってるのに店が終わった後や風呂上り、寝る前とかに毎日一度は電話してくる。
いつも携帯をポケットに入れて持ち歩いて待ってる俺は自分でもなにやってんだろうと思うんだが
なんかの拍子にサンジからの電話に出れなかったりするとすげえ後悔するから止められねえ。
自分がこんなに友達を大事にするヤツだったとは思いもしなかった。

♪♪♪♪♪♪

かかってきた!表示も見ずにフラップを開ける。
サンジ以外に俺に電話してくるヤツなんか居ないからみる必要もない。
「ああ、俺だ!」

「あ、おれ、おれ♪」とサンジも言う。
「おれ、いま、風呂上りだけど、ゾロは風呂入ったか?」

「おう、もう後は寝るだけだ。」

「ん、おれも〜。
やっとそろそろ梅雨明けしそうなんだってよ。
いい加減雨にも飽きたよな。
んじゃ、明日朝、コンビニの前でな。
おやすみ。」

「ああ、おやすみ。」
と、待ってたワリにいつもこんなもんなんだが
もう既にこれがかかってこねえと寝れなくなってるから怖い。

俺が携帯を買ってから、かかってこなかったことは一日も無い。
これはサンジも結構俺の事考えてるなんて思ってもいいよな。
まあ、あいつは友達多いから俺だけだなんて思ってねえけど、
そん中の1人だってことは間違いねえ。

こうして俺は幸せな気持ちで眠りにつくことができる。





翌朝、気持ちよく目覚めたが、
やっぱり今日も雨だ。しかも雷までなってやがる。
朝の素振りは裏庭で、が日課だが仕方ないんで道場に行く。
道場には親父も居てやっぱり素振りをやっていた。
俺がやり始めると手を止めて俺の素振りを見てため息をつく。

「まったく、なってませんね。
そんなゾロを見るのは初めてですから、初恋なんですね?
そんなに好きなんですか?その娘のことが・・・」

「・・・あ?何の話だ?」

「隠しても分かりますよ。
ずっと誰かの事を考えてるでしょう。
だから全ての事が中途半端にしか出来なくなっている。
違いますか?」

「・・・・なるほど・・・さすが年の功だな・・・
違わねえ、確かにそうだ。
だが、なんだと?初恋?
んなワケねえだろ、俺がずっと考えちまってるのはサンジのことなんだぜ。」

「おや、そうでしたか。それは見込み違いだったですね。
ゾロがそんなに友達想いだったとは知りませんでした。」

「・・・・・・・・
あー、今日はもう止めだ。
じゃあな、親父。」

廊下を歩きながら、なんかやけにすっきりした。
そうか、初恋か。
これが。
俺はサンジに恋してるのか。
惚れてるのか。

妙に納得した。

誰にも歓迎されない恋心だが、
そんなことはしょうがない。
せめて本人の俺だけは大事にしてやろう。


学校に行こうと家を出たら雨はやんでいた。
光がさして久しぶりに綺麗な青空を見た。
俺の心の中みたいにすっきりと晴れて
その碧さはサンジの瞳を思い起こさせた。

思わず顔がにやけちまった。
両手でばしばしと両頬を叩いて引き締めてみる。

さあ、コンビニに行こう。
きらきらの金髪をなびかせてサンジが待ってるはずだ。

 END
                  2009.02.19 KANOMAMA

1

 

Free and Freedom 1  高校生×2



今日で期末テストがやっと終わる。
試験休みを挟んで終業式があって、いよいよ夏休みだ。
とはいえおれは連休とか長期休暇になると両親がやってる避暑地のペンションの手伝いに借り出される。
おれはジジイの店「バラティエ」でコックを目指して修行中だが、まだまだ料理らしい料理なんか作らせてもらえねえ。
だけど親父のペンションでは結構好きなように料理させてもらえる。
それが楽しくて、まあ文句も言わずこき使われに行ってるわけだ。
もうこういう夏休みの過ごし方をするようになって5年になる。
当然今年もそうだと親父たちは思ってるだろう。
おれだってずっとそうやって夏休みを過ごすだろうと思ってたし、不満なんかなかった。



高校に入ってひとりの友達が出来た。
今までだって友達ならたくさん居た。
でも今までの友達とはちょっと違うんだ。
ヤツの名前はロロノア・ゾロ。
ちょっとした有名人だが、あまり人付き合いは上手くない。
人望は厚いみたいだが、人とつるんで遊ぶのは好きじゃないみたいだ。
おれはいままでは結構大勢で賑やかに遊ぶ方が好きだった。
大勢の中の1人でいる方が居心地が良かった。
でもゾロと行動を共にするようになってからは大体いつも1対1だ。
他の誰かが居る必要がない、ってか、いない方がいい。
こういう友達は初めてだった。
親友とかいうヤツかもしれないなんて思ったり。
殆ど毎日大体一緒に過ごした。
あたりまえみたいに。
どっちかっていうとおれがくっついて廻ってる感はあるが、あいつもそれを望んでると思う。
なにしろ選択科目を全部同じにしたのはゾロの方だ。

知り合ってから何日も会わなかったのはゴールデンウィークくらいだ。
連絡がつかなかったのに懲りてゾロは携帯を買った。
おれもあれには懲りたんで、ゾロが携帯を持ってくれて実はすげえ嬉しかった。
それから毎日電話してるくらいだから。

だから、おれがペンションに行ったとしてもいつでも連絡はつく。
会えないけど。
声も聞けるし、その日何があったか知る事も出来る。
会えないけど。

・・・・・・・・・・・・・

会えないんだと、ゾロに言っとかねえと。





「なんだと?!」

「だから、GWの時みたいに夏休み中ペンションに行くっつったんだ。」

「夏休み中ずっとか?」

「まあ、そうだな。」

「決まってんのか?」

「毎年行ってたからな、親父たちはあてにしてると思う。」

「忙しいのか?」

「さすがに夏休みは忙しい。この時期暇じゃあ死活問題だ。」

「だったら、俺も手伝う。」

「・・・は?」

「俺も行く。」

「いや、バイトは雇えねえんだ。全然儲かってねえから。
だからタダの労働力のおれが借り出されるんだ。」

「誰がバイトに行くっつったんだよ。」

「え、でも・・・」

「泊めてくれてメシ食わしてくれりゃ金はいらねえ。
それに今更お前の昼飯食えねえのは困る。」




実は、ゾロのランチがあまりにお粗末で遠まわしに訊いてみたらゾロのお母さんは仕事でずっと家に居ないという。
ガタイのいいゾロがパンとかコンビニ弁当だとかで腹を満たしてるのがどうしようもなく嫌で、勝手に弁当を作って持っていった。
最初は流石に遠慮してたが、今では当然のように食わせてる。
餌付け成功って感じだ。
俺の料理を旨そうに食ってくれるだけでも、おれは十分嬉しかったんだが、それがここでこんな風に作用しようとは。

「大して役にたたねえかもしれねえけど、力仕事なら出来ると思う。
おまえが迷惑だって言うんならやめるが、どうだ?」

「迷惑なワケねえだろ!
いいのか?おれの親、人使いあらいぞ。
それに、部活あるんじゃねえのか?」

「おう、望む所だ。筋トレになるくらいこき使ってくれりゃあ一石二鳥だ。
部活は問題ねえ。俺は退部にはなんねえから。」

「そ、そっか。お前、ホープだもんなあ。態度でけえ一年だよなあ。
あ、でも親御さんの了解はとっとかねえとまずいんじゃねえ?」

おれはなんか、ウキウキしてきた。
ペンションの仕事は嫌じゃねえけど、ゾロと会えなくなるのだけが気が重かった。
ゾロは面白いこと言うわけでもないし、楽しいことしてくれるわけでもない。
なんか共通の趣味があるわけでもない。
何でそんなに一緒に居たいのかって訊かれると
おれ自身も「なんでだろ?」って思うんだが
理由はつけらんねえけど、そう思うんだからしょうがない。
ゾロの申し出はおれにとっては願ったり叶ったりだ。
でもそんなこと許されるんだろうか?


「俺の親は放任主義だからな、居所さえ言っときゃ問題ねえ。」


確かにびっくりするほど何も問題は無くゾロの提案は実現することになった。
ジジイだけが「よそ様の子をタダ働きさせるなんてえのは・・・」と言ってたが聞かなかったことにした。
おれの親なんか諸手を上げて大喜びで大歓迎ときた。


**********************************


夏休み初日。
いつもなら電車で行ってたんだが、今年は車で迎えに来ると言う。
ゾロも荷物を持ってうちに来て、迎えを待ってたら親父のボンゴがやってきた。

降りてきた親父は見慣れない格好をしていた。
いつも親父はアロハっぽいシャツをロクに前もとめずに羽織って、
ボトムはハーフパンツ、海パンの時だってある。
それが、黒いスーツを着てきた。
そんなモン持ってたんだ・・・てか、どうみても礼服だな。

「君がロロノア・ゾロくんか?初めまして、サンジの父親のフランキーです。よろしく。」
と、ゾロを見つけて握手を求めてきた。

「初めまして、ロロノア・ゾロです。サンジくんにはいつもお世話になってます。」
そう挨拶したゾロは普段着だったけど、親父よりよほどサマになっていた。

「親父、顔色悪いぜ。そんで、何でそんな格好してるんだよ?」

「ロビンが初めてサンジの友達ってのに会うんだからちゃんとしていけって言うからよ。
着慣れねえモン着て、車走らせてたらなんか気分が悪くなってきちまって・・・」
そう言うと、着替えるといってウチに入っていった。
それなら最初からいつもの格好の方がマシだったんじゃねえだろうか。

「ごめん、なんか、恥ずかしい親父で・・・」と言うと

「そんなことねえよ。親しみやすい親父さんでよかった。」ってゾロは言ってくれた。


2に続く
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