おしながき  おしながき

We Love Us         ゾロの誕生日をみんなの分までサンジがお祝い?    

贈りたい気持ち       サンジの誕生日に喜んでくれるプレゼントを探すゾロ。  

彼を嫌えるわけがない   麦わらの一味、みんなサンジが好きなんです!     

VOICE             実はサンジ、テレパスなんです!

おまえの話が聞きたい   誕生日プレゼントはサンジの話・・・

お前の気持ちが知りたい  サンジの寝不足を解消せよ

LINE              微妙にずれてるような、そうでもないような・・・

わかんねえから       サンジの欲しいもの、いくら考えても・・・

イタイタチイチ        告られたけどふっちゃって怒って無視してでも好きで・・

転がる桃的蜜柑 (未完)  サンジが女の子になっちゃうけど、いいですか?



**サイドメニューの「おしながき」からお好みのタイトルを選んでご覧くださいませ**














 



このお話、サンジが女の子になってしまいます。

「馬鹿野郎!サンジは女になんかならねえやい!」とか

「♂×♂でなきゃBLじゃねえだろ!」とかおっしゃるかたは

スルーしていただけるとよろしいかと存じます。




ログポースが次に指し示した島はかなり遠かった。
食材は出来る限り積みこんで出港したが、出来れば途中どこかで野菜や果物や肉を補給したかった。
市場のある町に寄れたら理想だが、緑のある島ならこの際どこでも良い。
まだ今のところ食材に困ってるわけではないが、補給できるならいつでもしたかった。
航海している間はいつだって食料の心配を少なからずしている。
海のコックの宿命ってやつだろう。
何が起こるか解らないのだ。
絶対安心な量なんてのは無いのだ。

出港して一週間が過ぎたころウソップが自慢の望遠鏡で島を見つけてくれた。
ジャングルのように緑豊かな島だと言う。
早速ナミさんに食糧確保のため寄ってもらうようにお願いしてみようと思う。

「島があるんだぞ!素通りなんてできるか!!ジャングルっぽい島だぞ!冒険の匂いがプンプンすんじゃねえか!!」

おれがお願いするまでもなく船長が独断で上陸を決定したようだ。

「じゃあ、ログが書き換わる前に出港したいからとりあえず3時間後にいったん船に戻ること!
 もし、先住民に出会ったらログがどれだけで書き換わるか聞いてみてね。
 それと、食料になりそうなものは積極的に持って帰ってきてね。
 ゾロ!あんたはサンジくんと狩り競争ね。でしょ、サンジくん。」

「さすがナミさんv分かってらっしゃる!!」

狩り競争をやると格段に獲物の量が増えるから、積極的にやることにしている。
まあ、マリモをのせて働かせようという有効な手段なのだ。
おれも負けんのは嫌だから頑張っちまうんだが。

「今回は獲物のでかさか?取れた肉の量か?最初にはっきり決めとこうぜ。」

「じゃあな、今回は野菜と果物と肉をバランスよく捕ってきたほうの勝ちだ。」

「ああ?バランス?めんどくせえなあ。肉だけでいいじゃねえか!」

「あくまで食料確保に重きを置いての狩り勝負だからな。」




あまり大きな動物には出くわさないが、牛なみの動物を10頭ほど仕留めた。
でかすぎる動物より食料として解体するには手ごろでいい。
肉はこのくらいにして野菜と果物を探そうかと思った矢先、ものすごくかぐわしい香りがしてきた。
この香りは・・・そう、桃に似ている。
桃の甘い香りを5割増しにしたような・・・この香りで不味いわけがないだろうと香りの出所を探す。
強烈な香りのおかげですぐにその果物を見つけることができた。
見た目も桃そのものだが、桃よりさらに濃い桃色をしている、ものすごく桃な果物だ。
一つ味見をしてみようと手に取ると、意外にも手触りは桃ではなく蜜柑のようだ。
サバイバルナイフで切ってみると中身は甘夏か八朔のような・・・
果肉がピンクなので、ピンクグレープフルーツに一番似ているかもしれない。
ひと房はずして切り開くと溢れんばかりに果汁を湛えた細長い雫型の果肉が花開き、さらに香りが増した。
柑橘系の味かと思いきや、特有の酸味は薄くかなり甘かった。

「味はやっぱり桃?桃的蜜柑だな・・・とりあえずかなり旨いな♪
 デザートに幅広く使えそうだ。ジュースにしてもいいし、多分栄養価も高そう・・・・」

一瞬目の前が真っ赤に染まり、「あれ?」と思った直後、
身体が鉛のように重くなって立っていられなくなり、意識も途切れた。


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気がついて最初に目に飛び込んできたのはチョッパーの回転イス。
ということはここはサニー号の医務室なんだろう。

気分はそれほど悪くはないが、身体はやはり重い。
だが、立てないほどでもなさそうだ。
あとは、説明できないのだが何とも言えない違和感があった。
とりあえず目が覚めたんだから、こんな診察台の上にいるのはまっぴらだった。
床に足をおろして一歩踏み出したとたん何かを踏んずけてつんのめった。
チョッパーの机に手をついてなんとか転倒は免れたが。
机の上の手を見ると袖から指先が三センチほど覗いていた。
なんでこんなに袖が長いんだろう?
そう言えば何を踏んだんだろうと足元をみると、踏んだのは自分のズボンの裾だった。
なんでこんなに服がゆるゆるなんだろう?
どう見てもいつも俺が着てるいつものスーツなのに。

「あ!サンジ!気がついたのか、よかった!」と、チョッパーが入ってきた。

「よう、チョッパー・・・!!!」と、気軽に声をかけてその自分の声に驚く。
間違いなくおれが自分の口で出したその声が、まるでレディの声のように高かったからだ。

「あ、サンジ、今サンジは女性の身体になってるんだ。」

「・・・は?」

「だから、身長も縮んでるし、当然手足も短くなってる。声も高くなってるな。」

「・・・待て、待て!なに、当然のことみたいに言ってんだ!!なんでそんなことになってんだよ!!」

「ナミが住民に話を聞いてきてくれたんだけど、『転桃柑』って言うんだそうだ。サンジが食べた果物。」

「・・・・・あー・・・もしかしてあの、桃っぽい蜜柑・・・あれのことか・・・あれでこうなったってことか?」

「うん。あ、一応確認しとくけど、これだよね?サンジが食べた果物。」
そう言ってチョッパーはリュックから新聞紙の塊を出した。
新聞紙を一枚はがすごとにあの強い桃の香りがしてきた。

「さっきみたいに紙に巻いて冷蔵保存しとけば半年くらいもつらしいんだ。
 キッチンの冷蔵庫に三つばかり入れてある。
 それから、おれ、念のためこれで錠剤を作っとこうと思って。で、サンジどれだけ食べたんだ?」

「つまり、もう一度食べれば元に戻るってことか?なんだ、そうかよ・・・
 またひと房食べればもと通りなんだな、焦って損したぜ。
 じゃ、よこせ。食うから。」

「だ、駄目なんだ、今は!!少なくとも2ケ月くらい経ってからじゃないと!
 かなり激しく体細胞が変化してるから後遺症が出るらしいんだ。」

「・・・2ケ月?!」

「しょうがないだろ?中途半端な戻りかたしたくないだろ?」

「そ、そりゃそうだ・・・それで保存なわけか。」

「うん。ログが書き換わると困るからあの島からはもう出港しちゃってるんだ。」


おれは6、7時間気を失っていたらしい。
気がついたと聞いてナミさんが服を持ってきてくれた。
チビになったおれに貸して下さるんだそうだ、なんて優しいんだろう。
レディの身体になったとはいえ、おれはナミさんのようにグラマーにはならなかった。
しかもナミさんよりさらに10センチくらいチビなのだ。
だからセクシーな服は似合わないし、かわいい服はどうにも恥ずかしい。
結局タンクトップとサブリナパンツとシャツブラウスを拝借することにした。

そう言えば、食材はどうなっただろう?
狩り勝負は今回はおれの途中棄権ってことだな、しょうがねえ。
おれがこうなってることをゾロは知ってるんだろうか?

「ナミさん、他のクルーはおれのこと知ってるんですか?」

「女の子になったのを知ってるのはあたしとロビンとチョッパーだけよ。
 他にはちょっと具合が悪いっていってあるけど・・・
 でも、隠しておけないし、隠しておくこともないでしょう?2ヶ月そのままなんだし・・・
 あたしがみんなに言ってあげるわ。大丈夫よ、サンジくん、かわいいわよ。」

「いや、そういう問題では・・・」とつぶやくおれの手を取って甲板に行ったナミさんは集合をかけた。


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「というわけで、サンジくんは女の子になりました。2ヶ月後に元に戻る予定です。」
ナミさんがかいつまんで手っ取り早くみんなに説明してくれた。
みんなグランドラインに入ってから、ちょっとやそっとで驚かなくなってるのか、
意外なほどすんなり受け止められてしまった。

「そうか!不思議くだものだな!しばらくよろしくな!女のサンジ!かわいいぞ!」

「うん!カヤの次くらいに可愛いぞ!」

「キュートなサンジさん。パンツ見せてもらってよろしいですか?」

「おう、なかなかのもんだ!キッチンに踏み台を造ってやろう!」

「かわいいなんて言われても嬉しかねえんだよ!!このクソ野郎ども!!」

「「「「おお〜!!声もかわいいぞ〜!!」」」」

しかし案外かわいいと言われて悪い気はしないもんだと、
ふとゾロを見たら目を見開いて口をあんぐり開けて固まっていた。
まあ、もともとゾロからのコメントなんか期待しちゃいない。
他のクルーに言われるのはいいが、ゾロにかわいいなんて言われちまったらそれはそれで困る。

「コックのくせにおかしなもん拾い食いして、ばかげた状況に陥ってんじゃねえ・・・」
しばらくしてゾロがボソボソと言った。
ゾロらしい物言いでちょっとほっとした。


リーチの違いとかで思うように行動できないことはちょくちょくあるが、まあ2、3日で慣れるだろう。
身体が重いと感じることはなくなった。
気分が悪いわけでもどこか痛いわけでもないが、おれの内部で何が起こっているんだかおれにもさっぱりわからない。
二ヶ月待つ必要もない気がするが、身体の中のことはおれが判断すべきではないんだろう。
なにしろ、優秀な船医がいるんだから、そういう判断はチョッパーに任せるべきだろう。
男か女かわからない中途半端な身体になるのはさすがに御免こうむりたい。

まあ、今も似たようなもんなんだが。
身体は完璧にレディなような気がするが、中身は男のおれ、そのままなんだから。

とりあえず、早速フランキーが踏み台を造ってくれたので料理するのに支障はなさそうだ。
一応念のため少し早めにディナーの準備にかかる。
冷蔵庫から食材を取り出していて、奥のほうの、あの『転桃柑』が入っているはずの新聞紙の塊に目が行った。

随分と短時間で『転桃柑』に関する情報が妙に詳しく分かったものだ。
もしかするとあの島の住民は結構『転桃柑』を食べてたりするんだろうか?
しかし、食べたら気を失ってレディになっちまう実をいくら美味くても食うだろうか?
レディの身体は、見て触れるには魅力的だが、自分の身体になってみるといいことなんか見当たらない。
手足が短く、背も低いから今までとどいたものに届かない上に非力だ。
胸も邪魔だし(まあ、そういうほども無いんだが)肌も傷つきやすそうだ。
・・・そうか、男のおれが食べたらいいことなしだが、レディが食べたら・・・
あの島はああいうジャングルっぽい島だったし、なおさら男の身体のほうが色々都合が好さそうだ。
その上で保存方法が確立してるってことは、やはり生活しやすくても元に戻りたくなるんだな。
それは、子孫繁栄のためだろうか・・・恋人に愛されるためだろうか・・・
女性の身体なら、恋人に愛されることができるから・・・・

なんか思考が変なほうに行きそうになってきたので考えるのをやめた。
ディナーの準備に集中することにした。

しばらくすると匂いにつられたのかダイニングにクルーたちが集まってくる。

「サンジのメシだ〜〜!!」とルフィが入ってくるなりカウンターを飛び越えておれに巻き付いた。

「うわっっ!!あぶねえだろうが、このクソゴム!!!」と顔面に肘鉄を食らわした。
まあ、ゴムだから効いちゃいないんだが。
却って効いたのはおれにだった。
反動で後ろに反ったルフィを支えきれず巻き付いたルフィごと後ろにひっくり返っちまった。
そこにゆっくりとやってきたのはゾロで、ひっくり返ってるおれに手を差し伸べた。
なんだか酷くレディに対する扱いのような気がしてイラッときたが、折角なんでその手を取って立ち上がる。
しかもこんな無様な有様をこいつに見られるなんて。

「ルフィ、こいつは今縮んで力もなくなってんだからムヤミに巻き付くんじゃねえ。」
そう言いながらグルグルと巻き付いたルフィを解いた。
解かれたルフィが口を尖らせて言う。
「え〜!?サンジに巻きついちゃダメなのか?!女のサンジのほうが気持ちよかったのになあ〜」

「「ダメだっっ!!!」」
おれの蹴りとゾロの拳が同時にヒットして、ダイニングのドアごと飛んでいき海に落ちる音がした。

おれは今非力なうえに本気で蹴ったわけでもねえ。
なんであんなに飛んだんだろう?
ゾロが本気で殴ったのか?
なんのために?
ルフィがおれに巻き付くなんて、今迄からよくあったことだ。
なのになんか本気で怒ってるみたいだ。
おれがレディの身体だからなのか?







2に続く

 




夕食後、なぜかゾロがダイニングに居座っている。
ゾロがこんなにチビチビ酒を飲んだことがあっただろうか?
おれは当然夕食の後片付けをしてるわけだが、
もしかして飲みながらおれの後片付けが終わるの待ってるんだろうか?
何のために?
何か話でもあるんだろうか?

片付けが終わったのを見て、ゾロから声を掛けてきた。

「終わったのか?」

「ああ。」

「もう寝るのか?」

「ああ、風呂に入ってからな。」

「どこで寝るんだ?」

「え?いや、今迄通り男部屋でよくねえ?」

「そういう無自覚なことを考えてんじゃねえかと思った。」

「何だよ、どういう意味だ、そりゃ?」

「おまえな、相当可愛い女になっちまってんぞ。」

「て、てめえまで、か、可愛いとか言うんじゃねえ!!」

「男部屋で寝たりして、もしうっかり襲われたりしたら困るからな。
 倉庫か格納庫かで寝ろ。てめえのボンクはおれが運んでやる。」

「襲われるって・・・中身おれだぜ、あり得ねえだろ!んで、なんでてめえが困るんだよ。」

「可愛い女が無防備にすぐそこに寝てたら思わず・・・ってこともあるかもしれねえだろうが!
 そうすっと・・・ふ、船の風紀が乱れるだろ。いろいろ面倒なことになると厄介だろ。」

「そういうこと力説してるてめえが一番あぶねえんじゃねえの?」

「おれは女には興味ねえんだ。だから大丈夫だ。元に戻るまでずっとそばにいて守ってやる。」

「あ・・あーそー。別にそんな必要ねえと思うけど・・・。
 あ、寝んのは、たった二ヶ月のことだしよ、医務室で寝かしてもらうことにする。
 ボンクを移動させるなんて大袈裟だろ。
 もう、風呂入って寝るから、てめえも寝ろ!」

キッチンを飛び出して男部屋に向かう。
マリモはひょっとして天然のタラシなのか・・・
軽々しく『ずっとそばにいて守ってやる。』なんて言うもんじゃねえ。
聞いたほうが変にドキドキすんじゃねえか!

男部屋は無人だった。まだそれぞれ夜を気ままに過ごしてるんだろう。
少ない荷物をまとめて男部屋を出ようとしたらチョッパーとはち合わせた。

「あ、サンジ。話はゾロに聞いたから医務室使ってくれ。今、ウソップが鍵付けてくれてるからな。」

「鍵?」

「ああ、ゾロがウソップに頼んでたからもう付いてるんじゃないかな?」

「あ、あ〜、もうなんか激しく迷惑かけて申し訳ない。」

鍵を付けることに誰も疑念を持たねえってことは、
それなりにゾロの心配は杞憂というわけでもないかもしれないということなのか?



風呂に入ろうと脱衣所で服を脱ぎかけてふと鏡に目が行った。
なんだかんだといろいろあったが、レディになってからこのとき初めて客観的に自分の姿を見た。
おおよそおれなんだが、何か微妙に女性的な雰囲気になっているような。
肌の色が、元から白いほうだったがさらに色白になっていて、頬に赤みが差している。
唇も少し赤いだろうか。
目元も微妙にぱっちりした感じだ。
当然、ひげやすね毛は無くなってる。
ヘアースタイルや、巻いてる眉毛はそのままだからやっぱりおれだと分かるのに・・・
元がいいだけに、とんでもなくキュートなプリティレディになってるぞ、おれって。
チビで貧乳だと思っていたが、それがまた絶妙のバランスだ。


「まいったな・・・こりゃホントに無駄にキュートなレディになっちまってんじゃねえか。」


**********************************



おれがレディになって一週間が過ぎた。
おれももうすっかりこの身体に慣れたと思う。

ゾロがその言葉通りずっと傍に居て一日中守ろうとしたので、
いくらなんでも明るいうちは大丈夫だからと言ったら、
日が落ちるといつの間にかおれの傍に居るようになった。
一週間たってもおれをやけにレディ扱いするゾロってのには到底慣れることなんてできそうにない。

他のクルーはもうすっかりレディになったおれに慣れたようだ。
なかなかの順応性だ。
正直なところおれが襲われるなんてやっぱり杞憂だったとおもう。
もうゾロに守ってもらう必要なんて全然ないと思う。
おれの傍に居るために夜はほとんどダイニングに居るゾロは腹筋や背筋、腕立てを主にしている。
たまにダンベルを持ち込むこともあるが、今までやってたバカみたいな錘を使った鍛錬の替わりにはなりそうもない。
ゾロから言い出したこととは言え、おれの間抜けな行いのためにゾロの鍛錬に支障をきたすのは嫌だ。

「だから、今迄の鍛錬の仕方にもどしちゃどうだ?」

「問題ねえ。ここで出来ねえことはちゃんと昼間にやってる。
 おれの鍛錬の仕方をてめえが心配する必要はねえ。」

「だけどおれのためにおまえに迷惑かけんのは嫌なんだよ。」

「迷惑じゃねえ。おれがここに居たいからここに居るんだ。それでいいだろう?」

「いいわけあるか!もうみんなすっかり順応してる。
 おれがレディになったことを気にしてんのはてめえだけだろう。
 船の風紀が乱れることなんて起きやしねえ!
 おれもこの身体に慣れたし、自分の身くらい自分で守れる!」

穏やかに話すつもりだったのについうっかり声を荒げちまったおれをいきなりゾロが足を払って床に押し倒した。
あまりに唐突で何をされたか分からなくなっているおれに、これまた唐突にゾロが口づけてきた。

「な、なにすんだ?!」

「押し倒して、キスだ。」

「は、はあ?!なんで?」

「あっさり押し倒されやがって、どこが自分の身くらい自分で守れるだ。」

「て、てめえ、おれを守るんじゃねえのかよ!で、何でキスするんだよ?!」

「折角押し倒したんだ。キスくらいさせろ。」

「ふ、船の風紀はどうしたんだよ!」

「知るか!そんなもん。」

「したかったのか?・・・キス。」

「・・・」

「なんでだ?」

「・・・そりゃ・・・惚れてるからに決まってんだろうが。」

「・・・な、な、な、何言ってやがんだ!!
 てめえ、女に興味がねえとかカッコつけたこと言ってやがったくせに何言ってやがる!!」

「間違ったことは言ってねえ。」

「キュートなレディになっちまったおれの傍に居すぎて『惚れた』とか言っといて、
 キ、キ、キスまで奪っといて・・・」

「てめえは女じゃねえだろうが。」

「は?え?」

「てめえは男だろう?違うのかクソコック!」

「いや、違わねえ。今はこんななりだが間違いなくおれは男だよ。
 ・・・って、女に興味ねえってのは・・・男にって意味だったのか!?」

「・・・いや、てめえ以外の男になんぞ興味はない。おまえだけだ、クソコック。」

「・・・なに?そりゃあ、まさか、コ・ク・ハ・ク・・・?」

「まあ、なんか、そんな感じだ。
 それから、てめえ一つ間違ってるぞ。
 女になったてめえの傍にいたから惚れたんじゃねえ。
 てめえがちゃんと男だったころから惚れてんだ。」

「う・・・うそ・・・」

「てめえも気付いてないみたいだし、他の奴らもてめえに変な気起こす様子もなかったから
 すぐにどうこうしようとは思ってなかったんだけどよ・・・
 急にてめえ、やけに男好きのする女のなりになりやがって・・・
 他の奴らがその気になったりしたら目も当てらんねえから見はってたんだが・・・
 告ったことだし女だろうと男だろうと関係ねえ。
 てめえはおれのモンにする。」





3に続く

 



まいった・・・
夜になるといつの間にか傍に居るそんなあいつにどうやらおれの方が参っちまったようだ。
言いたいこと言ってキッチンから出て行ったあいつのことを考えると頬が熱くなった。
あいつに惚れてるなんて言われてたまらなく嬉しかった。
おれは今間違い無く嬉しいと思ってる・・・
つまりおれもあいつを・・・

いやいや待て待て、そりゃおかしい。
おれはレディが大好きなダンディなラヴコック、サンジなんだよ。
間違っても男に惚れたりするなんてことはなかったはずだ。
確かにあいつがいい男だってことは悔しいけどずいぶん前から認めてた。
男前だし、逞しいし、強いし、そのくせ優しいとこもある。
けど、だからって、このおれが男に惚れたりするはずは絶対無い。

きっとこれもあの転桃柑の仕業に違いない。
肉体だけかと思ったら思考回路まで女性化させやがるようだ。
気をしっかり持たねえと!
うっかり懇ろになったりしたら男に戻ったときに死にたくなっちまう。
いま、惚れてると言われて嬉しいなんて思うのは、あの転桃柑のせいなんだ。
本当のおれの感情じゃねえ。

とはいえ、今のおれがそう思っちまうのは事実で、
レディになっちまったおれはゾロに惚れているようだ。
そして、ゾロもおれに惚れてておれを自分のモンにするとかほざいてやがった。
ヤル気満々なわけだ。
そんなあいつに相思相愛だとか・・・
そんな事気付かせちゃなんねえ。
おれのいまのキモチは自覚した上で隠し通さなけりゃいけねえ。

たかが2か月のことだ。
2か月たって、男に戻ればきっとこの女性的な感情はなくなるだろう。
ゾロはおれがちゃんと男だった時からおれに惚れてたとか言ってたが、
おれにその気がなけりゃ
「そんなこと知ったこっちゃねえんだよこのホモ野郎!」
と蹴り飛ばしてしまえるはずだ。
感情に流されるな。
大丈夫だ、おれは強いんだ。
あんな果物ごときに負けてたまるか!


************************************************

結局、ゾロが他の奴からおれを守るために設置した鍵は
おれがゾロから逃れるために毎晩きっちり施錠していたりする。
極力奴には近づかないことにしている。
恥ずかしい話だが、恋する乙女としてはうっかりときめいてしまったりするもんだから
おれがアイツに惚れちゃってるなんてことがアイツにバレないためには
こうするのが一番の良策だとおれは思ってる。
なんかアイツから逃げ回っているみたいでいい気はしない。

なんでこんな事しなきゃなんねえんだ全くイライラする。
なんでこんな目にあわなきゃなんねえんだ?
コックなら旨そうな果物を見つけたら味見くらいそりゃすんだろよ!
何が悪いってんだ。
たった一房食べただけで、ここまでひでえ目に合うなんておかしいだろ?
とんでもなく理不尽だ・・・
うう・・なんか腹が痛いような・・・
下腹部に鈍痛が・・・いや、激痛かもしれねえ・・・
なんだろう、こんな痛みは経験したことがねえ!
腰掛けていた診察台から下りて立ち上がるがまっすぐ立っていられない。
思わず腰を折って前かがみになりながらドアまでいこうとして、ふと振り返った診察台に赤いシミが。
血・・・だ!ここは今までおれが座ってたとこ・・・ってことは、下血してるのか、おれ!?
コレはチョッパーを呼んだほうが良さそうだ・・・
自分のことだが今のおれの中のことはもうサッパリ分かんねえ。
だが、出血してるってのはやっぱりただごとじゃねえだろう、この痛みもだ・・・
ドアの鍵を外し上半身を外に出してチョッパーの名を呼んでみたが
何しろ痛くて腹に力が入らねえからでけえ声が出せねえ。
もう寝ているだろう男部屋のチョッパーに声が届くとは思えなかった。
「どうした?クソコック」と、すぐそばから声がかかってマジ驚いた。

「な、なんでてめえがそこに・・・?」

「んなことはどうだっていい。チョッパーを呼んでたがどっかわりいのか?」

「あ、ああ・・・なんかすげえ腹が痛くて・・・」

「顔色も悪いな・・・待ってろ、すぐ呼んできてやる。」

男部屋にすっ飛んでいったゾロを見送ってホッと溜息をつく。
痛みは増してる気すらするが、チョッパーが来てくれると思うだけで随分気持ちが楽だ。

ゾロはおれがすべての仕事を終えて医務室に引っ込んで鍵をかけた後も
ああやっておれのそばにいておれを守っていたんだろうか。
それともたまたま偶然・・・

いや、きっと偶然なんかじゃないとわかってる。


4に続く

 




「初潮だよ、サンジ。」

「え?」

「生理だよ。」

「せ、せい・・・り?」

「そう。身体の子供を産む準備が整ったってことだね。」

「子供を・・・産む?おれが?」

「転桃柑の作用がここまで完璧だとはおれも思ってなかったよ。
 男に戻る時は妊娠してないか検査してからにしなくっちゃね。」

「な、な、な、な・・・なにを馬鹿な事言ってんだ!
 か、身体の準備ができたからって、お、おれが、に、妊娠なんかする訳がないだろうが!!」

なぜだかおれの頭の中で、ほやほやの柔らかそうな緑の髪の赤ん坊が
おむつをしたお尻を振りながらハイハイで横切っていった。
ああ、なんて可愛いんだ。
あんなに可愛いのにきっと見えなかった顔はゾロに似て赤ん坊のくせに精悍だったりするんだろう。

って、何を考えてるんだおれはっっ!!
違う!断じて違う!!
おれはゾロの子供を欲しいなんて思ってない!
そりゃあちょっと惚れてるっぽいけど、そこまで思っちゃいねえだろ、おれ!
自分でビックリだよ、なんの妄想だよ!!

「そうだよね。身体の準備が整ったところで、受精しなくちゃ妊娠しない。」

「・・・い、いくら医者だからって、怖いことをあんまり平然と言ってくれてんじゃねえよ!!」

「ええっ!なんで怖いんだよ?受精しないんだから妊娠しないよって安心させるつもりで、おれ・・・」

「あああ、いや、わりい・・・そうだよな、おまえはいつも俺たちのこと一番考えてくれてる最高の船医だよ。」

鎮痛剤が効いてきたのか痛みは随分落ち着いた。
まったくレディたちは毎月こんな目に合ってるのかと思うとホントに頭がさがる。
しかし、転桃蜜・・・気持ちを女性化させた上、子供まで産めるようにするとは・・・あなどりがたし・・・
そこへノックの音がして、ゾロが心配そうな顔を覗かせた。


「クソコック、大丈夫なのか?・・・!・・・出血したのか?!怪我したのか?どこをだ?!」

「え?ええっ?あっ!!いやこれはっ!!」
しまった!自分の体のことで精一杯で、汚しちまった診察台のことをすっかり失念していた。

「ゾロ!大丈夫だ!サンジは怪我なんかしてねえ!!」

「怪我してねえ?ありゃあ血じゃねえのか?」

ゾロを安心させようと叫んだチョッパーが、『あれは経血なんだ!!』とか言いそうで、慌てて割って入る。
「は・・・鼻血だ!!なんかレディの体になってから鼻の粘膜が弱くなっちまってな!!」

「?????」
チョッパーが呆然としてるが、この際、無視だ。

「・・・そ、そうなのか・・・やっぱり副作用があるんだな。
 ―――早く男に戻れるといいな・・・」

「あ、ああ・・・」
妙に優しげに囁かれたゾロの言葉に曖昧な返事を返す。

なんだかわからねえが、ツキンと胸が痛んだ。
ゾロは男のおれに惚れてると言った。
『告ったことだし女だろうと男だろうと関係ねえ。
 てめえはおれのモンにする。』
なんて言ってたが、レディなおれに手を出そうなんて素振りはみせていない。
男が好きなんだったら、レディなおれには何も感じてないのかもしれない。
なのに今のおれはゾロに惚れていて、男に戻ったおれは多分ゾロとはただの仲間でしかない。
おれたちが相思相愛だってのも、なんか微妙にずれてて、結局は間違いだったんだ。
おれの身体の準備が整ったところで、ゾロにその気がないなら意味が無い。
あ、いや、子どもを産む気はさすがにないんだぞ、ホントに・・・
だから、そんな準備をされたところでおれが辛いだけなんだよな・・・

転桃柑は何がしたいんだ。
こんなことをしてあの果物になんのメリットがあるってんだ?



5に続く

 



ベビーゾロは毎夜毎夜、おれの夢のなかに現れた。
ただただおれの前を這いずり回るだけなんだが、2,3日してこっちを向いてくれた。
やはり想像通り赤ん坊のくせに精悍な顔をしている。
なのに笑うと蕩けそうなほど可愛い。
あの髪の色だから、そうだろうとは思っていたが、ゾロにそっくりだ。

夢を見ているときはなんかとっても幸せな気分なんだが、
目が覚めるとがっくりと項垂れて自己嫌悪に陥る。
なんだってこんな夢をみるんだ?
ベビーゾロなんて存在し得ないんだ。
ゾロが男を好きなら、ゾロは子供を授からないんだ、永遠に。
そんで、おれには全くの無関係じゃねえか!
おれの夢に出てくる意味がわかんねえよ・・・


一日の仕事を終えて、風呂から医務室へってルートにも慣れた。
ドアを閉めて自然な流れで施錠しようとして手を止める。
おれが医務室に入ったのを何処かでゾロは見ているんだろうか?
そしてまたおれを守るためにドアの外で待機してるんだろうか?
ドアを開けておれが顔を出せば「どうした?クソコック!?」って言うだろうか?


ぼーっとドアの前で意味のないことを考えていたらいきなり外からドアを開けられた。
心底驚いて固まっているおれに、ドアを開けたゾロは怒って言った。

「鍵、忘れてんぞ!」

「あ、ああ・・・いま、掛けようと思ってたとこで・・・」

「入ったらすぐ掛けねえと、こうやって入ってこられたらどうすんだ?!」
そう言ってゾロは医務室に一歩、踏み込んだ。

「いつも鍵掛かってるか、確認までしてたのか?おまえ・・・」

「まあ、いつもじゃねえが、たまに。」

「おまえがそこまで心配性だなんて、笑える。」

「笑いたきゃ笑え。」

「おまえがドアの直ぐ側に待機してんなら、鍵なんか要らねえんじゃね?」

「・・・・てめえ、もう忘れたのか?おれは誰が止めるんだよ・・・」

「おまえは女には興味ないんだろ?」

「てめえを女だとは思ってねえと言っただろうが。」

「思ってなくても、おれの身体は多分、ほぼ完璧に女性のものだ。
 子供だって産めるみたいだしな・・・
 男を好きなおまえが手を出したいとは思えねえ・・・」

「てめえの頭はヒヨコ並か?!
 これも言ったはずだ。
 おれは男が好きなんじゃねえ。
 てめえが好きなんだ、男も女も関係ねえ!
 それに、おれはもう19だぞ、女を抱いたことだってある。」


「え・・・?」

「あ?」

気がついたらゾロを蹴り出しドアを閉めて鍵をかけていた。
ゾロがレディとそんな関係になったことがあったなんて、考えたことがなかった。
19なら、そんな経験あって普通だなんて思ったこともなかった。
女には興味ないとか言っといてやることやってるなんて、ずりいじゃねえか!
ゾロなんか、ゾロなんか大嫌いだ!
大嫌いだ!大嫌いだ!大嫌いだ!
そう思いながらも、壊れちまったみたいに止めどなく涙が出てきちまうのは・・・
やっぱり嫌いになれてないからなんだろうか・・・

はやく女性化してしまっている思考回路をもとに戻したい。
レディになって心も体も苦しいことばかりだ。
子供まで産めるようになったっていうのに、まだ完全じゃないんだろうか?
まだ一ヶ月以上もこのままでいなくちゃいけないんだろうか?

********************************



「特に悪いところは無さそうだね。
 健康な女性の体みたいだ。」
聴診器を耳から外して首にかける、医者然としたチョッパーにちょっと前から思ってたことをきいてみる。

「なあ、あの果物、転桃柑に何のメリットがあるんだ?
 ひとの心や体を性転換させることで・・・」

「こころ?こころも女性化してると感じてるのか?サンジ・・・」

「え?ああ、その、なんとなく?」

「おかしいなあ・・・あの島で聞いた話では、肉体が変化するだけのはずなんだけど。
 だって、戻る方法が確立されてるんだよ。
 気持ちが肉体と同じになったら、戻ろうと思わないんじゃないかと思うんだけど?
 あと、果物側からみたメリットについては正直良くわからないよ。
 他の動物でもおなじ作用があるのかも分かってないしね。」

「う、う〜ん、そうか・・・・
 あ、あと・・・おれはどうなったら、もう元に戻ってもいいってことになるんだ?」

「おれが思うに、次に正常に生理が来たらOKじゃないかと。」

「もう一回、あれを経験するのか〜・・・気が重いなあ・・・」

「後一回で終わりだからさ。女性はず〜っと一年に12回も我慢してるんだから・・・」

「そ、そうだな。レディは偉大だよな。」


チョッパーの定期健診を終えて、また色々と考える。
考えたところでわかんないことのほうが多いんだけど。

精神面の女性化・・・ってか、ぶっちゃけ、おれがゾロにほれちまってるらしいってのが、
あの果物のせいじゃなかったとしたら、おれってもしかして、男に戻ってもゾロを好きだったりするんだろうか?
たまたま時期が被っただけで、こんな事がなくてもおれはゾロに惚れたのか?
今まで19年間生きてきて、男に惚れたことなど無い。
これは断言できる。
俺はレディが大好きだったんだ。
まあ、今でもレディは大好きだ。
・・・そうか、心が女性化しているならおれはレディを恋愛対象として見なくなって当然なのか。
ナミさんやロビンちゃんに対する気持ちに変わりはないと思うし・・・
おれって押しの強いのにすっげえ弱かったんだなあ。
今まであんなに積極的に好きになられたことなかったもんなあ。
レディであんなグイグイ押してくるタイプ、そうはいねよなあ。
てか、レディでそれは嫌だろう。
男だから男らしいんであって・・・。

あー・・・彼女にも男らしく迫ってモノにしたのかなあ。
どんな彼女だったんだろう。
可愛いタイプかなあ、それとも美人タイプ・・・
おれを好きだなんて言うやつがどっちのタイプが好みなのかさっぱりわかんねえ。
おれ、ゾロにそういう相手がいた事、かなり気にしてんなあ。
男のくせにレディに嫉妬してるとか・・・気持ち悪いよなあ・・・
しかも過去のことなのに・・・
なんか女々しいなあ。
男の戻っても、こんな女々しいやつじゃゾロに嫌われちまうかも・・・
こんなこと考えんのも、更に女々しいじゃねえか。

とりあえず、考えたってわからねえ。
おれが男に戻ってから、おれの胸に聞いてみねえとわからねえことだ。
わかんねえんだから、やっぱり今までどおりゾロを避け続けるのが、まあ、賢明だろう。
でも、惚れてる相手に避けられるのってやっぱ、つれえのかな。
まあ、ゾロだからな、気づいてないって可能性もあるけどな・・・


*****************************************************


どう考えても避けられてると思わざるをえない。
まあ、当然といえば当然だが。
あいつにしてみれば仲間だと思ってた奴がやばい変態だったってとこだろう。
あんだけの女好きだったんだ、男が男に惚れるとかありえねえと思ってるに違いない。
いまは身体は女だが、だから惚れたんじゃねえからな。
おれのモンにするとか言ってはみたが無理矢理襲って奪っちまおうなんて思ってる訳じゃねえ。
合意の上であいつがおれのモンになるとも考えにくい。
だから、自分で言っといてナンだが無理難題かとも思ってる。
「まあ、キスできただけでもめっけもんか。
 あーでも・・・ありゃあ合意じゃねえから、謝るべきか・・・
 避けられてっから何時言えるかわかんねえが、機会があったら謝るか・・・」
全くあいつは見事に逃げている。
飯時にキッチンで皆と一緒に会う以外見事に会わねえ。
一体何処に居るのやら。
仕事でキッチンに居る時も、必ず誰かといっしょだ。
気づいた時には医務室のドアを開けて入る所で直ぐに施錠の音が聞こえる。
やはり女のあいつに働いた無体は女のあいつに詫びるべきじゃねえかと思う。
あいつが女にならなかったらあんな風に容易く唇を奪われたりはしなかっただろうからな。
機会があったらなんて言ってたんじゃ駄目だろう。
やはり狙い目は医務室に入るとこか。
何時もほぼ決まった時間だしな。
どうもいつも鍛錬に夢中で気がつけばドアの中だ。
今日から気をつけてなんとかあいつと話せるように頑張ってみるか。


6に続く

 

痛い立ち位置 1  イタイタチイチ


昔も今も変わってない。
俺は女の子が大好きだ!
可愛い女の子のためならなんだってできる自信がある。
我儘なんて言ってくれちゃったら何が何でも望みを叶えてあげようと思っちまう。
周りが見て滑稽だと思うほど頑張ってしまう。
それが自分の彼女だってんなら、まあ、あることと思う。
俺の場合はそうじゃない。
だって俺は未だに誰かと恋人と呼べる間柄になったことがない。
特別な間柄じゃなくたって俺は女の子が喜んでくれるなら
そのための労力を惜しんだりしない。
寧ろ楽しいんだ。
バラティエにいた頃も、今もだ。
今は船の上だから当然ナミさんとロビンちゃん限定になる。
だからって二人のどちらかと恋人に・・・なんて思っちゃいない。
そりゃそうなれたら最高だけど、残念ながら俺には彼女らの気持ちがよ〜くわかっちまってる。
なまじ乙女心を理解できちまうから
彼女らの恋を応援してばっかで損な役回りだ。
だけど可愛い恋に悩む女の子たちは全て愛すべき存在だ。
だから俺がラブコックであることは間違いじゃねえ。
男が思うとこのそれとはちょっと意味合いが違うだろうがな。

男のことは特に気にかけてない。
それでも案外気にしてなくても嫌われるってことも少ない。
男なんかにどう思われたっていいんだが、ただ変に好かれるのは困る。
これが時々あるんだよな、どういう訳か。
友達なら大歓迎だがだいたいそういうヤツはなんだかしらねえが俺に色目を使ってきたりしやがる。
冗談じゃないってんだ、男なんて!

ずっとそう思ってた。


*****************************************



ロロノア・ゾロと言う男をはじめて見たとき男の目から見てもかっこいいヤツだと思った。
見てくれの事じゃなく、その言動から内面的にだ。
まあ男を見てそう思ったのは初めてでもなかった。
多分最初はクソジジイだったと思う。
もちろんそんな事言ったことねえけど。
つまりそれは軽い尊敬の念を含んだ憧れ的な感情だったと思う。
ゾロに対してもはじめは確かにそれだったと思う。
でもいつの間にか気付かないうちに俺の中で微妙に変わっていたらしい。
俺の大好きな乙女たちの可愛い恋に似てきていた。
今では確信してる。
俺は男のクセにロロノア・ゾロと言う男に恋心を抱いてる。
でも、乙女たちの恋のように応援する気にはまるでならない。
自分の事を応援するってのも変だが、その恋の成就に向けて努力しようとか、そういう前向きな物はないって事だ。
それでもあいつの喜ぶことならしてやりたいとか思うんだが、俺が何をしてもきっとあいつは喜んだりしねえだろう。
関わらないのを一番喜ぶのかもとか思ったりもする。

たぶんあいつは俺を女好きだと思ってるんだろう。
少なくとも男が好きだなんて思ってねえだろう。
まあ普通そうだよな、男なんだから。
てか、あいつの場合女の子も好きじゃねえみてえだが。

恋愛に全く無関心なんじゃねえだろうか。
だから俺の恋心は全く不毛な気がするんだ。

*********************************************************



取り立てて行動は起こさないがそれでもずっと想いは変わらなかった。

そうこうする内、好きなヤツの誕生日ってイベントがやってきた。

鍛錬バカのあいつのためにいつものスタミナジュースをパワーアップすることを三ヶ月前から計画した。
筋力を増強させつつ、柔軟な動きを可能にして戦闘の邪魔にならないよう体重の増加にも気を配り、さらに持久力にも着目して研究した。

島に着けばチョッパーと連れ立って図書館に行き研究したおした。
チョッパーの医学の知識も拝借して、やっと一週間前、これ以上はナイだろうという究極のスタミナジュースを作り上げることに成功した。
もちろん俺は医者じゃなくてコックだからしっかり味にもこだわってある。
スタミナジュースが誕生日プレゼントだなんて変かも知れねえ。
でも、コレは絶対俺以外から貰うことはできねえモンだし、なんていっても俺様の愛情をしこたま盛り込ませてある。
文句なんか言いやがったら蹴り飛ばしてくれる。

このジュースは酒を呑んだあとにも最適だ。
誕生日も終わりに近づいた頃、いつもよりもしこたま酒を呑んで多分ちょっとは酔ってるゾロを捕まえて飲ましてやろうと思ってる。



そう思いながら誕生日の宴会の後片付けをしていたら、あいつのほうからキッチンにやってきた。

「水、くれ。」

なんか渡りに舟的なことをゾロが言うので、思わず顔がにやけた。
「流石のお前も今日はちと呑み過ぎたかよ。」
「ああ、まあ、そうかもな。」
「んじゃ、水よりコレいっとけ。
こりゃあ俺様が三ヶ月かけて改善したスペシャルスタミナジュースだ。
まあ、その、誕生日プレゼントってことで受け取っとけ。」
そう言ってゾロのまえに冷蔵庫でキンと冷やしておいた自信作を置いた。

ゾロはジュースをじっと見た後、俺の顔をみて言った。

「・・・・あ?いつものやつだろ?」

「おまえ、人の話聞いてねえのか?
 俺が三ヶ月かけて研究に研究重ねて改良したんだよ。
 筋力を増強させつつ、柔軟な動きを可能にして、戦闘の邪魔にならないよう体重の増加にも配慮してある。
 さらに持久力にも着目して研究したんだぞ!
 もちろん俺が作ったんだから味だって折り紙つきだ。
 やっと一週間前に完成したんだぞ。」
「それなら一週間前から飲ませてくれりゃあよかったじゃねえか。」
「それじゃあ誕生日プレゼントになんねえじゃねえか。」
「明日からはそれ毎日飲ませてくれんだろ?
 それが誕生日プレゼントって変じゃねえか?」
「て、てめえ、俺の三ヶ月の苦労を否定する気か!?」
「いや、そうじゃねえ。
 それは・・・なんか・・・すげえ有り難てえと思ってる。
 実は・・・お前がプレゼントなんか用意してるわけねえと思ってたから・・・
 プレゼントにくれって言おうと思ってたモンがあって・・・」
心なしか俯き加減でぼそぼそとゾロが言った。
なんからしくない言い方だ。

「なんだよ、それ?そんなモンがあったんなら言ってみろよ。」
と、俺が言い終わるか終わらないかのタイミングで
ゾロがスタミナジュースを引っ掴んで一気飲みした。

あれほど言ってるのに味わいもせず飲みやがった。
ムカッときて蹴り倒す寸前、ゾロが顔を上げて言った。

「お前が欲しい。」


『えっ?!』と思った時には俺はゾロを蹴り倒していた。


壁に激突したゾロは
「・・・痛ってえ・・・」
と言いながら立ち上がると

「真に受けてんじゃねえよ。
 酒の上での冗談に決まってんだろ。
 ばかやろう・・・」
そう言ってキッチンから出て行った。

俺は暫く状況が全く掴めなかった。

ゾロは何と言ったんだっけ・・・
聞き間違いじゃねえんだろうか?
「お前が欲しい。」と言ったよな・・・
俺に・・・言ったんだよな。
俺とゾロしかいなかったもんな、間違いじゃねえよな。

・・・・・・・・・

ああ、そうか・・・冗談だったんだっけ・・・

全く・・・人が悪りぃぜ、そんな冗談いうなんてな。



ああ、俺の事無類の女好きだと思ってるからこその冗談か。
『気持ち悪りぃこと言ってんじゃねえよ!』とか言って笑うつもりだったかよ。




笑えねえよ・・・


************************************************************


ちくしょう、いてえなあ・・・

全くあいつの蹴りはあいかわらずすげえな・・・
まあ、全力で蹴られたわけじゃねえけど。
今まで何度もすぐ傍で戦ってきたんだ、それくらいはわかるつもりだ。
あいつの全力ならうっかりすると命が危ういくらいだからな。

蹴られるとは正直思ってなかった。

拒絶されるなんて微塵も思ってなかった。
普段のあいつの言動を見てて、あいつも俺に惚れてるんだと思ってた。
でなきゃ流石の俺もあんな事言えねえ。
それが俺の独りよがりの自惚れだったとは

ほんとに・・・いてえなあ・・・


あんな捨て台詞残してあの場を出てくるのが精一杯だった。



俺がおかしいんだろうか?
あれだけおおっぴらに女好きを公言してるヤツが男の俺を好きなんじゃねえかと思うことが。

だけど、あいつのやけに熱い視線を結構頻繁に感じたし。
口ではなんだかんだと憎まれ口叩きながらやたらと世話を焼いてきたりしたし。
しょっちゅうふっかけてくる喧嘩もどう見ても構って欲しそうだったし。
しかもたかが誕生日のプレゼントに三ヶ月も前から準備してたとか言うし。

俺に気があると思っちまっても仕方ねえだろ。
可愛いと思っちまっても仕方ねえだろ。
惚れちまっても仕方ねえだろ。



だが、どうやら間違いだった。
俺に惚れてるあいつに惚れたと思った。
が、あいつは俺に惚れてなんかいなかった。
だったら俺があいつに惚れたと思ったのも間違いなのか?
あいつが俺に惚れてなかったら俺は惚れなかったんだろうか?
それともあいつがただの女好きでも惚れたんだろうか?
もう何がなんだかわからねえ。
自分の気持ちもわかんねえ。
もともと俺はごちゃごちゃ考えるのは向いてねえ。


あれから2週間ほど過ぎた。
あれ以来あいつの視線を感じなくなった。
極力俺を視界から外そうとしてるようだ。
メシは食わせてくれるがそのほかの事では一切俺とは関わらないつもりらしい。
喧嘩をふっかけて来ないだけじゃねえ、全く話しかけてこねえ。

やっぱり、あれかな。
俺がホモだとか思って、近寄ろうとしねえんだろうか?

あいつは普段から誰にでもああいう視線を送ってるんだろうか?
無意識なんだろうか?
世話焼きなのはどうやらクルーみんなに対してのようだ。
喧嘩してたのは俺だけのようだが、誰とでも楽しそうに話してるな。
喧嘩は愉快な会話の代わりだったんだろ。
だが、誰にでもだと分かったのは周りを改めて見たからで、これじゃ俺じゃなくても勘違いする奴はいるんじゃねえのか?


2週間経って分かったことがもうひとつある。



あいつが俺に惚れて無くても

俺はやっぱりあいつに今も惚れてるってことだ。



でも、もうあんなことを言う気はねえ。
できればすっぱり捨ててしまえればよかったんだが、どうやらこの気持ちはどうにも出来ねえみてえだ。
あいつにその気がねえんだから、このまま抱えてるしかしょうがねえ。
なんであんな八方美人のクソコックと思うんだが、気になって仕方がねえのはそういうことだろう。



まあ、俺は今まで通りだ。
外見上はな。




2につづく

 

痛い立ち位置 2  イタイタチイチ



俺は怒っていた。
あいつがあんなタチの悪い冗談を言う奴だったなんて。
蹴っちまったのはちょっとした間違いだったけどあんなヤツは蹴りいれて正解だ。
あんなヤツに惚れてただなんて。

しばらくは本当にそう思ってたんだが―――
怒りが持続しない。
あいつに関わらないでいることは思った以上に努力が必要で
あんなに怒っていたくせにやっぱり気持ちは変わっていないことを思い知らされる。


気がつけばぼんやりと
あの冗談だと言う台詞を反芻して
その意味をあれこれ思い巡らしている俺がいる。

あの時蹴らずにあの言葉を聞いてうっかり鵜呑みにしてたらとか思うといやな汗が出る。


だけどあれは本当に冗談だったんだろうか。
あの場に俺とゾロの二人だけの状態であんな台詞を冗談で言うだろうか。
俺だったら『お前が欲しい』だなんて告白めいた言葉、簡単に口にできやしない。

ゾロみたいな自信家にはわけないのか?
今までは言えば必ず受け入れられてきたのかもしれねえ。
なんて言ってもこの俺様が惚れちまうほどのやつなんだから。
だからあいつには何でもないことだったんだろうか?
そんな台詞に心揺らしてる俺が馬鹿なのか・・・

それともちょっと俺と欲求不満の解消くらい出来るかとか思ったか。
もしかすると、おれの気持ちに気付いてたりするんじゃねえのか?
あの時のゾロは、おれが断るなんて思ってなかった感じだったし。

たまたま今回の航海は長いからな。
次の島まで二ヶ月掛かるとナミさんに聞いた。
流石のゾロも欲求不満にくらいはなるだろう。
なんて言っても健康すぎるほどに健康な20歳の男だ。
性欲処理に物欲しそうなおれがうってつけに見えたか・・・

そうだよな。
『付き合ってくれ』とか『好きだ』とか、
そんなこと言われたわけじゃねえもんなあ。

考えれば考えるほど
やっぱりゾロは俺の気持ちに気付いてたんじゃねえかと思えてならない。
気付いていてあえて『好きだ。』とは言わないんだから
そういうことだ。

『てめえが俺を好きなら相手くらいしてやってもいい。』
とかかもなあ。


グダグダ考えながらもそろそろかとゾロのスタミナドリンクを用意する。

結局どんなに考えたって推測でしかないんだ。
無駄なことだと思っても考えずにはいられない。
あいつに訊けばはっきりするのは分かってるが
はっきりすりゃあいいってモンじゃねえ。
正直、イタイのは嫌だ。
それくらいなら今のままの方がいい。

氷を入れた大き目のグラスに冷やしておいたドリンクを注ぐ。
今は俺は持って行かない。
あれからウソップに頼んでる。
もう2週間になる。
近頃はウソップが頃合いを見計らってココに取りに来て持って行ってくれる。
だいたい殆ど氷が融けないうちに来る頃合いの見計り具合は無駄に凄い。
大して理由も聞かずに頼めばやってくれる、ウソップはホントにいいヤツだ。

「ウソップ。手間かけたな。今日から自分で貰いに行くからもういいぞ。」
と言う声が少し離れた所から聞こえた。
間違うわけも無いゾロの声だ。
少しキッチンのドアを開けて聞き耳をたてながら、
『ああ、いい声だな〜』なんて思ってる俺ってどんだけあいつが好きなんだ。

「ところで、ウソップ。お前、なんだってあのクソコックの言う事なんでもきくんだ?
 こんな面倒くせえこと頼まれて文句も言わずやってんのはなんでだ?
 やっぱり惚れてるからか?あいつに。」

ウソップが絶句してる。
あたりまえだ!
いったい何言ってるんだ?ゾロは?!

「あいつに熱い視線送られてその気になったのかも知れねえがな、どうやら無意識らしいぞ。
 あいつがお前に気があるなんて勘違いするな。」

熱い視線?!
なんだよ、熱い視線って?
おれがウソップに熱い視線・・・なんか送るわけねえだろ!!
何を勘違いするなって!?

ウソップも絶句してる場合じゃねえと早口でまくしたてる。
「ち、ちょっと待て、ゾロ!
 何でか知らんがありえない誤解が生じてるようだからはっきり言うぞ!
 俺はサンジに仲間としての好意は持ってるが、断じて惚れてるとかそんな感情ねえ!
 俺がサンジの手伝いをするのはサンジが一番忙しそうだからだ。
 それから、熱い視線なんか送られたことねえし!!
 お前と一緒にするなよ!!」

おお!送ったことねえし!!
ウソップの言う事はいちいちもっともだ・・・ん?

「あ?」

「サンジがお前を見てたのは大体みんな知ってるよ。
 あんだけあからさまだと誰でも気付くって。」

そ、そんなにあからさまだったのか、俺!
みんな知ってるって・・・まさか、ナミさんやロビンちゃんも!?

「・・・そりゃあ、俺だけか?」

「ああ、サンジはお前が好きなんじゃねえの?」




そ、そ、それはクルー全員の俺に対する認識なのか!?
男どもはまあいいとしてレディにまでそんな風に思われるなんて憤死ものだ!
まあ、その、事実なわけだけど・・・

・・・だけど!
断じてそれを認めるわけにはいかない!!


俺はキッチンの扉をバンッと音がするほど勢いよく開けて言い放った。

「ウソップてめえ!
 黙って聞いてりゃ何とんでもねえこと言ってやがる!!
 このダンディなナイスガイの俺様が、なんだってそんなクソマリモを好きになったりするってんだ!
 俺の愛はすべてのレディの為にあるんだよ!!!」


言い放っておきながら
とてもゾロのほうを見る事なんて出来ない。
見なくてもすげえ怖い顔で睨んでるのが分かる。
なんでだよ。
どうでもいいだろ、俺の気持ちなんか。


「話が違ぇじゃねえか・・・」
ゾロがウソップに凄んだ。


「みんなそう思ってるって話で、本人が違うってんならそうなんだろ。
 悪かったよ。もう俺を巻きこまねえでくれよお!!」
そう言ってウソップは逃げていった。
そりゃ逃げるよな。

怖い顔のままゾロはキッチンにやってきた。
いつもならまだ鍛錬してる時間だと思うんだが
今日はもう風呂に入ってさっぱりしてるようだ。
なんでだろ?

「と言う訳でだ、今日からドリンクはココにのみに来るからな。文句あるか?」

「い、いや・・・ねえけど。」と言いながらドリンクを渡す。
ああ、ちっと氷が融けちまったなあ。
受け取ったゾロはまた一気飲みした。

「ごっそさん。うまかった。」
味わってもいねえくせに。

「そんな飲み方で味が分かんのかよ。」

「分かるに決まってんだろ。・・・お前の気持ちも分かった。」
分かってたまるかよ。

「そ、そうかよ。そういうことだ。誤解は早めに解いたほうがいいだろ。」

「確かにな。ウソップにあんなこと言ったが俺も正直誤解してた。」
―――やっぱ気付いてやがったのか・・・

「お前も俺がお前を好きだと思ってたんだ・・・。それであんな事言ったんだな?」

「あんな事?・・・ああ、あれか・・・まあ、そうだ。
で、だ。―――お前に話したい大事な話がある。聞いてくれるか?」

「・・・・まあ、聞くだけ聞いてやる。」

「蹴るなよ。」

「さあな。保証はできねえ。蹴られるような事、言わなきゃいいんじゃね?」

「そうもいかねえな。あれで蹴られたんだからな。」

「そのことだけどよ、俺もひとつ言っておくことがある。先に聞いてくれ。」

「あ?ああ、かまわねえが。」

「あん時な、俺がてめえを蹴ったのは、てめえが俺の三ヶ月の努力の結晶を一気飲みしたからだ。」

「・・・・・はあ?!俺がお前に『惚れてる』と言ったからじゃねえのか?」


「―――待て、待て、待て・・・・てめえ・・・俺に、ほ、惚れてる・・の・・・か?」

「あの時、そう言っただろ!」

「言ってねえよ!!てめえは『おまえが欲しい』って言ったんだよ!!」

「同じことじゃねえか!」

「同じじゃねえよ!!しかも酒の上での冗談だと言ったじゃねえか!!」

「そ、そりゃあ、おまえに拒絶されて苦し紛れに言ったまでだ。冗談であんなこと言うかよ。 
 おまえに惚れてるからおまえの全てが欲しいと思ったんだ。
 あの時はおまえも俺に惚れてくれてると思ってたから拒絶されるとは思ってなかったがな。」

「だ、だからよ、拒絶なんてしてねえっての。」

「あ?ああ、そうか。『おまえが欲しい』と言ったから蹴られたんじゃなかったんだな・・・」

「あ――、そんでな、さっきのは嘘だ。」

「・・・あ?なんだって?さっきのって何だ?分かるように言えよ。」

「てめえを・・・好きじゃねえってのが・・・だ。」

「ああ?・・・・それが嘘・・・ってことは、好きじゃねえんじゃねえって事か?」

「う・・・うん・・・」

「はっきりてめえの口から聞かせろ!」

「あーそーだよ!!俺はゾロ、てめえに惚れてるよ!!
 そんなに皆にバレバレだったなんて、泣けてくるぜ!!」

「・・・だったら、もう一度言う。
 『おまえが欲しい。』
 答えろ、サンジ。」

「う・・・うん。まあ、心は既にてめえのモンだよ、もう随分前からな。
 てめえみてえな鈍そうなヤツでも気がついちまうくらいにな・・・」

「よし!!てめえの気が変わらねえうちに貰うことにする!」
と、言うなりゾロはひょいっと俺を肩に担いだ。

「うわっ!!何する!?」

「またさっきのは嘘だとか言われちゃあかなわねえからな!」
そのまま軽々と俺を運んでキッチンを出てどこかへ向かう。

「ちょっ・・・こんなとこ誰かに見られたらどうすんだよ!!」

「俺はかまわねえ!」

「俺は嫌だあぁぁぁぁぁ」

じたばたする俺にはお構いなしにゾロは格納庫のドアを開けた。
そこには先客がいた。
ウソップだ。
ホントにいいヤツなんだけど・・・なんて間の悪いやつなんだ・・・

「げっっっ!!」

「わりいが、場所を空けてくんねえか?今からここでコックとやりてえんだ!!」

「て、てめえ何言ってんだあ〜〜!!!」



ウソップはガボーンという表情で空ろな目をして出て行った。
これからウソップにゾロにやられた男として見られることになるのか、俺は!!





今度は俺の船での立ち位置がすげえイタイことになったみてえな・・・





      END  2008.11.22 
2010.4.19   改訂  かのまま


 






今日は俺の誕生日だった。
みんなで盛大に祝ってくれた。
誕生日パーティーと称してはじまり、大宴会となって、
みんながそれぞれ酔いつぶれたりして、なし崩しにお開きとなった。

今俺は幸せな気分で宴会の後片付けに勤しんでいる。
あと一時間ほどで俺の誕生日も終わろうとしている。


前の島で、俺には内緒で
『次の島に着くまでにサンジくんの誕生日が来るから
ここでしっかりプレゼントを調達しておくように!』
とのナミさんからのお言葉があったとか。
ああ、ナミさんはホントになんて素敵なレディなんだろう!

そんなナミさんのお心遣いのおかげでみんなそれぞれプレゼントを用意してくれていた。
みんなが俺が喜びそうな物を一生懸命考えて選んでくれた品々はどれも凄く嬉しかった。
プレゼントを選んでる間はみんなそれぞれ俺が何を欲しがってるのかを
真剣に考えてくれてたんだと思うとそれだけで俺の心はあったかくなった。


あー、みんな・・・と言っても正確には1人を除いてみんな、だ。

まあ、元から期待しちゃいなかったからいいんだ。
あいつからプレゼントを貰えるなんてこれっぽっちも思っちゃいなかったから。
きっとあいつはナミさんのありがたいお言葉も
右の耳から左の耳へとスルーしちまったんだろう。
あいつが俺の欲しい物なんて考えてみるわけもない。

「はぁ〜・・・・」

しまった思わずため息なんかついちまった・・・・。
と、思ったらいきなりキッチンのドアが開いた。
そこにあいつが立っていた。

「うわっっ!クソマリモ、てめえ、もう寝たんじゃなかったのか?!」

「今日の主役が何ため息なんかついてんだよ。」

「くそっ、聞いてやがったのか・・・ほっときやがれ!」

「あいつらのプレゼントに欲しいモンはあったのか?」

「あ?ああ、もちろん!!どれも俺のためにと選んでくれたモンだ!全部嬉しかったぜ!!」

「嬉しかったかどうかじゃなくて、欲しいモンだったのかって訊いてんだよ。」

「ああ!欲しいモンばっかりだったぜ!!気持ちの篭った素晴らしいモンばっかりだ!」

「そうか・・・・ず〜っと考えてたんだけどよ、俺にはわかんなかったんだよ、お前の欲しいモン。」

「え?」

「前の島でナミに言われてから、ず〜っと考えてたんだ。
今日の宴会の間も酒飲みながらず〜っと考えてたら、気がついたらいつの間にか終わってた。
結局わかんねえままタイムリミットみてえだ。」

「ええ?!お前が俺の欲しい物を・・・・ずっと考えてたっていうのか?」

「お前の欲しいモン、いくら考えてもわかんねえから、しょうがねえ!
俺のプレゼントは俺がお前にやりたいモンをやることにした!!」

「え?な、なんだって?!」

「迷惑だったら、俺をぶっ飛ばしてくれていい。」
そう言うとすっと素早く俺の目の前に来た。
息が掛かるほどの至近距離にゾロの顔があって、
俺はびっくりして固まっちまった。
剣を握るタコだらけのでかい手で、固まってる俺の後頭部をわしづかみにすると
ゾロの唇が、俺の唇に重ねられた。

混乱していた俺の頭がやっとの事で今の状況を把握する。
『!?・・・こ、これって・・・もしかすると・・・・キス!?』と、ぼんやりと思う。
結構長かったような気がしたが、ただ重ねられただけの唇が離れていく。

「ぶっ飛ばさなくていいのか?」

「・・・ゾロ・・・」

「ぶっ飛ばさなくていいのかって訊いてんだ!」

「・・・正解だ。よく分かったな、ゾロ。俺の欲しいもの・・・・」

「お前の欲しいもの・・・これが?・・・そうか・・・。いくらでもくれてやるぜ・・・・」




       END      2007.04.03  かのまま
                            
                              



 

*  LINE



今日は3月2日、サンジの誕生日だ。
他のクルーの誕生日のとき同様宴が催される。
そしていつものようにどんちゃん騒ぎの挙句、部屋に引き上げたり、そこらへんでつぶれて寝たりしだして、
やっぱりいつものように最後に残るのは俺とサンジの二人になる。
俺は酒で酔いつぶれたりしねえし、サンジはこの頃からやっと呑み始めるからだ。
ルフィとウソップとチョッパーがつぶれたようだと思ったから、率先して三人を担いで男部屋に放り込む。
なぜならサンジと二人の時間を少しでも長く楽しみたいからだ。
夜、二人になると昼間の様な喧嘩にはならない。
まったりとたわいの無い話をして笑いあったり出来るんだ。


そんなことが嬉しい自分に最初は困惑したりもしたが、
今ではもう自分の気持ちがはっきり分かっているので当然だと思う。

そう、俺はサンジに惚れているのだ。

さすがの俺もここに到達するまでにいろいろ考えた。
何しろ今まで誰かに惚れたことなど無かったのだ。

さすがに俺も男に惚れるなんて考えたこともなかったんだが、自分でも意外なほどそこの所に対してのこだわりは無かった。
俺にこだわりはなかったが、あいつは自他共に認める女好きだから、まあありえないことなんだろうと思っていた。
俺がそんな気持ちになったからといって、あいつもそんな気持ちになるかもしれないなどと都合の良い考えは出来なかった。
それに普段のあいつの態度を見てればどうみても俺に対して敵対心を持ってるとしか思えねえし。
あいつがあんなことを言い出すまでは本当に考えてもみなかったのだ。



二人になってしばらくすると、サンジが改まって声を掛けてきた。

「俺さ、ちょっとおまえに聞いてもらいたいことがあんだけど。」

いつもどうと言う事の無いことを、だらだら話していた俺たちだったから
真面目な顔をしてそんなことを言うサンジに少し驚いた。



「おまえ、俺がお前の事あまり良く思ってないとか思ってんじゃねえかなと・・・思うんだけど・・・
いっつも喧嘩ふっかけたりとか、汚い言葉でなじったりとか、蹴り飛ばしたりとか、そんな事ばっかしてるもんな、俺・・・」

何を話そうとしてるんだろう、こいつは・・・
もしかして、俺の事を良く思ってないと思ってるかもしれないが、そうじゃないと言う様な感じの話になるんじゃないだろうか?
何だかうざいほど心臓がバクバクいってる気がする。


「今日は俺の誕生日だからよ、素直な俺の気持ちを黙って聞いて欲しいんだよ、お前に。」


何だか告白めいた前置きに、諦めていたつもりだった俺の思いが揺さぶられた。



そんなことはありえないと思っていたのに、まさか・・・・・・・まさかそんなことが・・・・・・・







「俺な、いままで同じ年代の奴と知り合う機会が少なくて、そういう相手と付き合ったことが無くて、
おかしな接し方しちまってるのかも知れねえと思うんだけどよ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
すげえかけがえのない大事な友達だと思ってるんだ、お前の事・・・・お前はどう思ってるのか・・・その・・・・知らねえけど・・・・・」





「・・・・友達・・・・?」

我知らずつぶやいていた。



喧嘩ばかりしていた相手にあまりに照れくさい話をしたと思ってか、
顔面を真っ赤にしてあいつは俺の様子を伺っている。


男同士の相手に対する言葉としてはたぶん最も良い言葉だ。

『すげえかけがえのない大事な友達』



うっかり抱いてしまった有り得ない期待に押しつぶされそうになりながらも、
嫌われているわけではなかっただけでもいいと思うべきだろうと自分に言い聞かせる。
俺の気持ちとはかけ離れているとはいえ、俺の事を「かけがえのない大事な」と言ってくれたのだ。




あいつは、サンジは答えを待っているのだろう。
何と答えればいい?
もちろん俺の気持ちなど言えるわけが無い。言うつもりももともとないが。
多分そんなことをしたら終いだ。

「・・・お前が俺の事、そんな風に思ってくれてるとは、その・・・・正直思ってなかった。
あー、その、う、嬉しいぜ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺もお前の事、かけがえのない大事な・・・・・・・仲間だと思ってる。」
同じように「友達」だと言ってやれば、あいつは満足したかもしれない。
だが、俺はあいつを友達だとは思っていないのだ。
自分の気持ちを隠すことはできても、偽ることは出来なかった。




「・・・・・・・・・・・・・・・・そっか・・・・・・・・・・」
そう言うとサンジは俯いてしまった。


**********************************************

あえてそんなことを言ってくるんだから、
他の仲間とは違う特別な相手だと思ってくれてると言う事なんだろうか。
そんな風に自惚れてもいいんだろうか。


惚れてる相手にそいつの事を『友達』とは言わないだろうから、
俺の想いと同じでないのは明白だ。
もとより諦めていた事だ。
ちっと期待しちまったのは痛かったけど、期待した俺が馬鹿だったんだし。
今までどっちかっていうと、嫌われてるんだろうと思ってたんだから、俺にはサンジの言葉は嘘じゃなく、本当に嬉しかったんだ。


だが、サンジの態度を見ると、どうやらその気持ちは全く伝わってないようだ。
「・・・そっか・・・」と言ったきり、俯いたままだ。
やはり仲間だと言ったのが気に入らなかったんだろう。
じゃあ、なんと言えばよかったんだ?
俺はもともと上手く言葉を操れるタイプの人間じゃねえから、ボキャブラリーが貧困なんだ。自覚してる。
友達とは思ってねえし、恋人にしたいとは言えねえし、後は仲間しか思いつけなかったんだ。

つくづく、俺はグダグダ考えるのには向いてねえ・・・。



「その・・・ほかの仲間と違って特別親しく感じてくれてるって思っていいんだろ?」



声を掛けたら少し顔を上げた。

「お、おう・・・そうだよ。俺はそう思ってる。
俺はな・・・どうやらお前はそうは思ってくれてなかったようだな。
ちょっとはお前もそう思ってくれてるんじゃねえかって思ってたんだけどよ。」

「お、思ってるぜ!」
そりゃあもうすげえ思ってるってんだ!!むしろ必要以上に思ってるんだぞ、ちくしょう。


「無理すんなよ。」

「馬鹿野郎!!無理なんかしてねえ!」

「じゃあ、何で俺がいい年してこっ恥かしいのに『友達』って言ったのをわざわざ『仲間』に変えるんだよ。」

「ああー、そりゃあー、そのー、他の仲間と同じだなんて思ってねえけど、・・・『友達』とも思ってねえし・・・」

「じゃあなんだよ、ライバルか?」

「いや、別に相対して競い合おうなんて思ってるわけでもねえ。」

「俺だってお前との間柄に友達って言葉がしっくりこねえとは思ってるけどよ、否定することねえだろ?!」

「うー・・・だから・・・だな・・・でもな・・・友達は・・・違うんだ・・・・」

「なんだよはっきりしねえなあ!てめえらしくねえ!!」





俺も大概イラついてきた。
そのままの気持ちを言わねえとおさまらねえのかよ!
聞いちまった後どんなに気まずくなっても知らねえぞ!!


*******************************************************


少しはゾロも俺の事を特別に思ってくれてるんじゃねえかと思ったのに・・・
同じ船に乗ってる以上麦わら海賊団の仲間なのは分かってることだ。
仲間以上に特別に思ってることを伝えたくて
あえて『仲間』じゃなくて、ちょっと照れくさいのを我慢して『友達』と言う言葉を選んだのに
ゾロは『仲間』に戻してしまった。
仲間だと言う、それ以上でもそれ以下でもない、そういうことか・・・・・
俺が友達だと言えば、そうだ、友達だと言ってくれるんじゃねえかと思ってたのに
とんだ独りよがりだったみてえだな・・・・









「ま、仲間だとは思ってくれてるんだな・・・・」

「かけがえのない大事なといっただろ。」

「そうじゃねえ仲間なんかあるかよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ルフィもナミさんもウソップもチョッパーもロビンちゃんもそうだろうが!」

「そう・・・だな。でも他の仲間と同じだとは思ってねえって言ってるじゃねえか!」

「だからどうだよ?」

「・・・・・・・・・・・・・」

「なんかもう堂々巡りだな。」







「・・・俺、もう寝るわ・・・・・」

「ち、ちょっと待てよ!」

「・・・なんだよ・・・」

「お前何か勘違いしてるぞ!」

「・・・してねえよ・・・じゃあな・・・」

「待てといってるだろ!確かにみんなかけがえのない大事な仲間だがてめえはその中で特別なんだよ!」

「取ってつけたようなこと言ってんじゃねえ。友達とも言えねえクセに。」

「だから、友達だとは思ってねえからしょうがねえだろ。」

「じゃあ何だと思ってるのか言ってみろよ!」

「・・・やっぱりそれは言えねえ!!」

「話になんねえな。」

「あのな、聞いたらお前、絶対後悔するぞ!」

「何、勿体つけてやがる、てめえらしくもねえ!!」

「わかった。じゃあ、覚悟して聞きやがれ。」

「お、おう・・・・・」

「お、俺は・・・・てめえが・・・・・す、好きなんだよ・・・」

「・・・・・・は?・・・なに?・・・・」

「だから、てめえに・・・惚れてるんだよ!!」

「・・・・・は、はあ?・・・その・・・・意味がよくわかんねえんだけど・・・お、俺レディじゃねえし・・・」

「てめえが女じゃねえのは重々承知してる。でも、俺はてめえが欲しいんだ。」

「い、いや、その、欲しいとか言われても・・・・どうすりゃいいのかわかんねえし・・・」

「・・・・そりゃ、応える気があると取っていいのか?」

「いや、だから、応えるってことがどういう事かいまいち分かんねえんだけど・・・」

「じゃあ聞くが、俺の気持ちを聞いて嫌だと思ったか?」

「そんなことはねえ。お前も俺を特別に思ってくれてるって事は、嬉しい・・・様な気がする・・・けど」

「・・・いや、すまねえ。いいんだ。お前が女好きなのは分かってる。
 もともとこんなこと言うつもりは無かったんだ。
 お前が応えてくれるなんてことがありえねえって事も分かってたつもりだったのに、言っちまったら、欲が出て訊いちまったけど気にしないでくれ。」

「気にするなと言われてもなあ・・・・」

「だから言ったろうが、後悔するぞって・・・」

「いや、後悔なんかしてねえ。ただわかんねえんだ。俺はどうすればいい?」

「どうにもしようがねえだろ?今まで通りだ。違うのはお前が知ってるって事だけだ。」

「知ってるのに今まで通りで、それでいいのか?おまえは・・・」

「俺は・・・そりゃ、お前も俺に惚れてくれるにこしたことねえけど、無理だろ?」

「ん〜・・・俺、ゲイじゃねえし・・・」

「言っとくが、俺も違うぞ。」

「俺に惚れてるとか言っといてか?」

「お前には惚れてるが、男が好きなわけじゃねえ。」

「そうなんだ・・・そういうもんなのか・・・」

「お前は何でわざわざ俺にあんなこと言い出したんだ?」

「あんなこと?」

「『かけがえの無い友達』とか・・・」

「あれは、その、俺素直じゃねえから、お前に喧嘩ふっかけたりとかばっかしてたから、俺がお前を嫌いだと思ってるかしてんじゃねえかと思って・・・
 そうじゃねえってわかって欲しかっただけだ。」

「実はあの時お前もひょっとして、俺に惚れてるとか言い出すんじゃねえかなんて思ったりしちまった。」

「ええっ?!」

「殆ど諦めてたんだけどよ、ありえねえことじゃねえと、今日話してみて感じた。」

「嫌いじゃねえけど・・・」

「惚れさせてみせるぜ。」

「おまえって・・・前向きだな・・・・」

「そうじゃなきゃ、大剣豪なんか目指せるかよ。」

「違いねえ・・・・」



実は惚れてるってことが、どういうことかがよくわからねえ。
もしかしたら少しくらい俺はゾロに惚れてんのかもしれねえけど・・・もう少し黙っておこう。
 

ゾロはどうやって俺を惚れさせるんだろう。



                    END

 





昼寝をしていたゾロのところにナミが来て言った。

「ゾロ、ちょっと話があるのよ、顔貸してちょうだい。」
「いやだ。俺にはお前に話なんかねえ。」
「うるさいわね!四の五の言わずに顔貸しゃあいいのよ!」
ゴーインにナミに女部屋に連れ込まれた。
ポイっと俺をほおりこむと、部屋の入り口に鍵をかけくるっと俺のほうを振り返る。
『こいつ何する気なんだ?!』と、ちょっと焦ったが、部屋の中にロビンがいたのでちょっと安心・・・
した反面、この魔女ふたりに何の話で吊るし上げられるのかと、少し変な汗が出た。

「最近、サンジくんと仲良しでうらやましい限りね。毎晩毎晩、何をそんなに話すことがあるの?」
「そんなことてめえらにゃ関係ねえだろ。ほっとけ!」
「そういうわけにもいかないわ!サンジくんはあたし達、皆の仲間なのよ。
 あんなになっちゃって黙ってられないわ!!」
「あんなって・・・なんだよ?」
「――――― あんた・・・気付いてないの?」
「コックがどうかしたのかよ。」
「サンジくん最近お肌の調子わるそうだし、顔色もよくないわ。髪の輝きも二割減よ。あんたどこ見てんのよ!」
「え・・・そうか?なんでそんなことになってんだよ?」
「あんなに一緒に居て気付かないかしら、もう、この鈍感剣豪!!―――― 理由はたぶん寝不足ね!」
「あ?何だ、寝不足?なら、寝れば治んじゃねえのか?」
「そう、寝れば治るんだけど、寝かせてあげない馬鹿がいるのよ!!」
「ああ・・・確かに最近話し込みすぎてちょっと1、2時間寝るのが遅くなることはあるが・・・それだけでか?」
「あんたみたいに昼間寝こけてる人は問題ないでしょうけど
 サンジくんはね、毎日忙しいのよ。その1、2時間を取り戻す暇が無いの!
 毎日毎日1、2時間睡眠時間を削られてるのよ!あんたのセイで!!
 もうかれこれ一年近いでしょ?身体壊しちゃうわよ、サンジくん!」

「―――― 分かった・・・考えてみる。」
「そう、分かってくれて良かったわ。」

ロビンの手が連なってゾロの体を運び出し、ポイっと女部屋の外に放り出した。
ゾロは放心状態だった。

『本当なのか?ならなんであいつは何にも言わずに俺に付き合ってるんだ?』

のろのろと動き出したゾロは、とりあえず現状を把握するために、サンジに会いに行くことにした。
昼前だから昼食の準備でキッチンにいるだろう。

ふと、思い出した。
約一年前。サンジの話を聞くのが俺の誕生日のプレゼントだってんで、その日が来るのをすっげえ楽しみにしながら、
我慢して待ってたとき、チラチラとあいつを盗み見てたっけ。
そうして初めて気が付いた。
あいつは男のクセにやけに肌がつやつやでぷりぷりしてそうで、髪はでぴかぴかでさらさらしてそうだった。
そう、ありていに言えば綺麗だと思っていた。
最近は話ができるってことに夢中で、ロクにあいつを見てなかったかもしれねえ。

キッチンのドアを開けるとやっぱりそこには昼食の準備に勤しむサンジが居た。

「ん?珍しいなゾロ。お前がこんな時間にここに来るなんて。喉でも渇いたのか?」

そう言って振り向いたサンジを見て愕然となった。
ナミの言った通りだ。
あの輝くようだったサンジはそこには居なかった。
昨日も会ってたって言うのに何で気付かなかったんだろう?
つやつやでぷりぷりだった肌は血色が悪く、うっすらと目の下に隈まで出来ている有様で、
確かに髪のつやも悪いようだ。さらさらはしてそうだが。

「どうかしたのか?」
それでもにっこり笑って小首を傾げて聞いてくるサンジは可愛かった。・・・ん?

「―――――!!!」

「?ゾロ?」
『お、俺は今、コックが・・・可愛いとか・・・そんな腐ったことを!!!』
「なんか顔、赤いぞ。熱でもあるんじゃね?あー、俺水使ってたから手じゃわかんねえや。」
そう言ったかと思うとコックは自分の額と俺の額をこつんと合わせてきた。



「んー、やっぱりちょっと熱いんじゃねえか?てめえでも熱出すことなんかあんだなあ。
 チョッパーに診てもらったほうがいいんじゃね?呼んでこよーか?」
『やばい!!』と思った俺は、勢いよく後ずさってドアに背中をドンとぶつけた。
「あああ・・・な、何すんだ!てめえ!!
 お、お、俺は何ともねえんだよ!!てめえの方こそ顔色悪りぃぞ!!」
そう叫ぶのが精一杯で、思わず俺はドアを開けて逃げ出していた。

『うわあああああぁぁぁぁ!!!なんかやべえ!!
 何がやべえって・・・・俺が、コックの顔が近づいたってだけで、こんなに取り乱してる、俺が!!!!
 何でだ?!何で俺はこんなに動悸が激しくなってんだ!!!』

しかし、しばらくして冷静になってみると、きっと約一年前のコックを綺麗だと思った時点で
俺の気持ちはあいつに、コックに、サンジに囚われていたんだろうと気付いた。
気付いてしまうと、俺には何の迷いもなくなった。
俺はサンジに惚れてるんだ。
もちろんコックは自他共に認める女好きだから俺の気持ちに応えるわけなんか無いだろう。
そんなことはかまわねえ。

そしてとりあえず、現状の付き合い方ではサンジの身体を壊させかねないのだ。
まず、あの頃の綺麗なあいつに戻させなくては。

ゾロはその方法を模索していた。

*******************************************************************


先ず考えたのは、最近遅くなってる寝る時間をせめてもとの時間に戻すことだ。
11時に行って、12時には「寝る。」っつって、出て行こう。
俺が出て行けばサンジも寝るだろう。

いつものように11時ごろキッチンに行くと、いつものように酒の肴を用意したサンジがいた。
「よう、ゾロ。熱は下がったのか?そういやあの時何しに来たんだ?」
一度自覚してしまうと、どう見てもサンジが可愛く見えて仕方がねえ。
「だ、だから熱なんかねえって言ってただろうが。あの時はちょっとお前の顔を見に行っただけだ。」
サンジが『はあ?!』って顔をして見てる。
まずいこと言っちまった。
俺がサンジの顔見るためだけにキッチンにわざわざ行ったなんて、
どう考えても変じゃねえか!
取りあえず話をそらそう!!
「あ、あのな、これからは話すんの昼間にしようかと思ってな!!」
「昼間に?でもあの時間は無理だぜ。
 いくらお前でも分かると思うが、昼前は昼飯作ってっから、俺。」
「ああ、そうだな。じゃあ、昼飯の後はどうだ?」
「昼のあとかたずけをしてから、なんだかんだと雑用が有って、おやつを作って、
 ・・・・・・・ん〜、ゆっくり話なんか出来そうに無いんだけどな――
 やっぱりこの時間が一番いいんじゃねえかなあ、駄目なのか?」
「駄目じゃねえが・・・・・あー、俺、次の日の鍛錬に響くからよ、12時には寝ることにする!」
「え、そうか・・・・そりゃよくねえよな・・・・・1時間くらいか、あんまり話できねえな・・・」
「この一年でかなり話したからな、そんなもんで十分じゃねえか?」
「そうか、お前は――― もう十分話したって・・・そう言うんだな。」
「おう、だからもうこんなに沢山酒の肴作んなくていいからな。」
「・・・・・」
「それから、俺、明日不寝番だが、今までみたいに付き合わなくていいからな。
 おまえが昼間忙しいのは良く分かった。おまえも夜はしっかり寝とけ。」
たぶん、2,3時間もつ様に作ったんだろう大量の酒の肴をばくばくとかっ食らった。
いつものようにすげえ美味え。
こんな風に食うのはちょっと勿体ねえが12時までに食い終わらねえと。

食い終わる頃にはもう12時になろうとしていた。
「12時だ。俺はもう寝るからな!てめえもさっさと寝ろよ!!」
俺は予定通り12時にキッチンを出ることが出来て大満足だった。
ドアを閉める間際にサンジの「ほっとけ・・・・」と言うボソッとした声が聞こえたような気もしたが・・・。

*******************************************************

翌日、サンジの一日の時間配分を追ってみた。
確かにあいつの言葉通りなかなか忙しくしてやがる。
よく働く奴だ。寝不足じゃなくて働きすぎなんじゃねえのかと思ったりもした。
が、きっと俺が知らなかっただけでこの船に乗ってからずっとこんなに働いてたんだろうから、
やっぱり肌荒れとかは寝不足のせいなんだろうなあ。
まあ、それも今日からよくなっていくはずだ。
なにしろ俺がこんなに我慢して寝る時間を作ってやってるんだからな!

「んナミすわ〜ん、ロビンちゃ〜ん、おやつです〜〜vv
 野郎共、おやつ食いたきゃ、キッチンに来〜い!!」と、サンジの声が聞こえた。
おやつの時間らしい。――――ん? ・・・おやつってやつはキッチンに食いに行くモンだったのか?
俺はいつもこの時間寝てて、サンジに起こされて持って来てくれたおやつって奴を食ってた。
それって、酷くあいつに手間かけさせてたのか?!
あわてて俺はキッチンに向かった。
キッチンに入ると「あれ〜、ゾロ!珍しいな〜!!」っとルフィに言われた。
サンジは盆に乗せたおやつを持って目を丸くしてやがる。
そんなサンジも可愛いぜ、ちくしょう。
「今日はたまたま起きてたんで来たんだ。
 コック、それ俺の分か?いつもわりいな、手間かけさせて。
 これからはなるべく食いに来るようにするからな。」
「お、おう。そうしてくれると助かるぜ。」
そういうサンジがなぜかあんまり喜んでないように感じるのは気のせいか?
まあ、とりあえずサンジの負担を軽くすることが悪いわけは無いはずだ。
この後はまた、このおやつの後片付けだろう。
その後は・・・何も言ってなかったな。夕食の用意には少し早いだろう。
少し鍛錬をして、後片付けが終わる頃を見計らってまたあいつを観察するとしよう。
たぶんあいつが知ったら嫌がるだろうからこっそりとな。




2へつづく

 




そろそろ後片付けは済んだだろうと思ってキッチンに行ってみた。
中からは楽しそうな笑い声が聞こえた。
サンジと誰かが談笑してるみたいだ。

俺とは昼間話す時間は無えと言っておきながら、誰と笑い合ってやがるんだと頭に血が上った。
後先考えるなんてことが出来なくなってた俺は力いっぱいキッチンのドアを開けた。

「ああ?なんだよ、クソマリモ、怖ええ顔して。チョッパーが怯えてるだろうが。」

そこにいたのはサンジとチョッパーだった。
チョッパーと話す時間はあんのかと問いただしたくなった。

「てめえ、昼間は話する時間はねえんじゃなかったのかよ。」

「普通にしてたらねえよ、そんなモン。俺は忙しいんだ。」

「チョッパーとならくっちゃべる時間、あんのか?ああ!?」

「てめえの目は節穴か?俺たちは今洗濯物を取り込んで畳んでんだよ!
 見ての通りチョッパーは、お・て・つ・だ・い、してくれてんだよ!!
 手伝ってもらった分、俺に余裕が出来るから楽しくおしゃべりしながらやってんじゃねえか。
 てめえに文句言われる筋合いは全くねえと思うんですがぁ〜?」

「―― 俺もやるっっ!!」

「はあ?てめえがぁ?無理無理!繊細なんだよ洗濯物を畳むのは。」

「じ、じゃあ俺に手伝えること教えろ!」

「てめえは俺の手伝いなんかしねえで鍛錬してりゃいいじゃねえか。
 しっかり寝た分、しっかりやれよ。」

「大きなお世話だ!お前に言われなくてもちゃんとやってるに決まってんだろ。
 その・・・息抜きに暇つぶしに手伝うって言ってんだ。」

「暇つぶしなんかで手伝って欲しくねえな!!」

「な、なんだよ!!俺には手伝えねえって言うのかよ!」

「ああ!はっきり言って俺の繊細な仕事の手伝いはてめえにゃあ無理なんだよ!!
 俺の周りをうろちょろすんな!てめえの・・・てめえの顔なんか見たくもねえ!!」

「な、なんだとぉ・・・何でそこまで言われなきゃなんねえんだよ!!馬鹿野郎!!!」


勢いでキッチンから出てきたが、何が何だかわからねえ。
昨日まで俺たち上手くいってたじゃねえか。
いったいどうしちまったんだ、あいつは。
まさかと思うが、俺の邪な気持ちに気付いて俺を遠ざけようとかしてるんだろうか。

それからは「てめえの顔なんか見たくもねえ。」の言葉通りあいつは俺を見なくなった。
晩飯のときも俺は相当チラチラ見ていたが、一度も視線が合うことはなかった。
あの夜、不寝番だった俺に夜食は持ってきたが「ほらよ。夜食だ。」と言って、ただ置いていっただけだ。

翌日の夜、キッチンに行くと「俺は寝るからつまみの皿は流しに置いておけ。」と置手紙があった。
夜中皿を流しに置いておくなんて、あいつが一番嫌だろうことを「そうしておけ」と書いてあるんだ。
酒を呑む気もしなくて、ただつまみだけを食って、気持ちがどんどん沈んでいくのを感じた。
こんな気持ちで食っても美味いなんて流石だなと思った。
こうなっても俺はあいつを嫌いにはなれないみたいだ。困ったもんだ。
あいつの嫌がることは出来ればしたくないからとりあえず俺なりに皿だけは綺麗に洗っておいた。
そして、置手紙を裏返して「美味かった。お前が居ないのならもうつまみはいらない。」と書いた。

翌日の夜11時のキッチンにはなにもなかった。


***********************************************************


俺たちが一年前以上に疎遠になって二週間ほど過ぎた11月に入ったばかりのある日、
またナミが顔を貸せと言った。

「あんたたち喧嘩してるの?あんなに仲良しになってたのに。」

「喧嘩じゃねえ。あいつが俺をシカトしてるだけだ。」

「どうして?」

「それを俺に聞くのはお門違いだろ。俺のほうが聞きてえくらいだ。」

「サンジくん、相変わらずぼろぼろだし、その上元気も無いんだけど。」

「寝不足は解消できるように俺に出来ることは全てやったつもりだ。
 もう俺のセイだとは言わせねえぜ。」

「じゃあ誰のセイなのよ!?」

「知るかよ!!俺のほうが聞きてえって言ってるだろが!!」

「じゃあ、本人に聞いてみましょう。」とロビンが口を挟んだ。
身体の前で腕を交差させて目を瞑る。
こりゃああの能力で腕を咲かせてるポーズか?と思ったら
コックが女部屋にポイっと投げ込まれた。

「うわ〜、ロビンちゃんどうしたんですか〜〜?」と言いながら
ロビンの腕に絡めとられたサンジが床に転がった。
俺の存在に気付くとにやけた顔を、一気に曇らせて
「なんでナミさんとロビンちゃんのへやにてめえが居るんだよ。」と凄んだ。

「俺も連れてこられたんだ。てめえの事で言いがかりつけられてんだよ!」

「俺の?」

「そう言えばコックさん、最近ときどき夜中に甲板で海を見ながら煙草吸ってるでしょう。
一時間も二時間も心ここにあらずという感じで。」とまたロビンが口を挟む。

「本当かよ、てめえ・・・・」俺は思わず低くうなった。

「ロビンちゃん、なんで知って・・・?」

「ロビンちゃんじゃねえ!!!俺が苦労して確保した睡眠時間をてめえ、なにしてやがるんだ!!!」

「・・・は?何言って・・・んだ?」
サンジは目を丸くして訳がわからねえって顔をした。

***************************************************************



「睡眠時間・・・・・?ってなんだよ?」

「睡眠時間も知らねえのかよ。寝るための時間だ。」

「いや、じゃなくて、それとお前と何の関係があるんだよ。」

「ナミが俺がお前の睡眠時間を削ってるとか言いやがって。
 で、まあ、確かにだんだん寝る時間が遅くなっていってたし、てめえは睡眠不足で汚くなってたし。」

「し、失礼な奴だな!!汚ねえってなんだ!」

「いや、だってお前一年前は綺麗だったじゃねえか。
 肌はつやつやしてたし、髪はきらきらでさらさらで!!」

「――――き、綺麗?!」

「綺麗なお前に戻したくてよ。
 俺がキッチンにいたんじゃてめえ、寝ねえと思ったから、俺が寝るっつって出て行きゃあお前も寝ると思ってたんだが。」

「お前、もう俺と話すことなんかねえって・・・だからもう寝るって・・・」

「いつ俺がそんなこと言ったんだよ!!」

「い、い、言ったじゃねえかぁ!!」

「だったら昼間に話す時間とれねえかとか言うかよ!!」

「あ・・・」

「手伝いして時間作れば話が出来ると思って手伝うっつったら、俺にはお前の手伝いは出来ねえなんて言いやがったくせに!!」

「あんなこと言ったくせに今更何言ってやがんだと思って・・・・」

「お前とちゃんと話が出来るようになってまだたったの一年だ。
 お前の19年間を知るにはまだまだまだまだ、全っ然、足らねえんだよ!!」

「まだ・・・・俺の話聞きてえのか?」

「おう!俺は夜キッチンに酒飲んでつまみ食うために行ってんじゃねえ。
 だからお前が居なきゃつまみはいらねえって書いたんだよ。
 そしたら両方なしの方とりやがって・・・
 でもまあ、てめえが寝てんなら良いかと思ってたんだが、寝てねえって言うじゃねえか!!!」


「はい、そこでちょっと待って!!」と、ナミが割って入った。

「なんだよ、今大事な話してんだよ!!」

「わかってるわよ!だから尚更なのよ!!
 まあ、双方なんか誤解があったみたいだけど、それも解けたようだし問題なさそうなんで、後は二人でどこか別の場所で話して頂戴。
 ここ、あたしたちの部屋だから。
 たぶん後はあたしたちが居ない方が話しやすいんじゃないかと思うから。」

どうやらコックの方は気付いてないようだが、もしかするとナミは俺の気持ちに気付いてやがるのか。
そのナミの横で意味深な薄笑いを浮かべてるロビンもだ。
・・・・・さすが魔女コンビってとこか。
俺はそれをコックに言う気はねえんだが・・・・
言っちまえと言いたいのかこいつら・・・

まあ、こいつらに聞かせとくこともねえのは確かなんで、コックを連れて場所を変えることにした。

「わかった。邪魔したな。来い!サンジ!!」
と言って、コックの手を引いて女部屋を出た。



どこがゆっくり二人で話せるだろう。
キッチンじゃこいつ、仕事始めそうだしな・・・
格納庫がいいだろうかとか考えてると、

「手、手を離しやがれ!!恥ずかしいじゃねえか!!
 それと俺、洗濯物をといれねえと!!」とサンジが言いやがった。



「うるせえ!大事な話がまだ済んでねえんだよ!!
 俺との話より洗濯物が大事なのか?!
 洗濯物といれるくれえ誰でも出来んだよ!!
 ちょうどあそこで笑い転げてるウソップとチョッパーにやらすから、てめえはそこでちょっと待ってろ!!!」

怒鳴った俺に驚いてサンジが固まってるうちに、少し離れたところにいたふたりの所に行って、
「サンジが手が離せねえから頼む。」と言やあ
「わかった!まかせとけ!」と快い返事が返ってきた。
この船のクルーは、俺の気持ちとはちょっと違うが、皆サンジが好きなんだ。
サンジがやってくれと頼めば、あいつの助けになるんだときっと喜んで大概何でもやってくれるだろう。

戻ってみると、今度は俺が固まる番だった。

「怒鳴ることねえじゃねえか・・・」とつぶやきながら
耳と鼻の頭を真っ赤にしたサンジが涙ぐんで佇んでいた。
こんなサンジを俺は知らない!!
ヤバイくらいに可愛いじゃねえか!!
固まってる場合じゃねえ!
こんなサンジを俺以外の奴に絶対見せちゃあならねえと、他の場所を思いつかなかったんで、とりあえず格納庫に押し込んだ。

***********************************************************************



急いで押し込んだら格納庫の中でサンジがごろごろ転がっちまった。

「痛ってえなあ!なにすんだよ、ひでえなあ・・・」

「うわっ!すまねえ!!ちょっと勢い余っちまった!!ちょっと焦っちまって!!大丈夫か?!」
怪我でもさせちまったかと思わず駆け寄って、自分で駆け寄っておきながらあまりの近さにまた焦る。
二人で話せる場所として深く考えずここに来ちまったが、可愛すぎるサンジとこんな閉鎖的な場所で
二人きりになるのはヤバイんじゃねえのか・・・俺が。
すでに俺の心臓はどんな鍛錬をした時よりもバクバクいっていた。

「ごめん。大の男が泣き出したりすりゃあ、そりゃ焦るよな。」

「い、いや、俺のほうこそ怒鳴って悪かった!!」

「俺・・・・何だか嫌なことばっかりしてるよな。ひでえ事も言っちまったし。
 お前、嫌になってねえの?俺の事・・・・・」
伺うように俺の顔を覗き込んでくるサンジはまた壮絶に可愛かった。

「ば、馬鹿なこと言ってんじゃねえ!!お前のどこを嫌になれるって言うんだ!!
 どんどん好きになっちまって困ってる位だってのに!!」
舞い上がった俺は、言うつもりは無いと思っていたことをあっさり口にしていた。
『しまった!』と思った俺に、サンジは信じられないことを言った。

「す・・・好きでいてくれるんだ、俺の事。―――俺もゾロが好きでしょうがないんだ。
 たぶんゾロの好きとはちょっと違うと思うけど。」

「ホ、ホントか?!―――あ、でも俺のとは違うんだよな。
 そうだろうな。お前は女好きだもんな。別に俺の気持ちを押し付けるつもりはねえ。安心しろ。」

俺の言葉を聞いたサンジは
「え?・・・」と言って、しばらくして急に顔を真っ赤に染めた。そして、
「俺の気持ちはこんななんだけど・・・」と言うと、
俺の首に腕を回して俺の唇に柔らかいものを押し当てた。
チュッと言う音がしてそれが離れて行ってからたっぷり10秒後、やっとおもむろにそれが何だったのか気付いた。



「い、い、今のはもしかして・・・キ、キ・・・・」

「キス、頂きましたvv嫌だったか?」

「そんなわけあるかあ!!ほ、本当にそれがお前の気持ちなのか?」

「疑り深い奴だなあ!俺はお前に惚れてるっての!!」

「良く分からなかったから、さっきのもう一回くれ!」と、
呆然としててもったいないことしちまったと強請ってみた。するとサンジは、
「お前からはくれないのか?」と言って小首を傾げて見せた。
それはもう悪魔的な可愛さだった。

「いっくらでもくれてやる!!俺だって、お前に惚れまくってんだからな!!」
そうと分かれば結果オーライだ、格納庫!!
こういうのを嬉しい誤算というんだろうか。
さっきのサンジのキスなんかじゃ話にならねえ!
俺たちは惚れあってんじゃねえか、それなりのキスをさせてもらおうじゃねえか!!

意気込んで始めた思いっきりディープなキスをたっぷり10分程やって存分にサンジを味わってみた。
満足して唇を開放してやると、くったりとサンジの身体が俺の腕の中に倒れこんできた。

しまった!サンジは今、寝不足で体力が限界だったんだ。
顔を覗き込んだら、さっきより微妙に目の下の隈が濃くなった気がする。
気を失っちまったのかと思ったら弱弱しい声が聞こえてきた。


「て、てめえ、しつこすぎ・・・・」

「そういやお前の寝不足を何とかして、お前を綺麗に戻すんだった!」

「き、綺麗って言うな!こっぱずかしい!」

「お前、何で夜寝てなかったんだよ?寝不足なのに夜中に起きてたって。」

「あれは・・・ちょっと寝れなかったんだ。」

「なんで?」

「・・・だ、だって・・・俺はお前に惚れちまってるってのに、お前はもう俺に飽きちまったみたいだと思ったら、
 その、悲しかったっていうか情けなかったって言うか・・・なんかそんなで不眠症気味になっちまって・・・」

「今度は不眠症かよ・・・でもよ、それ、てめえの誤解だったんだから今日からちゃんと寝れるだろ?」

「ん、そうだなたぶん・・・ああ、でも今日は俺、不寝番だから。」

「そんなもん俺が替わってやる!!てめえは早く綺麗になりやがれ!!
 それから、昼間の調理以外の仕事はチョッパーとウソップと俺に振り分けろ!!
 俺に惚れてるってんならそれはやってくれ。で、出来た時間を俺によこせ!!」



「ああ、俺ゾロに惚れてっからなv」
そう言って笑うサンジは綺麗で可愛くて・・・寝不足が解消したらもっと綺麗になるのかと思うと、キスだけで我慢できるんだろうかと、新たな心配がふつふつと胸に渦巻く俺だった。


そして数日後は俺の誕生日だった。
恋人同士になった俺へのサンジの最初の誕生日プレゼントは何だったかは、まあ、ご想像にお任せすることにする。

END


            2006.12.15    かのまま



 


夜、11時頃になるとキッチンに行って寝酒を飲むのが習慣になった。
その日のだいたいの仕事を終えたコックが「ほらよ。」とか言って、つまみを出してくれたりする。
昼間、あれだけやかましいコックがこの時間になると無口な男になる。
「ほらよ。」と「もう終いにしろ。」くらいしかいわねえ。
俺も「おお。」とかしかいわねえんだが。

今日は珍しくコックが話しかけてきた。





「お前、欲しいモンとかねえの?」

「あ?欲しいモン?――――大剣豪の称号だ。知らなかったか?」

「アホか!そーゆーモンじゃねえよ。そんなモン、オレにはどうしようもねえだろうが!
 誕生日のプレゼントに欲しいモン、ねえのかって聞いてんだよ!!」

「ああ・・・・ねえ。」

「愛想のねえ奴だな。折角オレ様がプレゼントしてやろうってのに。
 まあ、てめえ物欲無さそうだもんなあ。―――― じゃあ、オレにして欲しい事、なんかねえか?」

「おまえが俺に?なんでもいいのか?」

「―――― なんかとんでもねえこと言い出すんじゃねえだろうなあ。
 言っとくが、俺はおまえを喜ばせてえんだぞ。
 俺がお前にしてやって、お前が喜ぶこと教えろって言ってんだ。分かるか?」

「馬鹿に言うみたいに言うんじゃねえ!」

「お前結構馬鹿じゃん。」

「・・・・・・・・」

「なんもねえのか?」

「―――― いや、思いついた。」

「お!なんだ、なんだ?」

「誕生日の夜に、一緒に酒飲んでお前の話聞かせてくれ。」

「はあ?そんなこといっつもしてることじゃねえか。」

「いつしたんだよ。いつも呑んでんのは俺だけだろ。
 お前はつまみ作って俺が呑んでんのを眺めてるだけだ。
 一緒に呑みてえんだ、たまには。」

「そりゃあ、俺よりナミさんのほうが適任なんじゃね?」

「なんであんな魔女と呑まなきゃなんねえんだよ。」

「またてめえ、ナミさんの事をそんな風に・・・・・」

「お前がしてくれることだろうが。お前と呑みてえって言ってんだよ、俺は!」

「俺にお前の酒の相手は無理じゃねえか?」

「別に俺のペースに合わせるこたあねえ。お前のペースでちびちびやりゃあいいじゃねえか。」

「う〜ん、まあ。・・・・そんで、話って改まってなんだよ。いつもしてるじゃねえか。」

「馬鹿話じゃなくて、お前の今までのこととか、今考えてることとか、これからのこととか、
 ―――――そういう話、したことねえから、お前と。」

「俺のそんな話が聞きたいのか?ゾロ・・・・」

「おう!聞きてえ。お前とは落ち着いて話したことなかった気がするからな。
 同じ船に乗る仲間なんだからよ。知っときてえんだ、お前の事。」

「俺もお前のそんな話、聞いてみてえ。」

「そうだな、俺も聞いてもらいてえかも。」

「へへへ・・・・楽しみだな。」

「だったら別に、今からだってかまわねえぜ。」

「馬鹿だな、お前。そしたら誕生日プレゼントじゃなくなっちまうじゃねえか。」

「あー、そうか。じゃあ、まあ、楽しみにしとくか・・・」



俺たちは11日まで馬鹿みたいに我慢をした。

11日を過ぎると堰を切ったように互いの事を話した。
今までがウソのように俺たちは親しくなった。
何で今までこうしなかったんだろう。

知れば知るほどかけがえの無い奴だと思うようになった。

ずっと一緒に旅が出来ればいい。
あいつはどう思っているだろう。
あいつもそう思っているといいと思う。



だが、確かめるのが怖いのはなぜなんだろう・・・・・







END

              2006.11.11.   かのまま


 

*  VOICE



俺は海の一流コックだ。
だから個々の好みに合わせた料理を出せるのだと
誰も疑問に思ってないだろうが
直接聞かずに好みを知るなんてのは至難の業だ。

実は俺にはある能力がある。
悪魔の実のなんかじゃねえ。
心の声を聞くことが出来るんだ。
まあ、いつもと言う訳でもないが
たまに、断片的に聞こえるんだ。
聞こうとして聞こえるわけじゃない。
勝手に頭の中に語りかけられる感じだ。
料理に関することは特によく聞こえる。

このことは誰にも内緒だ。
誰だって声にしない気持ちを聞かれるかもしれないなんて分かれば
そいつに近づきたくないだろう。
俺だって嫌だ。

まあ割りと便利なこの能力だが
いいことばかりというわけでもない。
聞きたくない声が聞こえちまうことだってあるんだ。
残念ながら耳を塞ぐってわけにはいかねえ。
耳で聞こえるわけじゃねえ。
そうだな、脳・・・いや、ハートで聞いてるって言った方があってる感じか・・・
聞きたくても聞こえない声もあれば
聞きたくもないのに勝手に俺の中に入り込んでくる声もあるわけだ。


どういう声が聞きたくないかってえと、
まず、俺のことを嫌いなやつの声は聞きたくねえ。
まあ、自分で言うのもなんだが、俺を嫌いなやつはそう多くはない。
俺を嫌いなやつの大半は逆恨みだ。
彼女が俺に惚れちまったとかそういうどうしようもない悲しい事故のようなもんで。
後は俺に蹴り飛ばされたやつとか。
まあ、それも蹴り飛ばされるようなことをてめえがしたわけなんだけどな。

それとは逆に、やけに俺を好きなやつも困る。
「やつ」というからには、男なわけだ。
俺への男の欲望そのままの声が
俺のハートに直接なだれ込んできて
吐き気を覚えたことも何度かあった。
そのうちそういった思念を追い出す術を
必要に迫られ体得したんだ。
まずそういうやつであることを察知できるようにもなったんだが・・・・



この船に、GM号に乗って
麦わら海賊団の一員になって
最高の仲間に恵まれて
すっかりそんなやつに出くわすこともなくなって
仲間しかいない海の上、油断してたんだな・・・・




********************************************************************


いつもの錘を振る鍛錬を一万カウントしたところで一休みしようと座ったら、
いつの間にか寝ちまってたらしい。
目が覚めてみると結構夜も更けてる様子だ。
どうやら晩飯を食いそびれちまったみてえだ。
キッチンに目をやれば、明かりが見えた。
コックはまだ起きてるようだ。
あそこに行けばなんか食わせてもらえるなと思ったら、腹の虫が鳴った。

今日はたまたま食いっぱぐれたんだが、
実は夜中にキッチンでなんか食わせてもらうのが結構気に入ってる。
晩飯にちゃんとありついた日でも、日の変わるころに酒とつまみを貰いに行くことも多い。

夜のコックは、昼みたいにやたらと喧嘩ふっかけてきたり、やたら口が悪かったりしない。
昼のテンションの高さは、さすがにあいつでも夜まで続かねえんだろ。
スタミナがねえってわけじゃあねえが、何しろあいつの仕事は多すぎる。

最初はそうじゃなかったんだが、今じゃ航海に関すること以外の
雑多な仕事をすべてあいつが取り仕切っている。
掃除とかは当番制だったんだが、
忘れちまったり適当に済ませちまったりするんで、なんとなくそうなった。
実際やってるのは男のクルー全員だ。
コックが仕事を振り分けて、全員でこなす。
コックに指名されてする仕事はあいつを手伝ってるみたいで
気分よくやれるし、手を抜いたりなんかする気もしない。
どうやらみんなそうらしい。

話はそれたが、そんなわけで、程よく疲れたコックがいるだろうキッチンに行くことにした。
たぶんコックはこっそりルフィなんかにみつからねえ様に、俺の分を置いてくれてると思う。
口は悪いが優しいヤツなのだ・・・女にだけのように見えて案外そうでもないんだ。
どうやら俺はコックがかなり気に入ってる。コックは嫌がるだろうがな。


******************************************************************************




一日の仕事をほぼ終えてちょっと軽く呑んでるとゾロがキッチンに入ってきた。

「やっと起きたかよ。言っとくが結構起こしたんだからな。お前が起きなさ過ぎ!!」

「腹減った・・・」

「そらそうだろ。ちょっとルフィに掠め取られて減っちまったが置いてあるぜ、晩飯。・・・俺ぁ優しいねえ。」

「悪りいな・・・」

「今温めてやるからちょっと待てな。
減っちまった分は、腹にたまる系のつまみ作ってやっからよ。飯の後、呑むんだろ?」

「有り難てえ・・・」



キッチンに向かうため俺に背を向けたコックの項が目に飛び込んだ。ほんのり桜色だ。

『うまそうだ・・・・・』

「うまそうじゃねえ、うまいんだよ!!!」

『そうかコックはうまいのか・・・・』

「!!!何言って!!も、もしかして、言わなかったか?!」

「ん?ああ、そういや言わなかったな。」

「・・・・・・・・・・」

「言わねえのにわかんのか?」

「んなわけねえだろ!!」

「分かってたじゃねえか。」

「あ、ああ〜・・・・・そうだとしたら?」

「・・・便利だな。」

「思っても口にしない気持ちを聞かれちまうんだぞ!嫌じゃねえのかよ?!」

「あえて言わなかったが、聞かれたところで別に問題ねえ。」

「じゃあ、俺がうまいってのはどういう意味なんだよ!!」

「ああ、食ってみてえなって。」

「食うって、そりゃあ、その、まさかとは思うがよもや・・・・」

「ああ、てめえを・・・・」

「うわあああ、よせ〜!!!」




ゾロの思考がなだれ込んでくる。
ああ、しまった!ええと、どうやって追い出すんだったっけか!?
暫くやってなかったら、うまくできねえ!
まさかゾロが、そんなことを考えるなんて思っても見なかった。
ゾロの頭ん中で俺は美味しく頂かれちまった。


ちくしょう、今までにもあったんだ。
男のクセに男の俺に欲情しやがって、
頭ん中で俺に・・・・・・・・・なことしやがって!
俺は吐き気が止まらなくなって・・・・・
吐き気が・・・・・


「あれ?」

「俺が何考えてんのか分かるんじゃ、今さぞかし嫌なんだろうなあ。」

「そのはずなんだよ!そのはずなのに・・・・おかしいな・・・」
取り乱した俺は言わなくてもいいのに思ったままを口にしていた。

「嫌じゃねえのか?」

「そんなわけねえよな!?」

「俺に聞くなよ、てめえの気持ちだろ?」

「他人の気持ちが分かんのになんで自分の気持ちが分かんねえんだよ!」

「嫌じゃねえならいいじゃねえか、それで。」

「いや、だって、それは!!おかしいだろ!そんなの!!」

「そんなことはねえ。俺は嬉しいぜ。」


そう言うとゾロは俺にキスしてきた。。
俺はゾロが何をするのかさっき思考を読んで知っているのに拒まなかった。

俺は今まで他人の気持ちに気を使いすぎて
自分の気持ちにはあまり向かい合って来なかったのかもしれねえ。
ゾロの思考が嫌じゃなかったように、
ゾロが実際それを行動に移しても
俺はそれが嫌じゃないのかもしれねえ。
むしろそれを望んでいるのかもしれねえ。
さすがにそこんとこはゾロには言わなかったが。

俺はこいつが好きなんだろうか?
だから嫌じゃねえのか?
他のやつのときはあんなに嫌だったんだから
そういうことなんだろう。

「ちょっと聞くが、てめえは俺を好きだったのかよ?」

「あたりめえだろうが。じゃなけりゃこんなことするかよ。それは分からなかったのかよ。」

「なんか、美味そうとかそんなのが先に来ちまって。やっぱりそうなのか?」

「てめえも嫌じゃねえってことは嫌いじゃねえんだろ、俺を。」

「よくわかんねえんだけど・・・・」

「まあ、かまわねえけど分からねえんなら好きだってことにしとけ。」










そういうことにしといても・・・いいかもしんねえ。




       FIN             06.8.31 かのまま



 




女部屋でナミとロビンがたわいの無い話をしていた。

夕食も終えて、風呂にも入ってあとは寝るだけなのだが
今日は何だか未だ寝ようとは思わない。
たまたま2人ともそんな感じでなんと言う事もない話をしていたのだ。

バーカウンターで肘を付きそれぞれ本を開いているが
今は読書より話がしたかった。
酒はいくらか置いてあったが今はなんとなく酒じゃなく・・・・
そう、紅茶なんかがここにあればなあと、ふと思ったとき
コンコンと入り口をノックする音が聞こえた。
「だあれ?」とナミが言うと
「ナミすわ〜ん、ロビンちゅわ〜ん、まだ起きてますかぁ?
ロイヤルミルクティなどお持ちしたんですがいかがですか?」
とサンジの声がした。
「ちょうど今欲しいと思ってたところだったの・・・わかったの?」
といいながら入り口の鍵を開けてサンジを招き入れた。
「そりゃあよかったv素敵な偶然ですね、ナミさんvv
ちょっと、階段下までお邪魔しますね。」
その言葉通り階段下でトレイごとナミに渡すと、
「カップは明日下げに来ますからどうぞごゆっくりvv」
と去って行った。


「私もちょうど紅茶が欲しいと思っていたの。」

「2人のテレパシーが通じちゃったのかしら?」

「ふふ・・・たまにね、コックさんの事エスパーかしらって思うことがあるわ。」

「そうね、こと食べること飲むことに関しては外さないものねえ。」

「ほかの事は的外れなことも多いけど?」

「まあ、そんなとこも可愛いんだけどね、サンジくんは・・・
可愛いなんていったら怒られちゃうわね。」

「あら、コックさんは女性には怒らないでしょう?
・・・コックさんの事、好きなのね航海士さんv」

「え?そ、そうね、サンジくんを嫌いな人なんているのかしら?
ロビンだってすきでしょう?サンジくんの事・・・・」

「・・・ええ、好きよ。私はね、悪魔の実の能力者だし賞金首でしょう?
だから受け入れてもらえると言う事が極端に少なかった。
ここに来た時だってそう・・・それがあたりまえだと思っているのだけど
コックさんと船長さんは無条件でこんな私を受け入れてくれた。
そんな人を嫌いになれるわけが無いでしょう?」

「でもそのロビンの『好き』は恋愛感情じゃあないんじゃない?」

「そうね、現状ではね。
だって、コックさんもいつも『好きだ』って言ってくれてるけど、
あれだってそういうものじゃないでしょう?
あれは『この薔薇は綺麗だ』と言っているのと同じだもの。
コックさんがそういう気持ちで『好きだ』と言ってくれたら
私もそうなるかもしれないけれど。」

「そうね、それは私もロビンと同じ。
おおっぴらに言われれば言われるほどそうだと思う。」

「でもね、恋人同士になったら嫌いになるかもしれない。
恋人ならその人にとって特別でなければ嫌でしょう?
コックさんのただ一人の特別な人に自分がなれるとは思えないわ。」

「う〜ん、そうね。サンジくんの女性への誰彼かまわず美辞麗句言いまくり、
恋人が出来ても収まりそうにない感じよね。病気よね、あれほとんど。
――――殆どの人に嫌われないのに、恋人にだけ嫌われるってある意味不幸かも。」

「恋人が女性じゃ駄目なんじゃない?」

「って、ロビンそれは大胆な意見ね・・・」

「そうかしら。この船の男性諸氏はコックさんさえ良ければ
恋人になりたいと思ってるんじゃないかしら?」

「えええっ!?そお・・・なの?」

「コックさんを嫌いな人なんていないんじゃないかしらって
あなたが言ったんじゃない。
あんなに綺麗でかわいい人ですもの
男性から見てもそうなんじゃないかしら。」

「ルフィも、ウソップも、ゾロも・・・チョッパーも?!」

「本人たちに聞いてみないと分からないけれど、ね。」

「き、聞いてみた〜い!!!」

「ふふ・・・私も聞いてみたいわ。
コックさんに聞かれないところで一人づつ聞いてみたいわね。」

「明日からが楽しみだわvv」


******************************



早速翌朝、メリーの頭の上でルフィをつかまえた。
ナミはノリノリで聞いてみた。

「ねえねえ、ルフィ、サンジくんのこと好き?」

「ん〜?好きに決まってっだろう?俺のコックだぞ、サンジは。」

「恋人にしたいくらい?」

「・・・・・・おう、なってくれるんなら、俺は嬉しいぞ!!」

『ホントだあ・・・』と、多少ショックを受けながら、更に聞いてみる。
「積極的に告白なんかはしないの?」

「俺は殆ど毎日言ってるぞ、『サンジを好きだ』って。」

「それってたぶん、そういう意味には伝わってないと思うわよ。
恋人にしたいなら『恋人になってくれ』って言わないと!!」

「まあ別に今のままでも良いけどな。」

「ふぅ〜ん、じゃあ、サンジ君が別の誰かの恋人になってもいいんだ。
例えば、ウソップとかチョッパーとか、ゾロとか・・・」

「なんでそうなるんだ?サンジは俺のだぞ!!」

「例えばの話よvvそーゆーこともあるかもねってvvv」


ちょっと神妙な面持ちになった船長をそのままにして
ナミとロビンは彼から離れた。
「航海士さんったら、たきつけちゃったわね。イケナイひと。」
とロビンは他人事みたいにこっそり言った。
なんとなくのってきたナミは次の標的を見つけた。
青空の下、工場を開いている工場長に歩み寄る。


一心不乱に新しい武器の開発に勤しんでいたウソップは
手元が誰かの影で暗くなって初めて側にナミとロビンが立っていることに気づいた。
2人ともあまりお目にかかったことの無いような微笑をたたえていた。
なぜかそれを目にして背筋を悪寒が駆け抜けていった。

「ななな・・・なんか御用ですか?お二人そろって・・・」

「ふふふ・・・・白状なさい!!あんた、サンジ君が好きでしょう?!」

「白状って何だよ、サンジは、まあ、ガラは悪いがいいヤツだぜ。
この船に乗ってるやつでサンジを嫌いなヤツなんていねえだろ?」

「そんなことは分かってるわよ!馬鹿ね、あたしが聞いてるのはそんなことじゃないわよ。
サンジ君と特別な関係になりたいかってことよ。」

「はあ?ななな、なんだよ、特別な関係って・・・!!」

「決まってるでしょ!恋人同士になりたいかって聞いてんのよ!!」

「いや、あの、お友達でじゅうぶんです!!
大体、サンジは筋金入りの女好きだろ?
男同士で恋人なんてありえねえだろ?」

「それなのよ!!あの、あまりにあけっぴろげな女好きっぷりは
実は男が好きな事へのカムフラージュに違いないわ!!」
ナミも最初は半信半疑だったのに、自分の言葉に説得されて
なんだかもう絶対間違いなしだと思って居たりした。

「ウソップ!いいの?!サンジ君、ルフィかチョッパーか、
もしかしたらゾロの恋人になっちゃうかもしれないのよ!?」

「ええっ?あいつらはそういう意味でサンジを好きなのかあ?!」

「争奪戦の様相を呈しているわね!!」
まだルフィにしか聞いてないのに適当なことを言ってみたりする。

またひとりなんとも言えない表情で考え込んでいる男を置いてきぼりにして
魔女が2人、次の標的に向かっていった。
直接は何も言わず微笑むだけの黒髪の魔女が
「楽しいわねv」と言った。


ピンクの帽子のトナカイが分厚い本の真ん中当たりのページをバックリ広げて
ぶつぶつ言いながら試験管バサミではさんだ試験管の先をアルコールランプの炎にかざしている。
「何を作ってるの?チョッパー、精が出るわねvv」

「ああ、ナミ。サンジに頼まれて手荒れの薬を作ってるんだ。」

「まあ!サンジくんのために?!」

「あ、サンジに頼まれて作ってるけど、もちろんナミもロビンも使ってくれよ!」
家事全般をサンジが請け負っているからナミやロビンの手が荒れる心配など
先ず無いのだが、あわててチョッパーが言った。

「愛ね!!チョッパーのサンジ君への愛が詰まってるのね、その薬!!」

「アイ?アイって何だ、ナミ?」

「愛って・・・相手の事をどうしようもなく好きだっていう気持ち、かなvv」

「それなら詰まってるぞ、たぶん!
この船のクルーはみんなサンジに愛、詰めてると思うぞ!」

「そうそう、み〜んなサンジ君を愛してるわねv
サンジ君は誰を愛してるのかしらね?」

「みんなじゃないのか?」

「ん〜、でもみんなを平等には愛せないと思うのよ。
一番愛してる人がいて、他は平等かもしれないけど
そんなの目に入ってないのも同じようなものね。」

「目に入ってないって・・・そんなことないぞ!
サンジはいつもちゃんと俺のこと見てくれてるぞ!!」

「じゃあ、まだ一番が決まってないんじゃない?
一番愛する人と恋人同士になったら周りなんか目に入らなくなるわよ!」

「サンジが俺を見てくれなくなるのか?!
そんなの嫌だ!どうすればいいんだ?!」

「ふふふ・・・方法はただひとつ!!
チョッパーが一番になることね!」

「トナカイでもなれるかな・・・」

「チョッパーの心がけ次第だと思うわよv
でも、みんな狙ってるから相当頑張んないとね!」

「お、俺・・・よくわからないけど・・・がんばるぞっっ!!」

「船医さん、がんばってねv」
と一言ロビンが念を押す。




そして最後の仕上げとばかりに2人は船尾へ向かう。

「ランチまでに全部回れそうね。」
なんて、営業して回っているサラリーマンみたいなことを言ったりして。






   かのまま  06.3.6



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