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<どこかの都市伝説>
「お母さんが抱っこ」
そう言って泣いている。何度も何度も、壊れたCDプレーヤーみたいに同じトーンで小さな女の子独特の甲高い声が深夜のアパートの廊下にこだましていた。
お母さんが抱っこ、お母さんが抱っこ、お母さんが抱っこ、お母さんが抱っこ、お母さんが抱っこ、お母さんが抱っこ、お母さんが抱っこ…。
俺は古い友人と部屋で懐かしい話をしていたのだけれど、女の子があまりにもうるさいので友人は注意してくると部屋を出ていった。
俺は気にもとめずにタバコに火をつけて、未だ響く叫び声を聞いていた。
友人は、「違う階みたいだ」だからめんどうなので諦めたと言いながら戻ってきた。
昔から鈍感なこの友人は本当に幸せ者だと俺は思う。
「ていうかお母さんが抱っこ。って何だよ」
「さあ、抱っこしてほしいんじゃない」俺は二本目のタバコに火をつけた。友人はグラビア雑誌を眺めながら、女の子の事をもう忘れ去ってしまったようだ。
ここは古いせいか上や隣からの音がよく聞こえる。特に上の足音がヒドいったらありゃしない。
このアパートは、一階建てのハズなのに。
「お母さんが抱っこ」
そう泣き叫ぶ声は友人が入ってきた時点で止んでいた。
そりゃそうだ。
両足の欠けた女の子は青白い笑顔をしながら、目の前の友人の背中にしっかりとおぶさっているのだから。
<END>
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