2009/11/2
毎年の今頃に開催されるおきまりの長浜市のアーテストクラブの展覧会、今年は姉妹都市のアウツブルク提携何十周年とやらで、いつもより大きな絵を出して下さいとのことだった。
80号を乗せることができる車にはベビーシートが取り付けてあり、やむなく我が家で最も古い車だけれど屋根にキャリーが取り付けられているからと、額に入った絵をそれに載せ、倉庫にあったゴムのような何なのか、ま、これでいいやなんて紐で結わえてみた。車の幅と絵の横幅がほぼ同じでちょうどよい。
さて、変なお天気だから雨に降られないように早めに会場へ行こうと準備万端整えて余裕綽々。
真上に大きな黒い雲があるから、それが行き過ぎたらでかけましょうと待つこと少々。絵は空に向けてむき出しだから濡れたくはない。トラックとすれ違えば運転手さん、チラッ絵を見ていくかしら?
普通に走れば15分ほどの距離だけれど、少し走り出すと運転席の上でゴトッと嫌な音が伝わってくる。多少の音は仕方ない、ゆっくり走っていきましょうと心すれどもガタンという音が次第に大きくなってくる。路肩に車を寄せてみると、前の方が煽られて上下に振動しているために結わえた紐が緩みかけていた。
きつく縛り直し、確認をして時速20〜30kmで左ウインカーを出してそろりそろり・・・。何だか雨の代わりに風が出てきたかしら、ヤだな・・・。長浜の街中に辿り着くまで4回も車から降りなければならなかった。
もう一息、あと1Kmほどかしらと湖岸に出ると、運転席の左側にせまる琵琶湖の湖面の波の高い事よ。何とも凄まじい風の勢い!
突然、凄い音がして結わえてあった紐がフロントガラスに当たって跳ね返った。
エッ!ウソ!片側2車線の端っこに車を止めて後ろをみると、大きなキャンバスが道路に投げ出され、額がバラバラになっていた。可愛そうに肝心のキャンバスも捩れて枠がずれ、横木が折れている。
急いで道路上に散乱したものを歩道に引っ張ってくるもあまりの風の勢いに、キャンバスと身体が一緒に吹き飛ばされそう。大きな並木の幹でキャンバスを支えるとヨットの帆のように膨らんで音を上げる。
何はともあれ車列が途切れている時でよかった。人や後続の車に当たらなくてよかった。こんな時、事故にでもなっていたらと思うと目眩がしそう。
風の力で木の幹に押されているキャンバスのバランスをとってこわごわ手放し、車をもっと路肩に移動し、助手席のバックとダウンベストを素早くとって、キャンバスを支える。要らないだろうと思いつつ防寒具を持ってきてよかった。でなければ、寒くて5分と立っていられないだろう。
狂ったように風が唸り吹き付ける中、暫く呆然としつつなすすべもなく踏ん張っていたけれど、このままでは何ともならぬ、しかし、絵を抱えて会場へ歩こうにも一歩も進めない。
片手でバックから携帯を出しながら、どこへ連絡すればいいのか・・・。会場の番号はわからないし・・・。警察でもないし・・・。時間はどんどん過ぎてゆく。身体を支えるのも困難なほどの風は変わらず猛り狂っている。
暫し倦ねていると、紺の大きな乗用車が前方に止まり、作業服を着た男性が降りてきた。私の傍まできて、女の人には無理だろう・・・と、互いの間隔は1mもないのに言葉が飛んでしまって会話にならない。男性は大きな声でちょっと待っていなさいと言い置き姿が消えた。
すると、何と!トラックの中で一番大きいと思われる銀色のトレーラーが大きくUターンして、少しずつこちらへ近づいて来る。
運転している若者と先ほどの男性、もう一人助人の3人が、側面の上部半分を自動で上げ(風にはびくともしない)二人が両方から素早く下部半分を開いて、キャンバスとバラバラになった額を広い広いトレーラー内に運び上げてくれた。
トレーラーで会場へ到着し、3人の男性が会場である文化会館の玄関まで運び入れてくれた。
何とお礼申し上げればいいか言葉もありません、と最敬礼をしてお別れをする。
会館の玄関ホールに置かれたキャンバスと額は無惨な姿、どうしたものかと思案するうちに、先ほど何事かと事務所から見に出てきた会館の数人の職員の中、一人の方が金槌やドライバー諸々の道具を持ってきて、キャンバスの修理を黙々としてくださる。
何とか形が戻ったかしらとみるや、次は額を。
本当のところ、私はほとんど諦めていたのだけれど、額もちゃんと用を足せるほどに元通りに修理された。
キャンバスを入れてみると、何と!ほとんど元のままの姿に。先ほどまで東西南北上下左右バンラバラになっていたなんて誰も気づくことはないでしょう。
またまた、何とお礼を申していいか言葉がありません、と最敬礼をする。
見知らぬ方々に助けていただいた一日、忘れられない一日になったのでした。