それでは薬代の方はどうでしょうか。図の赤棒を見れば分かるとおり、ほぼ横ばいで10年間で5.8%しか増えていません。最近の医療費の高騰は薬代以外の医療費の増加が大きいことが分かります。つまり、薬剤費を抑えても日本の医療費抑制効果はあまり期待できないことになります。日本は欧米に比べると医療費に占める薬剤費の割合が高いとされていましたが、平成15年度は20.7%にまで下がっており、欧米に比べて特に高い数字ではありません。最近、
ジェネリック医薬品を使えば薬代が半分以下になり、家計の負担がかなり減少するようなイメージで宣伝されていますが、これは巧妙な宣伝文句です。単純計算すると薬剤費は医療費の20%であり、たとえ薬代が半額になったとしても患者が支払う金額は1割減にしかなりません。また、忘れてはならないことは、薬物治療は医療に於いて非常に重要な位置付けにあり、後述する「育薬」は社会全体の財産です。
後述するように日本に先発医薬品メーカーを残すべきであり、ジェネリック医薬品メーカーと共存させるためには特許期間中に新薬開発コストを回収できなければなりません。つまり、新薬の価格を今以上に上げる必要が出てきます。そうなれば、トータールの薬剤費はむしろ上昇するでしょう。
ジェネリック医薬品の使用に追い風
日本では今まであまりジェネリック医薬品が普及しませんでした。アメリカ、イギリス、ドイツなどが数量ベースで半分ぐらいあるのに対して、日本ではその1/3ぐらいです。理由としては、@数年ごとに薬価改定(=値下げ)が行われており、特許が切れる頃には先発医薬品の価格が下がっている、A医師が慣れ親しんだ先発医薬品を処方する、Bジェネリック医薬品に対する信頼性が十分ではない、Cジェネリック医薬品メーカーが弱小であるため、MRによる医師への情報提供が少なく、薬局での品揃えも不十分である、などが挙げられます。さらに、健康保険でカバーされることと医療情報の開示が不十分なことより患者が薬剤費についてあまり認識していないことも一因でしょう。フランスは日本よりもジェネリック医薬品の使用率が低いですが、これは@のように先発医薬品とジェネリック医薬品との価格差が小さいためと説明されています。
前述のように、健康保険の財政事情から日本政府は何とか医療費を削減しようと、ジェネリック医薬品の普及を画策しています。しかし、処方権が医師にあるため薬局で薬剤師が安価な
ジェネリック医薬品に変えることが出来ませんでした。そこで本年(2006年)4月より処方箋の様式が変更となり、医師が処方箋に製剤の変更に同意する欄に署名すれば、後発医薬品に変更して処方することができるようになりました。ジェネリック医薬品メーカーは千載一遇のチャンスと捉えて、コマーシャルを増やして一気に普及を図ろうとしているわけです。とにかく、医師に処方変更を同意してもらわなければ始まらないので、医師にも宣伝しますが、患者からも医師に圧力をかけてもらいたいわけです。そこで、支払いが減るし、患者にとって良いことずくめのような表現になるわけです。

0