★ 一瞬の風になれ
第1部 イチニツイテ 佐藤多佳子
男子陸上のトラック競技で史上初のメダル獲得となった、北京オリンピックの400mリレー(4継)。第1走の塚原は「末続さんめがけてブッとんでいきました」第2走の末続は「もう夢中でした。夢の中でした。みんなの力を合わせてと思って挑んだ」第3走の高平は「朝原さんと同じ舞台で走るのも最後かもしれないと思って、最後は気持ちよく走ってもらいたかった。それができて良かった。」アンカーの朝原は「僕が一緒に走ってきたリレーメンバー全てに感謝したい。その積み重ねで出た記録です。」と応えている。まさに彼らの言葉のようなバトンをつなぐ高校生の4継。青春スポーツ小説
再読。以前読んだときも初めのつっかかりは、口語文だ。高校生の話し言葉。軽い感じ。これが初めはとても気になってしまったけど、入り込んでいくとあれ?不思議と気にならなくなる。こんなもんだと、高校生の世界だと思うとすとんとくるし、この稚拙な感じに勢いが感じられてくる。ストレートに伝わってくる
兄は、天才サッカー少年。幼馴染の連も天才ランナー。高校の陸上部に連と入部した新二。先輩たちの練習している4継を見て連が「やりてえ」とつぶやく。先輩たちがいい。予選で県総体出場決定し、「舞台は作ったぞ」と1年生にもタイムトライアルでのチャンスを与える。与えられたチャンスはつかむ。チームということ
連の走り。「キレイだ。人が走るのを見てキレイだなんて思ったことがない。でも本当にキレイなのだ。優れたダンサーのしなやかな身のこなしのように。俺は間抜けみたいにポカンと口を開けて見とれていた。快感だった。心に感じる気持ちよさだけじゃない。身体までしびれた」
競技をやっていると、こんなことってある。見とれてしまうぐらいの走り。それは水泳だって、自転車だってあるのだけど
兄に「夢は?」と聞かれ「速くなる」と答えた新二。シンプルな夢だからこそ、パワーを感じる
天才だけど、我儘でマイペースな連に、同期の根岸が言う。「おまえの走りを見ていたいんだ。短距離やっているモンの夢だ。神様にもらったものを粗末にするな。もらえなかったヤツらのことを一度でもいいから考えてみろ」新二が根岸に言う「俺もおまえも、神様からちゃんともらっているんだよ、それなりにな。だから、走れるんだよな」
それなりに、っていうのがいい。健康な身体と心があれば競技はできる。スポーツ系はモチベーションアップになる
顧問の先生、他校のライバルたち。どのキャラもしっかり個性が描かれ、いきいきしている
