「う…、打ち上げが…無い…だと…?」
全くと言って良いほどに無警戒であった。
お客さん達が帰り、殺風景になってしまったライブハウスの中に、ラブハンボーカルの若林っさんの声がこだまする。
―― 今日は遅いので打ち上げはナシね〜 ―― ナシネ-…ナシネ…ナシ…
この!第六天ノ魔王を召喚する忌まわしき呪詛を唱える悪しき術者めっ!悪霊退散!悪霊退散!破邪っ!
しかし、確定してしまった世界の終わりは覆る事はなく、ただ、ただ愕然とその場に立ち尽くす今月二十八歳になったばかりの一人の若き青年…。
缶ビールを持ったその右手は震えていた。つーても末期のアルコール中毒の症状が出ている、という事では無い。そう、彼は太平の世に安心しきった余り、打ち上げ前の景気づけにと既にフライングを起こしてしまっていたのである。500ml二本目。
10日前の、神戸での誓いを思い出す。
久しぶりに一緒の現場になったドラマー良との再会。
良(*´∀`*)「僕達、明日もライブあるし、今日は終電近いから次の東京で打ち上げしましょうよ」
青年(´・ω・`)「そうだねぇ、じゃあ東京まで我慢するかぁ…」
良(*´∀`*)「ええ。必ずですよ、飲みましょうよ!」
青年(´・ω・`)「でも東京も終わり遅くなりそうだよなぁ…」
良(*´∀`*)「東京は朝までっすよ!」
青年(´・ω・`)「…ホント?」
良(*´∀`*)「打ち上げは朝までっす!」
前日のブログにも書いた通り、確かにここのところ一週間、毎日飲みっぱでグズグズな朝を迎えていた。しかしそのどれもが今日の為の余興であったと言っても過言ではない。どれだけオレ…、否、二十八歳の彼がこの日を楽しみにし、わざわざ次の日を休みに…、否、毎日が休み…もぉー!そんな事はどうでもいいんだけど!良ぉー!楽しい宴は?ねえねえ!ライブって打ち上げの為にやるんだよね?ねえねえ!そうだよね?何か言ってやってよ!良さぁーん!
良(*´∀`*)「ミヤコぉー(嫁)じゃあ、車取ってくるから荷物まとめておいてー♪」
なんなんだよ、おめぇはよっ!
つか、車で来てるって飲む気ゼロじゃねえかよ!
溝ちゃん( ゚Å゚)「んじゃーうちも明日、ラジオもあるんで帰りますわー」
菅たん( ゚д゚)「軽くならいっすけどー。オレ近いんでタクシーっすわ」
ちょっとあなた、軽くで帰られたらオレ、殺されますよ?気温何度と思ってるんですか。それに東京の夜の街はオヤジ狩りとかレイプとか危険がいっぱいなんだからねっ!
ケ…ケンちゃん…。仲間内で唯一アル中の君なら…。
ケンちゃん(・∀・)「ボクは飲みますけど、朝までは絶対イヤっすね!ボクも近いんで!アハハハー!」
もぉええですっ!
缶ビール片手に終電に飛び乗るオレ。否…、二十八歳の彼。
もう、終電って何?一体何なのよ!終電なんか絶対キライ!!
おかげで今日はものっそ清清しい朝が迎えられましたけどね(・∀・)

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