私は現実におきている出来事を、理解出来なかった。まず彼女の行動が何故なのかを考える以前に、その艶めかしい唇と舌の感触に、思考回路と回復したはずの身体が麻痺していた。
「飲み込むのものもやっとのようですね?」
そう言って彼女は、スプーンを手にとり自分でスープを飲み始めた。いや飲んだというより、口に含んでいる。小さく頬を膨らませた彼女は、私の顔を見てにやっと笑うと、口づけをした。
「ん・・・」
静かに、彼女の口からスープが流れ込んでくる。
私はそれを吸った。スープの味と一緒に、彼女の香りも胸に流し込んだ。彼女の口の中のスープを飲み干すと、ヌルっと舌が忍び込んできた。思わず私はそれを吸ってしまった。彼女がその反応をみて微笑むのを感じた。そして、彼女はいった唇を離した。もう一度にやっと笑う。
「また、こぼして・・・」
彼女は私の口の周りについたスープを、唇で掬うように舐めた。
「美味しかった?」
「あ、は、はい・・・」
まるで子供のような返事だった。
そのまま、彼女は食器の乗ったトレーを持って部屋を出て行った。
心臓の鼓動が、激しくなっているのをはっきりと感じる。落ち着こう・・・。今、何がおきているのか整理してみよう。落ち着こう。落ち着いてよく考えてみるのだ。今まで何がおきたのか、考え直してみなくては。
たしか、私は昨晩・・・いや、いつだったのかよく解らなくなっているが、車で家に帰る途中、事故に会った。それは事実である。そして、こうして体の動かない状態になっている。そして、ここに運びこまれた。ここは何処だ?病院ではない。そして、あの女性はいったい誰なのだ?そして、何故、彼女はあんな・・・あのような態度で私に接するのだ?
解らない・・・。
ふと、顔を上げると、いつのまにか底には彼女が立っていた。
「まだ、お風呂もシャワーも無理ですから、身体を拭きましょうね。」
そう言うと、私の着ていた浴衣を脱がし始めた。下着は着けていない。おや?怪我は?上半身は勿論、感覚のない下半身にも包帯は巻かれていないどころか、傷らしいものさえ見当たらない。骨が折れているにしても、ギブスや包帯くらいは巻いてあるはずなのに・・・。
湿らせたタオルで、顔から腕、背中、胸と拭いていく。腹のあたりを拭いたあと、手が止まった。
「ここも・・・」
彼女は、私の下半身の一部をじっと見つめている。恥ずかしくても、私は身動きすることも出来ない。
彼女はしばらく見つめていたが、そっと私のその部分を拭きはじめた。麻痺しているはずの下半身だが、その部分だけは感覚が戻っているのか、感じている。
こんなときに・・・。そう思っても、その敏感な部分を、今までとは違った、動きで彼女は拭いている。いや、愛撫するかのように入念にその手を動かしている。
「ん!」
再び、私の思考回路の一部が切れた。
以下次回


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