2008/10/23

陽だまりのバス通りへの帰還  誠司の日記

小夜、よくがんばったね。
きみの苦しみは、ここ最近、始まったものじゃなかったんだね?

実はおれも、つい最近気づいたのだけれど……。

何ヶ月も前からずっと、きみの苦しみと迷走は、ずっと続いていたんだ。
そのかんの数ヶ月、長い長い苦しみと、絶望の日々が続いていたんだね。

でも、きみはいま、泥沼のような暗い日々を抜け出して、戻ってきたんだ。

夜の深い闇から、陽のあたるバス通りへ帰ってきたんだ。おれと一緒に……。

小夜。きみを守るためなら、おれはいまもこれからも、なんだってするよ。
そのためにこそ、おれはきみと結婚して、本当の夫になるんだから。

自分の嫁さんひとり、愛する女ひとり守れなくて、なにが男だって思うよ?

おれにとってきみは、一生かけて守っていきたい、大切な宝物なんだ。
きみの心と体は、きみ自身にはもちろん、おれにとっても大切なものなんだ。

だからその、きみ自身という大切な宝物を、自分で傷つけたりしちゃいけないよ。
自分で自分を大切にして、愛して慈しんで、丹誠込めて育てていくんだ。

きみの心身は病気だらけで、普通の人より弱く繊細に、感じやすくできているから。
健康な人には、なんでもないことも、きみにとっては大仕事だったりするんだ。

だから、たったひとつしかないその体を、できるだけ長く使えるように、一日でも長く生きられるように、いたわって節制してあげなくちゃいけないね。

そう、きみがおれと一緒に、一日でも長く生きられるために。
おいしいものをおいしく食べて、バスにも電車にも乗って、楽しく暮らすために。

もう絶望して、自分で自分を傷つけたり、粗末にしちゃいけないよ。
きみが傷つくことで、誰よりいちばん傷つくのは、このおれなんだから……。

きみがおれを愛してくれるなら、その同じ愛でもって、自分自身を愛してあげてほしいんだ。

「小夜が、自分を愛して、好きになって、大切にしてくれること」

そのことが、おれのいちばんの望みなんだ。
おれはいままで、何度もきみにそう言っているから、もうわかるよね?

小夜。きみの望むものは、できるかぎり、なんでもおれがあげるよ。
おれにできることなら、なんでもする。おれのすべてを、きみにあげるから……。

きみがまた、おれのバスに乗りにきてくれるようになって、本当によかった。
子供のように、バスの中ではしゃぐきみの笑顔を見ていると、とてもうれしくなる。

「ああ、これでよかったんだ……」って、ハンドルを握るおれも、笑顔になるんだ。

振り返れば、この数ヶ月間のつらい試練も、おれたちが本当の夫婦になるために、通らなければならない難路だったのかもしれないと、ふと思ったりする。

ねえ、小夜。きみももう、迷わないよね?
来年4月8日の結婚式に向けて、バージンロードを、まっすぐ歩いてきてくれるね?

その日、おれたちは、神の前で誓いを交わして、本当の本物の夫婦になる。
苛酷な現実を超える、もっともっと強い絆で結ばれて、おれたちは夫婦になるんだ。

その瞬間、おれとおまえは、魂と魂の交わる、「聖なる結婚」を契るんだ。
この結婚は、魂と魂の堅固な結びつきだから、誰も壊すことはできないんだ……。

来年の4月8日まで、早いもので、もう半年を切ってしまったけれど。
おれたちはまっすぐに、そこに向かって歩いていこう。しっかり手をつないで。

小夜、もうなにも心配しないで。悲しんだり、絶望したりしないで。
これからは、おれも一生一緒だから。悲しみも絶望も、すべて受けとめるから。

人生の最期まで、いや死んだそのあとさえ、きみとおれは、永遠にひとつだから。
おれたちは、死ぬときも一緒なんだ。天国に行っても夫婦なんだ。

そう、死でさえも、おれとおまえの魂を、分かつことはできないんだ……。

この数ヶ月間、きみはきっと、言葉にならないくらい、つらくて苦しかったろうね。
でもおれも同じように、痛くて苦しくて、傷口から血が噴き出しそうだったよ。

もしもう一度、同じ苦しみを味わえば、きみもおれも、きっと壊れてしまうだろう。
そうならないように、おれがいつもそばにいて、壊れやすいきみを守るから。

おれはもう、きみを責めたりしない。だからきみも、もう自分を責めないで。

小夜、きみは陽だまりのバス通りで、おれのバスを、微笑んで待っていてほしい……。





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