壊れかけのテープレコーダーズ Official Web Site
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小森清貴 solo Album『カトレア』発売中 詳細

小森清貴 Twitter @kiyotakakomori
連絡先 kiyotakakomoriofficial@gmail.com

われに5月を

2017/5/20 | 投稿者: komori

 人は自分が生まれた季節というものは原初的に好きなのものなのかもしれなく、自分は10月生まれでやはり10月という季節に愛着があるのだが、それ以外でひとつと言われたら、5月を選びたい。

 5月。初夏と呼ばれる季節。まず気候が良い。暑すぎもなく、寒すぎもしなく。桜の花が散った後に垣間見えてくるのは、新緑の青々とした木々達だ。その新緑を揺らす風が心地よい。緑の香りというものを運んでくれているし、その風が夏を呼びにいっている。夏に声をかける手前、5月はまだ何か燃えたぎる前の、ちょっとした躊躇というか、恥じらいのようなものも感じ、そこが色っぽい。

 5月に、壊れかけのテープレコーダーズは生まれた。2007年、もう10年も前のことだ。随分遠い昔のように思える。

 このバンドの為にはじめて書いた曲で「記念日」という曲がある。そのうたはこんなふうにしてはじまる。

忘れてみて 新緑揺らす5月の 風の中で 僕のうたなんて
だけど、思い出して 蔑む都市の音が
君を壊す時 こんな日のことを


 10年前、どんな気持ちを以ってして、このことばを紡ぎだしたかは、あまりよく覚えていない。10年もの時が経ちずっと今も曲を作り続けていると、段々に昔に作った曲や詞が、他人のもののように思えてくる。それはきっと、そういうものなのだろう。10年前の自己などというものからは、恐らく随分遠い所まで来てしまったのだ。良くも、悪くも。

 それにつけても、二十歳そこそこにしてなかなかいい詞を書いていたじゃないか、と今は思える。忘れてみて、という出だしと、君を壊す時に、うたを思い出して欲しい、という結びへの繋がりが気に入っている。

 これは人それぞれだけれど、少なくとも自分にとって音楽とは、どうしようもなく孤独な時の、壊れそうな時の、最後の、最後の、友達だからだ。

 話は変わり、このように壊れかけのテープレコーダーズは5月に生まれたわけで、毎年5月に記念のイベントを自ら行っていたのだが、結成10周年である今年の5月に何も行えなく、ファンの方々には申し訳なく思います。でも、こういう5月がバンドの長い歴史の過程であったとしても、それはそれで意味があることなのかもしれない。

 そう、今の期間というものは、自分にとっては間違いなく意味のあるものだった。壊れかけの表立った活動が止まって暫く経つが、幸いにもライヴやレコーディングの予定などが途切れることなく、現在に至っているというのは、自分は恵まれているというか、ああ、10年やってきた故での現在があるのだな、と沢山の出会い、繋がりに日々感謝をしている。

 具体例を羅列するなら、この数ヶ月間だけでも、小森ソロや、komori+yusaのライヴは勿論、THE夏の魔物のライヴ、冷牟田敬bandのライヴとレコーディング、大森靖子のライヴとレコーディング、笹口騒音のレコーディング、高野京介と続・1997年のライヴ、6月に姫乃たまさんのライヴへの参加も決まっているし、

自分達のライヴオファー以外でも、こんなにも声をかけて頂き様々な現場で音を重ねることが出来たのだから、自分もまたギタリスト、とか、ミュージシャン、と呼ばれても、差し支えはないのかな。その位には、10年やって、やっとなれたのかな。

 みんな、大好きな人達で、あなた達の音楽に関われることは宝物です。僕に声をかけてくれ、心の底からありがとう。

 2017年5月。壊れかけのテープレコーダーズが生まれてから10年の歳月が流れた。それまでにもいくつかバンドはやったりしていたけれど、壊れかけが、やっとパーマネントに継続することが出来た初めてのバンドだったから、この10年は、ほぼ、自分の音楽活動の10年とも等しい。

 いくつかの叶った夢。いくつかの叶わなかった夢。思い描き、空想していた景色。辿り着いた今この場所から見える景色。

 次の10年が、この10年間のようにはいかないだろう、ということは、ようやく理解出来る程に、遅かったけど、自分も少しは大人になった。人は年を取る。仲間も、家族も、恋人も。
ただ、不思議と壊れかけのテーープレコーダーズに関しては、滅びる感じがしない、このオプティミスティックな感情の出所は自分でも何だろうと思うけれど、なぜかそういう気がする。

 もう一度「記念日」の詞に立ち戻る。うん、まだ僕は僕のうたを思い出せる。寄り添っていて欲しいと思える。そして、その感覚が、少なからずとも最早自分だけのものではないんだ、ってことは、分かっている。だから何も終わってはいない。

 また、はじまる。
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