休日の朝、遠くで小鳥がさえずり、カーテンが半開きになっている窓から鮮やかな朝日が漏れ、エドワードの額を眩しく照らす。
ぱちり、と眩しさに耐えかね目を開いたエドワードはいつもの空気とは違う雰囲気の部屋を寝転んだまま見渡した。
あ・・・・そういえば大佐の家に泊まったんだったっけ・・・・・
泊まったと言えどヤバい意味ではなく、昨日作戦会議で遅くなり宿の門限を越してしまい、入れなくなったところをどうしようかと迷って車で送ってくれていたロイに相談すると、仕方がないので私の家に泊まりなさいという事になったのだった。
そのロイはいまエドワードの寝ているベットから少し離れたソファーで寝息を立てている。
掛け時計のはずなのに地べたに立てかけてある時計に目をやると、まだ朝の6時を指している。
今まで宿を旅の都合で転々としてきたエドワードだが、他人の、しかも知人の家しかもその主が毎日寝起きしているベットではさすがに寝づらく、もう寝れないのでベッドから起きあがり、洗面所へ行くことにした。
ロイを起こさないよう、そろそろと洗面所に向かったエドワードだが、そこに歯ブラシがないことに気付き、結局ロイを起こすことになった。
「あー、歯ブラシ?鏡の横の棚の2段目にあるから、どれでも使って良い」
ロイは枕から顔をわずかに上げ、眠たそうにぼそぼそと言った。
どれでもって・・・・・一本しかねーし。
まあ、後で買っておくか。
エドワードは残り少ない歯磨き粉を少し頂戴してわしゃわしゃ歯を磨き始めた。
が、他人の家というものは誰にとっても興味深い。洗面所にただ置いてあるだけの何の変哲もないものに興味をひかれてしまう。例えば、ロイの使っているカミソリ(髭剃り)とか。しかもそれが4枚刃とかだったらなおさらだ。
エドワードが目ざとく見つけた4枚刃をまじまじと見つめていると、後ろからロイがのそのそとやってきて、おもむろにそれをエドワードの手から取ると、鏡に向かって剃り始めた。
「君も剃るか?」
「だれが野郎のカミソリで剃るかっつーの」
フン、とそっぽを向くエドワードに、ロイはふっと意地悪く微笑み、
「なんだ、生えてないのか」と言った。
エドワードはロイの足に左足でゴスッと一発蹴りを入れて洗面所を出ていった。
「つ――・・・・」
さすがに機械鎧で蹴りを入れられると痛い。
ロイは再び鏡に向かい髭剃りを再開する。心なしか今日は髭のそり具合がいい気がした。
「・・・・・・・」
一旦手を止めてカミソリの刃を見つめると、擦り減って凸凹になっていた刃が、綺麗に研がれていた。ロイはエドワードの意外な気付きの良さに少し驚きながら髭剃りを終えリビングに戻ると、ちょうどエドワードと目が合った。
「・・・なんだよ」
「いや・・・・意外だな」
「あ?なにがだよ」
エドワードは照れてしらばっくれた。
「いやいや・・・・」
ロイはクククと意味ありげに笑うと、朝食を作るためにキッチンへと向かう。
「トーストと目玉焼きで良いか?」
「うん。サンキュ」
既に着替えを済ませていたエドワードはヒマになり、部屋をおもむろに見渡した。
部屋は広い割りに家具が少なく、部屋の隅にはダンベルや筋トレグッズが置かれている。埃かぶっていないあたり、毎日使っているようだ。
へぇ、あのサボリ魔の大佐がねぇ・・・・・
エドワードはキッチンにいるロイを見つめる。
「・・・・・」
ロイは日ごろ仕事場では見せないようなどこか抜けた顔をしている。
エドワードには何故かそれがツボにはまり、クスクスと笑い出した。
「・・・・なんだ」
こらえ切れないという風に笑うエドワードに、ロイが訝しげに問うた。
「いや・・・・大佐の顔が・・・・・・変・・・・・・」
ヒ−ッヒッヒッヒと変な笑い方をし始めたエドワードにロイはムッときて、
「・・・・君に言われたくないな。顔と身長はリンクしているから(←作者が勝手にそうきめてます)、バランスの取れてないのよりかマシだろう」
とズバッと言い切った。
エドワードが笑うのをやめたのは言うまでもない。
ロイができあがった朝食をエドワードの前に置くと、エドワードが座っている椅子の向かいに座り、食べ始めた。エドワードもそれに倣う。
二人ともしばらく無言だったが、エドワードがロイの淹れたコーヒーをすすると、
「・・・・・・うまい」
と言い少し驚いたような顔をした。
「これ、大佐が淹れたのか?」
とエドワードがロイに顔を向けると、ロイは得意そうに頷き、
「それな、ただの市販のコーヒーだぞ」
「え?!・・・・これが?」
「ああ。豆(あ)も普通。水も普通」
「じゃあどうやって・・・・」
「要は淹れ方だな。だがこれは企業秘密だ」
ロイは悪戯っぽく笑う。
「なんだよそれ」
「コーヒーうまいとモテるのかもしれないぞ、鋼の」
「・・・・・・なんだよそれ」
「ほら、あの子に淹れてあげたらどうだ?リゼンブールの・・・・確か・・・・」
「なんであいつなんだよ!!!!」
エドワードは立ちあがって喚いた。
「なんだ、まだ名前も言ってないのに、どうした?やっぱり気になるのか?」
「・・・・・うるせー!!」
「照れてるのか?鋼のにもかわいいところがあるものなのだな」
「なっ・・・・・・!!」
オレはなんで大佐といる時、いつもペースを乱されるんだろう・・・・
見つめられる度、名を呼ばれる度、自分の中の何かが騒ぐ。
心の中が掻き回されるような、歯がゆい感覚。他人とは違う、特別な感情・・・・・・
「どうした?鋼の」
食事が終わり、ロイが出勤の準備をし始めた傍らでずっと黙り込んでいたエドワードの顔を、ロイが覗きこんだ。
「な・・・なんでもねぇよ!!」
先ほどまでロイのことを考えていたエドワードは恥ずかしくなり思わず目をそらす。
「・・・・・つれないねぇ」
深追いはしないほうがいいと悟ったロイは、再び支度に戻る。
だが、ロイが目の前から去っても、エドワードの顔はまだ熱を帯びていた。
あんな近くで見つめられたのは初めてかもしれない。
そう思った瞬間、エドワードの中で何かが弾けた。
「!!!」
もしかしたらオレは大佐に・・・・・・・
これから先続くかも。
一応おわり