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時計をとめて〜水橋春夫さんのこと

2018/8/13 | 投稿者: komori

8月5日、水橋春夫さんがお亡くなりになられました。

昨日8月12日は、僕の親友であるHOMMヨのニイマリコさんと水橋さんとで、渋谷La.mamaでのライヴが行われる予定の日でした。

僕は元々昨日は伺うことが出来ない日だったのですが、まさか水橋さんまでとは思いも至らず、あと数日の猶予さえ与えてくれなかった神様を憎んだ、この1週間でした。

僕は高校生の頃からジャックスや、また早川義夫さんの大ファンでしたが、水橋春夫という存在は、過去の、伝説のギタリスト、という存在でした。

その伝説の存在が、まさかの音楽活動を復活!ということで、はじめて水橋さんの演奏を拝見したのが、忘れもしないフジロック2015のアヴァロンステージでした。グリーンステージのトリのMUSEの真裏の時間でお客さんもまばらではありましたが、水橋春夫グループの演奏はその年のフジロックの自分の中でのベストアクトとして、今でも鮮明に記憶に残っています。

それで、僕はおこがましくも何を想ったか、「来年、壊れかけのテープレコーダーズで水橋さんと共演したい、いや、共演しなければいけない。」と、神の啓示のような使命感を覚えるに至ってしまったのです。

2016年の2月、大阪の難波ベアーズでの水橋春夫グループのライヴに出向き、直接ライヴへの出演交渉をと、水橋さんに挨拶をしました。なんで大阪かというと、調度壊れかけの大阪ツアーの翌日に、水橋さんも大阪でライヴをやっていたんですよね。(しかも今考えると僕らはHOMMヨの関西レコ発で大阪にいたという!この時点でのなんたる必然!)

水橋さんは急にに直談判に訪れた謎の若造にも親切に接してくれ、連絡先の電話番号を教えてくれました。後日、その電話番号に正式にオファーのお電話をし、まさかの水橋春夫グループも出演が決定!最初は2マンを想定していましたが、より観客層の幅や広がりが欲しいと思い、同世代くらいでのバンドを対バンに検討したんですが、どう考えても水橋さんとの共演がベストマッチするようなバンドはHOMMヨ以外思いつきませんでした。

2016年5月26日、代官山晴れたら空に豆まいて、壊れかけのテープレコーダーズ、水橋春夫グループ、HOMMヨの3マンライヴが行われました。今でもこの日の企画は、歴史に残るイベントだったのではないかと、少なくとも間違いなく歴史を繋いだイベントになったと、主催として自負しています。

この日のイベントのタイトルは「時計が動き出す時」というタイトルにしました。無論、ジャックスの大名曲「時計を止めて」へのオマージュです。約半世紀振りに自らの音楽活動を再開された水橋さんということもあるし、またジャックスチルドレンである僕らやHOMMヨのような世代のバンドとの共演が、未来へ進む時計を動かすような、そんな日になればなと願いを込めてつけたタイトルでした。


ただ、今現在の心境は、時計を止めて、と、

願えどもう届かぬような、そんな心境です。


2016年の晴れ豆のイベントの前に、水橋さんより「事前にお茶でも」とお誘いを受け、新宿のTAKANOにてアイスコーヒーをご馳走になりました。その時水橋さんは色んな話をしてくれました。ジャックスのことや早川さんのこと、また音楽プロデューサーとしての長い歳月のことなど。その時水橋さんは自身の音楽活動を再開された理由について、「余生、あとはもう好きなことをやろうと思ったんだよ。」と笑いながら仰っていました。

ただ、いくらご高齢とはいえ、余生なんて呼ぶには、余りにも短過ぎたこの水橋さんと出会ってからの3年間。水橋さんは晴れ豆のイベントをきっかけにニイマリコをメンバーに誘い、時に遊佐も加えたりとで、僕らの世代のミュージシャンとも精力的にライヴを行っていました。そんな水橋さんの姿を思い出すと、この人はプロデューサーである前に、やっぱり純然たるロックンローラーだったんだなと思います。

最後の数年間を、僅かな時間ながら、関われたことは、本当に幸福な時間だったと、思います。

最近久しぶりに『ジャックスの世界』を聴き返しました。調度半世紀前のレコードなのに、今尚全く色褪せない魔術のような魅力と、また水橋さんのギターの音色が、今も昔も全く変わらないことに、驚かされました。人間はこうも老人になっても青年のような瑞々しさのままでいられるのか、それとも青年時分にして余りにも悟りきってしまっていたのか。

ジャックスを久々に聴きながら、水橋さんのライヴのことも思い出していました。水橋さんはよくライヴのMCで驚くべきことに「すみませんねえ、こんなんで、、、」と観客によく謝罪をしていました。それは最初はステージにあがる演者としてこれでいいのかなあと疑問にも思いましたが、多分水橋さんの「すみません」は本心で、未だにきっと恥じらいがあるんだと思います。

そして、その恥じらい、情けなさ、弱さ、卑屈さ、かっこ悪さ、

それこそがジャックスの音楽であり、水橋さんの音楽であったと思います。

現在、世界はどんどん無数の異なる強者の正義がはびこり、僕らはどんどん窮屈を強いられているような方向に、社会全体が向かってしまっているような印象があります。みんな無理をし、心身ともに疲弊をしている。

そんな現代にこそ、ジャックスであったり、水橋さんの音楽が、再び聴かれるべきだと強く思います。ロックとは、元来虐げられた、弱き人々の為の音楽であったはずだと僕は思っています。ポピュラーミュージックとはいつの時代でも、そういうものであるべきです。決してそれが権威や権力のようなものに飲み込まれてはいけない。

水橋さんのやさしい音楽は、暗闇の中に一人ぼっちの人間に、無理に光を照らし出すようなことはしなく、そっと隣に寄り添って「このままでも、いいんだよ」と語りかけてくれるような、そんな音楽です。

そのやさしさが、しっかり後世に受け継がれ続ける為にも残された僕たちが音楽を続けていくことが、ロックバンドの天命だと思っています。

水橋春夫さん、どうもありがとう。

またどこかでお会いする時は、今度は冷たいアイスコーヒーを、

是非僕からご馳走させて下さいね。
その日まで、さようなら。






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